オーストラリアの治安状況 世界平和度数13位の国について

本記事では、オーストラリアのセーフティ&セキュリティ事情についてご紹介します。

世界中で犯罪が多様化している昨今、日本と緊密な関係を築いている南半球の国・オーストラリアではどのような犯罪が起き、またそこで暮らす人々はどのような防犯対策を心がけているのでしょうか。

はじめに

オーストラリアは「比較的治安の良い国」という印象をお持ちの方が多いのではないでしょうか。

世界で最も権威ある国際政治・経済・社会動向の最新情報を分析・解説する、イギリスのニュース週刊誌「エコノミスト(The Economist)」は、毎年24項目にわたって144カ国を対象に、各国や地域の平和度を相対的に数値化する「世界平和度指数(Global Peace Index-GPI)」を発表しています。

この調査によると、全体評価では日本は第9位、オーストラリアは第13位にランクインしています。

また、個別項目においての国別順位も記されており、2020年の「社会の安全とセキュリティ(Societal Safety and Security)という項目において、日本はアイスランド、シンガポールに続いて第3位に、オーストラリアは11位にランクインしており、日本もオーストラリアも、それぞれ「安全に暮らせる国」であると、とらえられていることが伺えます。

しかし、日本政府は「外務省海外安全情報」では、オーストラリアの治安について、次のように注意を促しています。

「オーストラリアは日本と比較すると一般犯罪が非常に多く発生しており、慎重な行動が求められる」

日本政府のいう「一般犯罪」とは、どのような犯罪を指すのでしょうか。オーストラリアではどのような犯罪が起こり、そしてそこで暮らす人々はどのような防犯対策を講じているのでしょうか。犯罪の様子が伺い知れるさまざまなデーターから状況を読み解きます。

オーストラリアの最近の犯罪の傾向

「オーストラリア統計局(Australian Bureau of Statistics)」が2019年に集計したデーターによると、最近発生する犯罪では次のような特徴が浮かび上がったといいます。

・4年連続で強盗発生件数が上昇している
・車両盗難発生件数が過去7年間で最多
・殺人と性犯罪の発生件数の3割はドメスティックバイオレンス(DV)によるもの

以上の犯罪についてのそれぞれの傾向と政府やNPOなどが推奨する防犯対策をご紹介します。

オーストラリアの犯罪:強盗と違法ドラッグ

オーストラリア国内での強盗の発生件数は、前年に比べて16%上昇したことが伝えられています。

強盗は主に都市部で発生し、ナイフ等の鋭利な刃物を凶器として用いるケースが多いとされています。

オーストラリアでは銃器の所持については法律で厳しく取り締まられているため、ピストルやライフルなどを使用した犯罪は、今のところ少ないと言えます。強盗の発生件数増加について、警察は「ヘロイン」や「アイス」といった違法薬物の使用者増加に起因するところが大きいとの見解を示しています。

「アイス」は2007年頃からオーストラリアでの使用者が急増しており、特に青少年の間で「パーティードラッグ」として広がっているという現状です。オーストラリアでは違法薬物の所持・使用・製造・栽培・販売の全てが違法行為です。

違反すれば罰金や懲役に服するなどの厳しい刑罰が課せられるのにも関わらず、街頭での薬物を売買する人の姿は、珍しい光景ではありません。薬物使用の低年齢化に警鐘を鳴らすために、地域によっては中学校・高校などに心理カウンセラー等、外部の専門家を招いて薬物の危険を訴える、セミナーのようなものを企画する学校も多数あります。

しかしながら、首都キャンベラのあるオーストラリア特別地域(Australian Capital Territory-ACT)では、2019年からマリワナの使用が合法化されており、18歳以上のACT居住者であれば上限50gまでの所持と、一人2鉢もしくは一家で4鉢までの栽培が合法になりました。

これによってアフター5にワインを飲む感覚でマリワナを吸引する若者が増えているといい、残念ながら合法化されたことで18歳に満たない青年達の薬物使用も顕著に見られるようになったと懸念する声があがっています。

オーストラリアの犯罪:車両盗難

車両の盗難については前年比で9%の上昇が報告されており、オーストラリアでは10分に1台の割合で、車両盗難犯罪が発生すると言われています。

車やバイクの盗難の多くは、発生件数の半分は自宅の車庫または敷地内から盗まれているといいます。オーストラリアの保険会社「バジェット・ダイレクト(Budget Direct)」が発表した2020年の統計によると、より性能の良いセキュリティシステムを搭載した新しいモデルの車より、セキュリティの甘い10年以上前のモデルがターゲットになる場合が多いことがわかったとしています。

強盗目的で住宅や店舗などに不法侵入をして、金品と共に車両の鍵を盗んで逃走するというケースが多く、犯人は逃走後に盗難車両を乗り捨てることから、事件発生から割とすぐに車両は発見されることが多いとされます。防犯対策としては、車庫、そして車自体の施錠を忘れないこと、鍵は人目につかないところに置くこと、などの対策方法を警察が推奨しています。

