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【日本のメディアが報じないアメリカ大統領選】中国の介入や隠蔽を匂わせるラトクリフ・レポートとは?

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目次

はじめに

2020年のアメリカ大統領選は民主党のバイデン氏が勝利し、すでに新政権がスタートしていますが、アメリカの一部ではいまだに「不正選挙」を疑う流れが続いています。

トランプ氏が訴え続けた不正選挙は、側近であるピーター・ナバロ氏がまとめたナバロ・レポートで暴露されていますが、さらにもうひとつ不正選挙を巡る疑惑があります。

それが「中国の介入」です。「大統領選が中国の介入を受けた」や「FBIやCIAは隠蔽している」という疑惑は収まらず波紋を呼んでいます。

今回はアメリカ大統領選における中国の介入や隠蔽があったことを主張した「ラトクリフ・レポート」について解説します。

ラトクリフ・レポートの概要

はじめにラトクリフ・レポートの概要について紹介します。

「ラトクリフ・レポート」とは、中国の介入や米政府が隠蔽したことを指摘したメモ

ラトクリフ・レポートとは「2020年大統領選で中国による介入」があったことや「アメリカの政府機関であるFBIやCIAが介入を隠蔽した」ことを指摘したメモです。

メモのタイトルは「Views on Intelligence Community Election Security Analysis(情報活動コミュニティによる選挙セキュリティ分析に対する見解)」というものです。

2020年5月から2021年1月20日まで国家情報長官(Director of National Intelligence)を務めたジョン・ラトクリフ氏(John Ratcliffe)によって書かれました。

正式なレポートは機密文書扱いのため公開されていませんが、このレポートを簡潔にまとめたメモが同氏によって公開されています。

▼参考URL:ワシントン・ポスト誌|ラトクリフ・レポートをPDFで読む
https://www.washingtonpost.com/context/read-ratcliffe-s-letter-accusing-career-analysts-of-underplaying-chinese-influence-in-2020-election/bf1f635d-8bbb-4510-b01d-6b86d62bce14/

ジョン・ラトクリフ氏とは?

ジョン・ラトクリフ氏(55)は弁護士資格を持つ政治家で、これまでにテキサス州ヒース市長(2004年-2012年)や共和党下院議員(2015年-2020年)を歴任してきました。


2019年7月、トランプ大統領によってダン・コーツ国家情報長官(Dan Coats)の後任として指名されました。しかし、諜報活動を「政治化」する可能性があると共和党内で反対が起こり、一旦は辞退しています。2020年2月、再びトランプ大統領によって国家情報長官に指名され、5月26日に就任しました。(2021年1月20日退任)

同氏はイランやロシアが大統領選に介入していることを主張しており、トランプ政権にとって敵対的関係国に強硬姿勢をとることで知られています。この点においてトランプ大統領から高く評価されていたと言えるでしょう。

ラトクリフ・レポートが話題になっている背景には、同氏がトランプ大統領の側近で、なおかつアメリカ政府の情報機関統括トップということがあります。

ラトクリフ・レポートの目的

このレポートの目的は「中国による大統領選への介入があったことを主張すること」「この問題に情報機関が対処することを訴える」の2点です。

ラトクリフ氏はレポートの中で、アメリカ政府情報機関の分析官による見解は、中国が大統領選に介入するためにとった活動範囲を過小評価しており、正確に示していないと指摘しています。また、これらは「政治的な考えの違い」や「政治的な圧力」によって起きたと述べています。

つまり、中国の介入が「政治的な理由」によって、不当に隠された可能性を公にした訳です。同氏はこの政治的な理由には、情報機関の中に反トランプ派の存在があるという見解を持っています。

一方、情報機関の分析官らは、同氏は中国が大統領選に介入したと決め込んでおり「結果ありき」のレポートを作ろうとしている、つまりは「政治化」していると批判しています。

ラトクリフ・レポート提出を巡る騒動と疑惑

ラトクリフ・レポートは本来であれば2020年12月18日までに議会に提出される予定でした。このことは、バイデン氏が正式に就任する前までに提出されていれば、大統領選の有効性を問うひとつの材料になるはずだったことを意味します。(これにより結果が覆った可能性も否定できない)

