アメリカの新型コロナウイルス問題は「責任問題」へ移行中

2020年5月になっても、多くの国や地域で、新規感染者を出している新型コロナウイルスですが、少しずつ経済活動を再開している国もあるようです。

本記事では、5月1日より段階的に経済活動を開始したアメリカが今新たに直面している、新型コロナウイルス流行の「責任問題」について、詳しくまとめました。

はじめに – アメリカのコロナショックの政治模様

新型コロナウイルスは誰のせいで、何のせいで流行してしまったのか、その答えを出すことは非常に難しく、この問題は非常に繊細です。

アメリカは新型コロナウイルスによって非常に多くの感染者・死亡者が出ていますが、トランプ大統領は、その責任を中国に押し付け、アメリカは被害者であるという論陣を張っています。

今回は、新型コロナウイルス禍で「責任問題」という新たな局面を迎えたアメリカがどうなっているのか、アメリカ政府が考えていることなどを現地目線で解説します。公務員として、ぜひ今読んでもらいたい内容です。

アメリカの経済再開、そして責任問題へ

新型コロナウイルスの影響が続いているアメリカですが、5月1日を起点にして少しずつ経済が再開され始めました。トランプ大統領も11月に控えた大統領選に向けて遊説を再開しており、徐々にアメリカは日常へ戻りつつあります。

3月13日の非常事態宣言以降のアメリカは「自宅待機」というフェーズを過ごし、5月からは次の段階である「経済再開」を迎えています。そして、次のフェーズとされているのが「責任問題」です。

トランプ大統領は「世界で最も感染者数と死亡者数が多い国」という不名誉な結果を招いた大統領になってしまいました。このまま終息を迎える訳にはいかないトランプ政権は、積極的に中国批判を繰り返し、新型コロナウイルスの責任を中国に取らせて、あくまでもアメリカは被害者という姿勢を打ち出したい構えです。

新型コロナウイルスに対するアメリカによる中国批判

まずは、トランプ大統領が新型コロナウイルスに対してどのように中国を批判しているのか、その狙いも含めて見てみましょう。

トランプ大統領「中国はひどい間違いを犯した」

5月3日、トランプ大統領はFOXニュースに出演し「新型コロナウイルスは中国(武漢)にある研究所から流出したことを裏付ける報告書を準備中だ」と発言しました。

また、「何が起きたかを正確に示す強力な報告書になる」「決定的なものになる」とも述べ、アメリカ政府が新型コロナウイルスの感染拡大は中国に原因があると考えていることを示唆しました。

番組のなかで「中国政府が世界への対応を誤ったと考えるか?」と聞かれたことに対しては「疑う余地はない」と述べ、感染拡大の原因も初動対応の誤りもすべて中国にあるとしています。

トランプ大統領「中国での死者はアメリカよりも多い」

トランプ大統領は4月18日時点で「中国当局が発表する数字から倍になった」「中国の死亡者数はアメリカよりも多い」と指摘しました。

実際に、湖北省武漢市の当局は死亡者数を2,500人あまりから3,869人に訂正したため、トランプ大統領の主張が正当化される結果になりました。同時に、中国政府に対する不信感や情報の不正確さをアメリカ国民に向けて広めることに成功したと言えます。

ポンペイオ国務長官「決定的な証拠がある」

トランプ大統領の発言に同調するように、ポンペイオ国務長官も中国に原因と責任があるとしています。5月3日、ポンペイオ氏は記者会見で新型コロナウイルスが中国(武漢)の研究所から広がった可能性があるという主張を巡って「多くの根拠がある」と発言しました。

また「確証」を取るために情報機関が検証を続けているともし、中国を追いつめる姿勢です。トランプ大統領は言及しなかった「中国政府とWHOの結託」にも触れ、中国政府へ責任追及をする考えを示しました。

ヨーロッパやオーストラリアなどもこの意見に同意していることから、他国を巻き込んで中国政府を追及することになりそうです。大統領と国務長官の主要人物2名が揃って中国を批判している姿は、アメリカ国民に対して「中国=悪」というイメージを植え付けるイメージ戦略としても機能していると言えるでしょう。

ラッシュ・リンボー「CDCがディープステート」

アメリカで自由奔放な発言が多いことで人気のラジオDJであるラッシュ・リンボーは中国批判を繰り返すトランプ大統領を支持しており、追い風を吹かせる意味を込めて「CDC(アメリカ疾病対策センター)がディープステート」と発言しました。

ディープステートとは政府の中に存在する「隠れた政府」のことを指しており、この発言の裏には、CDCが中国と連携してトランプ大統領の再選を拒んでいるのではないかという主張が隠されています。

ちなみに、ラッシュ・リンボーは2020年4月にトランプ大統領から「大統領自由勲章」を授与されており、トランプ大統領の「したたかさ」が感じられます。

アメリカの批判に対する中国政府の反応

アメリカから新型コロナウイルスの原因と責任を巡って批判されている中国政府ですが、明確な証拠を示さずに批判ばかりを繰り返すアメリカに対して抵抗しています。

外務省報道官「根拠を示さないのは根拠がないから」

中国外務省の報道官はポンペイオ国務長官の発言に対して「多くの根拠があると言うなら出せば良い。出せないのは根本的に根拠がないからだ」と反論しました。

また、名指しこそ控えたものの「発生源については科学者や専門家の仕事であり、(アメリカの)国内政治のために嘘をつき続ける政治家ではない」と痛烈な批判で対抗しています。

習近平は沈黙を貫く

習近平国家主席はアメリカからの批判に対して沈黙を貫いています。トランプ大統領自身も習近平国家主席を批判することはなく、むしろ「よくやっている」「良好な関係だ」とし、トップ同士による衝突を避ける姿勢を見せています。

中国批判、アメリカの本当の狙いは?

