【受刑者の脱走騒ぎ!?】2018年4月 松山刑務所での逃走のニュース

【国家公務員「刑務官」のコラム】
今回のテーマは「脱走」です。

日本では毎年2万人ほどの受刑者が一般社会に出てきていますが、今回は、受刑者が刑務所を脱走するという事故について、解説します。執筆は、元・刑務官の小柴龍太郎氏です。


このコラムを書いている2018年4月8日に、ある受刑者が松山刑務所の大井造船作業場から逃走するという事故が起きました。

なかなか捕まらないために、テレビ・ラジオでは連日トップニュースの一つとして報道される事態となりました。

受刑者の逃走(一般には「脱走」と言われたりしますが、法令用語としては「逃走」です)というのは、かくも世の中を騒がせるものだと改めて思った次第です。

刑務所から脱走?

私はかつて実際に刑務所で働いており、大井造船作業場にも何度か行ったことがありますので、これらの報道に接しても、(大井造船作業場の受刑者なら心配ないな)と思っていました。

人に危害を加えるような犯罪はしないだろうという意味です。こんなことを言うと世間から叱られるかもしれませんが、一口に受刑者と言ってもいろいろなんです。

それくらいこの作業場に送り込まれる受刑者というのは厳選されます。

受刑生活に真面目に取り組み、職員の指示には素直に従う。塀のない構外作業場に出しても大丈夫。万一逃走しても地域の人に重大な危害を加えるようなことはしない。そう分析された受刑者だけが選ばれて、全国から集められるのがこの大井造船作業場だからです。

しかし、選ばれた受刑者といってもそこはやっぱり人の子。何かのきっかけでこのようなことに発展することがあり得るのです。実際、過去にも何度か逃走の事例があります。

その理由としては、例えばほかの受刑者との人間関係に問題が生じてしまったとか、刑務官や作業場の上司に叱られて落ち込んでしまい「もうここには居られない」と思ってしまったとか、あるいはまた母親など大事な人が死に瀕しているという情報に接したとか、そんなことが考えられます。

警察への逮捕案件へ

刑務所から受刑者が逃走すると、48時間以内に限り刑務所がその受刑者を連れ戻すことができるのですが、このコラムを執筆している時点で既にその期限が過ぎてしまいましたので、後は警察による探索と逮捕を待つだけとなりました。

何件かの窃盗を重ねて逃走を続けているようですが、1日も早く自ら警察官の下に名乗り出てほしいと思います。騒ぎが長引くほどこのような開放処遇を展開する施設への縛りがきつくなると予想されるからです。


事実、世論の高まりを受けて、法務大臣は省内に検討委員会を設けてこのような施設の警備の在り方などを検討すると発言しました。このままでは時代の流れに逆行するような受刑者処遇となることが懸念されます。

まとめ

受刑者のほとんどはまた一般社会に出てきます。

今回の受刑者は逃走という形で法律に違反して刑務所から脱しましたが、この日本では毎年2万人ほどの受刑者が一般社会に出てきているのです。そして決して少なくない数の受刑者が再犯しています。

なので、逃走事件そのものに焦点を当てて大きく報道するくらいに受刑者の再犯防止に関する報道もしてほしいものだと思わずにはいられませんでした。

(文:小柴龍太郎)

本記事は、2018年7月27日時点調査または公開された情報です。
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