アリゾナ州自宅待機命令2週間延長決定!でも、トランプ大統領がやってくる!?

日本では、「緊急事態宣言」が2020年5月31日まで延長されることが決定しました。アメリカでも、自宅待機命令の期限を延長するかどうか、各州が決断を迫られています。

本記事では、アメリカのアリゾナ州に住む日本人ライターが、アリゾナ州の現在の状況についてレポートします。


はじめに

2020年4月30日から5月1日にかけて、アメリカでは大半の州が独自に定めた自宅待機命令(Stay-at-home order)の期限が終了します。しかし、ニューヨーク州をはじめとする多くのエリアでは感染が続いているため自宅待機命令を延長するか否かの判断が問われています。

筆者が住んでいるアリゾナ州は、自宅待機命令期限2日前の29日に2週間の延長が決定されました。ルイジアナ州、ワシントン州、イリノイ州、ペンシルベニア州なども期間延長を決定しており、アメリカ全体での本格的な経済再開はしばらく先になりそうです。

一方で、経済再開を急ぐトランプ大統領は積極的に行動しています。アリゾナ州が自宅待機命令を2週間延長したにもかかわらず、大統領選に向けてアリゾナ州に遊説に行くと発表しました。

経済再開を急ぎたい連邦政府、感染被害を防ぎたい州政府の思惑が「ねじれた」状態のアメリカでいったい何が起きているのか?現地の様子はどんな状態なのか?現地から詳しくレポートします。

公務員として、自国の状況だけでなく、他国の状況もぜひ知ってください。

アリゾナ州の自宅待機命令

4月29日午後、アリゾナ州知事のDoug Ducey(ダグ・デューシー)は、自宅待機命令を2週間延長することを発表しました。2週間延長されたものの、一部は実質的な規制緩和措置になっています。

基本方針

アリゾナ州の自宅待機命令は5月15日まで続きます。買い物や通院、通勤、家族の送迎など、必要不可欠な用事以外で外出することは引き続き禁止で、ソーシャルディスタンス(他人との距離を約2mあけること)の徹底も続きます。

また、新型コロナウイルスのホットスポットとされるニューヨーク州、ニュージャージー州、コネチカット州などへの旅行も禁止されています。3月30日から始まった自宅待機命令から州民の生活自体はほとんど変わらないと言えるでしょう。

小売店や小規模ビジネス

小売店や小規模ビジネスは、5月4日から自主的に営業を再開しても良いことになりました。8日には営業が正式に許可される予定です。ただし、ソーシャル・ディスタンスを守る必要があるため、お店の外で商品を受け渡す、ドライブスルーを利用するなど、お店側に工夫が求められます。

レストラン

一般的なレストランは5月12日に再開できる予定です。これにより、3月30日から禁止されていた店内での飲食サービスが再開されるようになります。ただし、濃密接触の可能性があり、アルコールを提供するようなバーやクラブは現在のところ再開の見通しはたっていません。

対面サービス

エステ、ネイルサロン、スパ、美容室などの対面ビジネスは5月15日から本格的に営業可能になります。レストラン同様で12日には解禁されますが、まずは店舗ごとに感染防止策を徹底した上で15日の営業再開に備えるイメージです。


教育機関

アリゾナ州では3月30日時点で、春学期(1月から6月)の全予定をキャンセルしているため、5月15日以降の学校の再開はありません。次の秋学期が始まるのは8月下旬ですので、それまではお休みということです。

大学も同様で、そもそも5月15日が春学期の最終日ですので、実質的な影響はありません。夏休み期間中(6月から8月)に開かれる一部の授業はオンラインクラスで実施されます。自宅待機命令延長による教育機関への影響はほとんどないと言えます。

アリゾナ州における新型コロナウイルス感染被害状況

4月30日現在、アリゾナ州で確認された新型コロナウイルス感染者数は7,648名、死亡者数は320名です。感染者数は前日比で446名増加しており、決して予断を許さない状況が続いています。

自宅待機命令が出された3月30日時点では、感染者数が2,269名、死亡者数が64名だったので自宅待機命令後も感染者数は増え続けている状態です。アリゾナ州の総人口は727万人ですので、感染者は全体の0.001%、1,000人に1人という割合です。

これまでに州民の10%に該当する71,786件のテストが実施されています。直近1週間では毎日おおよそ2,500件から3,000件程度のペースでテストが実施されており、希望者も増加しています。このような状況から総合的に判断して2週間の延長が決定されました。

アリゾナ州の感染者および死亡者数の週別推移

03月18日-03月22日:152名/0名
03月23日-03月29日:919名/17名
03月30日-04月05日:2,269名/64名
04月06日-04月12日:3,539名/115名
04月13日-04月19日:4,929名/184名
04月20日-04月26日:6,526名/275名
04月27日-04月30日:7,648名/320名

ネイティブアメリカンも感染

アリゾナ州で最も感染者数と死亡者数が多い上位3エリアは、州都フェニックスがあるMaricopa County(マリコパ郡)3,723名/140名、次いでPima County(ピマ郡)1,215名/80名、そしてNavajo County(ナバホ郡)682名/18名になっています。

なかでも、Navajo Countyにはネイティブアメリカン(インディアン)のナバホ族が多く生活しています。Reservation(リザベーション)と呼ばれる保護区は、水道や電気などのインフラが十分に整っていないエリアのため、感染拡大が続いていることが懸念されています。

また、アリゾナ州で生活しているネイティブアメリカンは、観光ガイドなどによる現金収入に頼っている人たちが多く、自宅待機命令によって旅行や観光が禁じられている期間は収入が一切ない状態です。

3分の1は老人ホームや介護施設の利用者

アリゾナ州で新型コロナウイルスに感染して亡くなった人の3分の1は、州内の老人ホームや介護施設を利用している高齢者とされています。マリコパ郡にある特別養護老人ホームでは入所者198名が陽性と診断され65名が入院、そのうち半分近くの32名が亡くなりました。

アリゾナ州は年間を通して温暖な気候であることや、大都市と比較すると土地が安いことからリタイアした人たちが余生を過ごす場所として人気があります。その結果、感染被害が高齢者に集中したと考えられています。

トランプ大統領がアリゾナ州にやってくる?

アリゾナ州知事によって自宅待機命令が2週間延長された同じ日にトランプ大統領は「来週くらいにアリゾナ州に行くと思う」と発言しました。また、オハイオ州にはもっと近いうちに行くと思うとも述べており、全米で感染が収まらない中でも大統領選に向けて遊説を始める姿勢を見せました。

実際にアリゾナ州へ行くかどうかは州政府次第としていますが、集会に集まった人たちが6フィートの間隔を空けて座っていることなんて想像出来ないとコメントしています。これまでのように25,000人規模の集会が開催されることを期待しているとし、自身の行動をもってして少しでも早く社会や経済を再開させたい狙いです。

2016年の大統領選でアリゾナ州は共和党支持者が多かったことから、トランプ大統領の訪問を歓迎する人が多いと思われます。そんな中、自宅待機命令を延長した州政府は調整に追われることになりそうです。

まとめ

アリゾナ州では5月15日まで自宅待機命令が延長されました。一方で着実に経済再開への計画が進んでおり、5月中には正常な状態に戻る見込みです。当記事の執筆段階ではトランプ大統領が訪問するか未定ですが、トランプ大統領自らが積極的に行動することで、経済を再開できるというアピールになると考えられています。


この先しばらくは、トランプ大統領の行動と各州政府の規制緩和がどのように連動していくのか、注目してください。

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本記事は、2020年5月4日時点調査または公開された情報です。
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