【日本まし?】国からの支援がほとんど期待できないアメリカの介護事情(2020年4月)

あと5年もするとアメリカのベイビーブーマー世代の第1陣が80歳を迎え、2020年代が終わりを迎える頃には2000万人が80歳以上、そして900万人近くが、介護や支援の必要性が増す85歳に達します。

日本と同じようにアメリカでも、すぐそこまできた高齢化社会。介護が必要な高齢者の面倒をどうするのかというのは、アメリカでも極めて大きな問題です。


アメリカの高齢者に関する保険制度 -老後一番必要になる介護保険や生命保険は、オバマケアの対象外

もちろんアメリカにも要支援・要介護の高齢者が入居できる施設は、たくさんあります。

しかし実際にアメリカの高齢者が要介護状態になった場合、多くの人が死活問題になります。その大きな理由として挙げられるのは、やはり行政からの介護支援の問題ではないでしょうか。

日本では国の保険制度のお陰で、介護や支援が必要になっても、個人の負担はかなり軽減されるようになっています。しかしアメリカでは介護や支援が必要になっても、行政からの支援はほとんど期待できません。

2010年にオバマ前大統領が成立した医療保険改革、通称オバマケアのおかげで、今まで保険会社に加入を拒否されていた、既往症を持っている人や、病気を理由に契約を解除された人、または低所得のため高額な保険料を支払う事ができず、健康保険に加入するのをためらっていた人々が、健康保険に加入しやすいやようにはなりました。

しかし、オバマケアは、日本のような国が運営する公的保険制度ではないので、健康保険に加入したい人は、民営の保険会社の商品の中から自分のニーズに合ったものを探して、個々に保険を購入しなければなりません。そのうえ老後一番必要になる介護保険や生命保険は、オバマケアの対象外なので、保険会社が行う健康状態審査の結果次第で、料金が割増されたり、加入拒否されたりする場合も多いため、介護保険未加入の高齢者はこちらでは珍しくありません。

アメリカの施設ケア

保険に入っている、いないに関わらず、核家族化の進んでいるアメリカでは、介護が必要になった場合、家族に頼らず介護施設に入居するという選択をする人が大変多いです。

アメリカの2種類の施設ケア

アメリカの施設ケアには大きく分けると、医療介護付きのナーシングホームやケアホーム(Assisted Living Facilities)と、終身介護付き退職者コミュニティ(Continued Care Retirement Community、略してC C R C)、に二分されます。

ナーシングホームというのは要介護の高齢者が入居する、日本の特別養護老人ホームのような医療介護施設の位置づけで、日本のサービス付き高齢者住宅よりやや高度の支援が受けられる施設です。

ほとんどのナーシングホームやケアホームは民営で、地域、施設の規模、サービス内容などによって費用は異なります。また短期利用も可能で、病気や怪我で数日間だけアシストが必要な場合のみの入居も可能です。

アルツハイマー症のケアの為などで、長期利用を希望する場合、年間費用の平均額は約9万ドル、日本円だと年間約1000万円にもなります。そのため多くの高齢者は、費用を維持し続ける事ができず、半数以上が入居後1年以内に退去を余儀なくされるそうです。

そしてほとんどの場合、ナーシングホームで提供される看護ケアのサービスは、高額な使用料金の割に、とてもわずかしか提供されていない場合も多く、特に月額費用の安い所はサービスが更に限定されるため、値段だけで選ぶと満足な医療や介護を受ける事ができずに、亡くなってしまうケースもとても多いと聞きます。


アメリカのお金持ちは、終身介護付き退職者コミュニティに入居。運営側の倒産リスクも

そこである程度資産を持っている人は、自立した生活ができるうちに終身介護付き退職者コミュニティ(C C R C)に入居を希望する場合が多いです。

終身介護付き退職者コミュニティは、家族の中に18歳以下の子供がいなければ、まだ働ける40〜50代のうちから家族で移り住むことができる、高齢者が安心して暮らせる街として、1960年代から全米で分譲が進められてきました。

アリゾナ州のサンシティや、フロリダ州南部のデード地区、フロリダ半島のレイクサイドディストリクトがそれにあたり、アメリカ国内でもとても有名です。

サービスの充実度や立地条件によって費用に大きな差があり、居住権利を取得するために必要な一時金は、最低でも10万ドル、日本円で約1000万円支払わなければならず、それ以外に毎月3000〜5000ドルの管理費を払い続ける必要はありますが、それに見合った良いサービスを受けられるC C R Cに巡り会えたら、老後の生活がとても楽しいものになると思います。

まだまだ元気な40〜50代のうちから、毎日をリゾート地で過ごすような素晴らしい生活環境で、趣味やアクティビティを通して、仲間と長期的な関係をつくることができる、そんなコミュニティに住むのは大変魅力的です。しかしC C R Cの歴史はまだ浅く、比較的新しいサービス形態のため、全米で統一された法規制が整備されていません。そのため思いもかけないようなトラブルに巻き込まれる場合もあります。

C C R Cもほとんどが民営なので、経営者が倒産することもかなりの確率で起こります。経営者が変われば、同じコミュニテイに住んでいても、利用制度が突然変更されたり、月額料金が値上がりをしたり、施設内の介助、介護、看護サービスを無料で受けられるはずだったのが、高額なコストを追加負担しなければならなくなる事もあります。

まとめ

アメリカの高度先進医療は日本よりも進んでいます、そしてお金さえあれば、どんな医療介護でも受けられます。しかしその高額な医療費のため、大部分のアメリカ国民は要介護状態になった場合、十分な看護が受けられません。

国の高齢者に対する介護や医療の対策が、日本より遅れているのも事実です。そしてアメリカは肥満が社会問題になるような不健康な国という一面もあり、高齢者医療、介護問題は極めて重要な状況にあるともいえます。

生きていれば必ず歳はとり、今どんなに元気であっても、いつか介護が必要になる日がやって来るかも知れません。その時必要なケアが安心して受けられるよう、老後の計画は元気な若いうちから、しっかり立てていきたいものです。

本記事は、2020年4月10日時点調査または公開された情報です。
記事内容の実施は、ご自身の責任のもと、安全性・有用性を考慮の上、ご利用ください。

気に入ったら是非フォローお願いします!
NO IMAGE

第一回 公務員川柳 2019

公務員総研が主催の、日本で働く「公務員」をテーマにした「川柳」を募集し、世に発信する企画です。

CTR IMG