コロナウイルスで大打撃!アメリカの外食業界の「今」2020年4月現地レポート

新型コロナウイルスによる外出自粛要請で、アメリカの経済は混乱しています。その中でも、とりわけ「外食産業」は非常に苦しい状況にあるようです。

本記事では、アメリカ在住の日本人ライターに、「アメリカの外食産業の今」をテーマに、現地アメリカからレポートしていただきました。

はじめに

新型コロナウイルスの感染拡大が続いているアメリカでいま最も苦しんでいる人たちとされているのが「外食産業」です。州によって規制の内容は異なりますが、ほとんどの州でレストランは「持ち帰り注文のみ」に制限されており、外食を楽しむ機会はなくなったに等しい状況が続いています。

アメリカでは日本以上に外食産業が盛んで、レストランの数やサーバーを始めとする労働者の数も非常に多いため、外出規制や自宅待機命令によって外食産業は大きな痛手を負っています。

そこで今回は、アメリカの外食産業がどのような事態になっていて、これから先どのように対応していくのか、どんな支援策が取られているのかなど、現地のリアルな様子を含めてご紹介したいと思います。

アメリカの経済状況や支援策など、公務員として知っておいて損はない知識です。ぜひご覧ください。

アメリカのレストランの現状

アメリカでは新型コロナウイルスの感染拡大を受けて州による非常事態宣言、そして国家非常事態宣言が出されています。これにより、各州でそれぞれのルールに基づいて必要不可欠なサービス以外は閉鎖するように求められています。

なかでもレストランについては厳しい制限がかけられており、店内での飲食は禁止されています。営業こそ許されているものの、実質的なサービスが提供できないため、シェフとサーバーの大半は仕事が激減しています。

オーナーは通常サービスに合わせて人を雇用しているため、多くの従業員が必要でなくなってしまいました。当然、アルバイトから解雇されるようになり、一部のシェフとサーバーだけを残して営業する事態になっています。

筆者が生活しているアリゾナ州の老舗イタリアンレストランでは、合計40名のシェフとサーバーを雇用していますが、新型コロナウイルスの影響で8名にまで人員を減らしています。また、別のメキシカンレストランでは家族のみで経営するようにして、4名のアルバイトを全員解雇したと言います。

日本食レストランでは、普段は100件近いオーダーがあるのに、非常事態宣言が出てからは30件にも満たない日がほとんどだと言います。これから9月頃にかけては、客の大半を占める学生が夏休みで地元に帰ってしまうため、さらに客足は遠のくと予想しています。

街にあるどのレストランも開店しているのか、していないのか分からないほど静まり返っており、誰が見ても外食産業の打撃は大きいと感じるほどです。

数字で実感するアメリカの外食産業

アメリカの全米レストラン協会(National Restaurant Association)は、アメリカにある5,000軒のレストランを対象にコロナウイルスによる影響を調査しました。

その結果、3月末時点で3%は閉店を決め、44%は一時的な閉店、そして11%は30日以内(4月末まで)に完全に閉店することが分かりました。つまり、レストランの半分以上が閉店に関連する何かしらの影響を受けていることになります。アメリカには100万軒を超えるレストランがあるため、単純計算すると11万軒程度が閉店を強いられます。

また、アメリカの外食産業全体では3月22日までに47%も売上が減少しており、経済的な損失はおおよそ250億ドル(約2.7兆円)に及ぶとされています。なかでも高級レストランやカジュアルレストランの影響が大きく、売上は75-90%減という店も珍しくありません。(ファストフードは50%減)

外食産業で働く人の70%が解雇または労働時間が減少しています。3月末時点でおおよそ300万人が職を失っており、新型コロナウイルスの影響で職を失った人の約15%が外食産業関係者です。

JPモルガン・チェース・インスティテュート(JPMorgan Chase Institute)による調査では、アメリカの外食産業の半数は「16日以上の休業」が続くと経営難に陥って倒産してしまう程度の貯えしかないことが分かっています。

非常事態宣言が発令された3月13日から1ヶ月以上経過した現在、アメリカ全体で少しずつ閉店を決めるお店が増えています。

アメリカのレストランで働く人たちの賃金体系

アメリカのレストランでは「チップ制度」が一般的です。サーバー(接客係)は自分が担当するテーブルが決まっており、そのテーブルについた客からもらったチップがその日の給料になる場合がほとんどです。接客をしないシェフの場合は、州で定められている最低賃金(アリゾナ州では11ドル)が基本です。

ただし、チップに対する取り決めや賃金体系はお店によって異なります。チップが従業員に対する給料とするお店もあれば、基本給にプラスする形でその日のチップを全従業員で分割する場合もあります。なかには太っ腹のお客さん(団体)からチップだけで100ドルもらえるケースもあるため、外食産業においてチップは非常に大きな収入源と言えます。

しかし、新型コロナウイルスの一件により、そもそもチップを得る機会がなくなってしまいました。持ち帰り注文の場合、実質的なサービスを受けていないためチップを置いていく人はほとんどいません。つまり、多くのレストランで売上とチップの両方が大幅に減っているという訳です。

どのレストランのオーナーも主要な収入源がなくなってしまったため、早い段階で多くの従業員を解雇しています。

仕事がなくなってどれくらいの打撃があるの?

