アメリカ大手IT4社GAFAが公聴会で語ったことは?

アメリカの大手IT会社であるGoogle、Apple、Facebook、Amazonの4社はその頭文字をとって「GAFA」と呼ばれています。この「GAFA」が、アメリカの独占禁止法である「反トラスト法」に接触している可能性があるとして、2020年7月29日に公聴会が開かれました。

今回は、公聴会の概要、「GAFA」が公聴会で語った内容を、アメリカ在住の日本人にレポートいただきました。

はじめに - 5時間に渡って行われた公聴会

2020年7月29日、アメリ議会下院の司法委員会は大手IT企業4社に対して公聴会を開きました。

出席したのは「GAFA」と呼ばれる、Google、Apple、Facebook、Amazonの4社で、アメリカを代表するIT企業のCEOが揃って参加する異例の事態になりました。普段はカジュアルな格好をしているCEO達がスーツに身を包み、新型コロナウイルスの感染を考慮してオンライン中継で開催されました。

公聴会は5時間以上の長丁場になり、公聴会の内容によってはアメリカ経済への打撃にもなりかねない不安もあったことから全米が注目していました。

今回は、GAFAに対する公聴会で何が問われて、CEO達はどのように答えたのかなど、社会経済への影響も含めて解説します。

公務員や公務員志望の方は、不安定なアメリカ経済の現状や展望を知るのに参考にして下さい。

公聴会の概要

はじめに、公聴会の概要についてご紹介します。

公聴会の目的

公聴会が開催された目的は「法改正のための準備」です。アメリカ議会下院司法委員会は、アメリカの独占禁止法である「反トラスト法(アンチトラスト法)」を改正する必要があると考えています。

100年以上前に成立した現行の反トラスト法では、GAFAのような大規模企業だけが勝ち残り、正当な競争が行われないことから、手直しが必要とされてきました。

今回の公聴会では法改正に先立ち、2019年6月から同委員会が調査した結果に基づく問題点について質疑応答し、調査報告書にまとめることになっています。

公聴会では議員による厳しい質問が相次ぎましたが、GAFAを罰することが目的ではありません。

公聴会が開かれた背景

今回の公聴会が開かれた背景は、アメリカ大手IT企業のGAFAが反トラスト法に接触している可能性や、反トラスト法で規制できない抜け穴を調査していたアメリカ議会下院司法委員会が、直接答弁を要求したことにあります。

同委員会は、GAFAが提供する製品やサービスが圧倒的なシェアによって、他社との競争を不当に妨げていると見ています。

例えば、Appleはスマートフォン用アプリ配信サービスを外部に解放しておらず、手数料を高いまま維持して、自社アプリを優先的に配信していると指摘されています。また、Facebookについては2012年にインスタグラムを買収したことで、不当に競合企業潰しを図ったと言われています。

つまり、GAFAは企業規模や市場の優位性を利用して、自社だけに利益が入るようなビジネスを展開していると疑われているのです。

反トラスト法とは?

公聴会が開かれるきっかけとなったのが「反トラスト法」です。反トラスト法はごく簡単に言えば独占禁止法ですが、厳密には複数の法律の総称です。

ひとつは「シャーマン法」と呼ばれる法律で、1890年に成立したアメリカで最初の独占禁止法です。この法律では、取引を制限するすべての契約を禁じています。競争者同士で販売価格を決めたり、市場を分割することなどが禁止されています。

次に「クレイトン法」です。1914年に成立したこの法律では、価格差別(Aには100ドルで売るが、Bには150ドルで売る)、排他的取引(特定の企業からしか買わないことを前提にした契約)、抱き合わせ販売(目的とする商品以外も買わせることで契約する)といった行為が禁止されています。

また、競争を抑制したり独占を生むような合併も禁止しています。仮に、企業が合併する場合は司法省と連邦取引委員会に申請をする必要があり、司法省と連邦取引委員会は合併の差し止めや企業分割を可能にする権限を有しています。

