【市役所のお仕事】市民の健康づくりを支える「健康長寿課」の体験レポート

社会人採用で「市役所」に入庁し、配属された健康福祉部の健康長寿課での仕事をレポートします。各地方自治体の市区町村役場では、市民へのサービスを中心に、多岐の業務に渡ります。今回は、その中でも健康・福祉に関する業務の体験談を中心に解説します。


市役所に初登庁

これまでの海外貿易等民間経験を10年以上経た後転職し、公務員社会人1名枠の募集に応募し見事初登庁を向かえるに至り感動と喜びがありましたが、それ以上に緊張と不安で一杯だったことを覚えています。

社会人採用は私だけと思っていたので他は皆さん新卒者でキラキラなのだろうな~私は3人目を出産したばかりの30代・・どうしよう、と不安高まっておりました。

ですが登庁してみるとその年は10名程の職員が採用になっており例年は数名しか採用はとらなかったそうでこの年のみ大量に採用された年であり、かつ社会人枠自体をこれまで採用実績が無く初の試みだったそうです。

しかも奇跡的なことに社会人枠1名の予定が実際には私を入れて3名の社会人が採用され、技師も数名いらっしゃったので新卒者というよりは30代中堅の方が半数を占める実に異色豊富な年だったと後で人事の方がおっしゃっていました。

新採用職員が揃い定刻になると人事の方が来られ簡単な挨拶と事務説明が始まります。その後部屋を変え、市長、副市長、教育長三役が登壇されいよいよ新規採用職員辞令交付式が始まります。

司会進行は人事の方が努め、「○○○○」と一人一人名前を呼び上げられ、新規採用者たちが一人ずつ市長の前に立ち並びます。市長より「○○○○、○○市職員に任命する。○○部○○課に勤務を命ずる」と読み上げられ辞令を受け取ります。
どんどん私の前の方たちが名前を呼ばれていく中で私の順番になり、まず人事の方に一礼、その後、副市長、教育長に一礼し、ようやく市長の真の前に立ち、一礼します。

目の前に市長の顔が近くに現れ市長の手より辞令が交付されるともう緊張が絶頂極まります。採用面接時のあの遠くに座っていた市長が今は自分の目の前にあり、その市長から直に手渡される瞬間、自分は公僕として「「全体の奉仕者」、「市民の奉仕者」であるとい
う原点の気合と覚悟が自分の中に芽生えた瞬間でした。

全員の辞令交付が終わった後は市長からのお言葉を頂きました。もうすでに詳細には記憶してはいませんが、ただ、当市の市長は「挨拶」に力を入れていること、「出来ない」ということが好きではなく、常に可能性を見出し、住民の要望を吸い上げ、一人一人の住民がキラキラと輝けるお手伝いを前向きに臨みたい方でしたのでそのような趣旨のお話を頂いたと思います。
三役が帰られた後は先ほどの部屋に戻ってオリエンテーリングが始まります。

公務員としての心構え、職場のルールとマナー、組織等について基本的な事項の説明が次々にされていきます。ただ私の頭の中では、「福祉ってなんだ?健康?高齢者?子ども?一体何するところだ?」という先ほどの辞令を頂いた配属先のことばかり気になっていました。

その後も各課他部署の方が説明をしにやってきますが一番記憶に残っているのはやはり給与と勤務条件のことでした。

社会人採用5年以上が採用条件であった通り民間経験がどれほどに今後の公務給与に反映されるものかがとても不安な部分でした。結果は○割引でした。規則条例で決められている通りだそうで公務員の前歴であれば100%評価され引き継がれますが民間の経験では何割は差し引かれるそうです。とりあえずカウントをしてもらえないわけではなさそうだったので私的には安堵しました。
その後は人事の方が各関係機関へ私たちを連れて挨拶巡業が始まります。


これは実に病院の大名行列みたいで面白い経験でした。市役所といえば住民票を取りに市役所の市民課位しか行ったことの無かった私は税務課、福祉課、議会事務局、農林課等入ったことの無い世界を垣間見られた初の瞬間であり、この頃にはもう既に緊張は取れむしろワクワク感が押し寄せていました。

課を回る度、職員の方々が仕事中の手を止めこちらを一旦振り向きます。その都度人事の方が「今年度の新人職員です、どうぞよろしくお願いします」と挨拶され、私たちは全員そろって「よろしくお願い致します」と一礼します。各部署の方が拍手して頂いた後私たちはその場を去ります。全部の課を回り終えた頃にはお昼にさしかかっていました。

その後昼からは公務員になったことによる給与振込みの設定や健康保険の書類等、事務説明をされ各課自分の配属先へ移動となりました。

いざ、配属先の「健康福祉部」へ

いよいよ自分の配属先にきました。またどきどきと不安で一杯になります。果たして自分は何をするのか、公務とはなんだろう。全ては未知の世界が始まります。職場では自分の席が既に用意されパソコン、机の中には電卓、鉛筆、消しゴム必要な文具用品が揃っていました。

まずは健康福祉部にはどんな課があるのか間単にご説明します。

▼福祉・児童課
福祉・児童課には、子育て支援に関する業務として各保育園、子育て支援センター等施設の管理指導、子ども手当や、子ども医療費助成、母子父子等医療費助成等の手当てに関すること、児童虐待やひとり親家庭の相談や対応まで多岐にわたります。
社会福祉に関する業務として身体障害者福祉法、知的障害者福祉法、生活保護法を所管するほか、精神障害者福祉などの社会福祉関係、結婚相談室に関する業務など、身体障害者福祉、知的障害者福祉、精神障害者福祉、生活保護等の支援をします。

