香港の次はウイグル族!アメリカが介入するウイグル族問題とは?

2020年6月17日、アメリカのトランプ大統領は「ウイグル人権法」に署名したことを発表しました。

本記事では、アメリカと中国の関係性を左右する「ウイグル族問題」と、それにまつわる諸外国の反応についてまとめました。

アメリカも注視する「ウイグル族問題」、公務員の方も、公務員志望の方も、是非ご参考ください。

はじめに – トランプ大統領、「ウイグル人権法」に署名

2020年6月17日、アメリカのトランプ大統領は「ウイグル人権法」に署名したことを発表しました。

ウイグル人権法とは、中国の新疆(しんきょう)ウイグル自治区で生活している、少数民族ウイグル族の弾圧に関与した中国の当局者に制裁を加えられるようにする法律です。

アメリカは中国政府が少数民族を弾圧して自由を奪っていると主張し、中国政府は内政問題にアメリカが乱暴に介入してきていると批判し、アメリカと中国の関係はさらに悪化すると見られています。

5月には香港の「国家安全法制」を巡って対立が起きた両国ですが、ここにきて再び新たな火種が増えた状態です。

そこで今回は、アメリカと中国の関係性を左右する「ウイグル族」に関して解説します。公務員志望の方は国際情勢のひとつとして参考にして下さい。

ウイグル族とは?

ウイグル族とは、4世紀から13世紀頃にかけて中央ユーラシアを拠点に活動していたテュルク系遊牧民族や国家の後裔のことです。

ウイグル族の総人口はおおよそ1,200万人で、カザフスタンやウズベキスタン、キルギス、そして中国西部の新疆ウイグル自治区(1955年に設立された中国最大の自治区)などで生活しています。ウイグル族の90%以上は中国の新疆ウイグル自治区にいるとされています。

ウイグル族の大部分はイスラム教徒です。ウイグル族は独自の文化や習慣を守るために中国からの独立や自治獲得を目指していますが、中国政府による都市開発や漢民族の移民によって追いつめられています。その結果、反発するウイグル族と中国政府が衝突することもありました。

中国政府としては漢民族中心主義によって国家統制を図っていますが、イスラム教徒が多いウイグル族は漢民族との文化的な隔たりも大きく、中央アジアや中東諸国との繋がりが深いことから、反乱や抵抗の恐れがあるとして中国政府から警戒されている存在です。

中国政府のウイグル族への対応

中国政府は自国のなかに「反体制派」がいることを懸念しており、ウイグル族に対する対応を年々強めています。

ウイグル族の監視

近年、中国政府がウイグル族に対して最も強めているとされているのが監視です。

中国の国内治安維持に対する予算は国防費よりも20%多く、英調査会社コンパリテックによると、2019年時点で国内に2億台の監視カメラがあり、2020年には6億台が設置される見込みとしています。

さらに、中国政府は国民のインターネット接続を監視するシステムを導入しており、これらの監視対象とされているのがウイグル族と言われています。

ウイグル自治区に治安部隊を配置

中国政府はウイグル族による反乱や暴動が起こらないように城管(露天商や違法駐車などを取り締まる公務員)、公安、武装警察、特殊警察などをウイグル自治区に大勢配置しています。

これらの警察組織と市民との間には日常的に小さな衝突が相次いでいます。強制的な立ち退きや、暴力行為も辞さないことから、まるでアメリカの警察のようです。

ウイグル族を収監している強制収容所

おおよそ100万人のウイグル族が自治区内にある500ヶ所以上の強制収容所に収監されていると言われています。

中国政府に対するデモに参加した人や居合わせた人、その家族など、実質的に「ウイグル族であること」を理由に、民族の1割強が強制的に逮捕されています。収容所内では、宗教感の矯正を強いられ、共産党を支持するように教育されると言われており、国際社会から批判を浴びています。

一方で、中国政府は強制収容所ではなく「職業技能教育訓練センター」としており、職業訓練を通して過ちを反省し、更正することを目的にしていると説明しています。

「Pair Up and Become Family」という取り組み

2017年頃からウイグル自治区では「Pair Up and Become Family」と呼ばれる取り組みが広まっています。

この取り組みは、ウイグル族の男性が家族を残して収容所に収監された場合、残された家族に漢民族の男性を送り込んで、新たな家族として「一般的な中国人らしい生活」をすることです。

中国政府の説明によると、ウイグル族の女性たちからは「民族の統一が実現する」ことから、概ね好評な取り組みとしています。

ウイグル族の抵抗

ウイグル族に対して締め付けを続けている中国政府に対して、ウイグル族は何度も抵抗をしてきました。

中国政府はウイグル族に対して様々な圧力をかけています。古くは1957年の反右派闘争、1958年に実施された「大躍進政策(農業と工業の大増産政策)」などがあり、ウイグル族の指導者たちが粛清され、飢饉問題も発生しました。

