現場に急げ!「消防士」の使用する車両を機能・目的別に紹介

消防士の乗る車両といえば消防車ですが、色々な種類があるのはご存知でしょうか?本ページでは、消防車を始めとした、救助車や救急車、日本に一台しかない特殊な車両など、消防署に所属する車両について、機能と目的別に紹介します。


役割によって色々な車両のある消防車両

消防士には3つの役割がある

消防署に所属している消防士は国家公務員です。消防士の正式名称は「消防吏員」と呼ばれており、「消火隊」「救助隊」「救急隊」と役割によって3つの配属先に分かれています。

消火隊は火災が発生した時の鎮火作業や、防災のための職務を行います。救助隊や救急隊のサポートとして一緒に現場に出場する事も多いです。

救助隊は、主に救助のスペシャリストです。事故や災害現場で動けなくなってしまった要救助者を助ける事に加えて、火災現場での鎮火作業や、救急隊員と一緒に出場してサポートを行う事もあります。オレンジの作業服がトレードマークで、レスキュー隊とも呼ばれています。

救急隊は、救急車に乗って通報を受けた傷病者や、事故や災害現場に駆け付け、医療機関への搬送や、救命処置を行います。救急隊員の中でも、国会資格である救急救命士資格を持つ隊員は、搬送中にも救急救命士として特定の医療措置も行え、日本の救急現場における救命率の向上につながっています。

3つの部隊ごとに車両がある

消火隊・救助隊・救急隊それぞれに特殊な装備や専門的な資機材を積んでいる、緊急車両を持っています。緊急車両には赤色灯と呼ばれる赤いランプと、それぞれの車両ごとに音の異なるサイレンを鳴らす事ができ、現場に駆け付ける時には赤色灯を点灯し、サイレンを鳴らします。

消防署の緊急車両は、時代の変遷によって最新鋭の車両も多く登場しています。例えば、近年の新型車両は、赤色灯にLEDランプが採用されています。この緊急車両を役割別に解説していきます。

主に消火活動に使われる緊急車両

ポンプ車

火災現場にかけつける、消防車と言えば一番ポピュラーな車両です。シャッターのついている荷台を持ち、防火水槽や消火栓などにつなぐ太いポンプ装置などが搭載されています。防火水槽や消火栓がない場所では、海や川の水、学校のプールなどからも取水できます。

車両の後ろには、ホースカーと呼ばれる長いホースを積んだ荷台があります。ホースカーはとても重く、積み下ろしも大変ですが、最新の車両はホースカーの昇降や積み下ろしも、電動でできるようになっています。

水槽付き・はしご付きポンプ車

あらかじめ水槽をつんだ水槽付きポンプ車もあります。2000Lから5000Lまで、詰める水量には色々なタイプがあります。水槽があるので、水を供給する必要がないので消火に水槽の水を使う他、他のポンプ車の水の供給を助ける役割も果たします。

はしごや塔体付きのポンプ車もあります。小回りがきくので、狭い道でかつ高い所の消化活動を行うなどの役割があります。また、ポンプ車についているタイプのはしごは、15mほどまで伸びます。

給水タンク車

タンクローリー式の消防車で、より多くの水を運べます。放水銃も備えているので、消火活動もできます。


ミニポンプ車

軽自動車の車体の小さいポンプ車です。住宅街やオフィス街など、狭い路地の消火活動に適しています。また、消防署ではなく、民間の消防団でミニポンプ車を持っている事も多いです。

はしご車

隊員の乗るバスケットを先端に付けた、高く伸びるはしごの付いた緊急車両です。ビルなど高い所への放水を行うだけでなく、救助隊員が高い所に取り残された人を助ける時にも使用します。

バスケットは最大で3名まで乗る事ができ、伸ばせるはしごの距離も30m級、40m級、50m級まであります。また、はしごははしごの横に着いた専用の運転台ではしごの向きや高さなどを調整しています。

