【大空からの消防活動】消防の「航空隊」の仕事内容と組織について

地方公務員の消防官の中でも「航空隊」の仕事内容の解説です。火災や事故、災害の時には、主に陸路から消火や救出救助、救急活動を行いますが、今ではその範囲は空にも伸びています。各自治体に配備されている消防の航空隊の活動内容、近年発足した東京消防庁の「エア・ハイパーレスキュー」についてまとめました。

消防の航空隊とは?

消防ヘリコプターを使用した消防活動を行う

大規模な火災の消火活動、陸路からの侵入が難しい場合の救出救助活動、遠隔地からの医療機関への搬送などを目的として、各自治体の消防機関では、消防車両の他に消防ヘリコプターを所有しています。

この消防ヘリコプターを使用した消防活動を行う部隊を「航空隊」と呼んでいます。

消防の航空隊の行っている消防活動とは?

空中消火

消防ヘリコプターから大量の水を散布し、空の上から消火活動を行います。大規模な市街地の火災や広範囲に及ぶ林野火災に有効です。なお、周りに注意を呼び掛けるため、消防ヘリコプターも上空からサイレンを鳴らす事ができます。

なお、空中消火の方法には大きなバケツに入れた水をヘリから垂らして撒く方法(バケット放水)、消防ヘリコプターに備えているタンクにつめた水を上空から放水する方法、火災現場上空を飛びながら撒く方法など、火災の規模や機体の機能などによって色々あります。

航空救助

消防ヘリコプターを使用して、空から救助活動を行います。ビル火災などで上層部から逃げ遅れた人、氾濫した河川や海に取り残された人、山岳地帯で遭難した人など、陸路からの侵入が難しい時などに有効な救助方法です。また、消防ヘリコプターなら状況に応じて、消火活動と救助活動の1つ2役を同時に行う事もできます。

主に航空救助隊員がヘリコプターから降下して救助活動を行います。場合によっては、地上にいる消防隊員と連携する事もあります。

航空救急

消防ヘリコプターの中にも救急隊員が搭乗し、陸上における救急車内と同等の救急処置をしながら医療機関へヘリコプターで搬送する事ができます。

救出救助した人が負傷していた場合、そのまま医療機関へ搬送する事もできますし、僻地や離島からの救急通報に対して、救急車ではなく消防ヘリコプターで搬送するケースも多いです。

上空からの情報収集

火災や事故、災害が発生した時には、地上からではその災害の全容を把握するのが困難な場合があります。その時、消防ヘリコプターなら上空から情報収集ができますので、上空からの映像をヘリに搭載しているカメラを通じて、地上にいる隊員や災害対策本部などに情報を送る事ができます。

また、震災などの大規模災害が起きた場合にも、被害状況を確認する為に、航空隊が先発隊として被災地に赴き、上空からの情報収集を行います。

広域応援

大規模な事故や災害が発生した際、その自治体の消防の人員や資機材だけでは対応できない事があります。その時に、消防組織では緊急消防援助隊として、都道府県の垣根を越えて被災地や事故現場に応援に駆け付ける制度があります。

消防ヘリコプターは、緊急消防援助隊だけでなく、元々近隣の都道府県同士で航空隊の協定を結んでいる事がほとんどですので、広域応援活動も多く行っています。

また、海外の大規模災害に対して、被災国から日本に応援要請を受けた時に、国際消防救助隊を派遣するシステムがありますが、消防ヘリコプターや航空隊も国際消防援助隊として派遣され、今まで多くの海外での災害現場でも活動を行ってきました。

消防の航空隊の組織を見てみよう

市町村単位ではなく、政令指定都市・都道府県で所有している事が多い

消防の組織は市町村単位となっています。ところが、全ての市町村の消防局に消防ヘリコプターや航空隊を設置するのは、規模や予算の面で難しくなっていますので、現状は東京都と一部の政令指定都市、そして市町村ではなく都道府県単位で消防ヘリコプター及び航空隊を所有しています。

現在日本にある消防ヘリコプターは77機

平成29年現在、日本全国の都道府県には消防ヘリコプターは77機となっています。内訳は総務省消防庁所有が5機、東京消防庁所有と15政令指定都市所有で31機、38都道府県所有で40機となっています。

なお、総務省消防庁で所有の5機は消防庁にあるのではなく、東京消防庁・京都市消防局・埼玉県・宮城県・高知県それぞれに無償で使用されています。これは、東京消防庁・京都市消防局・埼玉県・高知県は24時間運航が行える都市の為、大規模災害時における緊急消防援助隊の装備として消防ヘリコプターが使用できるからです。なお、宮城県は東日本大震災で当時仙台市若林区荒浜に配備されていた宮城県防災航空隊の庁舎が津波被害に合い、宮城県防災航空隊の消防ヘリコプター「みやぎ」も津波によって流されてしまったため、提供されました。

