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アメリカ大統領選が延期?「郵便投票」の何が問題なのか解説

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はじめに - なぜ延期?「郵便投票」の問題

2020年7月30日、アメリカのトランプ大統領は11月3日に控えている大統領選を延期する可能性に言及し、アメリカではちょっとした騒動になっています。

日本でも報道されているように、再選を目指すトランプ陣営は、なんとかして再選を勝ち取ろうと焦りを隠せないでいます。アメリカでは、トランプ大統領の対立候補となる民主党のバイデン氏優勢といった報道が多く、トランプの再選はほとんど無理とする意見もあります。

そんななか、トランプ大統領が「大統領選の延期」について言及したことは、アメリカ国民の注目を集めました。トランプ大統領が大統領選の延期理由として挙げているのが「郵便投票」です。

今回は、大統領選における郵便投票の何が問題になっているのか、郵便投票がどのような影響を及ぼすのかなどを具体的に解説します。

アメリカ大統領選挙における「郵便投票」を巡る騒動の概要

はじめに、郵便投票を巡る騒動の背景を見てみましょう。

トランプ大統領によるツイート

郵便投票が問題視されるようになったきっかけとされているのが、トランプ大統領による一連のツイートです。

直近では「人々が安全で適切な投票ができるようになるまで大統領選を延期しようか?」とツイートしています。このツイートにおいて初めて「延期」という表現が用いられたことから、アメリカ国民は反応しました。

4月には「仮に郵便投票が全国で導入されれば、(自身が所属する)共和党員が当選することは二度とない」とツイートし、郵便投票では公正な選挙にならないと批判しています。

また、5月には新型コロナウイルス感染防止のために郵便投票を導入しようとするカリフォルニア州に対して「郵便投票が導入されれば投票用紙は偽造され、郵便ポストは奪い去られる」や「カリフォルニア州知事は誰彼構わず投票用紙を送っている」とツイートしています。(後に根拠がない情報としてTwitter社から警告を受けている)

このように、トランプ大統領は新型コロナウイルス感染拡大によって、郵便投票を採用する州が増えることが現実的になったことに対して、警鐘を鳴らす意味でツイートを続けています。

ちなみに、大統領には大統領選の日程を延期する権限はなく、日程を変えるためには連邦法改正が必要です。上下両院で過半数を得ることが不可欠ですが、下院は民主党が占めているため、延期は現実的ではありません。


トランプ大統領によるツイートに対する周囲の反応

大統領選延期について言及したトランプ大統領に対して、同じく共和党の重鎮であるMitch McConnell(ミッチ・マコーネル)やLindsey Graham(リンゼー・グラム)上院議員らは、不正の可能性について一定の理解を示しつつも「どんな状況でも予定通り実施」とコメントしています。

仲間である共和党の主力メンバーの賛同を得られなかったトランプ大統領は、30日の記者会見において「大統領選の延期は望まない」としたうえで「今回の選挙は歴史上最も不正な選挙になる」と発言し、郵便投票を批判しています。

アメリカ大統領選挙、投票の仕組み

大統領選はどのように投票が実施されるのか見てみましょう。

州や街ごとに違う投票方法

アメリカの選挙は、全国で統一された方法で実施されている訳ではないことを念頭に置いておくと良いでしょう。

大統領選は国家機関によるものではなく、地方当局によって運営されるため、州や街ごとに投票方式や投票用紙などの仕組みが異なります。

また、事前に有権者登録が必要であったり、IDを保有していない場合は有権者登録すらできない(選挙に参加できない)ケースもあります。

統一されていない代表的な例が「投票用紙」です。古典的なチェックマークや塗りつぶしを採用している場合もあれば、レバー式、パンチカード式、タッチパネル式などを採用していることもあります。

投票所で投票

最も基本的な投票方法が投票所で投票する方法です。あらかじめ郵送されてくる投票所入場券に該当する書類を持って最寄りの投票所に行き、投票用紙と引き換えに投票できる仕組みです。日本の投票方式と同じと考えて良いでしょう。

ただし、アメリカの大統領選は「平日」の開催になるため、仕事や学校に忙しい人は参加しにくい欠点があります。

早期投票

日本で言う「期日前投票」のことです。あらかじめ送られてくる投票用紙を、公共施設やショッピングモールなどに設置される投票箱に投函することで投票します。最大3週間前から投票可能ですが、開票および集計は投票締め切り後まで実施されません。

郵便投票

あらかじめ投票用紙が郵送されてきて、返送することで投票できるのが郵便投票です。基本的には身体的な不自由があることなど、投票所に出向くことが難しい人に対して適用される事前登録制の方法です。

2020年の大統領選については、新型コロナウイルス感染防止を考慮し、5つの州が全面的に郵便投票を採用しました。投票所か郵便投票を選べるハイブリッド式を採用する州も増えており、11月の本番に向けて、各州で投票方法が調整されています。

