いまさら聞けない!ウクライナ侵攻の背景とアメリカの立場(2022年3月3日まとめ)

そもそも、どうしてロシアはウクライナに侵攻したのでしょうか?いったい何が原因で戦争に突入したのか、いまさら聞けない点を分かりやすくまとめました。そして、知っておきたいアメリカの立場についても解説します。


ウクライナ侵攻の背景とアメリカの立場を解説!

2022年2月24日、ロシアはウクライナに武力行使で侵攻を始め、1週間で首都キエフを包囲する状況になっています。(2022年3月3日現在)

そもそも、どうしてロシアはウクライナに侵攻したのでしょうか?

いったい何が原因で戦争に突入したのか、いまさら聞けない点を分かりやすくまとめました。そして、知っておきたいアメリカの立場についても解説します。

 

ロシアによるウクライナ侵攻が始まった理由

今回のウクライナ侵攻は主に以下3つのことが理由と考えられています。

1.   ロシアがNATOの東方拡大を許容できないから

2.   ロシアにとって自国同然のウクライナを親欧米にさせたくないから

3.   アメリカの主権が弱まったから

それでは次に1から解説していきます。

1.   ロシアがNATOの東方拡大を許容できないから

ロシアのプーチン大統領にとって最も重要とされている理由が「1. NATOの東方拡大を許容できないから」です。

この理由をしっかり把握するために「NATO」について理解しておきましょう。NATOについて理解できれば、今回のウクライナ情勢の概要がつかみやすくなります。


そもそもNATOとは?

そもそもNATOとはNorth Atlantic Treaty Organizationの頭文字をとった言葉で、日本語では「北大西洋条約機構」と呼ぶ、世界主要国際機関のひとつです。

NATOは世界30ヶ国が加盟しており、その責務である「集団防衛」、「危機管理」、「協調的安全保障」の3つの点で各国が協力しあうことを目的にしています。(日本は非加盟ながらグローバル・パートナーとして関与している)

NATOは冷戦の最中だった1949年4月に初めて締結されましたが、当時の目的はロシア(旧ソ連)をはじめとする「共産主義国」に対抗するための軍事同盟でした。また、共産主義国に対して民主主義を広める役割も兼ねていました。そんなNATO設立の中心になったのがアメリカです。

NATOの主要加盟国は、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツなどで、ロシアの西側国境に面するエストニア、ラトビア、リトアニアなども加盟国です。NATO加盟国は、設立当初12ヶ国だったものの、次第に加盟国を増やし、ソ連崩壊(1991年12月)以降、さらに14ヶ国増え、2022年時点で30ヶ国にまで拡大しました。

ロシアからみたNATO

ロシアからしてみれば、自国西側のヨーロッパ諸国がどんどんNATOに加盟していくことは「NATOの東方拡大」となり、ロシアにとって脅威になります。また、ヨーロッパ諸国主体に見えるNATOを実質的に操作しているのがアメリカという点も気に入らないでしょう。2022年2月21日、プーチン大統領はウクライナのゼレンスキー大統領を「アメリカの操り人形」と呼んだことによく表れています。

このように、ロシアなどの共産主義国に圧力をかけたい欧米諸国と、それを快く思わないロシアとの間で対立関係を生んでいるのがNATOという訳です。プーチン大統領はこれ以上NATOが拡大しないよう法的拘束力を伴う確約を要求しています。

そのような状況下で、ウクライナも新たにNATOに加盟しようとする動きがプーチン大統領の怒りを買ったとみられます。ウクライナはロシア国境に面していることから、仮にウクライナがNATOに加盟すると、ロシア西側の国境の多くはNATO加盟国が占めることになり、ロシアは追い詰められたような格好になりかねません。(もともとロシアの西側はロシアのアキレス腱のような存在とされている)

プーチン大統領としては、ウクライナのNATO加盟阻止は自国を守る意味でも重要で、武力行使してでもウクライナをロシアの配下にしておきたかったと考えられています。また「反ロシア派」として勢力を拡大し続けるNATOに対して、いつまでも野放しにする訳にはいかないという思いもあるでしょう。プーチン大統領は直近の演説の中で「NATOはアメリカの外交政策の道具」と発言していることから、NATOの存在が許せないことがよく分かります。

2.   ロシアにとって自国同然のウクライナを親欧米にさせたくないから

ふたつ目の理由である「2. ロシアにとって自国同然のウクライナを親欧米派にさせたくないから」は、ロシアとウクライナの歴史的な関係を紐解くとよくわかります。

ウクライナは1991年8月24日の独立宣言まではソ連を構成する一部でした。プーチン大統領にしてみれば、同じルーツであるウクライナが親欧米派(反ロシア派)になることは、自身の愛国心を傷つけられるような気持ちでしょう。

プーチン大統領はウクライナを「兄弟国家」と呼んでいます。この背景には、9世紀から13世紀まで、現在のウクライナの首都キエフ一体に存在していた「キエフ大公国(Kievan Rus’)」があります。ロシア、ウクライナ、そしてベラルーシはキエフ大公国がルーツであることから、プーチン大統領はウクライナに特別な思い入れがあるとされているのです。(ロシアとベラルーシの国名に”rus”が含まれているのはこのため)事実、2021年7月12日にプーチン大統領はウクライナとロシアは同じ民族という見解の論文を発表しています。

