過去と現在、特にEU加入、EU離脱(Brexit)後の移民問題点の推移
戦後イギリスが多く受け入れてきた移民と現在、特にEU離脱(Brexit)前後の移民問題ではその問題の内容に違いがみられます。その問題点の推移を探ってみました。
過去の移民
移民の多くはイギリスの旧植民地からの受け入れで、戦後の復興のための労働力とされました。とりわけカリブ系やインド系の移民が多く受け入れられ、大半は黒人でした。
彼らは肉体労働に従事する人がほとんどで、低賃金で過酷な労働を担わされ、人種差別的な扱いを受けることが多く、白人との間で頻繁に暴動が起こりました。
イギリス政府はその度重なる暴動を鎮圧するため1965年人種差別法を制定するまでに至りました。
EU(European Union/欧州連合)加入後
イギリスがEUの前進となったEC(European Commission/ヨーロッパ共同体)に1973年に加盟すると、ヨーロッパの東欧から多くの移民がやって来ました。彼らは過去にイギリスの一部だった旧植民地の黒人とは違い、全く外国からやってきた白人移民です。
これまでは人種も文化も違う移民だったので対立も多かったものの、東欧の移民は白人で、文化的にも宗教的にも近く、低賃金で勤勉なことからイギリスの白人労働者の仕事を奪うようになって行きました。これによって、EUに加盟していることに対するイギリス人の不満が増してゆきました。
EU(European Union/欧州連合)離脱後
イギリスは2016年6月23日の国民投票によりEU離脱を決め、2020年12月31日に、EUからの離脱を完了しました。
これによりイギリスにこれまで自由に移動し労働することが出来ていたヨーロッパの人たちに対して歯止めをかけるため、新移民制度を制定しました。主な内容は下記のとおりです。
1.優秀な労働力に限り国内に呼び込み、単純労働者や低技能人材の流入を排除する。
2.イギリス国内の企業や雇用主は国外の安価な労働力に依存しない。
3.現在働いている従業員の環境改善や維持、オートメーション技術の開発および投資を促進する。
4.国民にEU離脱の利益を明確に見せる。
まとめ
イギリスが移民に頼って発展してきた歴史はとても長く、その都度いろいろな問題にぶつかってきました。EUを離脱し、これからは移民に頼らない国造りを推し進めているイギリスですが、未だにその利益は見え隠れしている状態です。
参考資料サイト
MORI Political Monitor | Ipsos
(https://www.ipsos.com/en-uk/mori-political-monitor)
コラム:英国の移民問題―「過去」と「現在」/労働政策研究・研修機構(JILPT)(外部サイト)
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