「市役所職員は毎日定時で帰れる」というのは本当ですか?

市役所職員と聞くと「土日祝日は基本的に休み」、「定時で帰れる」といったイメージが浮かぶのではないでしょうか。

ワークライフバランスが重要視される中で、「定時に帰れる」というのは大きなメリットですよね。

ただ、実際のところはどうなんでしょうか。今回は、そんな疑問にお答えします。


はじめに

「仕事と同じくらい、自分の時間も大切だから、定時で帰りたい。」

その希望を叶えるために、市役所に就職しようと考える人もいるかもしれません。

市役所職員をはじめとした公務員は「定時で帰れる」というイメージがありますよね。特に質問者さんの親御さんの世代の方などは、そのようなイメージを持っている方が多い印象です。

では、実際のところ市役所の職員は毎日定時で帰っているのでしょうか?

市役所で働いた経験を持つ、元市役所職員の井上さんに答えてもらいましょう。

質問)市役所職員になれば、毎日定時で帰れるというのは本当ですか?

公務員は安定しているし、普段も定時で帰れるイメージがあります。実際に午後5時ごろ地元の市役所の前を通ると、仕事を終えた職員の方がたくさん帰っていく様子を目にします。

我が家は、父親の帰宅が仕事の関係でいつも遅く、母親から「定時で帰れる公務員になりなさい」とよく言われるんですが、実際のところはどうなんでしょうか?仕事とプライベートをきっちり分けることができるのは魅力的なので、公務員への就職を考えています。本当に毎日定時で帰れるのでしょうか?

回答)「部署」と「時期」による、というのが正解です。

「公務員は9時5時で仕事が終わるんですよね。うらやましいです。」

私が自己紹介で市役所職員である旨を伝えたとき、何度この言葉を聞いたかわかりません。

ただ、実際のところ、市役所職員が定時で帰れるかどうかは「配属される部署」と「時期」による、というのが正解です。

そもそも「市役所」や「公務員」と、一括りでまとめるのには無理があるんです。


「市役所職員」はひとたび異動があると、転職すると言っても過言ではないぐらい、その業務内容が多岐にわたります。

そのため、ほぼ毎日定時で帰れる部署もあれば、連日夜遅くまで残って仕事をしている部署もある、というのが本当のところです。

また、時期によっても忙しさが変わるため、「市役所職員は定時で帰れる」と一概に言うことはできません。

今回はそれを踏まえて、定時で帰りにくいのはどんな部署や時期なのか、を紹介していこうと思います。

ただ、部署名などは市によっても異なりますので、特定の部署について説明するのではなく、「こんな業務を扱う部署」という形で紹介していきます。

帰りにくい部署

「帰りにくい部署」にはどんな特徴があるのか見ていきましょう。

帰りにくい部署1:日中は窓口対応や現場作業に追われ、書類整理が定時後になる部署

市役所のメインの業務とも言える「書類整理」。この作業がいつ出来るのか、によって定時で帰れるかどうかが変わってきます。

「市役所」と聞いて一般的に想像できるような「市民課」などは、窓口対応の直後に書類整理を完了できることが多い(例:住民票や戸籍謄本の交付など)ため、比較的定時に帰りやすい傾向があります。

しかし、同じ窓口業務がある子育て課や福祉課、また現場作業のある土木課などは、日中の窓口対応や現場作業の後、定時後に事務作業を行うことが多くなるため、定時では帰りにくくなります。

帰りにくい部署2:イベントが多い部署

企画課や観光課、教育委員会などはイベントが多く、このような部署はイベントの企画・運営はもちろん、出演者との交渉や現場の視察など、扱う業務が多岐にわたります。

そのため、イベントが多い部署に配属になると、定時で帰ることが難しくなってしまうでしょう。

帰りにくい部署3:目玉となる事業を担当している部署

「昨年の目玉は、新しい大型イベントの開催だった。」「今年の目玉は、市制60周年記念の式典を行うことだ。」など、年度によって目玉となる事業は異なり、その事業を担当する部署は、総じて帰宅するのが遅くなります。

ちなみにこれは私の体験談ですが、私が入庁した年度は、新しい大型公共施設の建設が予定されていました。運が良いのか悪いのか、私はその建設を担当する部署に配属され、最大で月に120時間を超える残業を行った経験があります。

帰りにくい時期

次に、帰りにくい時期はどんな時期なのか説明していきますね。

帰りにくい時期1:年度末・年度当初(3月下旬~4月上旬)

年度末は、市役所が一番忙しい時期です。


年間を通した業務のまとめや、次年度に向けた契約締結、など普段とは別の業務が多々発生するため、定時で帰れなくなることが増えます。

また、人事異動があると4月から人員が変わり、仕事を覚えていない人が業務に携わったり、引き継ぎに時間がかかったりするため、一旦業務の効率が下がって残業が増える傾向があります。

帰りにくい時期2:議会がある時期

「議会」はテレビでも国会中継が放送されているので、イメージしやすいのではないでしょうか。

市役所でも毎年3・6・9・12月頃に「市議会」が開催されます。1~2週間行われることが多く、議会が始まると「議会対応」という名の書類作成が始まります。

各議員から、「今回の議会でこんなことを聞く」という想定質問が渡され、その質問に答えるための答弁案や参考資料を、市職員がひたすら作ります。

この資料作成を求められると、通常業務を圧迫するため、帰宅時間が遅くなってしまいます。

帰りにくい時期3:災害が発生した時期

地震や台風などの災害が発生すると、「防災課」などの部署が率先して指揮を取りますが、実は防災課以外の部署でも、災害が起こると市職員の出動が求められます。

避難所の開設・運営や被災された方の対応、場合によっては部署をまたいで災害後の地域の調査などを行います。

職員総動員で対応し、通常業務とは別枠での業務となるので、定時ではなかなか帰れません。

まとめ

市役所職員でも定時で帰れるかどうかは部署と時期によります。

また、部署によっても繁忙期は異なりますし、市役所の職員数は全国的に削減傾向にあります。

かつての職員数の半分で、仕事を回していかないといけない現実もあり、「定時で帰れるから公務員になる」という想いは一旦忘れた方が良いかもしれません。

市役所職員をめざすなら「市役所でどんなことをしたいか」を考えるようにしましょう。

本記事は、2021年4月20日時点調査または公開された情報です。
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