アメリカ大統領選(2020年11月3日)に対する主要国の反応まとめ

2020年11月3日に行われたアメリカの大統領選は民主党のバイデン氏の勝利宣言によって決着したものの、共和党のトランプ陣営は裁判や政権移行手続きの遅延戦略によって抵抗を続けています。

本記事では、このような状況のアメリカに対して、主要国がどのような反応をしたのか、アメリカ在住の日本人にレポートいただきました。

はじめに

アメリカの大統領選挙はいったん民主党のバイデン氏の勝利宣言によって決着しましたが、共和党のトランプ陣営は未だ敗北宣言をしていません。

このような不安定な状況にあるなか、アメリカの同盟国首脳陣は続々とバイデン氏に祝意を伝えており、各国における今後のアメリカとの関係性を意識した姿が透けて見えつつあります。

一方で、バイデン氏の当選を歓迎していないと見られる国もあり、アメリカ大統領選に対する各国の反応を知ることで、それぞれの国がアメリカにどのような立場を取っているかがよく分かります。

そこで今回は、主要各国がアメリカ大統領選の結果にどのように反応しているのかをまとめてご紹介します。

アメリカの大統領選挙に対するG7の反応

はじめに、アメリカとの関係が深い「G7」の反応を見てみましょう。

イギリス・ジョンソン首相の反応

「アメリカはイギリスにとって歴史上最も重要な同盟国で、今後もその関係性は変わらない。共通の優先事項について協力することを楽しみにしている」とコメントしました。

ジョンソン首相の言う「共通の優先事項」とは、地球温暖化対策を指しています。「バイデン氏がリーダーになれば気候変動問題に取り組むリーダシップを発揮するだろう」と付け加えました。気候変動問題については、バイデン氏も選挙公約に盛り込んでいることから、両国の指針は合致しています。

一方で、ジョンソン首相は「親トランプ派」として知られており、トランプ政権とは真逆の政策をとるバイデン政権と経済や人権問題などにおいて良好な関係が築けるかは不透明です。

ドイツ・メルケル首相の反応

バイデン氏の勝利宣言を受けてメルケル首相はツイッター上で「バイデン氏と一緒に働けることを楽しみにしている。いまの大きな試練を乗り越える時、私たちの友情はかけがえのないものになるでしょう」と投稿し、両国の協力関係を強調しました。

メルケル首相は「反トランプ派」として知られており、ドイツはヨーロッパ諸国のなかで最もトランプ政権に対する信頼が低い国とされています。

メルケル首相は、2016年にトランプ大統領が勝利した際、皮肉を込めた祝辞を送った背景があることから、バイデン氏の勝利によって安堵しているようにも見えます。皮肉なメッセージとは「人種や宗教、性的指向などの全ての尊厳を守ることで両国は共通している。これらの価値を(トランプ氏が)尊重するならば、緊密な関係を築く準備があります」でした。

フランス・マクロン大統領の反応

マクロン大統領はツイッターに「アメリカ国民が彼ら(バイデン氏とハリス氏)を選んだ。いまある課題を乗り越えるためにやるべきことはたくさんある。ともに協力しよう」と投稿しました。

マクロン大統領とトランプ大統領は、内戦状態にあるリビア停戦合意に向けた調整を続けていますが、事あるごとに両者を批判する関係でもあります。例えば、パリ協定から離脱を表明したトランプ大統領に対してマクロン大統領が考えを見直すよう説得する一方、トランプ大統領はマクロン大統領を「マクロン首相」と呼んだりと、決して良好とは言えない関係です。

フランスでは移民や人種を巡る問題が続いていることから、多様性を重視するバイデン氏と歩みを合わせたいところでしょう。

イタリア・コンテ首相の反応

コンテ首相は自身のツイッター上に「異例とも言える高い投票率によって民主主義の力を示したアメリカ国民と政治制度を祝福する。私たちは次期大統領のバイデン氏に協力する準備はできている」と投稿し、協力体制を強調しました。

イタリアは中国が計画する「一帯一路構想(アジアとヨーロッパを陸と海で結ぶ現代版シルクロード経済ベルト)」の覚書にG7の中で最初に署名した国であることから、対中政策を強めるトランプ政権からすれば「足並みを乱す存在」とされてきました。

