わかる政治経済シリーズ 第34回

国会の権能について

国会の地位と権能シリーズ第2回目は、「国会の地位と権能」の中の「国会の権能」について説明します。


「国会」の権能とは?

「国会」の権能とは、「国会」はどのような仕事をするのが認められているのかということです。

「国会」は、「立法(りっぽう)」に関わる仕事をはじめとして、様々な機能が与えられています。以下で「国会」の機能を6つ紹介します。

ちなみに「立法」とは法律を定めることで、日本の政治制度は、国家の権力を3つにわける「三権分立」、立法権・司法権・行政権の制度で、なりたっています。

「国会」の機能その1 法律案の議決

「国会」の機能の1つめで、最も大切なものが「法律案の議決」です。

「国会」は国の唯一の立法機関であるという原則がありますが、「立法」というのは法律を制定することを言います。法案は「衆議院」「参議院」両院の設置された「常任委員会」と「特別委員会」で審議されます。委員会での議決が済むと両院それぞれの全議員で構成される「本会議」で審議を行います。出席議員の過半数の賛成が得られれば議決されます。

重要な法律案については、専門家や有識者の意見を聞くための「公聴会」も開かれます。

「国会」の機能その2  予算の議決

「国会」の機能の2つめに「予算の議決」があります。

「内閣」が予算案を「国会」に提出すると、この予算案を「通常国会」で審議します。「国会」には「衆議院の優越」の一環として「予算の先議権」があるため、まずは「衆議院」で審議し、その次に「参議院」で審議されます。予算案を審議するにあたって、専門家や利害関係者の意見を聞くための「公聴会」も開かれます。

そして、翌年になると「内閣」は予算を実際にどのように使ったのか収入と支出の結果をまとめた決算を「国会」に報告しなければいけません。「国会」は「内閣」の報告を受け、予算が正しく使われたか監督・審議します。

「国会」の機能その3 条約の承認

「国会」の機能の3つめは「条約の承認」です。

「内閣」が外国と締結する「条約」を承認するのは「国会」の仕事です。「条約」は国家と国家の間で取り結ばれる合意のことですが、「法律」と同様の効力を持つものなので、「立法機関」である「国会」による承認が必要となります。これは、もしも「内閣」が「国会」の承認なしに独立して外国と「条約」を結べることになると、「内閣」が「法律」と同様のものを制定できることと同じになってしまい、「国会」の「唯一の立法機関」という原則を崩すことになってしまうためです。


「国会」の機能その4 内閣総理大臣の指名

「国会」の機能の4つめは「内閣総理大臣」の指名です。

「内閣総理大臣」は「衆議院」「参議院」どちらかに所属する議員の中から選ばれます。「衆議院」と「参議院」で違う人物を指名した場合、「両院協議会」が開かれ審議されます。「両院協議会」でも意見が一致しなかった場合は「衆議院」が決めた人物を指名することになります。(「衆議院の優越」)

指名された議員は「天皇」によって任命されて「内閣総理大臣」となります。

「国会」の機能その5 弾劾裁判所の設置

「国会」の機能の5つめは「弾劾裁判所」の設置です。

「弾劾裁判所」について憲法は次のように定めています。

第64条 国会は、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため、両議院の議員で組織する弾劾裁判所を設ける。

▼出典:日本国憲法

「国会」は「弾劾裁判所」を設置することができます。「弾劾裁判」とは裁判官を裁くための裁判のことです。裁判官に何らかの不適切な行いがあった場合、「国会」の中に「弾劾裁判所」が設置され、「衆議院」と「参議院」の両院から選ばれた国会議員が裁判官となり、裁判官を辞めさせるかどうか判断します。

「国会」の機能その6 憲法改正の発議

「国会」の機能の6つめは「憲法改正の発議」です。「憲法改正の発議」とは、現在の憲法をこのように改正したいということを提案することです。憲法では次のように定められています。

第96条 この憲法の改正は、各議員の総議員の三分の二の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。

▼出典:日本国憲法

「憲法改正の発議」には、「衆議院」「参議院」両院の総議員の3分の2の賛成が必要です。ここで発議が可能になると、次は「国民投票」が行われ、そこで過半数が賛成すると承認され、「天皇」によって公布されて憲法改正となります。