仮に、多くの州で郵便投票が採用される事態になれば、不正が起こりやすくなって、公正な選挙にならないことから、トランプ大統領は各州に郵便投票を採用しないよう訴えています。

郵便投票の問題点について

トランプ大統領は一貫して「郵便投票は不正の温床だ」ということを訴えていますが、ここでは郵便投票における「不正の可能性」について紹介します。

投票用紙紛失の可能性

トランプ大統領は郵便投票で不正が起こる要因のひとつとして「紛失」を挙げています。


有権者は郵送されてくる投票用紙に記入をしたうえで返送する必要がありますが、返送の際に紛失が起きて、本来なら得られるべき票が得られない事態が起こるとしています。

紛失が意図的なものかどうかに関わらず、紛失によって「正当な票が入らない」ことが問題点です。

選挙結果確定までの時間が長い

郵便投票が多くなるほど結果が確定するまでに時間を要します。

アメリカ合衆国憲法修正第20条によって大統領選は11月3日、大統領就任式は翌年1月20日と定められていることから、結果の集計に時間を要する事態になると「その時点」の結果が優先される可能性があります。

つまり、開票がもつれた場合は「なし崩し」に結果が確定することもあり得るのです。憲法の日程を変更することを、わずか2ヶ月で実現することは難しいことから、結果確定がずれ込むことは避けたいところです。

しかし、郵便投票が多くなるとこの懸念が現実化するため、問題視されています。

偽造投票用紙の問題

トランプ大統領は自身のTwitterで「外国政府によって大量の投票用紙を偽造される」と偽造の問題についても触れています。

仮に偽造投票用紙が出回ったとした場合、再集計の必要が生じます。本人確認の作業も含めると、選挙結果が確定するまでに時間がかかるため、混乱は免れません。

偽造投票用紙が出回ると「選挙が混乱する」ことから問題視されているのです。

盗難による偽造投票の問題

何者かが「なりすまし投票」出来てしまうことも郵便投票の問題点です。

有権者の自宅に郵送される投票用紙が盗まれた場合、何者かがサインをして返送(投票)可能になります。有権者の署名は政府機関が管理する有権者名簿に登録されているため、整合性がとれるものの、相当な時間を要するため現実的ではありません。

盗難による偽造投票も、選挙の混乱を狙った手法のひとつとして問題視されています。

このように、紛失、時間、偽造、盗難の点において郵便投票は公正にならないことから、トランプ大統領は「不正の温床」として郵便投票を警戒しているのです。

郵便投票の影響

次に、大統領選における郵便投票の影響を見てみましょう。

郵便投票は民主党に有利

郵便投票が多くの州で採用されると民主党が有利になると考えられています。

アメリカの若者の多くは民主党を支持している傾向があり、仮に郵便投票が採用されると、仕事や学校に忙しい若者層が投票しやすくなります。この結果、民主党が票を獲得しやすくなることから、共和党のトランプ陣営は郵便投票を出来るだけ避けたいと見られています。

若者層が選挙に参加しやすくなることは郵便投票の影響と言えるでしょう。一方で、スタンフォード大学の研究では「郵便投票は投票率を上げるものの、政党の偏りに働くことはない」とされていることから、影響力の大きさは不透明です。

トランプ大統領への投票率を下げてしまう可能性もある

トランプ大統領は「郵便投票=不正」というイメージを広めていますが、このことがかえって投票率を下げる懸念があります。

トランプ大統領を支持する人たちも「郵便投票=不正」の思い込みをしてしまうことで、公正さを疑い、投票に参加しなくなる懸念があるのです。とくに、トランプ大統領を支持する人たちは地方都市在住者や高齢者が多いため、むしろ郵便投票の方が投票しやすいとされています。


「郵便投票=不正」というネガティブキャンペーンのやり過ぎは、自らを窮地に追い込んでいることにもなりかねません。

まとめ

以上、「アメリカ大統領選が延期?「郵便投票」の何が問題なのか解説」でした。

大統領選における郵便投票は紛失や偽造などが起こりやすく、その結果「選挙が混乱する」という問題があります。また、新型コロナウイルスの影響で、これまでのような人海戦術による集計作業は思うように捗らない可能性もあるため、トランプ陣営としては郵便投票が広まることを防ぎたいはずです。

11月に向けて新型コロナウイルスの感染状況が悪化するようなことがあれば、多くの州で郵便投票が採用される公算が高く、コロナの影響が選挙方法にまで及ぶ可能性があります。

大統領選本番に向けて、カリフォルニア州、テキサス州、フロリダ州といった激戦区が、郵便投票を巡ってどのような対応をとるか注目したいところです。

参考資料サイト

スタンフォード大学の研究
https://siepr.stanford.edu/news/new-research-voting-mail-shows-neutral-partisan-effects

本記事は、2020年8月11日時点調査または公開された情報です。
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公務員総研の編集部です。公務員の方、公務員を目指す方、公務員を応援する方のチカラになれるよう活動してまいります。

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