しかし、各情報機関の調整遅れや、レポートに記載すべき内容について情報機関内で争いが起きたことを理由に、2021年1月7日まで遅延してしまいました。この「不自然な遅延」は、反トランプ派の関係者によって仕組まれたものと疑惑が持たれています。

事実、バイデン氏は1月7日早朝、選挙人投票の開票によって正式に大統領就任が決まったことから、タイミングとしては「バイデン確定」を待ってからラトクリフ・レポートが議会に提出されたように見えます。

トランプ支持者や共和党からすれば、ラトクリフ・レポートによって大統領選の結果を覆す、あるいは民主党の暴挙を明らかにする絶好の機会だった訳です。

反トランプ派や民主党寄りの人たちによって「何かしらの圧力」がかけられていた疑いがあることから、ラトクリフ・レポートは波紋を呼んでいるのです。

注意点

2021年1月28日現在、大統領および議会に提出されたラトクリフ・レポートは公開されていません。巷で取り沙汰されているのは、レポートの要点をまとめたとされる本人によるメモです。(英語ではレター)

そのため、中国政府が具体的にどのような行為で大統領選に介入したのかや、ラトクリフ氏の主張を裏付ける証拠は記載されていません。(議会に提出したものには記載されていると思われる)

レポートをまとめた本人によるメモのため信頼性は高いですが、メモそのものに大統領選の結果を覆したり、中国政府を追及できるほどの効力はないことを認識しておきましょう。


ラトクリフ・レポートの中身について

次にレポートの中身ではどのようなことが書かれているのか見てみましょう。同氏が公表したメモの要点を要約して紹介します。

・(最も機密性が高い情報にアクセスできる国家情報長官という唯一無二の立場からして)アメリカ政府情報機関(intelligence Community)の分析官がまとめた多くの評価は、2020年大統領選に影響を与える中国政府の活動範囲について、完全そして正確に反映していない

・アメリカ政府情報機関のガイドラインでは、評価を実施する場合は政治的なバイアスを排除しなければならないが、中国に対する評価ではそれが守られなかった

・中国の評価を担当した分析官たちは、中国政府の行動が不適切な影響を与える、もしくは妨害だったと評価するのを躊躇した。また、これらの分析官は(トランプ)政権に賛同していないと思われ、評価を公表することに消極的だった

・2020年8月、大統領選に対する外国からの影響に関する国家情報会議において、代替分析や成果物を抑圧し隠蔽しようとする規律違反行為があった

・CIA幹部らは分析官らにサポートを撤回するよう圧力をかけ、中国に対して他の視点を提供させないようにした(CIAは分析官らの評価を抑圧する行為をとった)

・私は(政治的な考えや不当な圧力から)独立した立場で、中国は2020年大統領選に影響を及ぼそうとしたと主張する少数派の見解を支持する

アメリカのメディアは「ラトクリフ・レポート」についてどう伝えた?

ラトクリフ・レポートについてアメリカのメディアはどう伝えたのでしょうか?

どのメディアも共通して、非公開のレポートであることや大統領選はすでに決着しているからか、大々的には取り上げていないようです。

Bloombergの報道

Bloombergは中立的な立場からレポートの中身よりも「米中間およびアメリカ政府内で何が起きているのか」に焦点を当てて報じています。

2020年12月17日の記事で「ラトクリフ氏のレポート提出は期限までに間に合わない」と伝えています。このことは、間接的に「民主党(バイデン)が有利になる」ことを意味します。

また、ラトクリフ氏が「中国の介入に関する報告を盛り込まなければ承認しない」と述べていることや、トランプ大統領側近(ロバート・オブライエン補佐官、ポンペオ国務長官、バー司法長官)は、中国はロシアよりも大きな脅威をもたらしたと考えていることを伝えています。