一方で、バイデン氏が大統領になったことでアメリカの怒りを買う心配が減ったことも事実で、今後はイタリアとアメリカ両国の関係は建設的に進むと見られます。

カナダ・トルドー首相の反応

トルドー首相はツイッターで「バイデン、ハリス、おめでとう。両国は親しい友人、パートナー、そして同盟国です。特有の関係を共有しており、両氏と一緒に働くことを楽しみにしています」と投稿しました。

トルドー首相は、勝利宣言から2日後の11月9日にバイデン氏と電話会談を実施し、新型コロナウイルス対策、経済活性化、北大西洋条約機構(NATO)の強化、気候変動、そして人種差別問題について意見交換したと見られます。

バイデン氏にとって実質的な「初の外交」となったトルドー首相は反トランプ派として知られています。2019年のNATO首脳会談上で、フランスのマクロン大統領やオランダのルッテ首相らと、トランプ大統領の陰口を言っていたことが話題になりました。これ以降、トランプ大統領はトルドー首相を「裏表があるやつだ」と批判する関係です。

日本・菅首相の反応

菅首相は11月7日、ツイッターに「バイデン氏とハリス氏に心よりお祝い申し上げます。日米同盟をさらに強固なものとするために、また、インド太平洋地域及び世界の平和、自由及び繁栄を確保するために、ともに取り組んでいくことを楽しみにしております」と投稿しました。
また、12日にはカナダ、イギリス、ドイツに次いで電話会談を実施し、日米同盟の強化、新型コロナウイルス対策、気候変動問題、北朝鮮による拉致問題、そして尖閣諸島における日米安全保障条約第5条(アメリカによる防衛義務)の適用について意見交換しました。

菅首相は政権の最優先課題として「拉致問題」を取り上げ、バイデン氏と連携を図る構えです。また、菅首相がアメリカを訪問することについても話し合いがされました。

拉致問題を進展させたい日本政府としては、北朝鮮に強気なトランプ大統領の力添えが不可欠です。一方で、日中関係を悪化させたくない「(アメリカと中国の)板挾み状態」であったことから、バイデン氏の当選は複雑な心境と言えるでしょう。

アメリカの大統領選挙に対するその他の国の反応

他にも各国が反応を見せています。

中国の反応

13日、外務省の汪文斌副報道局長はバイデン氏とハリス氏に対して祝辞を述べました。また、大統領選の結果を巡っては「アメリカ国内と世界の反応を注視していた」と付け加え、決着がつかない状況を憂慮していたことを強調しています。

習近平国家主席からの祝辞は発表されていないため、中国政府がバイデン氏の当選を歓迎しているかは定かではありません。トランプ政権は中国に対して強硬な姿勢をとっていたことから、中国政府はあえて祝辞を遅らせることでアメリカを牽制した可能性があります。

一方で、バイデン氏が日本の菅首相と「尖閣諸島問題」について意見交換したことに触れ、尖閣諸島は中国の領土と主張し、アメリカと日本に釘をさす事態になりました。中国、アメリカ、そして日本の3カ国の関係はアメリカに大きく依存していると言えます。

韓国の反応

韓国の文大統領は12日、バイデン氏と電話会談を実施し、新型コロナウイルスや世界経済、気候変動、インド太平洋問題について両国が協力することで合意しました。

文大統領は会談のなかで「朝鮮半島における非核化と恒久的な平和」について、両国が意思疎通を図ることを望んだとされ、北朝鮮を巡る問題で米韓の連携を強調しています。

韓国としては北朝鮮に対する姿勢でアメリカと歩みを合わせたいところでしょう。一方、トランプ政権で自由貿易協定(FTA)の改定を強いられてきた韓国としては、穏健派のバイデン氏が当選したことで安堵している印象を受けます。

イランの反応

アメリカと敵対関係にあるイランのロウハニ大統領は「過去の過ちを償って国際的な約束を果たすべきだ」とトランプ政権を批判したうえで、関係改善に向けてバイデン氏に期待を寄せています。

