アメリカ経済も大打撃!いまさら聞けない原油先物取引について

2020年4月、今、原油の価格が下がっていることをご存知でしょうか?

新型コロナウイルスの影響による外出自粛のため、ガソリンを購入する機会も減り、価格についてはあまり意識していない方も多いのではないでしょうか。

本記事では、なぜ今原油価格が下がっているのか、アメリカ経済にどのような影響があるのか、まとめました。

はじめに-原油価格がマイナスになるという異例の事態が発生

新型コロナウイルスの感染拡大によって世界中で経済が停止する事態になり、原油市場が大きく揺れています。

2020年4月時点で、5月物の原油価格が1983年の取引開始以来初めてマイナスになるという異常事態です。原油の生産者が顧客に原油を買ってもらうためにお金を払うような状態で、もはやビジネスとして成り立たない状態にまで追い込まれています。

アメリカでは原油を貯蔵しておく施設が限界に近づいており、原油の価格が下がるどころか、株式市場も続落しています。そこで今回は、異常事態になっている原油市場について解説します。

原油先物取引って何?アメリカではどんな影響が出ているの?これから先はどうなるの?など、いまさら聞けない基本的なことやアメリカの状況などを交えてご紹介します。

公務員を目指す方はこれを機会に、普段は触れる事が少ない原油市場のことを理解して下さい。

原油先物取引で何が起きているの?

新型コロナウイルスの影響によって原油の取引価格が暴落しています。わかりやすく言えば、世界中で原油が使われないため、原油が売れなくなっている(値が付かなくなっている)ということです。

原油の買い手が見つからず、原油の保管や輸送コストが高くついてしまうため、損をしてでもいいから在庫を持たないようにする「投げ売り」状態になっています。

アメリカ、サウジアラビア、ロシアなどの主要原油産出国は、原油を売りたくても買ってくれる人がいないため、原油をどこかに一時保存するしかありません。しかし、原油を保存しておく貯蔵庫も限界に近づいており、いま以上の原油が必要なくなっているのです。

新型コロナウイルスの感染拡大は、しばらく続くという予測が強まっているため、6ヶ月先までの取引が対象になっている原油先物取引で値下がりが続いているという訳です。

なぜ原油が必要なくなっているのか?

原油の価格が下落している原因はいくつかあります。それぞれご紹介します。

中国経済が停滞している

最も大きな原因とされているのが中国経済の停滞です。世界の工場と称されるほどの中国ですが、世界的な経済停止を受けて工場を稼動させる必要がない、つまり原油が必要ではない状態になっています。仮に、中国の工場が通常時のように稼動しても、生産された物が他国で必要とされないため工場を稼動させる意味がないのです。

世界中の航空産業が停止状態にある

世界中で航空産業が停止状態にあることも原油が必要とされない理由です。新型コロナウイルスによって長距離路線の国際線は7-9割近く減少しました。燃料を使う必要がない、つまり原油が必要ないという仕組みです。

アメリカが原油を貯蔵できなくなっている

原油相場がマイナスになった大きなきっかけとされているのが、アメリカ国内で原油を貯蔵できなくなっていることです。

アメリカではオクラホマ州のクッシング(Cushing)という街に主要な原油貯蔵施設があります。この原油貯蔵施設で需要と供給のバランスをとっていますが、貯蔵の限界が近づいてきたため、貯蔵コストが上昇しています。つまり、原油を購入しても保管コストが高くつくので買い控えが起きているという意味です。

また、貯蔵の限界が近づいており、原油を購入しても保管場所がないことから、これ以上原油はいらないという状況になっています。

そして、最も深刻な問題が「原油が減らない」ということです。アメリカ国内でも航空産業を中心とする多くの原油消費産業が停滞しています。この結果、誰も原油を必要としないため、貯蔵庫には常に大量の原油が余っているという訳です。

原油先物取引に関する基礎知識

ここでは原油先物取引について基本的な仕組みをご紹介します。

原油先物取引とは?

原油先物取引とは原油商品が対象で、将来の特定の日(期日)に、取引した時点で決めた価格で売買することを約束する取引のことです。

簡単に言えば、来月納品する原油関連商品を、取引した日の価格で手にするイメージです。来月には値上がり(値下がり)する可能性があるものを、取引した日の基準で売買します。原油先物取引では先6ヶ月間の取引が対象になっています。

原油などは将来的にも必ず必要になるものなので、必要な際にその都度取引をしていると企業は安定した利益が出せない可能性があります。また、安定して原油を供給できなくなるかもしれません。そのため、将来にわたって安定した金額で供給できるように先物取引があるのです。

原油先物取引で扱われている商品

原油先物取引は、株式投資で言うところの証券取引所に相当する「商品取引所」という公的な取引所で実施されています。証券会社のような商品先物取引業者を通じて取引をします。その際に使われる商品は、アメリカのWTI(West Texas Intermediate)、ヨーロッパの北海ブレント、中東産のドバイ原油などがあります。