このように、ウクライナを巡ってはプーチン大統領の強い愛国心と歴史的なルーツがあることから、ウクライナを親欧米派にする訳にいかず、結果的に武力行使に至ったと考えられています。(プーチン大統領は今回のウクライナ侵攻について、ウクライナ内の親欧米派が親ロシア派を攻撃していると主張しており、民族の分断を煽っているのはウクライナとしている)

3.アメリカの主権が弱まったから

最後の「3.アメリカの主権が弱まったから」は間接的ながら大きな要因と言えます。

プーチン大統領はアメリカを主体にしたNATOが勢力を拡大し、反ロシア派が増えていることを快く思っていません。しかし、冷戦終結からこれまでNATOの勢力拡大に対して沈黙していたのは、アメリカと衝突することを避けていたからと見られています。とくに、トランプ元大統領と敵対関係になることは得策でないと考えたことでしょう。

そんな中、アメリカではバイデン新政権がスタートし、1年経過したところで世界におけるアメリカの主権が弱体化していると見切ったとされています。この要因として挙げられるのが「2021年8月31日のアフガニスタン駐留米軍撤退」です。バイデン大統領は「反政府軍(タリバン)が同国を全面制圧する可能性はない」としたうえで撤退を決断しましたが、予想は外れて、わずか数日でタリバンが全土を掌握する事態になりました。また、バイデン大統領とハリス副大統領が「民主主義の団結こそ勝利を生む」という理想論だけをかざしていることに「アメリカの弱体化」を見たと言われています。


仮に、トランプ氏が大統領だった場合、軍事衝突が起きてしまう可能性もあったでしょう。プーチン大統領はこの事態を避けつつも、アメリカに圧力をかけることで単独覇権を失墜させたい思惑と見られます。事実、プーチン大統領はウクライナ侵攻をめぐる発言の中で「問題はアメリカ」と述べており、ウクライナやNATO越しにアメリカを見ていることは間違いありません。

アメリカの立場

ロシアによるウクライナ侵攻問題に対するアメリカの立場は明確です。これまでのところアメリカは主体的には関わらないという立場をとっています。

ウクライナ侵攻が始まって1週間経過した3月2日、バイデン大統領は一般教書演説を行いましたが、その中で改めて「ウクライナへの米軍派遣はない」と明言しました。これはかねてから支持率下落が続いていることや、世論ではウクライナ情勢への介入に否定的な声が多いことが影響していると言われています。

バイデン大統領は米軍がウクライナに派遣されることはないと早い段階から明言していました。そして、侵攻が続いている中でも派遣を否定していることから、主体的な関りを避けているのは明白です。

仮に、アメリカ世論がバイデン政権を後押しして軍事介入した場合、それは第三次世界大戦の始まりを意味します。(NATO加盟国だけで30ヶ国は参戦する可能性がある)バイデン大統領と民主党政権は自らが新たな戦争を引き起こす張本人にはなりたくないのが本音です。また、NATO加盟国ではないウクライナのためにリスクをとるメリットがないのも事実でしょう。ましてや、核兵器を使う事態になってしまっては、バイデン大統領に限らずアメリカ民主党の信頼は一気に失墜します。バイデン大統領はロシアやプーチン大統領を非難しているものの、本音は「我関せず」で通したいところでしょう。そうすればアメリカ国民からの支持率を維持でき、トランプ氏の復権を阻止できるからです。

一方で、ロシアがNATO加盟国であるハンガリーやルーマニアといった隣国にまで侵攻するような事態になった場合、アメリカは無視できなくなります。なぜなら、NATO条約第5条の集団防衛が適用されるためです。

NATO条約第5条をめぐっては、2001年9月に起きたニューヨーク同時多発テロ後、アメリカがアフガニスタンを攻撃した際に、NATO同盟国も侵攻に加わったという事例があります。結果的に20年以上続いたアフガニスタン侵攻は泥沼化したことから、ひとたびNATO条約第5条が発動すると加盟国を巻き込んで、取り返しがつかない事態になることをアメリカが一番よく理解しているのです。このような事情もあり、アメリカはウクライナ問題とは一定の距離を置きたいものと見られます。

まとめ

以上、「いまさら聞けない!ウクライナ侵攻の背景とアメリカの立場」でした。

ご紹介したように、ロシアがウクライナに侵攻する理由は大きく分けて3つ挙げられます。また、アメリカはこの問題に対して主体的な関わりを避けており、結果的にプーチン大統領の暴挙を許す事態になっています。

ロシアの侵攻がNATO加盟国に及ぶような事態になると情勢は大きく変わるため、ウクライナ侵攻が終わったとしてもロシアの動向から目が離せません。今後は、NATOを間に挟むようにして対立するロシアとアメリカの構図を意識して注目しましょう。

本記事は、2022年3月4日時点調査または公開された情報です。
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