2021年1月6日、ワシントンD.C.で何が起きたのか?

2021年1月6日、トランプ氏の支持者がワシントンD.C.にある連邦議会議事堂を襲撃し、4名が死亡するという衝撃的な事件が起きました。

本記事では、連邦議会議事堂襲撃事件に関して、アメリカ在住の日本人にレポートいただきました。

はじめに

2021年1月6日、アメリカのワシントンD.C.にある連邦議会議事堂は、トランプ大統領の支持者ら(諸説あり)によって3時間近く占拠されました。また、この際に起きた衝突で4名が死亡する事態になったと報道されています。

アメリカの民主主義を象徴する議事堂が占拠され、議会に支障をきたしたことは1814年の米英戦争時以来初のことで、近代アメリカ史のなかで最悪の1日と報じられています。そして、アメリカ史に永遠に刻まれる1日になりました。

なぜ連邦議会議事堂は占拠され、占拠した人たちはいったい何を目的にしていたのでしょうか?大統領選を巡る一連の混乱の中で「最悪の事態」はどのようにして起きたのか掘り下げます。

「連邦議会議事堂襲撃」という騒動の概要について

まずは、今回起きた騒動の概要についてご紹介します。

大規模抗議デモについて

今回起きた騒動は、大統領選における不正選挙を訴える人たちがワシントンD.C.に集まって大規模抗議デモを起こしたことが発端です。

集結した人たちの多くはトランプ大統領の支持者で、民主党主導で不正選挙が行われた、反トランプ勢力による選挙妨害があったことを信じています。集まった人数は数万人規模とされており、当日の現地は夜間外出禁止令が発令されるほどの厳戒態勢が敷かれていました。

筆者が暮らすアリゾナ州からもワシントンD.C.に出向いた人がおり、まさに全米からトランプ支持者が集結したと言えます。集結した人のなかには、過激派グループの「プラウド・ボーイズ(Proud Boys)」をはじめ、反トランプ派の「アンティファ(Antifa)」などが混ざっており、参加者同士による衝突も懸念されていました。

今回の抗議デモはトランプ大統領が呼びかけています。2020年12月19日、トランプ大統領は自身のツイッター上に「1月6日はワシントンD.C.で大きなデモだ!集まってくれ、きっとワイルドなものになる」と投稿しており、この呼びかけが支持者らの間で拡散されたのです。

デモの目的について

今回のデモの目的は「大統領選の不正に抗議する」ことです。1月6日時点で法的に選挙結果を覆す術はなかったため、トランプ大統領の再選を狙って選挙結果を覆そうとしたものではないことを知っておく必要があります。

アメリカでは日本同様にデモを実施することは合法です。すなわち、今回のワシントンD.C.における抗議デモも合法的な行為と言えます。一方で、BLM(Black Lives Matter)運動の時のように一部が暴徒化したり、略奪が起きる事態になることは違法です。

本来であれば今回の抗議デモは、大勢が集結して合法的そして平和的に抗議することを目的にしていたのですが、トランプ大統領が「もっと激しく戦うべきだ」と呼びかけた結果、一部が暴徒化して議事堂に侵入する事態になったのです。

議事堂内にいた議員や反トランプ派のメディアは「デモ隊を扇動した」として、トランプ大統領を非難しています。

なぜ1月6日だったのか?

抗議デモが実施された1月6日は、次期大統領を正式に確定する「選挙人投票の開票日」でした。

本来であれば、12月14日に実施された選挙人投票を開票し、結果を確定させるための形式的な日でしかありませんが、トランプ大統領は最後の抵抗としてこの日に合わせて抗議デモを呼びかけていました。

また、トランプ大統領を支持する共和党上院議員13名は、開票に異議申し立てを行うことをあらかじめ表明しており、開票を遅らせることで抵抗を試みていました。(結果が覆ることはないことを承知のうえで)

先述したように、1月6日時点で選挙結果を覆す法的な根拠はなかったため、実質的には何もできない状態でした。しかし、トランプ大統領は支持者らの結束や、2024年の大統領選に向けた最後のアピールとして同日にデモの実施を呼びかけたとされています。

トランプ大統領は「選挙人投票の結果次第ではホワイトハウスを去る」ことをすでに明言していることから、この日を機に態度を軟化させると見られています。

アメリカ連邦議会で何が起きたのか?