最高指導者ハメネイ師は「確かなことはアメリカは政治的にも道徳的にも衰退していることだ」と述べ、アメリカを強く批判しました。駐英大使は「憎しみを撒き散らすだけの男の時代が終わった」とし、トランプ大統領を批判しています。

バイデン氏は、トランプ政権のイラン政策は誤りとしたうえで「イランの核兵器入手阻止」、「イラン核合意(核開発中止と引き換えに金融や原油取引制限の緩和)への復帰」、そして「イスラム諸国市民の入国禁止措置緩和」を挙げており、関係改善に繋がるかが焦点です。

イスラエルの反応

ネタニヤフ首相はツイッター上で「バイデン氏、ハリス氏おめでとう。バイデン氏は40年以上関係がある偉大な友人だ。アメリカとイスラエルが特別な同盟関係を強化できることが楽しみだ」としました。

同時に、トランプ大統領への感謝も述べています。「(トランプ大統領が)私やイスラエルに対して特別な友情を示してくれたこと、歴史的な国交正常化(イスラエル、UAE、バーレーン)を実現したこと、そしてかつてないほど同盟関係を高めてくれたことに感謝する」とコメントしました。

バイデン氏は、アメリカとパレスチナの関係修復に取り組むとしていますが、中東諸国と協力的な関係を築けるかが焦点です。中東諸国問題を改善するためにも、トランプ政権で築いたイスラエルとの協力関係を引き継ぐことがポイントと言えます。

キューバの反応

バイデン氏が副大統領だったオバマ政権で国交を回復したキューバのディアスカネル大統領は「アメリカ国民が新しい方向性を示したと認識している」とコメントし、トランプ政権で再び規制された両国の関係が改善することに期待を寄せています。

トランプ大統領はオバマ政権によるキューバ外交を徹底して批判してきたことから、両国の関係は決して良いとは言えません。バイデン氏としては、オバマ氏による「政治的遺産(キューバとの国交回復)」を確固たるものにする必要があるでしょう。

アメリカの大統領選挙に対して反応していない国

各国首脳が反応を示す一方で、ロシアとブラジルはいまだに反応を示していません。

ロシアの反応

プーチン大統領はバイデン氏の当選に対して沈黙を続けています。バイデン氏は過去に「ロシアは最大の脅威」と発言した経緯もあり、ロシア国内ではアメリカの次期政権がロシアに圧力をかけると警戒感が強まっています。

ロシアのスルツキー下院外交委員長は「バイデン氏の当選を喜ぶロシア関係者はいない」とし、オバマ・バイデン両氏が過去にロシアに強硬姿勢をとってきたことにも触れています。

一方で、バイデン政権では対話による核軍縮協議が進展する可能性もあることから、一部では期待の声が上がっています。まずは、2021年2月に開催されるアメリカとロシアによる「新戦略兵器削減条約」が焦点です。

ブラジルの反応

ボルソナーロ大統領は、同じ南米のチリやアルゼンチンの首相らが祝辞を送ったのとは対照的に沈黙を続けています。「親トランプ派」として知られる同氏は、投票日翌日の時点で「(トランプ大統領の)再選を信じている」と明言しています。

バイデン氏はアマゾンで発生した大規模火災を軽視しているボルソナーロ大統領を批判しており、これに対してボルソナーロ大統領は「内政干渉」とやりかえしています。バイデン氏は、トランプ大統領のような強硬姿勢で知られるボルソナーロ大統領との関係構築に苦心する可能性があります。

まとめ

以上、「アメリカ大統領選に対する主要国の反応まとめ」でした。

ご紹介したように「G7」をはじめとする同盟国はバイデン氏の当選を歓迎しています。中国や韓国、中東諸国は概ね歓迎しているものの、バイデン政権との関係構築が課題です。

沈黙を続けるロシアとブラジルは、バイデン政権の外交で懸念材料になることは間違いなく、バイデン・ハリス両氏を歓迎していないことがよく分かります。バイデン氏に対する各国の対応は、次期政権との関係性を象徴しているので覚えておきましょう。

本記事は、2020年11月17日時点調査または公開された情報です。
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