はじめに
国連の関連機関には、国家による強制収用、通貨送金、戦争と内戦などのリスクに対する保証(長期政治的危険保証)を投資家・ドナーに提供し、開発途上国の民間投資を促進することを目的とするMIGA(多数国間投資保証機関)というものがあります。
本ページでは、「MIGA」とはどのような組織なのか基本的な情報についてまとめました。
「MIGA」は多数国間投資保証機関のこと
「MIGA」はMultilateral Investment Guarantee Agencyの略で、日本語に訳すと「多数国間投資保証機関」のことです。
「MIGA」は、国連、つまり国際連合の専門機関の一つで、1988年に「国家による強制収用、通貨送金、戦争と内戦などのリスクに対する保証(長期政治的危険保証)を投資家・ドナーに提供し、開発途上国の民間投資を促進すること」を目的として設立されました。
なお、日本が「MIGA」に加盟したのは、1988年です。
「MIGA」の組織体制について
「MIGA」の本部は、アメリカ合衆国コロンビア特別区ワシントン市にあり、下記の4つの機関とともに世界銀行グループを構成しています。
1)国際復興開発銀行
2)国際開発協会
3)国際金融公社
4)国際投資紛争解決センター
「MIGA」は、1988年4月に発足され、初代長官には「野村證券株式会社」の副社長を務めていた寺澤芳男が就任しました。
この背景には、当時日本人を「MIGA」の長官として送り込むことを切望していた統治の大蔵大臣「宮澤喜一」氏の意向があり、寺澤と大学時代の同級生だった当時の財務官「行天豊雄」氏が誘ったとされており、それ以降、長官は日本人が就任しています。
「MIGA」の役割
「MIGA」の主な役割は、途上国への対外直接投資(FDI)を促進するために政治的リスクや非商業的リスクから生じた損失に対する投資保証を提供することです。
「MIGA」によって保証されたプロジェクトは、下記の業務に貢献しています。
1)雇用創出
2)給水
3)電気供給などの基礎的インフラの整備
4)金融システムの強化
5)税収確保
6)技能や技術的ノウハウの移転
7)環境に配慮した天然資源の活用
▼参考URL:国際連合広報センター「多数国間投資保証機関(MIGA)」(外部サイト)
「MIGA」の主な活動
「MIGA」は、政治リスク保険の保証と民間セクターの投資家や貸し手に信用補完を提供するための活動を行い、その保証によって投資を非商業的リスクから保護し、投資家が改善された条件でアクセスファイナンスを取得するのに役立っています。
具体的には、主に下記のつの活動が行われています。
1)戦争や内乱などによる有形資産の損失・損傷・焼失からの保護
2)政府の活動による損失に対する保護
3)契約違反などによる損失に対する保護
4)通貨に変換できないことに起因する損失に対する保護
戦争や内乱などによる有形資産の損失・損傷・焼失からの保護
「MIGA」は、戦争・テロリズムおよび市民騒動より、有形資産の損失・損傷・破壊・消失などに関し、損傷または紛失した資産のどちらか少ない方の投資家の負担に対し簿価を支払うことによる保護活動を行っています。
投資家からの要求に応じて一時的な事業を中断した場合は、資産の損失またはホスト国での不当で危険な状況による事業の停止をカバーします。
また、短期的な事業の中断に対する営業再開および事業収入の損失や、ローンの場合の未払い額に関連する継続費用および特別費用を支払うなどの保護活動も行っています。
政府の活動による損失に対する保護
「MIGA」は、被保険投資の所有権を減らす可能性がある特定の政府の行動から生じる損失に対する保護活動を行っています。
具体的には、被保険投資の所有権、管理、または権利を削減または排除する可能性がある特定の政府の行動から生じる損失に対する保護を提供します。
完全な国有化と没収に加えて、資金や有形資産の部分的な没収などについても限定的に補償します。
株式投資が完全に収用される場合には、被保険者に対する補償は、被保険投資の正味簿価に基づいて資金の保険部分が支払われます。
また、ローンとローン保証については、未払いの元本と未払利息を保証し、収用された投資に対する投資家の持分はMIGAに譲渡されたたときに補償金が支払われます。
契約違反などによる損失に対する保護
「MIGA」は、政府の投資家との契約の違反または否認から生じる損失に対する保護活動を行っています。
契約違反の補償範囲は、投資家との契約の政府の違反または否認から生じる損失に対するもので、状況によっては国有企業の契約上の義務にまで及ぶ場合があります。
具体的には、違反または否認の申し立てがあった場合、投資家は最初に基本契約に定められた紛争の解決に努め、特定の期間が経過した後、政府が紛争解決に干渉したために投資家が補償を得られない場合や(償還拒否)支払いを受けていない場合(報酬の不払い)の補償を行います。
特定の条件が満たされている場合は、その裁量によって紛争の結果が出るまでの間、暫定的な支払いを行い、その前に報奨の不払いに対する補償を支払います。
保証額によって報酬の不払いについては投資家の報酬に対する利息を支払い、償還拒否の場合は、請求決定に基づいてホスト国政府の契約に従って投資家に支払われるべき投資家の利益となる金額がを支払います。
通貨に変換できないことに起因する損失に対する保護
「MIGA」は、現地通貨を合法的にハード通貨に変換できないことに起因する損失に対する保護活動を行っています。
具体的には、通貨の非互換性と送金制限の範囲は、投資家が資本・利息・元本・利益・ロイヤルティおよびその他の送金などの現地通貨をドル・ユーロ・または円などのハード通貨に合法的に変換できない場合や、そのような状況が政府の行動または行動の失敗に起因する場合に、保証契約で指定されたハード通貨でホスト国外に硬貨を送金します。
「MIGA」の新型コロナウイルス対策
「MIGA」を含む世界銀行グループの新型コロナウイルス対策は、既に100を超える低・中所得国と協力し、保健システムの強化と大規模なパンデミック対応の促進、回復への基盤構築を進めています。
具体的には、公衆衛生上の緊急事態を緩和し、今回の危機による経済的・社会的影響に対応するため、2020年4月から2021年6月の間に最大1,600億ドルの資金を提供する予定です。
▼参考URL:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)MIGA公式情報特設ページ(外部サイト)
まとめ
本ページでは、「MIGA」とはどのような組織なのか基本的な情報についてまとめました。
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