次に、議会開催中に3時間あまり占拠された連邦議会議事堂で何が起きたのかを見てみましょう。

連邦議事堂への侵入、そして占拠

当日正午、ワシントンD.C.に集まった支持者らの前で1時間近く演説したトランプ大統領は、午後1時から始まる上下両院合同会議(選挙人投票の開票)に合わせて「議事堂まで行進しよう!私もともにある」と呼びかけました。(この演説は共和党寄りのFOXニュース以外は一切報じていない)

デモ参加者らは1時過ぎには議事堂周辺に到着し、抗議活動を始めました。この時点で一部が警官隊と衝突し、議事堂内部への侵入を試みています。これを受けて、共和党トップが「選挙結果を覆そうとする行為をやめるべき」と呼びかけました。

そして午後2時頃、警官隊の盾を奪った人物がガラス窓を破壊して内側から解錠し、一斉に侵入が始まりました。2時20分頃には、議会の休止が宣言され、中にいた議員らが避難する事態になります。

議会が休会したことを受けてトランプ大統領はツイッター上に「平和的に」と呼びかけました。しかし、暴徒化した支持者らはナンシー・ペロシ下院議長(民主党)の事務所にも侵入し、部屋の中を荒らしたうえ「引き下がらないぞ」と書いたメモを残しています。

3時30分頃、議事堂内でデモ隊の女性が撃たれて搬送先の病院で死亡が確認され、ペンス副大統領が大統領の同意なしで州兵の動員を決定しました。(トランプ大統領は州兵派遣に反対していたため異例の対処)

午後4時頃には民主党幹部らがトランプ大統領にデモ隊を撤退させるよう呼びかけ、おおよそ1時間後にトランプ大統領自ら「あなたたちのことを愛している」としたうえで「暴力は良くない、家に帰るべきだ」と動画で呼びかけました。

午後6時には外出禁止令が発動し、議会内部や周辺の安全を確認したうえで、午後8時に議会が再開されました。そして翌午前3時44分、バイデン氏が次期大統領として正式に選出されました。

デモ隊の発言「本当に楽しい時間だった」

Insiderの取材によると、議事堂内に始めに侵入したデモ隊のひとりトーマス・アダムスは「(議事堂内にいる時は)本当に楽しい時間だった」と述べたとあります。

また、侵入に成功した人たちは「警備隊が無力だった」と振り返っており、一斉に侵入した時の様子を説明しています。議会内では侵入者の一部が拡声器を使って「政府は腐っている」と主張した際、他のデモ隊から声援を受けて涙していたことや、議会内の書類を散らかす、多くの人が議会内で自撮りをするなど「カーニバル状態」だったことも書かれています。

これらの証言から、議会内では平和的な抗議などは行われておらず「憂さ晴らし」に近い状態であったことが分かります。そして、この侵入騒動で合計4名が命を落としており、銃撃された女性以外の死因は「医療緊急事態」という曖昧な内容で処理されています。

「連邦議会議事堂襲撃」騒動の影響

今回ワシントンD.C.で起きた騒動は、トランプ大統領そしてバイデン次期大統領の周辺で多くの影響を生みました。

トランプ大統領の反応

トランプ大統領は今回の騒動を扇動した張本人として共和党内からも非難されています。騒動収束の呼びかけまで1時間近くかかったことや、騒動後にも不正選挙を訴えたり、騒動を正当化する発言をツイッター上で繰り返したことで「火に油を注ぐ」結果になりました。

トランプ大統領による一連の言動を受けて、アメリカ製造業協会(NAM)のティモンズ会長は、政権幹部に対してトランプ大統領の「即時免職(憲法修正第25条)」の検討を要求しています。

