女性差別とは?
「女性差別」とは、女性であることを理由として女性に対して不利な扱いや不公平な条件を強いることを言います。
現在の日本では憲法14条「法の下の平等」原則によって、男女間の平等が保障されています。しかし、これまで伝統的な役割分担意識や偏見によって、女性であることを理由に不公平な扱いを受けたり、雇用等をはじめとする社会的活動の面で十分な活躍の機会が得られない場合がありました。
以下で、このような「女性差別」を解消し、平等な社会を実現するための制度や取り組みについて説明していきます。
女性差別撤廃条約
「女性差別撤廃条約」とは男女が平等である社会を達成することを目的として、女性に対するあらゆる差別を撤廃することを基本理念とする条約で、1979年に国連によって採択されました。「女性差別撤廃条約」では締約国に対し、政治的・公的活動ならびに経済的・社会的活動における女性差別撤廃のために、適切な措置をとることを求めています。
この条約は、法令上の差別だけでなく、事実上、慣行上の差別も、条約の定める差別に含まれると規定しています。さらに、私的分野も含めた差別撤廃を締約国に義務付けています。
日本は1985年にこの「女性差別撤廃条約」に批准しました。その一環で「女性差別」に関する国内の法整備が進みました。
さて、この「女性差別撤廃条約」に批准することで具体的に日本にどのような影響があったのでしょうか。以下で3つ説明します。
国籍法改正
まずひとつに「国籍法」の改正があります。
改正前の「国籍法」では、国際結婚した男女の間に生まれた子どもの国籍について、父親が日本人である場合にのみ日本国籍の取得を許しており、日本人の母親と外国人の父親の間に生まれた子どもは日本国籍を取得することができませんでした。
しかしこれは、「女性差別撤廃条約」第9条2項の「締約国は、子の国籍に関し、女子に対して男子と平等の権利を与える」に違反しています。そのため、1984年「国籍法」が改正され、母親が日本人である場合にも、子どもは日本国籍を習得することができるようになりました。
これにより、古く存在していた父系優先の血統主義が、父母両系血統主義に改められました。
労働基準法改正
次に「労働基準法」の改正があります。
改正前の「労働基準法」では「女子保護規定」が定められていました。これは女子の時間外労働や深夜残業を規制する制度です。しかし「女子差別撤廃条約」では、母性(妊娠・出産に関わる機能)保護のための特別措置と、事実上の不平等を解消するための特別措置(ポジティブアクション)以外の差別的扱いを禁止しています。
「女子保護規定」は女性を「保護すべき弱い存在」と捉えていると解釈され、性別を理由に業務上の異なった扱いをしていると考えられます。また、女性は深夜残業が禁止されていることから、企業側としても夜に働かせることのできない女性を採用することに消極的になる原因になりうるとして問題視されました。
これでは男女が平等な機会を得られているとは言えないため、「女性差別撤廃条約」批准にあたって規制は緩和され、現在では原則的に廃止されています。
また、「労働基準法」改正によって、妊産婦の時間外労働や深夜業の制限を定める「母性保護制度」が新しく設けられました。妊娠・出産は女性に固有の機能であり、心身に多大な負担をかけるものであるため、妊産婦に特別な配慮を行うことは「合理的な区別」であると考えられます。
さらに、月経の症状が重く月経期間に働くことが困難な女性のため、「生理休暇」の制度も設けられています。正規雇用・非正規雇用を問わず女性労働者であれば月経の症状が重く働くことが困難なときには「生理休暇」を申請することが法的に認められています。
男女雇用機会均等法制定
最後に「男女雇用機会均等法」について説明します。「男女雇用機会均等法」は「女性差別撤廃条約」に批准するにあたって1985年に制定され、募集・採用や昇格などの待遇の面での男女差別をなくすことと、妊娠中および出産後の健康の確保を目的としています。
「男女雇用機会均等法」では労働者の配置、昇進、降格および教育訓練について労働者の性別を理由として差別的な取り扱いをしてはならないと定めています。例えば、「男は仕事、女は家庭」というような固定的な役割意識に基づいて女性労働者にはお茶くみやコピー取りのような簡単な作業しか任せないなどの扱いや、責任の重い管理職に任用するのは男性だけという扱いも禁じられています。
制定当初はこうした男女の平等な取り扱いはあくまで努力目標でしたが、後の改正で違反した企業名を公表するなどの罰則も設けられるようになりました。
また、女性が安心して働くことができるように、事業者には「セクハラ防止」が義務付けられています。「セクハラ」とはセクシュアルハラスメント(性的嫌がらせ)の略で、身体に触る、容姿について執拗に言及する、性的な話をするなど様々な行為が該当します。事業者はこのような「セクハラ」が起こらないようにしたり、起きてしまったときに適切な対処をしたりするための措置を講じる必要があります。
さらに、婚姻や妊娠・出産を理由に労働者を解雇したり雇い止めをするなどの不利益な扱いをすることも禁止しています。
まとめ
以上、「女性差別」について説明しました。
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