トランプ元大統領に無罪評決!弾劾裁判のまとめ

本記事では、トランプ元大統領の無罪が確定した、アメリカ上院議会は議事堂占拠事件を巡る弾劾裁判について、アメリカ在住の日本人にレポートいただきました。


はじめに

2021年2月13日、アメリカ上院議会は議事堂占拠事件を巡るトランプ元大統領の弾劾裁判で無罪評決を下しました。

トランプ氏は史上初となる2回も弾劾訴追を受けた大統領として不名誉な称号を手にしていましたが、大統領職を退いた公人に対して弾劾裁判を実施することの合憲性や、公職復帰を阻止する狙いを持った民主党の動きが焦点でした。

一方、新型コロナウイルス対策や経済再生政策を進めたいバイデン政権にとって、議会が中断する弾劾裁判は「出来れば早く済ませたいこと」であったのも事実です。

様々な思惑があった今回の弾劾裁判ですが、無罪評決の裏で明らかになったことや、今後はどんな影響が生じるのかなどを解説します。

トランプ元大統領の弾劾裁判の結果を巡る動きについて

はじめに、今回の弾劾裁判の結果を巡る動きについて見てみましょう。

喜べない共和党

今回の弾劾裁判では100名の上院議員(民主党50・共和党50)によって有罪か無罪かが問われ、結果は有罪票57、無罪票43票となり、有罪が成立するのに必要な3分の2に届かず結審しました。

一方、共和党内からは7名の造反議員が出ています。1月26日に実施された上院本会議の弾劾裁判の違憲性を巡る投票時から2名増えた計算です。つまり、共和党内にも「反トランプ派」がいることが明確になりました。

共和党トップのマコネル氏は評決後の本議会の場で「トランプ元大統領には実質的にも道徳的にも責任がある」と述べています。同氏は無罪票を投じていますが、この理由は「弾劾裁判が違憲と判断したため」であり、トランプ氏を擁護した訳ではないとしています。

このような共和党内での動きからは「党内の分裂」が浮き彫りになり、トランプ氏が去った後の共和党のまとまりのなさを象徴しています。事実、党が一致団結して無罪評決を目指した2020年のウクライナ疑惑を巡る弾劾裁判とは明らかに異なる様相です。

民主党の目的達成ならず

今回の弾劾裁判は、トランプ氏が2021年1月6日にワシントンD.C.で起きた議事堂襲撃事件を扇動したことに対する責任を追及するものでした。

民主党はトランプ大統領が「闘え!」などという言葉を用いて支持者を扇動し、その結果一部の支持者が暴徒化し、議会占拠事件につながったと主張していました。


裁判の冒頭では民主党を代表するジェイミー・ラスキン下院議員が、議事堂襲撃事件の詳細を収めた14分間にわたる動画(過激な内容を含み、年齢承認のためログインが必要)を公開しました。

YOUTUBE|ジェイミー・ラスキン下院議員が、議事堂襲撃事件の詳細を収めた動画

https://www.youtube.com/watch?v=ivVOPWrFfW4

同氏は「これが弾劾に相応しくないのなら、弾劾に相当する罪は存在しない」と、上院議員らにトランプ氏の有罪を訴えましたが、映像は執拗にトランプ氏を悪者に仕立て上げるような編集になっていたことは否めません。

民主党としては弾劾裁判でトランプ氏を有罪に出来れば、2024年の大統領選における公職復帰を阻止することが可能でした。議事堂占拠事件の責任追及よりもトランプ氏の公職復帰阻止が本当の狙いとされていましたが、結果は無罪となったため、民主党の本当の狙いは達成できずに終わった訳です。

言い換えれば、トランプ氏は2024年の大統領選に再出馬できる道が残されたとなります。

異例ずくめのトランプ元大統領の弾劾裁判

今回の弾劾裁判は異例ずくめのものでした。とくに注目されるべき点が「スピード結審」です。実質的な裁判期間はわずか5日間であり、これまでの弾劾裁判と比べて極端に短い期間で結審しています。

例えば、トランプ氏1回目のウクライナ疑惑を巡る弾劾裁判では冒頭陳述だけで6日間を要し、結審まで3週間もかかりました。また、1999年のクリントン氏に対する弾劾裁判は5週間も要したことから、今回のケースが異様なまでに短期間だったことが分かります。