以上が「国会」の機能です。次に「衆議院」「参議院」各議員の機能について説明します。

「衆議院」「参議院」の権能

日本の「衆議院」「参議院」について解説します。

各議院の機能その1 議員の逮捕許諾権

各議院の機能の1つ目は「議員の逮捕許諾権」です。

「国会議員」は国会の会期中は原則的に逮捕されない特権(「不逮捕特権」)を持つと憲法50条に定められていますが、現行犯の場合の他、その議員が所属する議院の許諾があった場合は例外的に逮捕されることになっています。

各議院の機能その2 議員の資格争訟裁判権

各議院の機能の2つめは「議員の資格争訟裁判権」です。


「議員の資格争訟裁判権」とは、衆議院議員や参議院議員が国会議員としての資格を持っているかを審議し、持っていない場合は出席議員の3分の2の賛成を得ることで議席を失わせることのできる権利のことです。

例えば、被選挙権がないにも関わらず選挙に立候補し当選してしまった場合や、兼職が許されていない職務についているなど、「公職選挙法」に定められた議員の要件を満たしていない場合に、議員の資格がないと判断され議席を失います。しかし現実には議員の要件を満たしていない人が議員になる事態そのものが起こりにくいため、このような資格争訟裁判はまだ行われたことがないようです。

各議院の機能その3 秘密会開催権

各議院の機能の3つめは「秘密会開催権」です。

「秘密会」とは非公開で行われる「国会」の会議のことです。「国会」の会議は原則的に公開されますが、開催の必要がある場合、出席議員の3分の2の賛成で開催されます。しかし、「本会議」で「秘密会」が行われたことはありません。

各議院の機能その4 議院規則制定権

各議院の機能の4つめは「議院規則制定権」です。

「衆議院」「参議院」の両議院はそれぞれ議院の会議や手続き・内部の規則について各議院の議決に基づいて制定することができます。これを「議院規則制定権」といいます。

各議院には「議院自律権」と言って、「国会」や「裁判所」などの他の国家機関からの干渉を受けることなく、自身の運営について自主的に決定する権利があります。この「議院規則制定権」は他の機関の干渉を受けずに議院内部の規則を決めることができることで「議院自律権」の一部となっています。

各議院の機能その5 議員の懲罰権

各議院の機能の5つめは「議員の懲罰権」です。

各議院には「議院自律権」に基づいて、不適切な行いをした議員を懲罰することができます。議員には本来「免責特権」(議院で行った発言等について罰されることがないという特権)がありますが、議院の秩序を乱すような行いがあった場合、懲罰のための委員会で審査され、出席議員の3分の2の賛成で所属する議院の議決によって警告、登院停止、除名などの処分が行われます。

各議院の機能その6 国政調査権

各議院の機能の6つめは「国政調査権」です。

「衆議院」「参議院」にはそれぞれ、「国政調査権」があります。「国政調査権」とは、「行政権」の行使を中心とした国政(国の政治)全般にわたり、国民に代わって監督する権限のことです。憲法62条で次のように定められています。

憲法第62条 両議院は、各々国政に関する調査を行ひ、これに関して、証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができる。

▼出典:日本国憲法

「参議院」「衆議院」両院は国の政治について調査を行って、これに関して承認の出頭や証言、記録の提出を要求することができます。「国会」で十分な審議を行うために必要な情報を集めるためです。

「国勢調査」について、国政にかかわる重要な事柄の当事者に出頭を命じ、事実を問いただすことを「証人喚問」と言います。「証人喚問」で国から出頭や証言を求められた場合原則的に拒むことはできず、「証人喚問」では虚偽のことを証言すると「偽証罪」として刑罰の対象になります。

「司法権の独立」の原則から、「司法権」に関わることについての「国政調査権」は認められていません。

まとめ

以上、国会の地位と権能シリーズ第2回目「国会の地位と権能」の中の「国会の権能」について説明しました。

本記事は、2022年11月14日時点調査または公開された情報です。
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