中国に対して責任を追及するアメリカ、それに反論する中国という泥仕合になっているこの責任問題ですが、実はアメリカは確かな証拠など始めからなく、別のことを目的にしていると考えられています。

トランプ政権への批判回避

アメリカの本当の狙いは「トランプ政権への批判回避」で、最終的には大統領選への影響を抑制することにあるとされています。トランプ政権はひとまず中国に対して責任を追及していることを国民にアピールし、政権への批判をかわして「トランプは良くやっている」と評価される構図を作ろうとしています。

トランプ政権が中国への批判を繰り返し、証拠の出し惜しみをすることで、メディアは当面の間これに関連する報道を続けます。本来であればアメリカ国内で初動対応のミスや被害拡大の責任論が発生するはずですが、中国批判をすることでそれを防いでいるという仕組みです。

実は明言していないトランプとポンペイオ

中国批判をするなかでトランプ大統領とポンペイオ国務長官は「断定」はしていません。テレビインタビューや記者会見では両氏ともに「だろう」や「つもり」といった表現を用いており、現時点で「確証」がある訳ではないのです。

実際に、ポンペイオ国務長官が5月3日におこなった記者会見では「情報機関は我々が確信できるように検証すべきだ」とも述べていることから、確証がないことがうかがえます。また、6日の会見では「確証はないが、多くの証拠はある」と発言し、決定打に欠ける状態が続いています。

トランプ大統領も確証については断定せずに「間もなく出るだろう」とだけ残しており、確証を提示していません。アメリカの情報機関はトランプ大統領の命令を受けて、確証を手に入れるために調査を続けていることは間違いないでしょう。

アメリカ政府内の矛盾

国家情報長官室(ODNI)は、4月30日時点で確証はないという声明文を出しているため、トランプ大統領と政府の情報機関で矛盾が生じています。さらには、ニューヨークタイムズ紙によって、ポンペイオ氏をはじめとする政府高官がウイルス発生原因と武漢を結びつけるように圧力をかけているという報道もされています。

アメリカ政府は「振り上げた拳の行き場に困る」状態なのか、それを分かった上でメディアを翻弄する姿をあえて演じているのかは不明です。

アメリカのコロナ中国批判、今後の展開

新型コロナウイルスの発生および感染拡大を巡って続いているアメリカと中国の批判合戦は今後どのような展開を迎えるのでしょうか?

関税の引き上げ

トランプ大統領は新型コロナウイルスの原因を中国に取らせようと、中国製品に対する「関税引き上げ」を検討するとしています。具体的な内容は示されていないものの、中国政府は「関税を武器に他国を脅迫する考えは捨てるべき」とアメリカを批判しました。

2019年9月に起きた米中貿易戦争(対中追加関税15%)が再び繰り返されるかもしれないと、一時市場には緊張が走りました。両国の関税による牽制は予断を許さない状況です。

イラク戦争の二の舞

今回の米中批判合戦で最も懸念されるのは「イラク戦争の二の舞」です。イラク戦争はブッシュ大統領が「イラクが大量破壊兵器を所有している」と断定したことがきっかけで始まりました。しかし、大量破壊兵器を見つけられなかったことからブッシュ大統領は後に「失敗だった」と認めています。

イラク戦争は、おおよそ10万人の民間死亡者が出たにもかかわらず「勇み足」に終わったことから、今回の中国批判も同じ道を歩むのではないかと心配されています。

両国にとって武力衝突は現実的な選択肢ではありませんが、アメリカの強引な介入によって関係悪化が進んでいることは間違いないでしょう。

まとめ

アメリカでは新型コロナウイルスを巡る責任問題が熱を帯びています。一方で、武漢の研究所が発生源とする確証は提示されておらず、中国を批判するばかりという対応には疑問が残ります。アメリカ政府の曖昧な対応が続いていることから「別の目的」が示唆されており、このままではマイナスイメージにも繋がりかねません。

いまだに感染被害が終息していないアメリカですが、中国を巡るトランプ政権の対応から目が離せません。確証を提示できなかった際の動向や世間の反応にも注目したいところです。

今後も、アメリカの動向、そしてトランプ大統領の発言に、注目してください。

「新型コロナウイルス感染症(covid-19)」に関する記事一覧はこちら

本記事は、2020年5月11日時点調査または公開された情報です。
記事内容の実施は、ご自身の責任のもと、安全性・有用性を考慮の上、ご利用ください。

気に入ったら是非フォローお願いします!
NO IMAGE

第一回 公務員川柳 2019

公務員総研が主催の、日本で働く「公務員」をテーマにした「川柳」を募集し、世に発信する企画です。

CTR IMG
【AD】オンライン・カウンセリングサービス