アメリカ政府による新型コロナウイルス追加対策法案(2020年8月)

2020年8月現在、アメリカでは依然として新型コロナウイルス感染症の拡大が続いています。しかし、アメリカで実施されていた多くの経済支援政策は7月末から8月上旬までに有効期限を迎えてしまいます。

今回は、アメリカの「新型コロナウイルス追加対策法案」について、アメリカ在住の日本人にレポートいただきました。

はじめに - 再び感染者が増加しているアメリカ

2020年3月14日、アメリカでは新型コロナウイルス感染拡大に伴い国家非常事態宣言が出されました。5月には一旦終息したかのように見えましたが、6月末から再び感染が広まり、テキサス州やフロリダ州、カリフォルニア州などで過去最大規模の感染数を記録しています。

これまで比較的安全な州とされていた場所でも感染が広がっていることから、アメリカ政府は再び大規模な対策を迫られています。

感染拡大を防ぐために州政府による対策は実施されているものの、事業支援や失業保険など人々の生活に直結する経済支援の方針は決まっていません。また、多くの経済支援政策は7月末から8月上旬までに有効期限を迎えます。

アメリカ政府は一部の州で感染拡大が止まらない状況を受け、新たな追加対策法案について議会で調整を行っています。この法案の結果によってはアメリカ経済が再び失速する恐れもあることから注目されています。

そこで今回は、アメリカ政府が打ち出した新たな追加対策法案について、具体的な内容や市場の反応を含めてご紹介します。

公務員や公務員志望の方は、アメリカ政府と日本政府の対応の違いや、政策の違いなどを比較するのに参考にして下さい。

アメリカ政府による追加対策法案

はじめに、新型コロナウイルス感染拡大を巡る追加対策法案の内容を見てみましょう。

追加対策法案の概要

7月27日、アメリカの共和党議会指導部は、1兆ドル規模(約105兆円)の新型コロナウイルス対策法案を発表しました。

この予算案には大きく分けて3つの軸があります。年収90,000ドル以下の全家庭(大人1人あたり)に1,200ドルを再支給、失業保険は規定支給額に200ドル上乗せを10月上旬まで継続、そして、企業が従業員の雇用を守れば給与を政府が肩代わりする「給与保障プログラム(Paycheck Protection Program)」の延長などが盛り込まれています。

共和党は8月中にも2,500億ドル分の現金支給を実施する構えですが、民主党は医療制度の充実や医療従事者優遇に関する予算も含めた3兆ドル規模(約315兆円)の財政拠出を要求しており、議会での調整が難航する可能性があります。

共和党が公表した追加対策予算案の成立がこじれることがあれば、全米で1,700万人以上いる失業保険受給者や、営業制限を強いられているレストランなどの中小企業が困窮する恐れがあり、迅速で確実な対応が求められます。

追加対策法案1:Stimulus check再支給

アメリカ政府は、4月の時点で一律1,200ドル(約126,000円)、子どもは500ドル(約52,500円)の「Stimulus checks」を支給しました。今回の追加対策法案にも同様の内容が組み込まれており、アメリカ国民は歓迎しています。

1回目のStimulus checkは、3月中旬の非常事態宣言からわずか2週間後に支給が始まり、5月中旬には大半の国民が受け取ったとされています。日払いや単発の仕事で生活しているギグワーカーが4,000万人以上いるとされるアメリカでは非常に効果的な経済支援策のひとつです。

追加対策法案2:失業保険上乗せ延長

非常事態宣言後、アメリカでは失業保険の充実が図られています。具体的には、全米平均で週370ドル(約39,000円)の失業保険に対して、7月末までを期限に週600ドルが上乗せされています。つまり、失業保険受給者は毎月3,880ドル程度(約410,000円)の失業保険を受けている計算です。

今回の追加対策法案では上乗せ分の600ドルを200ドルに減額して、10月上旬まで支給し続けることが組み込まれています。仮に、この法案が成立すると平均して毎月2,280ドル程度(約240,000円)の計算です。

観光やレストランなどの接客業で働いている人にとっては有効とされていますが、正規に働くよりも失業保険を受給した方が収入が良いという矛盾を生んでいることも確かです。

3月以降、一時4,000万人以上が失業保険を申請したという背景にはこの支援策が影響しています。

追加対策法案3:PPPの延長

今回の追加対策法案には「PPP制度」の延長が含まれています。PPPとは、従業員500人以下の企業が8週間にわたって雇用を維持した場合、給与や賃料、健康保険、光熱費などの諸経費2.5ヶ月分、最大1,000万ドル(約11億円)までを政府が肩代わりしてくれるというものです。

