MENU

バイデン大統領が就任直後に出した17の大統領令

当ページのリンクには広告が含まれています。


目次

はじめに

2021年1月20日、アメリカ第46代大統領に民主党のジョー・バイデン氏が就任しました。

バイデン政権は前任者のトランプ氏とは真逆の政策を打ち出していることが特徴で、様々なことに政府が関与する「大きな政府」としてどのような役割を果たすのかが注目されています。

バイデン大統領は就任2日目までに「17の大統領令」に署名し、脱トランプとも言える政策方針を示しています。

ここでは、バイデン大統領が就任直後に発令した大統領令や指示をはじめ、そこから透けて見えるバイデン政権が重視することについて解説します。

アメリカの「大統領令」とは? – 議会承認が不要

アメリカの大統領令とは法的な拘束力を持つ行政命令または権限のことです。大統領令は議会の承認を得ることなく政策をすぐに実行可能で、大統領だけが持つ特権と言えます。

例えば、トランプ元大統領は「医療保険制度改革法(オバマケア)の見直し」や「環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱」などで大統領令を行使しています。また、オバマ元大統領は「銃規制強化」などで行使しており、在任期間中に大統領令を行使した数が多いことで知られています。

大統領令は、仮に行使されたとしても議会が大統領令に反対する法律を作ったり、最高裁が違憲判決を下した場合は効力を失います。つまり、必ずしも強制力を持っているとは限りません。

しかし、大統領令は政策を推進するための強力な武器であり、公約実現、政策のスピード実行、そして政権の方針アピールなどのためにも使われます。

今回のバイデン大統領による大統領令連発もこれらのことが背景にあります。

新型コロナウイルス関連の大統領令

バイデン大統領は新型コロナウイルスに関連する10の大統領令に署名しました。バイデン大統領がいかにコロナ対策を重視し、緊急性を持って取り組もうとしているかが分かります。

一方、大規模な予算が必要になることや、マスク着用の義務化、旅行時の陰性証明書提出など、国民に直接的な影響が及ぶことが盛り込まれており、国民の反発が予想されます。


連邦政府職員にマスク着用を義務付け

連邦政府機関で働くすべての職員に対してマスク着用を義務付け。

CDC(アメリカ疾病予防管理センター)のガイドラインに沿って、ソーシャルディスタンスや公衆衛生対策を順守すること。

COVID-19パンデミック検査委員会設立

COVID-19パンデミック検査委員会(COVID-19 Pandemic Testing Board)を設立。テスト、スクリーニング、監視を促進するため政府の取り組みを調整する。また、持続的な公衆衛生に関する学習や労働力の確保に取り組むこと。

公平なパンデミックへの対応

保健社会福祉省(Department of Health and Human Services)内にタスクフォースを設立。COVID-19のテストや治療において人種、性別、地域などで格差が生じないようにすること。

持続可能なサプライチェーンの確立

大規模検査やワクチン、個人用保護具(PPE)を安定して効率的に製造、販売できるようにすること。国防長官、保健福祉長官、国土安全保障長官らはCOVID-19コーディネーターとして関与し、買いだめ防止や価格設定について大統領に報告する。

COVID-19や将来的な脅威に対するデータ収集

COVID-19や公衆衛生の脅威となるものに対するデータ収集や連携の強化。COVID-19に関して収集されたデータを公表する措置の実施。

COVID-19の治療法改善および拡大

COVID-19の新しい治療法の開発および医療システム能力の向上。医療従事者や患者をサポートするための国家的な医療システム構築。

国内外旅行におけるCOVID-19の安全性確保

飛行機、鉄道、バスなどの公共交通機関でのマスク着用義務化。飛行機の場合、アメリカに入国する者に対して陰性証明書の提出を要求する。また、各航空会社は出発前のテスト実施を検討し、検討結果を2週間以内に報告する。

アメリカが世界的な健康と安全を提供する中心になるための組織作り

グローバルヘルス実現に向けて、アメリカがリーダーシップを発揮ための準備をすること。COVID-19との戦いに対してホワイトハウスを組織化し、コーディネーターおよび大統領顧問を配置する。

労働者の安全確保


すべての労働者の安全を確保すること。
労働安全衛生法に基づき、職場でのマスク着用義務化や、雇用主が労働者の安全を確保するためのガイダンス作りをする。

学校の再開および継続運営支援

COVID-19で影響を受けたすべての学校や学生に対面授業を再開できるようサポートする。学校再開に向けたガイドライン作成、影響の調査、技術支援の実施。

差別是正に関する大統領令

バイデン大統領は差別是正や多様性を打ち出しているように、大統領令でもこれらの取り組みを重視していることが分かります。

なかでも、有色人種や性的少数派に配慮した内容が多く、バイデン政権らしさが表れています。一方、保守派から「逆差別」との反発が予想され、アメリカの分断を深める懸念もあります。