都道府県内で3機以上消防ヘリコプターを持つのは9都道府県です。
・北海道…北海道1機、札幌市消防局2機
・宮城県…消防庁1機、仙台市消防局2機
・埼玉県…消防庁1機、埼玉県2機
・東京都…消防庁1機、東京消防庁7機
・神奈川県…横浜市消防局2機、川崎市消防局2機
・静岡県…静岡県1機、静岡市消防局1機、浜松市消防局1機
・愛知県…愛知県1機、名古屋市消防局2機
・兵庫県…兵庫県1機、神戸市消防局2機
・福岡県…福岡市消防局2機、北九州市消防局1機

都道府県内で2機消防ヘリコプターを持つのは6都道府県です。
・千葉県…千葉市消防局2機
・岐阜県…岐阜県2機
・京都府…消防庁1機、京都市消防局1機
・岡山県…岡山県1機、岡山市消防局1機
・広島県…広島県1機、広島市消防局1機
・高知県…消防庁1機、高知県1機

以上の都道府県を除いた都道府県には、消防ヘリコプターは各1機ずつ所有しています。ただし、佐賀県と沖縄県には消防ヘリコプター及び航空隊は配備されていません。

航空隊の種類を見てみよう

都道府県防災航空隊

都道府県で所有・管理している消防ヘリコプターを使用するのは、都道府県防災航空隊です。都道府県内の管轄市町村へ消防ヘリコプターを使用した業務を展開しています。

都道府県防災航空隊に属しているのは、その都道府県内の各消防局で救助隊として勤務している消防職員です。数年単位の任期付きで各消防局から出向しています。現場における消火活動や救出救助活動、救急搬送などの消防活動は消防職員が行いますが、消防ヘリコプターの操縦や、日々のメンテナンスは航空隊員自らが行うのではなく、都道府県が採用した整備士やパイロットが行ったり、民間の航空会社や整備会社に委託したりしている事が多いです。

市消防航空隊

全国の政令指定都市の中で、一部(※)では政令指定都市の消防局が消防ヘリコプターを所有し、管理と運用をしています。市の消防局の消防ヘリコプターを使用し、空からの消防活動を行うのが、市消防航空隊です。

※札幌市消防航空隊・仙台市消防航空隊・千葉市消防局航空隊・横浜市消防局航空隊・川崎市消防航空隊・静岡市消防航空隊・浜松市消防航空隊・名古屋市消防航空隊・京都市消防航空隊・大阪市消防局航空隊・神戸市航空機動隊・岡山市消防航空隊・広島市消防航空隊・北九州市消防航空隊・福岡市消防航空隊の15政令指定都市が消防ヘリコプター及び市消防航空隊を配備している。

市消防航空隊の隊員は、都道府県防災航空隊と同じく救助隊員が航空隊員として出向する他、各消防署から選抜された救助隊員で専任の航空隊員として構成する場合や、事故や災害などの消防活動の内容や規模に応じて特別高度救助隊などのあらかじめ指定された部隊が消防ヘリコプターに搭乗して活動を行う場合もあります。

また、都道府県防災航空隊と市消防航空隊の両方を所有している都道府県の場合には、互いの航空隊間での協定を結んだ上で、消防ヘリコプターの共同運航なども行われています。中でも、兵庫県防災航空隊と神戸市消防航空隊は全国で唯一、都道府県防災航空隊と市消防航空隊の完全一体運営を行っています。

また、同都道府県内だけでなく、隣接している都道府県同士の航空隊同士も協定を結んでおり、消防ヘリコプターが必要な火災・事故・災害が発生した時には互いに応援する、資機材の搬送を行うなどの体制が整っているケースが多いです。

東京消防庁航空隊

東京消防庁の航空隊は、他の都道府県防災航空隊や市消防航空隊と異なり、東京都内の各消防局から救助隊員が出向するのではなく、東京消防庁航空隊の専任隊員として在籍し、消防ヘリコプターを使った消防活動を行っています。

また、消防活動を行う航空救助隊員だけでなく、消防ヘリコプターの操縦や整備を行うのも東京消防庁航空隊員です。その為、救助隊員の中から選抜され、その後ヘリコプターの事業用操縦士の免許を取得した者が在籍し、消防ヘリコプターの操縦を行っています。逆に、既に整備士や操縦士の有資格者が東京消防庁の採用試験を受けて合格した場合でも、いきなり航空隊に配属になる事はありません。まずは都内の消防署に配属になり、現場での経験を踏んだ上で東京消防庁航空隊へ配属になります。