名目上は融資ですが、雇用を維持すれば返済が免除されるため実質的な給付金と言えます。中小企業の多くはこのPPPを活用しており、コロナ禍においても営業を続けられているレストランなどは、高い確率でPPPの恩恵を受けています。

これまでは「従業員500名以下の中業企業」が対象でしたが、追加対策法案によると「売上高が5割以上減少した企業」が対象になるとされています。対照的に、雇用を増やした企業に対しては税額控除の優遇を与えるとしています。

PPPは8月7日に最終申し込み期限を迎えますが、人口が多いカリフォルニア州などで感染拡大の影響を受けている企業が多いことから、当面は延長すると見られます。

アメリカ市場の反応

今回の追加対策法案の発表を受けて、アメリカの市場は過敏な反応を見せています。この反応だけを見ると、追加対策法案がアメリカ経済にとって決してプラスになるとは言えないようです。

円相場104円代に突入

円相場が円高に進みつつあります。28日のニューヨーク市場では一時1ドル=104円96銭を記録しました。相場が動いた背景には、アメリカと中国の領事館閉鎖を巡る対立の他に、今回の追加対策法案が予想よりも小規模で限定的な効果しかないと判断されたことがあります。

6月以降、急速に感染拡大が進んでいるのがカリフォルニア州、テキサス州、フロリダ州といったアメリカの中でも人口が多い州で、なおかつ経済に影響を持つ州だけあって、市場にも影響が及んでいると見られます。

また、共和党が示した追加対策法案に民主党が納得せず、議会での衝突が避けられないことも懸念材料とされています。

これまで、新型コロナウイルスに対する支援政策発表後の市場は好感する傾向でしたが、今回ばかりは今までとは逆の反応を見せていることから、アメリカ経済の先行きの暗さを感じさせています。

消費者信頼感指数の下落

アメリカの民間調査機関Conference Board(コンファレンス・ボード)によると、7月の消費者信頼感指数が市場予想(96.0)を下回る92.6を記録しました。

消費者信頼感指数(Conference Board Consumer Confidence Index)とは、毎月5,000世帯を対象にしており、現在の景気や雇用情勢、6ヶ月後の景気や雇用情勢、所得の見通しなどの項目を調査しています。

1985年を100としているため、7月の92.6はアメリカ経済がマイナス方向に位置していることを示しています。コロナ禍以前の2020年1月には130ほどあったことから、現状の深刻さが分かります。

今回の調査では、感染者数が多いカリフォルニア州、テキサス州、フロリダ州での落ち込みが大きいとされています。カリフォルニア州ではレストランや小売店の屋内営業が制限されているため、数値に影響していると考えられます。

同機関は、先行きの不透明感は景気回復や個人消費にとって悪い兆候としており、今回の追加対策法案が回復のための刺激になるか注目されます。

今後の展開

今回の追加対策法案が8月中に成立するかどうかが注目点です。共和党の法案と、より多い予算を要求している民主党にはズレがあることから、議会での調整は難航すると見られます。

しかしながら、7月31日には失業保険の上乗せ支給が期限を迎え、8月7日にはPPPの申し込みが締め切られることから、両党には時間が残されていません。

民主党からすれば、結論を先延ばしにすると政党へのイメージが悪化する可能性があることから、どこで妥協するかがポイントになるでしょう。

3月以降、危ういアメリカ経済を下支えしてきた緊急政策が延長されるか否か、目が離せません。また、日本政府がアメリカの動向を参考にする可能性は高く、日本も似たような流れを辿るかもしれません。

まとめ

以上、「アメリカ政府による新型コロナウイルス追加対策法案」でした。

今回発表された追加対策法案は、あくまでも議会で民主党の合意を得ることで成立するため、実効性については不透明な部分があります。

なかでも、失業保険については、民主党は現状の週600ドル上乗せを維持することを要求しており、具体的な部分で対立しています。

大統領選への影響を考慮しつつ、スピードを優先したい共和党と、政府による援助を手厚くすることで存在感を強めたい民主党による協議がどのように決着するか注目です。

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参考資料サイト

THE CONFERENCE BOARD(コンファレンス・ボード)
https://www.conference-board.org/data/consumerconfidence.cfm

本記事は、2020年8月11日時点調査または公開された情報です。
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