イギリスと日本の住宅問題

海外の行政・歴史シリーズ、本記事では、「イギリスと日本の住宅問題」についてご紹介します。


はじめに - イギリスと日本の住宅事情について

イギリスと日本の住宅の大きな違いは、イギリスの住宅は値段が下がらないどころか毎年上昇するという事です。日本の場合は購入後古くなればなるほど値段が下がって行きます。購入時よりも高値で売れることは僅かなケースと言えるでしょう。

しかしながらイギリスは住宅の値段が毎年上昇し、その上昇率は銀行利率を大きく上回るため、イギリス人は銀行預金よりも住宅購入に現金資産を投入するのです。

イギリスの住宅上昇率

このコロナ禍においても、イギリスの住宅上昇率は顕著です。2021年3月17日の英政府統計局の発表によると2020年12月の平均住宅価格は前年同月比で8.5%の上昇で日本円で約3690万円となり、2014年10月以来の高い上昇率となりました。

地域によってその上昇率には大きな差が出ています。コロナの影響で、ロンドンの住宅価格は低迷した時期もありましたが、総じて大きな下落もありませんでした。ドーナツ減少でロンドン近郊都市の住宅価格の値上がり率は平均上昇率を大きく上回っています。

イギリスでは2軒が一棟でつながっている『セミディタッチ』と呼ばれる家、横に何軒もの家がつながっている『テラス』、日本のマンションのような『フラット』と呼ばれる集合住宅が多く見受けられます。

上昇率が特に顕著なのは一軒家で集合住宅に比べて2倍の上昇を示しました。コロナで通勤する機会が少なくなったことから、広い住宅を求める人が多くなったと言えるでしょう。

イギリス地域別住宅平均価格上昇率(単価:£千)

2005 2007 2009 2015 2019 2020 15年後上昇率
ロンドン 232.4 297.7 245.4 402.8 464.2 501.5 216%
西部 175.3 208.2 170.9 228.3 286.9 303.7 173%
西中央部 140.0 165.8 137.3 158.7 195.1 212.8 152%
東中央部 135.3 159.0 130.4 153.7 190.6 209.3 155%
ヨークシャハンバー 118.9 149.9 126.5 136.2 160.9 180.8 152%
北西部 118.9 151.5 127.8 136.0 160.8 179.3 150%
北東部 111.5 138.5 118.3 117.2 124.6 138.5 124%

住宅投資は上記の表から分かるように、銀行預貯金の利子より格段に値上がりが期待できる投機というわけです。

コロナ禍の住宅政策

2020年7月8日イギリス政府は2021年6月30日までに決算等の手続きが完了する取引に対して、不動産購入時にかかる印紙税を不要または減額とする特例を発表しました。このような特例税制対策が住宅価格上昇を後押ししたとも言えるでしょう。

イギリスの不動産売買に課せられる印紙税

0~125,000ポンド 3%
~250,000ポンド 5%
~925,000ポンド 8%
~1,500,000ポンド 13%
1,500,001以上 15%

2件目以降の購入には更に3%上乗せされます

持ち家を売った場合に得られたキャピタルゲイン(売買益)に対しても課税の対象

キャピタルゲイン税の税率

基礎税率(20%)の所得税を支払っている人:18%
高税率(40%)の所得税を支払っている人:28%

イギリスの『カウンシル(地方自治体)税』

イギリスには日本で言われる住民税というものがありません。その代わりに居住地の地方自治体に対して支払わなければいけない『カウンシル税』というものがあります。


イギリスのカウンシル税と日本の住民税の違い

大きな違いは、日本の住民税は個人に対して課税されますが、イギリスのカウンシル税は家に対して課税されます。

家に対する基準は、A~H(ウェールズはA~I)までのバンドというカテゴリによってその価値基準が決まっています。

政府が提供しているHPに居住地の郵便番号を入力するとそのカテゴリを知ることが出来ます。そのため地価が高額でかつ大きな家に住んでいればそれだけ多くの税金を支払わなければいけません。持ち家でなくても、賃貸で住んでいる場合も住んでる家に対して居住者に課税される仕組みになっています。

免除規定

  • 未成年者
    ※但し、未成年者であっても収入が一定金額ある場合には支払い義務が発生します。
  • 単身者や学生の場合は割引や免除規定があります。

イギリスの住宅あるある

  • イギリスでは100年以上経過している建築物を取り壊すことは禁止されています。そのため、100年以上の物件を購入した場合、内装は改装することは可能ですが、外装を手直しすることは出来ません。特に外側の窓枠なども取り換えたりすることが禁止されています。
  • 100年以上経過していない建物でも、地域に沿った建築物と認定されている場合は外装を手直し出来ない場合もありますので要注意です。
  • 地域によっては建築物の高さが規定されていますので、平屋を2階建てに改築することは禁じられています。さらに増改築する場合には必ず建築許可を申請、許可が得られなければ作業を進めることは出来ません。特に窓の増設には近隣の家の中が見えるような場所であるかないかなどの判断基準が厳しく規制されています。

まとめ

イギリス人は独身、結婚、子供の出産、子供の成長、子供が巣立つ過程で家を買い換えて行くことが多くあります。

結婚して子供が成長して行く過程で手狭間になって大きな家を買い換えることを「アップ・サイズ」と言い、子供が巣立って夫婦二人になると大きな家を手放して小さな家に買い換えることを「ダウン・サイズ」と言います。

貴族や王族でない限り、日本のように何代も何代も同じ家に住んでいるというイギリス人家族は少ないかもしれません。

参考資料サイト

Stamp Duty Holiday Extension – What you need to know… | Mortgage Advice UK
(https://www.mortgageadvice.uk.com/news/stamp-duty-holiday-extension?msclkid=a10f52d3ae1811ecafc306466f5b755c)

イギリスの不動産投資にかかる税金や費用について|イギリスの海外不動産投資|不動産投資のGlobal Homes (ghomes-web.com)(外部サイト)

コロナ禍も英住宅価格は初の25万ポンド突破、14年来の大幅な値上がり – Bloomberg(外部サイト)

イギリスの住民税(カウンシルタックス)ってどんなもの?日本との違いを解説 | ウツミチ*ロンドン暮らし (japanesewriterinuk.com)(外部サイト)

本記事は、2022年5月31日時点調査または公開された情報です。
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