わかる政治経済シリーズ 第23回

「社会権」とは?社会権の成立の経緯について解説

社会権シリーズ第1回目は、その中の「社会権の成立」について説明します。


「社会権」とは?

「社会権」とは、「基本的人権」のうちの一つで、人間が人間らしい文化的な生活をするための権利のことです。国民が生存し社会生活を行う上で、国家に対して一定の公共的配慮を要求することが認められており、日本では「生存権」「教育を受ける権利」「労働基本権」などが保証されてます。

以下で「社会権」について理解するうえで重要な4つのポイントについて説明します。

「社会権」の成立の経緯

18世紀に成立し19世紀ごろ普及した「古典的人権」は、「信教の自由」や「財産権の不可侵」など、個人が国家から干渉を受けたり抑圧されたりせず、自由に活動するための「自由権」を中心とするものでした。

ところが、19世紀後半から20世紀にかけて「資本主義経済」が高度に発展しました。その結果、資本家のような「持つもの」と労働者などの「持たざるもの」の経済的格差が著しく広がり、社会全体で失業や貧困、児童の過酷な労働といった労働問題の社会問題が深刻になりました。

このように貧富の差や不平等が拡大した社会においては、自由を保障するだけでは弱者は最低限の生活さえ立ち行かなくなってしまいます。そこで、こうした格差を是正し弱者を救済するために、国民が国家に対して人間らしい生活を要求する権利である「社会権」の必要性が主張されるようになりました。そして、1919年に制定されたドイツの「ワイマール憲法」で初めて「社会権」が規定されました。

「福祉国家」とは?

19世紀までの「古典的人権」的な思想において、国家は個人の活動に介入すべきではなく、国家の役割は国防や治安の維持などの必要最低限の公共事業のみだと考えられていました。このような国家のあり方を「夜警国家」「小さな政府」「消極国家」などと呼びます。

一方、20世紀の「ワイマール憲法」以降の考え方、つまり国家が積極的に国民の生活に手を差し伸べ、弱者の救済や医療・福祉・教育の充実に努めるべきでであるという考え方を「福祉国家」「社会国家」「大きな政府」「積極国家」と呼んでいます。

「ワイマール憲法」とは?

「ワイマール憲法」とは1919年ワイマール共和国(ドイツ)で制定された憲法です。「ヴァイマル憲法」と表記されることもあります。

「ワイマール憲法」は世界で初めて「社会権」を規定した憲法として知られています。「ワイマール憲法」は、国民主権、男女平等の普通選挙の承認に加えて、新たに所有権の義務性、「生存権」の保障などを規定し、20世紀の民主主義憲法の典型とされており、その後の世界の民主主義国家に強い影響を与えました。

明治憲法における社会権

「明治憲法(大日本帝国憲法)」は1889年に制定された憲法です。そのため、「ワイマール憲法」に規定されるような「社会権」は保証されておらず、「自由権」を中心とした権利しか規定されていませんでした。

まとめ

以上、「社会権の成立」について解説しました。


本記事は、2023年2月15日時点調査または公開された情報です。
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