これらの商品がアメリカのNY先物取引市場や、東京の先物取引市場で取引されている訳です。基本的な仕組みは株式相場とほとんど同じと考えて良いでしょう。

原油先物取引相場が変動する主な理由

原油先物取引は様々な要因で価格変動が起こります。主な要因として、産油国による減産または増産、中東情勢、在庫量、金利の増減、株式相場の変動などがあります。

2020年4月に起きた原油価格暴落の主な要因は「在庫量」とされています。世界的に原油の需要がなく、これ以上は在庫を抱えられない状況になったことから、原油の価値が大幅に下がったのです。

原油先物取引はこれまでに3つの暴落を起こしています。ひとつめは2008年のリーマンショック、ふたつめが2014年のシェールオイルの実用化(シェール革命)、そして2020年の新型コロナウイルスです。

なかでも、2020年の大暴落は複合的な要因であることが特徴です。新型コロナウイルスによる需要の低下だけでなく、OPECやOPECプラスの協調減産協議決裂、過剰在庫、株式相場の変動などいくつもの要因が絡み合っています。

原油先物価格暴落の影響は?

実は今回の原油価格大暴落はあまり悲観するほどの影響はないとする意見もあります。その理由は「原油先物取引のタイミング」です。

取引最終日前日の反応に過ぎない

原油先物価格がマイナスになったのは様々なことが要因ですが、あくまでも一時的な現象と考えられています。その理由こそがニューヨーク原油先物市場が「5月分の取引最終日前日だった」ことがあります。

4月20日は5月分の先物取引最終日前日でした。つまり、このままでは5月に原油の在庫を抱えてしまう可能性があった人たちによって売り注文が殺到したため一気に価格が下がったのです。同じ損をするなら少しでも損害が少ない方法を取るという、苦渋の選択をした人が多かったと言えるでしょう。

新型コロナウイルスによって原油の需要が減り、過剰在庫になったところで、5月分の取引最終日を迎えたため暴落したのです。

大暴落は5月物に限ると予想されています

今回の原油価格大暴落は「2020年5月物」で起こりました。さらに、取引最終日前日という比較的価格変動が起こりやすいタイミングでの出来事です。

原油先物取引で参照すべきは取引が最も活発になる「中心限月(ちゅうしんげんげつ)」です。ニューヨーク市場は4月16日に中心限月が5月限から6月限に変わっていました。しかし、すでに中心限月ではなくなった5月限の価格を参照してマイナスになったと報道されたのです。

事実に基づいており、決して間違った報道ではありませんが、ネガティブな要素だけを切り取った印象は否めません。大暴落が起きたのはあくまでも5月物に限られ、6月物以降はマイナスにはなっていないことを覚えておきましょう。

このように、5月物の取引最終日前日であったことや、価格が下落した5月物だけを抽出して報じられたため、影響は一時的でなおかつ小さいと捉えられているのです。

アメリカ経済への影響は予想以上に大きい

原油価格暴落は一時的とする声もある反面、アメリカ経済への打撃は予想以上に大きいようです。

今回の原油価格下落を受けてエネルギー関連の株価が値下がりしました。なかでも、エクソンモービルは5%安と値下げ幅が大きく、ダウ工業株30種平均が一時700ドル以上値下がりするなどアメリカの株式市場全体にわたって影響が及んでいます。

4月21日時点、ニューヨーク原油先物相場では、6月物の原油価格は8.86ドル安の11.57ドルと続落しています。中心限月である6月物ですら下落傾向にあることは、アメリカの実体経済
に影響が出ていると言わざるを得ません。

過剰在庫が解消されない中で、6月物の原油価格がどのように推移していくかは不透明です。アメリカでは航空機燃料の需要7割減、ガソリン需要5割減など悲観的な要素が多く、アメリカ国内の生産縮小が本格化するのは早くて6月とされています。

このような事情を抱えているため、トランプ大統領としては経済再開を急ぎたい構えです。

原油市場はこれからどうなる?5月にもちなおすか?

限定的なものだったとは言えマイナスを記録した原油価格ですが、5月以降は徐々に持ち直すと考えられています。

その理由として、5月1日からサウジアラビアやロシアなど主要原油産出国による大規模な協調減産が始まります。また、アメリカではシェールオイルの産出制限が実施されます。これにより原油市場全体で過剰供給が抑制されることから、原油価格の価値が本来の姿に回復すると予想されています。

中国やヨーロッパ諸国で少しずつ経済が再開傾向にあることもプラス要因でしょう。アメリカ国内では経済再開を望む人たちによる抗議デモが活発化しており、各州は外出規制などを緩和する姿勢を見せ始めています。

このような期待感から6月中旬頃には1バレル30ドル付近まで持ち直すのではないかとされています。

まとめ

アメリカでは原油価格大暴落を受けて、株式市場にも影響が及んでいます。原油価格下落による影響は限定的とする意見がある一方で、確実に下落傾向へ進んでいることも確かです。新型コロナウイルスの感染拡大が終息していない中で、いつ、どの程度の規模で経済再開を決断するかが注目されています。

今後しばらくは、原油先物取引の動向に注視が必要です。

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本記事は、2020年4月23日時点調査または公開された情報です。
記事内容の実施は、ご自身の責任のもと、安全性・有用性を考慮の上、ご利用ください。

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