失業者3,900万人でもアメリカの株価急上昇中!その背景とは?

2020年6月1日現在、新型コロナウイルス感染症の影響で、アメリカでは多くの失業者が出ていにも関わらず、アメリカの株価は急上昇しています。

今回は、アメリカ経済で起きている株価の動きについて掘り下げます。

日本にとって唯一の同盟国で経済でも密接な関係をもつアメリカの情報、公務員の方も、公務員志望の方も、是非ご参考ください。

はじめに – 株価が上昇しているアメリカ

3月初旬から5月中旬まで、アメリカでは新型コロナウイルス感染拡大により、多くの州が経済活動を控えてきました。これに伴い、2020年6月1日現在までに、全米でおおよそ3,900万人が失業申請をしており、失業率20%を超える戦後最悪の状況になると言われています。

一方で、5月26日時点でニューヨーク株式市場のダウ平均株価は25,072.92ドルを記録し、前取引日と比較して600ドル以上も値を上げる展開になっています。

戦後最悪の失業率にもかかわらず、なぜ株価は急上昇しているのでしょうか?このままアメリカ経済は回復し、トランプ大統領が言う「2021年は史上最高の年」になるのでしょうか?

本記事では、アメリカ経済で起きている株価の動きについて詳しく解説します。

アメリカで何が起きているのか?

2020年5月末時点、アメリカ経済では「実体経済と株式市場に大きな隔たり」が生じています。

ごく簡単に言うと、アメリカ人の4人にひとりが職を失っているにもかかわらず、株価は絶好調というイメージです。

アメリカの実体経済

アメリカでは新型コロナウイルス感染拡大によって失業者が3,900万人を超えており、本格的な経済再開が遅れれば遅れるほどその数は増加していくと予想されています。

実際に、本記事を執筆している直近1週間(5月10日-16日)での失業申請者は250万人を超えており、コロナ禍以前の週平均30万人を大幅に上回っています。

加えて、失業者たちが積極的に職を求めていない事態が起きています。この理由が手厚い失業保険です。3月の非常事態宣言直後にトランプ大統領の号令によって成立した2兆ドル(約220兆円)を超える緊急経済対策(CARES法)で、失業者に給付金が上乗せされました。

この結果、多くの失業者たちは働かなくても週に800ドルほどの収入が26週間続くのです。仮に、この期間が過ぎても失業状態が続いていれば追加で13週間失業保険を受け取れます。(州によって違いがある)

アメリカでは、多くのビジネスが5月初旬から徐々に営業を再開していますが、州によって規制が異なり、本格的に再開出来ているのはごく一部です。お店ごとに自主的な感染防止措置も取り入れていることから、コロナ禍以前とはほど遠い状況です。

事実、コロナ禍以前と比較しておおよそ50%のビジネスが雇用を再開していないとしており、2,000万人以上の失業者たちが職に戻っていないことになります。

当然、コロナ禍以前のように客足が戻る訳ではありません。多くの人が人ごみを避けるようになり、何かと制限が多い店内で飲食や買い物をすることを控えています。

このようにアメリカの実体経済は、労働者が本格的に社会復帰していない、実質的に経済が再開していない、消費者の行動控えが起きていることなど、回復傾向にある株価とは不釣り合いの状態です。

アメリカの株価

アメリカの株価は4月以降、着実に回復傾向にあります。ダウ平均株価はコロナ禍以前より低いものの、着実に回復傾向です。4月時点の失業率が14.8%という記録的な数値であるにもかかわらず、相反した動きを見せています。

この背景には様々な推論が存在しています。なかでも考えられる主な原因が「パニック相場」と「主要IT企業の好調な業績」のふたつです。

新型コロナウイルスの感染拡大がどれほどの脅威になるのか不透明だったことで、投資家たちの心理的なパニックが一時的な下落を引き起こし、冷静さを取り戻すに連れて株価が回復したという流れです。

事実、安全資産とされる金やアメリカ長期国債が一斉に換金されたことや、恐怖指数と呼ばれるVIX指数(ボラティリティ・インデックス)が上昇したことが、市場でパニックが起きたことを示しています。

そして、緊急経済支援策が発表され、追加予算も可決されるなどしたことから、少しずつ不安が解消されていったという訳です。5月からは経済が再開され、秋にかけて徐々に日常が戻ると見込まれることから株価も回復しています。

記録的な失業者数を叩き出していながら株価が回復しているもうひとつの理由が「主要IT企業の好調な業績」です。俗に言う「GAFA(Google・Apple・Facebook・Amazon)」が、コロナ禍でも堅調に業績を伸ばしたことが大きく影響しています。