下院司法委員会は、GAFAのようなIT大企業がこれらの法律を犯している可能性があると見ており、議会という場において当事者達の意見を聞いた訳です。

GAFAが指摘された点

下院司法委員会はGAFAに対して、主に以下のような点で反トラスト法に接触している、あるいは競争を妨げていると見ています。

Google:インターネット検索を独占し、デジタル広告の収入を独占
Apple:スマートフォンやアプリ市場を独占し、競争を妨げている
Facebook:SNS市場を独占し、デジタル広告の収入を独占
Amazon:ネット通販を独占的に支配し、小売業の廃業を生み出している

公聴会で語られたこと

次に公聴会でどのような質問がされ、GAFAのCEO達はどう答えたのか、主なやり取りを見てみましょう。

開会宣言

公聴会を開催した下院司法委員会反トラスト小委員会のシシリン委員長は開会に伴い「新型コロナウイルスによるパンデミック下で街角の商店が経済危機に面している一方で、GAFAはこれまで以上に強く、大きな力を持つようになった」としたうえで「GAFAのビジネスは経済と民主主義に大きな影響を及ぼしている」と指摘しました。

そして「テック(IT)の巨人は大きすぎる」と述べ、GAFAの大きくなりすぎた存在感と影響力を問題視している考えを示しました。

Google(サンダー・ピチャイ)の主張

インターネット検索市場をほぼ独占し、他社サービスを排除し、なおかつデジタル広告を通じて巨額の利益をあげていると指摘されたGoogle(親会社はAlphabet Inc.)のCEOピチャイ氏は「これまでに900億ドル以上を投資し、AIなどの最先端技術でアメリカが世界のリーダーでいられるように貢献してきた」と、これまでのアメリカ経済への貢献を主張しました。

また「Googleのサービスによってアメリカ国民に数千ドル相当の価値を提供し、さらには小規模企業が事業を成長させることに寄与している」としました。

ピチャイ氏は、検索市場での優位な立場を利用してデジタル広告を独占していること以上に、アメリカ経済に貢献していることを強調しています。

また、検索者(消費者)は必ずしもGoogleを利用する必要はなく、検索方法は多種多様であることを付け加えており、反トラスト法には接触しないと見ています。

公聴会のなかで「Googleは中国共産党に監視のためのプラットフォームを提供しているのでは?」と的外れな質問を受けた際には「Googleと中国の関係は非常に限られたもの」と述べました。

Apple(ティム・クック)の主張

トランプ大統領もお気に入りのCEOでもあるAppleのティム・クックCEOは、アプリ配信サービスを他社に解放せずに手数料を高く設定し、自社アプリを優遇している指摘を受けました。

これに対してクック氏は「手数料は10年以上値上げしていない」「170万個以上あるアプリの中で自社製はわずか60個」と説明し、独占には当たらないと回答しました。

また、自社アプリ「スクリーンタイム(スマホの使い過ぎを防ぐアプリ)」が登場した途端に、他社が提供する類似アプリがApp Storeから削除されたことも追及され「プライバシーと安全面からの配慮であり、現在でも30以上の類似アプリがある」と返しています。

この他にも、スマートフォンなどのデバイスでも世界シェアを圧倒しているという指摘については「世界中で激しい競争が起きており、スマートフォンでは中国のファーウェイ、韓国のサムスンなども成功している。アップルは支配的なシェアは得ていない」としました。

Facebook(マーク・ザッカーバーグ)の主張

アメリカ議会の槍玉にあげられることが多いFacebookのザッカーバーグCEOは、インスタグラム買収をはじめとする「買収によって市場を独占」したことを追及されました。

インスタグラムを買収した2012年に、社内メールで「(インスタグラムは)我々の脅威になる」と書いており、インスタグラムがライバルになる前に買収したと違法性を指摘されました。ザッカーバーグ氏は「当時、インスタグラムが成功する保証はなく、他にもライバルはいた」とし、違法な買収ではなく、市場独占のためでもないと主張しました。