また、はしごを伸ばす時には車体がぐらつかないように、左右のアウトリガーと呼ばれる張り出しを出し、しっかりと地面に固定した状態で行います。

先端屈折式はしご車、水路つきはしご車

はしごの途中から折り曲げられるようになっている先端屈折式はしご車や、はしごの下に水をくみ上げられる水路と呼ばれる取水ホースと、バスケットの先端に放水銃が付いていて、消火作業をしながら救助活動もできるなど、バスケットに乗った隊員が放水銃を構える必要のない、水路つきはしご車などもあります。

消防艇

海や大きな川や湖など、水辺で溺れてしまった人への救助や水辺の建物や船の火災の時に消火活動を行うのが、消防艇です。海水をくみ上げて、消防艇にある放水銃から放水して火を消す事ができます。東京消防庁の出初式では、毎年消防艇の色のついた放水ショーが人気となっています。

また、水上で救助を行う水上スクーターもあります。

消防ヘリコプター

高いビルの火災や、増水した川の事故などに活躍します。高い所から大量の水を撒く事により消火ができますので、高層ビルの火災から、大規模な山火事の時まで役立ちます。また、放水する方法は、ヘリコプターの機体にあらかじめ備え付けられているタンクに詰めた水を、上空から放水する方法と、大きなバケツに入れた水を火災現場に撒いて火を消す、バケット放水と呼ばれる方法があります。

また、空中でホバリングをして、空中から人を救出する事もできます。

消防オートバイ

オフロードタイプで山道などにもすばやく初期消火活動ができる他、災害現場での情報収集活動も行う「クイックアタッカー」と呼ばれるタイプと、2台一組で消火活動を行う、スクータータイプの「ミストドラゴン」と呼ばれるタイプがあります。

主に救助に使用される緊急車両

救助工作車

レスキュー車とも呼ばれています。災害や事故の現場に、人命救助を行う為に、様々な救助のための装備や資機材を揃えた車両です。シャッター式の荷台の中には、物を切断するためのカッターや、隙間を広げる為のスプレッダーなどの救助用の道具が積んであります。

4トンから10トン車を使ったもっとも多いレスキュー車は、救助工作車(Ⅱ型)と呼ばれています。この他にも、車体の後ろにウィンチや障害物を取り除くためのクレーン、発電証明装置などを積んでいる救助工作車(Ⅲ型)、オフロードタイプのタイヤを持ち、足場の悪い現場でも走れる2台1セットで活躍する救助工作車(Ⅳ型)があります。ちなみに、Ⅳ型の1台目には人を探すための道具、2台目には救助のための道具が積んであります。

また、救助工作車のシャッター部分は自治体によって色々なデザインがあります。自治体のロゴや“RESCUE”の文字、迅速に活動する、という意味を込めた稲妻のマークや、命のシンボルであるコウノトリの翼を模したデザインもあります。

水難救助車

海や川での事故や災害の時に出場する車です。救命ボートや酸素ボンベなどの、水難救助に必要な道具を積んでいます。また、水深110mまで潜る事ができ、リモコンで操作できる「水中検索装置」を積んでいる水難救助車もあります。また、水難救助車にはそのまま川などに入って救助を行う、水陸両用の物もあります。

山岳救助車

山林火災の鎮火や、山で遭難した人の救助のために出場する車です。走行が難しい山道でも走れるように、4WDの車が採用されています。険しい山道で使うロープや、傷病者や救助者を乗せて運ぶたんかなどを積んでいます。


特殊な災害現場に出動する緊急車両

大型化学車・空港用大型化学車

工場や石油コンビナートなどの、普通のポンプ車では消火が難しい規模の火災から、危険な化学薬品を取り扱っている所での災害などに出動するのが、大型化学車です。車内には、水が積んであり、泡原液と混ぜ合わせて泡消火剤を作り、屋根の上についている放水砲から発射して、特殊な火災も安全に消す事ができます。

化学車には、空港での火災に対応する専用の空港用大型化学車もあります。また、空港用大型化学車は、放水銃が車体の正面に3つ付けられています。この放水銃はリモコンで操作もできます。