東京消防庁航空隊は、現場の消防職員として経験のある救助・救急隊員の中でも、航空救助員は特別救助隊の隊長経験者(特に山岳救助隊・ハイパーレスキューに在籍していた時に、航空救助連携隊の経験がある者)、航空救急員は救急隊の隊長経験者から選抜されていて、航空隊員としての適性試験に合格した後に航空隊へ配属になります。

豆知識

東京消防庁航空隊の消防ヘリコプターは消防庁1機、東京消防庁7機の計8機となっていますが、いずれも鳥の名前(※)が付けられています。

(※)ちどり「アグスタウエストランド AW139」・ひばり「ユーロコプター AS332」・かもめ「ユーロコプター AS365」・ゆりかもめ「ユーロコプター EC225」・つばめ「ユーロコプター AS365」・はくちょう「ユーロコプター EC225」・こうのとり「ユーロコプター EC225」・おおたか(総務省消防庁機)「ユーロコプター AS365」

このように、各自治体で所有している消防ヘリコプターには、関連性のある名前や、地域の呼称がつけられている事が多いです。

日本の新しい救助形 東京消防庁の「エア・ハイパーレスキュー」

2016年1月に新しく発足

東京消防庁には、東京都内だけでなく日本全国の大規模事故や災害にも対応できる、高度な救助技術と知識を持った救助の精鋭部隊である消防救助機動部隊(通称ハイパーレスキュー)が配備されています。そして、2016年1月には、空のハイパーレスキューにあたる「航空消防救助機動部隊」(通称エア・ハイパーレスキュー)が発足されました。

エア・ハイパーレスキューは2011年3月の東日本大震災を受けて、陸上からの火災消火や救助活動が困難な状況でも空から高度な技術を駆使した対応が可能なように、そして近年起きると予想されている首都直下型地震や南海トラフ地震のような大災害にも対応できるように2016年1月に発足され、同年の東京消防庁の出初式で発隊セレモニーが行われ、初めて披露されました。

なお、正式名称は航空消防救助機動部隊ですが、本記事では通称である「エア・ハイパーレスキュー」にて表記しています。

エア・ハイパーレスキューの持つ装備を見てみよう

ヘリ消火装置:日本の中でもビジネスの中心地となっている東京都にはオフィス街も多く、高層ビルも多くなっています。高層ビルでの火災にも対応できる消火用装置が消防ヘリコプターに備え付けられています。

従来の消防ヘリコプターの消火装置は、前述の吊り下げたバケツやタンクからの散布など、いわゆる垂直方向からの放水しかできませんでしたが、エア・ハイパーレスキューの消防ヘリコプターに設置されている消火装置はブーム式消火装置となっていて、水平方向への放水が可能になっています。

同時降下用装置・大量救出用ゴンドラ:高層ビルの屋上や水害地域など、孤立状態となっている場所へ航空救助隊員を複数同時に投入するための装置です。また、大量救出用ゴンドラを使用すれば、消防ヘリコプターでも同時に15人までの要救助者を助ける事ができます。

車両吊り下げ装置:名前の通り、消防ヘリコプターで車両を吊り下げて運ぶ事ができる装置です。孤立している地域へ救助や救急を行う時に使う車両や、車両に入っている資機材ごと搬送できます。

陸上の消防車両:エア・ハイパーレスキューの配備されている江東航空センターには、救助車、高規格救急車、消防ポンプ車、査察広報車の陸上の消防車両も配置されていて、陸上の災害にも通常の消防署の様に対応できます。

消防の航空隊になるには?

消防士になってから選抜される

消防の航空隊になるには、まず自治体の消防職員にならなければいけません。その後、消防署に配属になって現場を経験した後、航空隊として選抜され、適正試験に合格後に航空隊に配属になります。

また、前述の通り中途採用で、既に整備士や事業用操縦士の免許など、航空隊の活動において有利な資格を既に持っていても、いきなり航空隊に配属になるのではなく、まずは消防署で現場を経験します。

なお、航空救助隊や救急隊になるには消防職員にならなければいけませんが、消防ヘリコプターの整備士や操縦士になりたい場合には、東京消防庁を除き、民間の航空会社などに就職し、そこから出向するケースもあります。

(文:千谷 麻理子)

本記事は、2017年9月22日時点調査または公開された情報です。
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