一方、中国の報道官汪文斌氏が「中国政府は他国の政治に介入することは決してない」、「米中は対峙するのではなく協力すべき」と述べたことも紹介しています。

ワシントン・ポストの報道

ワシントン・ポストはラトクリフ・レポートを巡る「政府内の衝突」を報じています。

2021年1月8日の記事で、トランプ大統領側近と情報機関の分析官(外国の介入を調査する担当)の間で、中国とロシアが大統領選に介入した範囲を巡って、双方が「政治化している」と非難し合っていると伝えています。

ラトクリフ氏は分析官らに対して「(トランプ)政権に否定的な考えだから評価に消極的だ」と批判する一方、分析官らはラトクリフ氏に対し「政権のポリシーをサポートするために情報機関を使いたくない」と述べたと紹介しました。

同誌の報道からは政府関係者内で混乱が起きていることがよく分かります。

Fox Newsの報道

共和党寄りのメディアとして知られるFox Newsは2020年12月16日の記事で、Bloomberg同様に「レポートは期日より遅れるだろう」と伝え、背景にある混乱について紹介しました。

記事の中では、ラトクリフ氏が2020年10月にロシアとイランがトランプ大統領に(大統領選で)損害を与えようとしていると公表したことや、中国はアメリカが直面している最大の国家安全保障上の脅威と述べたことを紹介しています。


一方、バイデン大統領がラトクリフ国家情報長官の後任としてアブリル・ヘインズ氏(元CIA副長官・女性)を指名したことに触れており、ラトクリフ氏のような「政治家」ではなく「専門家」を配置したことを強調しています。

共和党のラトクリフ氏にとって同誌の報道は少し手厳しいものだったかもしれません。

CNNの報道

民主党寄りで知られるCNNはレポートについては大々的に報道していません。2020年12月4日の記事で、ラトクリフ氏が「中国は数十人の議会スタッフや議員に対して影響を与える大規模なキャンペーンを行った」とウォールストリート・ジャーナルに語ったと伝えています。

また、トランプ政権によって中国共産党メンバーのビザ支給制限や中国企業に対する制裁措置などが行われており、アメリカと中国の関係は「無制限の対立期間にある」と述べています。

CNNの報道では、情報機関統括トップのラトクリフ氏が「反中」であることを強調しているように見えます。

まとめ

以上、「【アメリカ大統領選】中国の介入や隠蔽を匂わせるラトクリフ・レポートとは?」でした。

ラトクリフ・レポートは中国の介入を明らかにし、大統領選の結果に影響を与えるきっかけになるはずでした。しかし、調整がうまくいかず不発に終わりました。これは反トランプ派による圧力なのか、それとも中国の根回しなのかは分かりません。

いずれにせよ、2016年の大統領選に続いて2020年の大統領選でも外国が介入した可能性が露呈し、アメリカの大統領選に正当性があるのか疑わしくなりました。今回のレポートが一石を投じることになるのか、それとも何もなかったことで済まされるのかアメリカ政府やメディアに注目しましょう。

同じくアメリカ大統領選の不正についてまとめたナバロ・レポートについての記事も是非ご覧ください。

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参考資料サイト

BBSNEWS|FBI says Iran and Russia have US voter information
https://www.bbc.com/news/election-us-2020-54640405

Bloomberg|Trump Opens Office to ‘Carry On’ His Administration’s Agenda
https://www.bloomberg.com/news/articles/2021-01-25/trump-opens-office-to-carry-on-agenda-of-his-administration

The Washington Post
https://www.washingtonpost.com/national-security/russia-china-election-interference-intelligence-assessment/2021/01/08/7dc844ce-5172-11eb-83e3-322644d82356_story.html

FOX NEWS|Intel community assessment delayed amid dispute over whether China sought to influence 2020 election
https://www.foxnews.com/politics/intel-community-assessment-delayed-amid-dispute-over-whether-china-sought-to-influence-2020-election

CNN|Trump’s intelligence chief warns China is the greatest threat to US since WWII
https://edition.cnn.com/2020/12/03/politics/ratcliffe-china-threat-biden/

本記事は、2021年1月30日時点調査または公開された情報です。
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公務員総研の編集部です。公務員の方、公務員を目指す方、公務員を応援する方のチカラになれるよう活動してまいります。

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