大型化学車が出動する火災の時には、高熱になる現場が多い為、化学消火隊が出場します。化学消火隊の隊員は、1000℃の熱に4分間耐えられる耐熱服を着て活動します。

泡原液搬送車

大型化学車と一緒に出動する車です。大型化学車から発射する、泡消火剤を作る為の泡原液を積んだ車です。

排煙口発泡車

荷台に巨大なホースを積んでいる消防車です。ホースから風を送って建物に立ち込めている火災の煙やガスを吹き飛ばす事や、ホースから泡を出して、火を消す事もできます。

特別高度救助隊の持つ緊急車両

大型ブロアー車

車体の後ろに大きな扇風機のようなファンがついた車両です。火事になった建物に立ち込めた煙を、ファンからの風で吹き飛ばしたり、水を霧のように吹きつけたりして排煙と消火を同時に行う事もできます。

ウォーターカッター車

似ずと研磨剤を混ぜて、高圧で噴射する事によって固い物を切断できる、ウォーターカッターを作り出せる装備を積んでいる車です。火花を発生させずに鉄やコンクリートを切る事ができるので、固い物でも比較的安全に切れる事や、火花による火災などの二次災害を防ぐ事もできます。

救助ロボット

危険性が高い為に人がそのまま入る事ができない、化学工場の爆発事故や、大地震で崩れ落ちたがれきの下などを探査する為の救助ロボットがあります。アームをリモコンで遠隔操作をして、要救助者を発見した後、機内へ収納して救出する東京消防庁の「ロボキュー」があります。

他にも、リモコンで操縦し、せまい場所での火災にも対応できる無人放水車である「レインボー5」、放水ロボットや偵察ロボットの2台一組で活躍する「デュアルファイター・セーバー・ドラゴン」があります。

照明電源車

荷台に大きな照明と発電機を備えた車両です。夜の災害や事故現場を明るく照らせるだけでなく、病院など停電となってしまった施設に電気を送る事もできます。

現場の指揮をする緊急車両

指揮本部車

統括指揮者とも呼ばれています。大規模な災害や事故の現場で、現場の指揮統制を行う司令塔の役割を行います。屋根の部分に指揮官が上がって指示が出せるようになっています。

指揮車

災害や事故の現場の情報を集めて、作戦を立てるためのワンボックスの車です。災害現場の指揮だけでなく、地域の広報車としても使われる事も多いです。

広報支援車

車の左右が開くタイプになっていて、車内が大きな部屋として使用できる車です。車内には、仮眠用のベッドが10台まで並べることができます。シャワーやトイレ、キッチンのスペースもあるので、長い時間救助や火災の活動に有する時などに、職務を行う隊員をサポートする車となっています。

資材搬送車

長期間の救助活動が行われる事が予想される時には、装備品以外にも色々な資材が必要になります。それらの資材を運ぶのが、資材搬送車です。

救急要請に応えて出動する、救急車の仲間

救急車

白い車体に赤い赤色灯を付けた車両です。119番の通報を受けた時や、災害や事故の現場に駆け付け、医療機関への搬送や、傷病者への処置を行います。主に、救急隊員が乗りますが、運転は救急隊員ではなく消火隊や救助隊でも可能です。

救急隊員の中でも、特定の医療措置が可能な救命救急士も同乗します。日本の救急隊の中では、3人に1人は救急救命士を配備するように努められています。特に天井が高く、救急救命士が救急救命処置を立ったまま行えるようになっている救急車を、高規格救急車と呼んでいます。

消防救急車

消急車ともいわれています。ウィング式のドアになっていて、右側には給水の為のポンプを、左側にはベッドを備えた消防車と救急車の両方の機能を兼ね備えた車両です。日本では千葉県松戸市の六実消防署に初めて導入され、全国でも数台しかない珍しい車両です。

スーパーアンビュランス

東京消防庁のハイパーレスキュー隊だけが持つ、大型特殊救急車です。大きなトラックの形になっていて、左右を広げることによって大きな救護所としても使用できます。大規模な災害や事故現場で、傷病者がたくさん出る現場では、病院としての役割も果たします。

(文:千谷 麻理子)


本記事は、2017年8月15日時点調査または公開された情報です。
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