また、ツイッターやフェイスブックはトランプ大統領のアカウントについて、規約違反を理由に一時凍結しました。同時に、今後も規約違反が続く場合は永久停止措置になることを警告しています。

これまで自身の主張を繰り返してきたSNSアカウントまでも凍結される事態になったトランプ大統領は、7日朝に「(就任式の)1月20日には秩序がある政権移行が実施されるだろう」と誓ったと、ホワイトハウスを通じて発表されました。

トランプ大統領は前言通り、選挙人投票の結果を受け入れて抵抗を止めると見られます。ただし、1月20日の就任式に参加するかは不透明です。

トランプ大統領はホワイトハウスを通じて「歴代大統領のなかで最も偉大な1期目が終わるが、アメリカを再び偉大な国にする戦いの始まりだ」とも述べており、4年後の復帰を匂わせています。

バイデン氏の反応

バイデン氏は勝利宣言から2ヶ月あまり経過してようやく正式に次期大統領として選出されました。同時に、カマラ・ハリス氏は副大統領として選出されています。

バイデン氏は、デモ隊が議会を占拠したことを受けてデラウェア州で演説を実施し、デモ隊を「暴徒」や「前代未聞の事態」と非難しました。また、トランプ大統領に対して「自身の誓いと憲法を守り、この混乱を収めるよう、いますぐテレビ演説をするように求めた」と述べ、トランプ大統領に進言したことに触れています。

バイデン氏は正式に次期大統領に選出されたものの、有権者7,400万人はトランプ大統領を支持しており、議会を占拠するほどの熱狂的な集団だということをまざまざと見せつけられる事態になりました。

次期大統領として、デモ隊を批判する一方で、完全に分裂しているアメリカをどのように修復していくかが課題になりそうです。

まとめ

以上、「2021年1月6日、ワシントンD.C.で何が起きたのか?」でした。

今回の騒動は間違いなくアメリカの歴史に刻まれる1日になります。ペンス副大統領は「暗黒の1日」と表現し、歴史的な日になったと述べています。民主主義を代表する国の中枢で起きた混乱はアメリカの分断を象徴しており、世界中にアメリカの混乱を見せつける事態になりました。

今回の一件を受けて、バイデン・ハリス次期政権は遺恨を残した状態でのスタートとなります。今回の騒動の張本人について諸説あり、今後の動向及びこのままの状況で進んで、トランプ大統領が、2021年1月20日に開催される大統領就任式に出席するかも注目です。

(*2020年1月8日:トランプ大統領のTwitter投稿情報のよると就任式欠席の情報あり。150年ぶりとのことです。)

編集部附則:TwitterやFacebookとは別で凍結されないSNS「Parler」で情報発信、「Parler」とは?

いま、「Parler(パーラー)」というソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)が話題となっています。「Parler」は、2018年に開設されたSNSであり、アメリカ合衆国のネバダ州ヘンダーソンに拠点があります。

SNS「Parler」が話題になっている理由は大きく以下の2つです。

1) トランプ支持者や保守派が多く利用している。
2) 「言論の自由」を重んじ、TwitterやFacebookでは規制されるような発言でも、そのままシェアされる(アカウントが凍結されるようなこともない)。

「Parler」は極端な投稿にも友好的なポリシーを掲げており、極右ユーザーを惹き付け、彼らの議論の場ともなっているようです。事実、トランプ支持者である極右の武装グループ「プラウド・ボーイズ(Proud Boys)」のリーダーであるジョー・ビッグスは、「大統領は、彼らをやっちまえと言ってくれたんだ。最高の気分だ!」など、「Parler」でも過激な発言を投稿しているようです。

トランプ支持者が続出と集結するSNS「Parler」とは?

参考資料サイト

Insiderの取材
https://www.insider.com/men-who-broke-into-the-capitol-describe-a-carnival-atmosphere-2021-1

ヤフーニュース
https://news.yahoo.co.jp/articles/65db51ac80d3b81e7572d40e4afbf7cbc2964202

本記事は、2021年1月8日時点調査または公開された情報です。
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