性差別の是正

性同一性や性的志向に基づく性差別を禁止する。各機関は100日以内に命令、規則、ガイダンス、ポリシーなどを見直し、行動計画を作成しなければいけない。

人種平等の推進およびコミュニティ支援

黒人、ラテンアメリカ、ネイティブアメリカン、LGBTQ+、障害者などが経済的、社会的な面において公平なサービスが行き届いていないことを是正する。


気候変動問題に関する大統領令

気候変動問題に関連する大統領令も発令しています。

気候変動問題についてはトランプ政権で決定した内容すべてを見直すことで、トランプ政権とは真逆の路線を打ち出しました。トランプ大統領が就任初日にオバマ元大統領の肝いりだった「オバマケア」を見直す大統領令を発令したことを彷彿させます。

気候問題に取り組むための公衆衛生と環境保護、科学の回復

トランプ政権下で実施された石油ガス、車両燃費基準、省エネプログラム、大気汚染値など、すべての規制を即時見直し。各機関は大統領令から90日以内に更新されたリストを提出し、2025年12月31日までに国家目標を達成できるよう取り組む。

その他の大統領令

バイデン大統領はトランプ政権で決定したことの見直しのために以下の大統領令にも署名しました。

憲法に基づいた国勢調査結果集計

2020年7月にトランプ大統領が署名した覚書(合法的な移民ステータスにない人を総人口から除外する)の見直し。憲法とは異なり、合法的な市民だけが集計されるため、総人口や総人口に基づいて算出される選挙人の配分に影響が生じる懸念がある。

特定の大統領令を無効化

コロナウイルス対策、経済回復、人種差別是正、および気候変動問題などに柔軟に対応するため、トランプ政権で発令された大統領令の一部を無効化する。該当する大統領令は「規制緩和、規制予算の管理」や「規制改革アジェンダ」などが含まれる。

行政機関職員の倫理的同意

バイデン新政権で任命されたすべての職員は公的信頼を回復し、維持するための誓約書に署名すること。ロビー活動における金品授与の禁止、前職関係者との間で2年間は取引や雇用を禁止される。

移民法の執行方針や優先事項の改訂

トランプ政権で発令された大統領令13768号の取り消し。イスラム諸国の人やテロリストの入国を防止するための厳格な入国審査制度や、一部の国の難民・移民の受け入れを拒否する制度を撤廃する。

大統領令以外の指示について

バイデン大統領は大統領令の他にも様々な指示を出しており、トランプ政権との違いを鮮明にしています。

メキシコとの国境の壁建設中止

トランプ元大統領が非常事態宣言を発令してまで実施した「国境の壁」建設が中止になります。全長約3,200キロにもおよぶ大規模な建設工事は移民排除の象徴とされてきました。バイデン大統領は就任直後に中止したことで、移民に寛容なアメリカを打ち出す狙いがあると見られます。

筆者が暮らすアリゾナ州には壁の建設に関わる労働者が多く、今回のバイデン大統領の指示によって早くも仕事がなくなってしまった人が続出しています。

パリ協定への復帰

バイデン大統領は公約として2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることを掲げており、パリ協定への復帰はそのための第一歩と言えるでしょう。

一方で、トランプ元大統領が取りやめた「緑の気候基金(温暖化被害を抑えるための拠出金)」おおよそ30億ドル(約3,100億円)を、アメリカは再び負担することになります。

「大きな政府」をうたう民主党らしい決定ですが、財政赤字の拡大や内政問題を重視する共和党からの反発は避けられません。

世界保健機関(WHO)からの脱退を取りやめ

トランプ元大統領が決定したWHOからの脱退を取りやめることを発表しました。トランプ元大統領はWHOが中国と結びつきが強く、巨額の拠出金負担を強いられることを理由に、2020年7月に脱退を表明していました。

バイデン大統領は大統領選前からWHOへの復帰を公言していたことから、公約実現を果たしたことになります。国際協調路線への回帰を意識した決定と言えるでしょう。

DACAの強化

幼少期に親と一緒に不法入国した若者に滞在許可を認める「DACA(The Deferred Action for Childhood Arrivals)」を再び強化することを発表しました。

トランプ政権では徹底して移民に厳しい政策が取られていましたが、バイデン政権は移民に寛容です。就任直後から移民政策に取り組んだことで、人道的な政権をアピールする狙いがあると見られます。

一方、移民にかかる医療費、学費、政府のサポートは税金で賄われていることから、保守層による反発は避けられません。


まとめ

以上、「バイデン大統領が就任直後に出した17の大統領令」でした。

バイデン大統領は就任後すぐに新型コロナウイルスや差別是正、気候変動問題に関連する大統領令を出しました。いずれも公約通りの内容ですが、トランプ政権からの「政策転換」を全面に打ち出したことが特徴です。

就任直後から前政権との違いを明確にすることで、支持してくれた人に応える狙いがあると見られます。一方で、これまでトランプ氏を支持してきた人からすれば、どの大統領令も前政権の功績を打ち壊す内容です。

「4年かけて作ったものを壊して再び元の姿に戻す」ことにどれだけの国民が納得するか、大統領令に関連する政策の行方に注目しましょう。

参考資料サイト

THE WHITE HOUSE
https://www.whitehouse.gov/briefing-room/presidential-actions/

本記事は、2021年1月30日時点調査または公開された情報です。
記事内容の実施は、ご自身の責任のもと、安全性・有用性を考慮の上、ご利用ください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

公務員総研の編集部です。公務員の方、公務員を目指す方、公務員を応援する方のチカラになれるよう活動してまいります。

コメント

コメントする

目次