この背景には「民主党の上院議員らがバイデン大統領の政策推進を優先した」ことが指摘されており、すでに公人であるトランプ氏を追及するよりも喫緊の重要政策を進めるべきと判断したと見られます。

また、コロナ対策や経済政策などで結果を残す必要があるバイデン政権が、いまだに「トランプ叩き」に躍起になっていることは民主党のイメージダウンにもつながりかねない事情もあります。

事実、弾劾裁判が始まった2月9日、バイデン大統領は「コロナ対策と経済政策に集中する」と述べ、弾劾裁判については触れませんでした。

今回のスピード結審からは「トランプ氏を政界から追放する」ことを狙った民主党議員と「政策推進を優先する」民主党議員らで足並みが揃っていなかったことが浮き彫りになったと言えるでしょう。

トランプ元大統領の弾劾裁判に対するメディアの報じ方

アメリカのメディアは今回の弾劾裁判をどのように伝えたのでしょうか?

NBCニュースの報じ方

リベラル派メディアとして知られるNBCニュースは、今回の弾劾裁判の結果を受け「最も直接的な効果は2024年の大統領選にトランプ氏が立候補できる扉を開けたままにしたこと」と報じました。

また、立候補しなくとも「キングメーカーになる」と述べており、同氏の存在感が大きいことを認めています。記事内では具体的には言及していないものの、弾劾裁判において徹底してトランプ氏を糾弾しなかった民主党の姿勢を疑問視しているようにも受け取れます。

▼参考URL:NBCニュース|Key takeaways: With acquittal, Trump wins battle for the Republican soul
https://www.nbcnews.com/politics/donald-trump/key-takeaways-acquittal-trump-wins-battle-republican-soul-n1257879


CNNの報じ方

民主党寄りのメディアであるCNNは、造反議員の存在や、発言と行動に一貫性がないマコネル氏について強調した報道をしています。

弾劾裁判の結果よりも「共和党の足並みの乱れ」に焦点を当てることで、党内結束の脆さを明らかにさせる狙いと見られます。また、造反議員全7名を紹介し、共和党内部の分裂を強調しています。

▼参考URL:CNN|Donald Trump acquitted in second impeachment trial
https://edition.cnn.com/politics/live-news/trump-impeachment-trial-02-13-2021/

FOXニュースの報じ方

共和党寄りメディアとして知られるFOXニュースは、弾劾裁判が違憲と主張する議員の声を多く紹介する一方、造反議員のひとりであるミット・ロムニー氏が民主党に同調したことに触れています。

また、今回の弾劾裁判を「政治的な魔女狩り」と称したうえで「トランプ氏とその支持者らを沈黙させようとしている」と批判しました。「トランプ氏に投票した7,500万人の有権者を無効化し、政治的な意見を犯罪化している」と述べています。

▼参考URL:FOXニュース|Trump’s impeachment defense rests after three hours: ‘There was no insurrection’
https://www.foxnews.com/politics/trumps-impeachment-defense-rest-after-three-hours-there-was-no-insurrection

低い世間の関心度

今回の弾劾裁判は主要メディアが生中継で伝えたものの、トランプ支持者らによるデモや支援運動などはなく、世間の関心が低いことをうかがわせました。

この背景には、先の上院議会で弾劾裁判を違憲とする声が多かったことや、民主党による追及姿勢が弱まっていたこと、そしてトランプ氏が無反応だったことが挙げられます。

とくに、終始トランプ氏が息を潜めていたことは意外で、盛り上がりに欠ける要素だったことは間違いありません。同氏は無罪評決が下ったことに対して「アメリカを偉大にする歴史的な運動は始まったばかりだ」とだけ述べています。

ツイッターやフェイスブックなど、発言の場を奪われたことが影響してか主役の存在感が薄く、世間の関心が少なかった印象は否めないでしょう。世間の関心の低さが民主党の弱腰な追及姿勢につながったのかもしれません。

トランプ元大統領の弾劾裁判、今後の影響

今回の弾劾裁判の結果はどんな影響を及ぼすのでしょうか?