また、オーストラリアでは車上荒らしも非常に多く、「駐車料金用に車に小銭を置いておいたがために車のガラスを割られた」という話もよく耳にします。車内に物を置かないこと、夜間はなるべく人気のあるところに駐車すること、そして車両盗難の防犯対策と同様に忘れずに施錠することなど、細心の注意を払うことが求められます。

オーストラリアの犯罪:DV

DVによる殺人・殺人未遂の発生件数は、2018年と比べて11%減少したにも関わらず、殺人・殺人未遂犯罪全体の3割にも及ぶことが記されています。更に、同調査では性被害についても約3割は家庭内で発生していることがわかります。オーストラリアでのDVの問題は2013年頃から深刻な社会問題となっており、DVを取り締まる法律も整えられ、刑罰も厳しくなっています。

特に先住民族のアボリジナルのコミュニティーでは、緊密な同族関係等によって、女性や子供に対するDVが蔓延しているとされています。オーストラリアの先住民であるアボリジナルの人々・トレス海峡諸島の人々の人口は、総人口のわずか2%程度に過ぎません。

しかしながら、先住民社会に生きる女性たちが家庭内暴力によって命を落としてしまう確率は、その他のオーストラリア女性に比べて45倍にも上るといいます。24時間体制で相談に応じてくれる非営利団体・政府機関などが各州にあり、シェルターを紹介してくれる等の被害者支援も行っています。

これらの支援は、アボリジナルの人々のみならず、オーストラリア人、更にはオーストラリア国籍を持たない人からの相談も受け付けてくれる団体も数多く存在し、長年に渡って多文化主義政策を展開するオーストラリアらしさが、このようなところにも表れていると感じます。

また、オーストラリア政府は、世界各国で伝えられる新型コロナウイルスの感染拡大によるDVの被害件数急増という事態を受けて、3月にはDV対策資金として、1億5千万豪ドル(約100億円)を電話支援サービスに投入することをスピーディーに決定しました。DVに関しての対策は、残念ながら被害者自らが警察に通報するなどのアクションを起こさない限り、問題解決には至らないのが現実です。ですから今回の支援決定は、まずは被害者に声をあげてもらい、支援を促していこうという政府の姿勢が伺えます。

オーストラリアにおける日常生活での防犯対策

上述の他にも、盗難・暴行・誘拐や連れ去り・家宅侵入など、残念ながらオーストラリアで起こるさまざまな犯罪で発生件数の増加が見られます。犯罪に巻き込まれないために、オーストラリアではどのような防犯対策が推奨され、また講じられているのかをご紹介します。

オーストラリアにおける盗難対策

外出時に気をつけるべきことは、まずは携行品の管理です。盗難や置き引きなどの犯罪は、日和見的な犯罪が多く、携行品の管理を徹底することで防げる場合が多いのです。荷物から目を離さないこと、お財布などの貴重品はバッグの中でも人目に触れないようにしまうこと、など、小さな心がけで盗難リスクを回避することが大切です。

キャッシュレス化が進むとともに、クレジットカードやATMカードと、その暗証番号の取り扱いについても、これまで以上に管理を徹底することを、金融機関等が再三に渡って呼びかけています。

オーストラリアにおける暴行対策

暴行事件はバーやパブなど、飲酒が犯罪の引き金になっている場合が多いのは、世界中で見られる傾向です。

オーストラリアは成人とみなされる18歳から法律で飲酒が認められています。しかしながら、オーストラリア健康福祉研究所(Australian Institute of Health and Welfare)が発表した「アルコール・タバコ・薬物の使用に関する統計」によると、調査対象が14歳以上になっていることに驚かされます。オーストラリアでは「ボトルショップ(Bottle Shop)」と呼ばれる酒類販売店等や大手スーパーなど、ライセンスを保有する店のみが、アルコール類を販売できます。また酒類を販売できる時間が明確に定められていることや、入店の際に身分証明書の提示を求めることなど、酒に関するさまざまな問題を未然に防ぐ環境づくりに、政府が中心となって真剣に取り組んでいるという印象を受けます。

オーストラリアではドリンクへの薬物混入から発生する、性被害や盗難時間も多く、アルコールに限らず、外出先での飲み物の取り扱いには十分な注意が必要です。他人から勧められた飲み物には口をつけない、自分の飲み物から目を離さない、そして節度をわきまえて飲酒すること、などを警察が呼びかけています。

オーストラリアにおける誘拐と連れ去り対策

オーストラリアで発生する子供の失踪事件は、年間で2万件にも及ぶと言われています。日本では小学低学年から一人で、もしくは友達と登下校をするのが当たり前で、親と一緒に登下校をする子どもは、あまり目にしないのではないでしょうか。

オーストラリアでは、親もしくはそれに変わる成人が送迎するのが一般的で、子どもが小さい時は、どちらかの親が子どもの就学時間のみ勤務するという家族も多く、日本との大きな違いに驚かされます。法で規制されているわけではないものの、中学生未満の子どもたちが成人不在で自宅にいるということを良しとしない家庭も多く、放課後は構内に併設された学童保育に行ったり、またベビーシッターに送迎と放課後の子守を委託するという家庭も多いようです。