実はレストランで働いている人たちにとって経済的な打撃は意外にも少ないと言われています。その理由こそ非常時の失業保険です。

例えば、比較的裕福な人が集まるレストランでサーバーとして働いている知人は、通常時であれば6時間程度の労働で平均して100ドルから200ドル程度稼ぎます。しかし、現在は再雇用を条件に解雇されたためレストランからの収入はありません。

しかし、レストランからの指示で失業保険を申請しており、予定では毎週600ドルほどを受け取る予定です。アリゾナ州の失業保険は、通常時であれば毎週240ドルが上限ですが、新型コロナウイルスによる非常時手当が加算されて、通常と比較して3倍近い失業保険が受け取れます。また、失業保険が給付されるまでの間は、政府から支給される1,200ドルの給付金があるためお金には困らないとのことです。(むしろ働かないのに高収入だそう)

別の事例では、スターバックスコーヒーで働いている知人(店舗マネージャー)は、店舗が休業している間は有給休暇として扱われています。つまり、働かなくても給料が保証されているという訳です。

スターバックスではほとんどの従業員に対して休業中の給料を保証していますが、きっかけは従業員に誤った内容のメールを送信してしまったためです。本来であればここまで手厚い保証はなかったようです。

ご紹介した事例はあくまでも一例ですが、新型コロナウイルス問題を受けて「働き続けるよりも、失業保険を受け取った方がマシ」という事態になっています。とくに外食産業でチップの恩恵を受けている人ほど、仕事を早い段階で辞めて失業保険を申請しています。

レストランのオーナーや雇用主は従業員を解雇していますが、その背景には失業保険をもらった方が従業員のためになるという事情があるのです。また、従業員からすれば失業保険で生活する方が収入が良くなるという場合もあり得ます。さらに言えば、働かずして収入が上がる人も出てくる訳です。

アメリカのレストランでは外出禁止令によって経営が悪化し、従業員を無差別に解雇しているとは限らないことが分かると思います。このことは、アメリカでは非常時の失業保険が労働者にとって手厚い制度ということでもあります。

アメリカでは、外食産業を支援する取り組みが広がっています。

コロナウイルスによって多くのレストランが経済的な損害を受けたことは間違いありません。さらに、営業再開の目処すら立っておらず、どれくらい長期化するのかも分かりません。そんな状況下で州政府や団体、地元の人たちによるレストランを支援する取り組みが広がっています。

アメリカ州政府によるレストラン情報の提供

筆者が住んでいるアリゾナ州では州政府によってレストランの営業状況や、特別メニュー、ディスカウント情報などのサービスを無料で掲載できるサイトが立ち上がりました。非常事態宣言からわずか5日後に始まったことから、行政による素早い反応だったと高く評価されています。

州政府のサイト以外にも、地元のニュースサイトや情報サイトなどにリンクが貼ってあるため、地元の人がアクセスしやすいことが特徴です。持ち帰り注文だけであっても積極的にレストランを利用してもらうためのよく出来た工夫と言えます。

NRAEFによる金銭サポート

全米レストラン協会教育財団・NRAEF(National Restaurant Association Educational Foundation)では、過去1年内に外食産業で90日以上働いた人で、3月10日以降収入が減少した、または職を失った人を対象に500ドルの金銭支援を実施しています。

この支援策には60,000人を超える人が殺到し、給付が追いついていないほどです。財団の財源は寄付がほとんどなので、財団は寄付要請も同時に行っています。

シェフたちによる動画メッセージ

レストランのシェフたちが動画を通じて「週に1回はテクアウトを利用しよう」というメッセージを拡散する運動が広まっています。レストランの利用者が大幅に減ったことを受けて、老舗レストランが始めた動画メッセージがSNSを通して拡散されて、どんどん参加者が増えています。

ローカル向けの動画ながら再生回数は20,000回を超えており、普段はライバル店とされている店員同士が同じ動画に登場するなど話題性も高く、関心を集めています。レストランが苦境にあることを少しでも知ってもらうための取り組みとして、街ではちょっとしたブームになっています。

まとめ

アメリカの外食産業は新型コロナウイルスによって大きな打撃を受けています。従業員は失業保険を申請することで当面の生活は保証されるかもしれませんが、一番の問題はレストランの数が減少していくため多くの人が再就職する先がなくなるかもしれないことです。

失業保険や金銭支援によって労働者の生活は維持出来ても、将来的な雇用の受け皿となるレストラン自体が減っていることを忘れてはいけません。アメリカの外食産業は規模が大きいだけにコロナウイルスが終息した後に大きな問題として表面化するかもしれません。

今後のアメリカの外食産業とその動向についても注視が必要です。

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本記事は、2020年4月22日時点調査または公開された情報です。
記事内容の実施は、ご自身の責任のもと、安全性・有用性を考慮の上、ご利用ください。

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