起訴リスクが続く

トランプ氏に対する司法当局の追及が続きます。今回の弾劾裁判はあくまでも議会による裁きであり、今後は議会から司法当局へと舞台が移ります。つまり、今後は刑事捜査が本格的になることを意味します。

アメリカでは司法当局は現職大統領を起訴できません。しかし、トランプ氏は2021年1月20日をもって大統領を退いているため、刑事捜査および起訴の対象となった訳です。同氏はこれに対抗するために、大統領職を退く前に自身や家族に「恩赦」を検討していましたが、批判を浴びることを考慮して実行されずに終わりました。

同氏に対する刑事捜査の対象は以下が中心になると見られます。

・ジョージア州長官に対する選挙結果を覆すための圧力
・議事堂占拠事件の扇動
・不倫女性に対する口止料支払いの指示
・2016年大統領選におけるロシア政府介入に対する捜査妨害
・トランプ一族の脱税や不正取引疑惑 など

党派の対立が続く

今回の弾劾裁判の結果を受け、民主党のナンシー・ペロシ下院議長は共和党トップのマコネル氏を痛烈に批判しました。

弾劾訴追の仕掛け人とされ、大のトランプ嫌いとして知られるペロシ氏は、トランプ氏が大統領在任中、弾劾裁判の手続きに抵抗したマコネル氏を「哀れな人」と批判し、有罪票を投じなかった共和党員らも批判しています。

影では誰よりも弾劾裁判に積極的だったとされるペロシ氏ですが、民主党の思惑通りにいかなかったことで共和党批判に走る結果になりました。民主党は党派を超えた融和を強調しているものの、ペロシ氏の振る舞いから両党の歩み寄りは現実的ではないことが分かります。

新党結成の動き

トランプ氏を中心にした新党結成の動きが現実味を帯びてきました。新党結成を画策しているとされるトランプ氏は、2022年の中間選挙に向けて共和党を支援する確約をしていますが、今回の弾劾裁判で共和党から7名の造反者が出たことに何かしらの報復をするのではないかと言われています。


共和党トップのマコネル氏は、今回の弾劾裁判で違憲を理由に無罪票を投じただけであり、トランプ氏を擁護するつもりはない旨の発言をしており、トランプ氏の怒りを買うことは明らかです。

事実、2022年の中間選挙に向けた予備戦において、造反議員の選挙区では「親トランプ派」を擁立する動きが進んでいるとされており、造反議員に対する圧力が始まっています。

仮に、共和党内で「親トランプ」と「反トランプ」の分裂が加速すれば、トランプ氏は共和党議員を募り、新党結成を進める可能性があります。

これを現実的に思わせる証拠として、CBSが実施した世論調査の結果、70%の人が「トランプ氏が作った新党に参加する」と回答したことを公表しました。先の大統領選では7,500万人がトランプ氏を支持していることから、新党結成の勢いは追い風を受けて加速するかもしれません。

まとめ

以上、「トランプ元大統領に無罪判決!弾劾裁判のまとめ」でした。

今回の弾劾裁判は事前の予想通り無罪評決で決着し、トランプ氏の公職復帰の道が残されました。一方、司法当局による捜査は継続するため起訴の可能性も残されています。今後は司法当局による捜査がどこまで及ぶか、そして刑事事件としても無罪になるかが焦点です。

また、今回の弾劾裁判によって民主党と共和党の間には依然として相容れない深い溝があることや、共和党内でも分裂が始まっていることが明らかになりました。まとまりがないアメリカ政府という印象を覚えた人も多いことでしょう。

今後は2022年の中間選挙に向けてトランプ氏の影響力がどれほど続くか、そしてトランプ氏による新党結成の動きに注目です。

参考資料サイト

NBCニュース|Key takeaways: With acquittal, Trump wins battle for the Republican soul
https://www.nbcnews.com/politics/donald-trump/key-takeaways-acquittal-trump-wins-battle-republican-soul-n1257879

CNN|Donald Trump acquitted in second impeachment trial
https://edition.cnn.com/politics/live-news/trump-impeachment-trial-02-13-2021/

FOXニュース|Trump’s impeachment defense rests after three hours: ‘There was no insurrection’
https://www.foxnews.com/politics/trumps-impeachment-defense-rest-after-three-hours-there-was-no-insurrection

CBSが実施した世論調査の結果
https://www.cbsnews.com/news/impeachment-trial-trump-conviction-opinion-poll/

本記事は、2021年2月19日時点調査または公開された情報です。
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