▼健康長寿課
乳幼児期から高齢期までの健康づくりに関する事務・事業(健康診査、がん検診、健康教室、健康相談、予防接種、食事指導など)を行い、要介護認定、介護保険料などの介護保険に関する事務、高齢者総合相談窓口として、高齢者の保健、介護福祉サービスなどの連絡調整を行います。私はこちらの介護福祉Gに配属となりました。

市役所公務員のプロとして仕事に従事・担当をもつ

さて、いよいよ新人職員の稼動です。はりきって出社したものの、初の挨拶、初の名札、初の座席、全てが初物尽くしで緊張です。こちらは緊張していても既に私の胸元には○○市職員 主事 ○○○○ という名札が首から掲げられ来庁されたお客様には私が新人であるかどうかは関係ありません。市の職員として住民の皆様は続々と問い合わせ相談で来庁されます。介護相談や介護保険料、介護認定の問い合わせ相談、申請が毎日来ます。

私は介護サービスの担当になりました。私自身は介護福祉の資格も相談資格も持ち合わせていない為、一事務職員として市民から申請を受けた後の事務ワークを行っていくことになります。

ただ、専門資格、専門知識はなくとも、その事務仕事の大元にある介護分野の法律の勉強が始まりました。

毎月上司と一緒に介護認定の会議に参加もしました。介護保険制度により、要介護状態になった場合は介護サービスを受けることができるのですがこの介護サービスを受ける上で一番重要なのが要介護度になります。

要介護度が低いのか高いのかにより受けられるサービスの内容も上限額も大幅に変わります。なので、介護認定審査会でなされる判断が最終的な決定でありそこに至る前には色んな専門職員による聞き取りや判定数値を以って辿り着く場所です。

ですが、この素人同然の私が上司と一緒に行った所で全く聴講すら追いつかず毎回必死の速記ワークと化し、ひたすらメモを取ることに必死でした。会議終了後は認定の通知やそれによる介護サービス内容の反映をデータに取り込み、実際の支給内容と対応させていく作業になります。毎月の当市の高齢化率は上がるばかりでどんどんサービス量は増えていくばかりで事務量が少なくなることは全くありえません。

ただ、日々事務ワークに追われる中でも私が楽しみを見出す部分がありました。それは高齢者の方とお話が出来ることでした。介護サービスの事務ワークはとても頭が一杯になります。難しい法律やエクセル表との睨めっこで今月分の介護認定によって来月からの支給サービス内容が全部変わってくるのでその管理、手配、ご案内通知、発送業務等、日々頭の中が計算式だらけになっていました。

ですが、高齢者団体の事務局が隣接されていてその担当に私がなったお陰で何かとそちらとの繋がる要件があり出向いていました。1年に一回のお祭りや市長を呼んでの運動会等、日々の事務に終われる殺伐とした空間から離れ、おじいちゃんおばあちゃんと和気藹々とお手伝い出来るひとときは私の憩いの場でありました。


市役所公務員になってよかった!思い入れのある仕事「米寿訪問」

さて、もう一つ、私が担当した業務の中で一番充実し濃密で有意義な時間だったといえる事業がありました。やはりおじいちゃん、おばあちゃんとの交流の中に感じられたものですが市長の米寿訪問です。各市では、88歳を迎える方に市長がお一人お一人ご自宅にお伺いしお祝いを贈呈します。近年高齢化によりこの対象年齢を上げ100歳を対象に訪問される市が多くなっている傾向がありましたが私が当時担当していた時期は88歳が対象者でした。

事前に市長がお祝いでご自宅訪問されるご家庭について一軒一軒アポイントを得ていきます。中には介護施設にいる等の理由により訪問を辞退されるご家庭もありましたが、やはりお祝いでありめでたいことでほとんどのご家庭は飛び上がって喜んでくださりました。
私は事務方なので市長の巡回するルートを事前に視察し、訪問者の家を確認し、お祝品の発注から賞状の発注、筆入れまで手がけることになります。

訪問当日は心臓がバクバクし胸高まりました。市長が目の前にいらっしゃる機会は職員といえどもそう頻繁になく、まして、市民の方と1日中触れ合える貴重な機会でしてとても充実し興奮したのを覚えています。行く先々のご家庭全てが米寿を迎えられたご本人様を取り囲み、皆が温かい雰囲気に包まれているのです。何よりご本人様が市長とお会いし握手を交わし、自分の為に来て下さったと大喜びで泣いている姿はこちらも感動する場面ばかりでした。

それは、市長に来てもらって喜んでいるご本人様の笑顔を頂ける機会に遭遇し、そのご本人様の喜ぶ姿をまわりのご家族様も見守り喜ぶという笑顔の連鎖がそこにありました。

最後は市長とご本人様が真ん中に座り、ご家族皆様がそのお2人を取り囲み事務方の私が写真をパチリと収めます。なんと素敵な瞬間でしょう!!全員の視線が一気にこちらに促され、まるで大家族の記念撮影会です。今日の日のお祝いに一個人が、職員が、市長とご本人様ご家族の最高なお祝いの瞬簡に立ち会えるなんて、とても奇跡的であり尊い瞬間を頂きました。これこそ、市職員だからこそありつけられた贅沢で有り難い稀有な時間でした。

まとめ

日々の事務ワークは本当大変ではありますが、時々こうやって人様から喜びを頂き、一緒に分かち合い、共有出来る瞬間や、相談される中でその方と通じ、その方の人生に触れられる瞬間を頂けるのは本当に有り難いことであり、公僕だろうが、民間だろうが、共に仕事をしながら相手の人生にちょっと立ち会える、お手伝いが出来る、喜びを分かち合えられるというのは大変喜ばしいことです。

早くも1年で異動にはなりましたが大変素晴らしい経験を頂きました。

本記事は、2017年5月6日時点調査または公開された情報です。
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