それでも、子どもたちには、知らない人とは話をしないように、車道の近くを歩かないように、といった指導を徹底し、防犯に努めています。公園やショッピングセンターなどでの一瞬のすきを突いた連れ去りなどにも、十分注意するよう、学校や警察などが定期的に注意を呼びかけています。

オーストラリアにおける家宅侵入対策

住居への不法侵入の発生率は、オーストラリアの保険会社「バジェット・ダイレクト(Budget Direct)」の報告によると、オーストラリアは世界のワースト5にランクインしているそうです。この報告は2018年~2019年の調査を元に作成されており、調査世帯の2.4%が家宅侵入の被害にあったと伝え、そのうちの73%は盗難、また49%は器物破損の被害にあっていることがわかります。同調査では収監中の犯人たちから犯行の動機や方法などについても調査を行い、その結果を統計としてまとめています。

犯人たちは、郵便箱、家屋の明かり、駐車スペースの利用状況などで不在を確認した上で反抗に及ぶ場合が多く、玄関や窓が施錠されていない家、防犯対策が甘い家(セキュリティシステムが導入されていない等)、裏庭に侵入しやすい家、そして外にスペアキーを隠している家などをターゲットにしていると回答していることがわかります。ですから、外出する際には、玄関や窓の施錠はもちろん、カーテンを引く等、家の中が見えないようにすることが大切な防犯対策の一つです。

また家にいる時でも「自分の身は自分で守るとばかりに」常に施錠しているというオーストラリア人も少なくありません。見ず知らずの人が押し入ったりしないように、玄関のドアは内側に開くように取り付けられている家がほとんどです。

また、二重ドアを設置している家も多く、防犯に対する意識の高さが伺えます。二重ドアとは、一般的な玄関のドアに「スクリーン・ドア(Screen door)」と呼ばれる網戸の上に鉄格子を取り付けたようなドアをもう一枚重ねるのが一般的です。ドアは開けっ放しでも、このスクリーン・ドアに施錠をしておけば、安全に家の中の換気もできる優秀なドアを付けることで、防犯率が格段に上がると言われています。

治安の悪い地域や大通りに面したところにある住宅などでは、家宅侵入の防犯対策として、窓に鉄の格子を設置している住宅も多く見受けられます。

家宅侵入では、違法薬物の常習者が現金欲しさに犯罪を犯すことも多く、金品を奪われることはもとより、自宅に使用済みの注射針が放置されていたり、トイレや寝室を使った形跡があったりと、家で犯人が何をしていたかわからないのが不気味であり、恐怖だという被害者も多いというのも納得できます。特にクリスマス等のホリデーシーズンには、毎年犯罪が多発することから、ホリデーで不在の間、ハウスシッターを雇うという家族も多いようです。

オーストラリアにおける集団による犯罪対策

オーストラリアでは「ギャング(Gang)」による犯罪も多く、違法薬物や銃などの売買やグループ間の抗争による暴行・殺人事件などの犯罪がニュース等で報じられます。

犯罪集団は「ギャング(Gang)」と呼ばれ、バイクに乗った「バイキー・ギャング(Bikie Gang)」をはじめ、民族や文化の繋りで結成されたギャングなど、多数の犯罪集団の存在が報告されています。1980年代はアジア系ギャング、90年代後半からは中東系ギャング、そして現在はアフリカ系ギャングの犯罪がクローズアップされています。

また若者が徒党を組んで犯罪に手を染めるユースギャングの台頭も懸念されていて、時折報道される彼らの非道な犯罪に、彼らがまだ未成年であることを忘れてしまいそうになります。ギャング同士の抗争には、銃やナイフなどの凶器が用いられることが多く、とにかく危険な場所には近寄らない、夜遅くに出歩かないなど、事件に巻き込まれないように十分注意する必要があります。

まとめ

以上、「セーフティー&セキュリティ in オーストラリア」でした。

世界中で犯罪が多様化する中、オーストラリアでも詐欺・ネット犯罪なども多発しています。どこにいても、常日頃から周りで何が起きているのかを正確に把握する努力をして、適切で十分な安全対策を心がけることが大切です。

参考資料サイト

Australian Bureau of Statistics|Recorded Crime – Victims, Australia
https://www.abs.gov.au/statistics/people/crime-and-justice/recorded-crime-victims-australia/latest-release#victims-of-crime-australia

Budget Direct Insurance|Home Burglary in Australia Statistics 2020
https://www.budgetdirect.com.au/home-contents-insurance/research/home-burglary-statistics.html

Alcohol, tobacco and other drugs in Australia: Alcohol
https://www.aihw.gov.au/getmedia/87a84d82-d29c-4476-a17b-72663a7cd688/aihw-phe-221-infographic-alcohol_September-2020.pdf.aspx

本記事は、2020年11月27日時点調査または公開された情報です。
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