新興企業向けの株式市場のナスダック総合指数を見てみると、2020年5月時点で、2月に記録した最高値(9,714)の85%程度を回復しています。つまり、GAFA、ネットフリックスなどの新興企業がコロナを逆風とせずに、さらに成長したことが株価上昇を牽引していると言えます。

このように、アメリカでは実体経済と株式市場で対称的な動きを見せていることが分かると思います。

アメリカで、実体経済と株式市場に大きな隔たりが出来た理由

アメリカの実体経済の様子と株価上昇の背景が分かったところで、もう一歩踏み込んだ分析をしてみると「実体経済」と「株式市場」は同じ「アメリカ経済」とは言えないような事情が浮かび上がります。

アメリカの失業者の大半は実体経済の最前線

コロナ禍によって失業した人の職業や職種は「レジャー・ホスピタリティー」分野が最も多く全体の46.8%を占めています。そのなかでカジノなどのギャンブル、遊戯施設が59.7%です。このことから、観光や娯楽などの分野が大打撃を受けていることが分かります。

ひとつの例として、ラスベガスで人気のショーのひとつである「シルク・ドゥ・ソレイユ」のスタッフ95%(4,679人が対象)が3月19日にレイオフ(一時解雇)されました。

この他にも、芸術やエンターテイメントが54.1%減、レストランなどの飲食業が46.2%、ホテルが45.5%、歯科医院52.5%と、それぞれ一時解雇または解雇されています。

これらに共通することは「実体経済の最前線の人たちやサービス」ということで、好調な株式市場とはかけ離れた存在なのです。

アメリカの実体経済とは別次元の株式市場

失業者が多い実体経済とは対照的に株式市場は急速に回復傾向です。

3月以降、パニック相場により株価が下落したことを好機と捉えた投資家は多く、短期売買目的で連日のように売買が繰り返されました。先述したように、株価下落でGAFAと呼ばれる主要IT企業株が「買い」状態になり、大量の資金が市場に集まったのです。

世界取引所連盟(WFE)と、米株価指数算出会社MSCIのデータによると、アメリカの株式時価総額は3月末以降から直近までで5兆2,000億ドル(約550兆円)、コロナ禍以前と比較して14%も増加しています。

この現象を引き起こしたのが、政府から緊急支援策としてアメリカ国民に一律で1,200ドル給付された「Stimulus Check」です。目下の生活に困っていない人たちが一斉に株式市場へ資金をつぎ込んだという訳です。

Stimulus Checkは、所得による給付金額の違いはあれど国民の9割が対象です。株式市場が回復傾向に転じた4月中旬時点で8,000万人超に支給済みで、その総額はおおよそ3,000億ドルとされています。この一部が株式市場に流れ込んだのです。(その後も同様の流れが続く)

さらに、株式取引アプリ「ロビンフッド」のデータでは、GAFAとMicrosoftの5銘柄を保有している人が明確に増加しています。3月27日には996,000人だったものが、5月8日に1,140,000人になっており、14%も増加しました。とりわけ、Amazonは28%増、Google(Alphabet)は15%増と目立っています。

このように、好調なアメリカの株式市場は実体経済とは全く関係がない業種や業態が大きく影響していることが分かると思います。また、それを引き起こしたのが政府による支援金と考えられています。

言い換えれば、アメリカの好調な株価は実体社会を映し出していないということです。この点が実体経済と株式市場に大きな隔たりが出来た理由と言えます。

ちなみに、コロナ禍によってAmazonのジェフ・ベゾスCEOの資産価値(流動資産と自社株)が上昇しました。過去5年で比較すると約34%も上昇しており、2026年には資産総額10兆円規模となるTrillionaire(トリオネア)になると言われています。

まとめ

アメリカでは新型コロナウイルスの影響で経済の二極化が浮き彫りになっています。戦後最悪で解消の目処が立たない実体経済、回復傾向でさらなる上昇も期待される株式市場のふたつはまるで水と油のように二分された状態です。

職に戻れない失業者が大勢いる実体経済は、株式市場の恩恵を受けることはなくそのままです。一方で、好調な株式市場は失業者の存在とは関係なく潤沢な資金が集まってくるため、深刻さとは無縁の世界と言えます。

日本でアメリカに関する報道を見る際には、実体経済と株式市場の乖離を意識して見ることがポイントです。仮に、好調な株式市場のニュースが大々的に報道されたとしても実体経済は決して好調とは言えないかもしれません。

本来であれば、実体経済の回復こそが本当の回復とすべきでしょうが、株価のニュースが先行しがちなので、アメリカ経済の様子を見誤らないようにしましょう。また、アメリカ経済の深刻な二極化を常に意識しておくことがアメリカを知るうえで大切なポイントです。

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本記事は、2020年6月2日時点調査または公開された情報です。
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