また、ザッカーバーグ氏は中国の人気アプリ「TikTok」などを例に挙げ「常に激しい競争のなかにいる」としたうえで「様々な分野で競合他社に後れをとっている」と回答し、決して優位な立場にあるとは言えないとしました。

Amazon(ジェフ・ベゾス)の主張

初の議会証言になったAmazonのベゾスCEOは、ネット通販の独占やAmazonに出店している外部企業の販売データを使って、自社ブランド製品を開発したことなどを指摘されました。

「イエスかノーで回答を」と求めた議員に対し、ベゾス氏の回答は「慎重な調査を続けている」と明確な回答を避けています。また「外部事業者のデータを使う際には社内規定を設けているものの、違反がなかったかどうかは保証できない」と、歯切れが悪い対応が目立ちました。

他にも、Amazonはアメリカのネット通販市場の4割を占めているとされており、この影響で多くの小売店が廃業していることを指摘されています。これに対しては「Amazonは42州で雇用を生んでおり、従業員の報酬は連邦法で決められている最低賃金の倍だ」とし、アメリカ経済への貢献を主張しました。

事実、過去10年間で2,700億ドル(約28兆4,000億円)の投資をしてきており、アメリカ経済への貢献は大きいと言えます。

閉会宣言

5時間超にわたって開かれた公聴会の最後には、シシリン委員長が「GAFAが独占力を保有していることが明白になった。すべてを適切に規制して説明責任を負わせる」とまとめました。

また「いくつかは企業分割されるべきだ」とし、GAFAの組織体制の見直しも示唆しています。

公聴会の影響

今回の公聴会による影響は限定的とされています。

トランプ大統領の反応

トランプ大統領は、公聴会の様子を受けて自身のTwitterで「議会がGAFAに対して公正さをもたらせないのであれば、大統領令を出して私自身が行う。口だけで行動してこなかった議会に人々は閉口している」とコメントし、GAFAに対して強気な姿勢を見せています。

株式市場の下落はわずか

29日、ニューヨーク株式市場は公聴会の様子を見つめつつ取引が行われていましたが、GAFAの中で最も値を下げたのがAppleの1.92%、最小値はAmazonの1.11%でした。公聴会では厳しい追及も見られたものの、株式相場への影響は小さく、混乱は起きませんでした。

2020年4-6月期は3社が増益

公聴会翌日の7月30日、GAFAは4-6月期の決算を発表しました。これによるとGoogle(Alphabet Inc.)を除く3社が増益を記録し、コロナ禍におけるIT業界の好調さをアピールしています。

なかでも、Amazonは過去最高となる52億4300万ドル(約5,500億円)を記録しました。これは前年同期比で2倍、売上高40%増という結果です。

一般世論

アメリカ人の多くはGAFAに対しては好意的です。一方で、議員たちによる本題とは関係がない質問が相次いだことの方が問題視されており、5時間超えの公聴会の大半は時間の無駄だったとする声も見られます。

無関係な質問の代表的なものとして、中国政府とGAFAの癒着、大統領選挙の妨害、ユーザープライバシーの問題、さらにはSNS上の揚げ足取り(キャンセル・カルチャー)などが見られました。

まとめ

以上、「アメリカ大手IT4社GAFAが公聴会で語ったことは?」でした。

今回の公聴会は「GAFA優勢」の結果に終わりました。公聴会を開いた下院司法委員会は、反トラスト法の改正案を盛り込んだ調査報告書を作成し、GAFAの独占を是正する法改正に動くとされています。

一方で、すでに司法省が反トラスト法違反でGoogleを提訴する可能性があると報じられるなど、GAFAに対する追及は当面続くと見られます。

今後、反トラスト法がどのような内容に改正されるのかや、成立するか否かが焦点になります。我々にとって身近なGAFAの動向には注視しましょう。

本記事は、2020年8月11日時点調査または公開された情報です。
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