また、1966年の「文化大革命」ではウイグル族が信仰するイスラム教のモスク(礼拝堂)が破壊され、イスラム教指導者たちが迫害を受けました。

このような中国政府の圧力に対してウイグル族は抵抗を見せました。それが2009年の「ウイグル騒乱」です。これは玩具工場で働いていたウイグル族と漢民族のいざこざが発端で、ウイグル族と武装警察が衝突し、漢民族197名が死亡した事件です。

大規模な衝突となったことから世界中で報道されましたが、中国政府によって漢民族の犠牲だけが報じられました。後に、ウイグル族10,000人程度が行方不明になったままであることが判明しています。

ウイグル族問題に対するアメリカの反応

アメリカはウイグル族を巡る問題について中国政府に強硬な姿勢を見せていますが、トランプ大統領の言動に不穏な兆候があるようです。

ウイグル人権法

アメリカ政府はウイグル族弾圧に関与した中国の当局者の資産凍結やビザ発給停止を可能にする「ウイグル人権法」を成立させました。

アメリカ上下両院議会で圧倒的な支持を得て成立したこの法律は、今後180日内にウイグル族弾圧に関与した当局者や個人をリスト化し、議会に提出することになります。

そのうえで、拷問や不当な拘束、不当な拘束延長、非人道的な行為をした人物にアメリカへの入国禁止、ビザ取り消しなどを実行します。

共産主義や社会主義を許容しないアメリカは、例え他国の内政問題であったとしても介入してきた歴史があります。その証拠に、今回のウイグル族を巡る問題とまったく同じことが「香港」でも起きています。

「収容所の建設は問題ない」発言

トランプ大統領の元側近であるボルトン前米大統領補佐官(国家安全保障担当)は、ちかく出版予定の著書のなかで、2019年6月の米中首脳会談の場で、トランプ大統領が「(ウイグル族を対象とした)収容所施設の建設を進めてもいい」と習近平国家主席に述べたとしています。

それまでウイグル族の対応を巡って早期解放を主張していたアメリカ政府が真逆の意向を示したことになり、トランプ大統領の一貫性のない政策を指摘しています。

この報道を受けたトランプ大統領はボルトン氏を「嘘つき」と批判したうえで、アメリカ政府は中国政府に対して強硬姿勢を貫くと反論していますが、真相は不明です。

ちなみに、アメリカ司法省はトランプ大統領の意向を受け、ボルトン氏の暴露本出版差し止めに向けて連邦裁判所に提訴しています。(国家機密事項が含まれると主張)

トランプ大統領、再選へのアピール

ウイグル人権法の成立は、11月に控えている大統領選へのアメリカ国内向けアピールの狙いも大きいとされています。

これまで、再選を目指すトランプ大統領は、新型コロナウイルス感染拡大の原因は中国政府にあると断定し、香港を巡る問題を巡っては様々な制裁行為を決断してきました。

そして、ウイグル族問題に対しても中国政府に圧力をかけたことから、国民に「強いアメリカ」を見せつけたい狙いがあると言われています。

新型コロナウイルスの終息が見えず、人種差別や警察組織に対する抗議デモも続いていることからトランプ政権の焦りが見え隠れしています。

アメリカ政府に対する、中国政府の反応

今回のアメリカの対応を受けて中国の外務省は「(ウイグル人権法の成立は)乱暴に中国の内政に干渉するもので、強烈な憤慨と断固とした反対を表明する」と強く抗議しています。

また「アメリカがすぐにでも過ちを正すように再忠告し、従わなければ必ず反撃する」と、報復措置の考えを見せています。

このようなやり取りは香港の「国家安全法制」の時とまったく同じです。中国政府としては、自国の内政問題になぜアメリカがわざわざ介入してくるのか理解できないといった反応です。

同時に、アメリカの大統領選に向けて、中国に白羽の矢を立てることで自身への批判を避けたいトランプ政権の政略に巻き込まれているようにも映ります。

「ウイグル族問題」に対するイスラム諸国の反応

ウイグル族の大部分はイスラム教徒です。同じイスラム教が主流の中東諸国の反応はどうなのでしょうか?

イスラム諸国は中国との経済的な関係を保持したい

イスラム教が多い中央アジアから中東にかけてのイスラム諸国の多くは、中国が仕切っている「一帯一路(いったいいちろ)」と呼ばれるプロジェクトに参加しています。

このプロジェクトはアジア、アフリカ、ヨーロッパ、オセアニアなどの80以上の国を、鉄道や海上交通などのインフラを使って結びつけ、貿易を活発化させようとする巨大計画で、中国は信用各付けが低い国や経済的に貧しい国に対して巨額の貸し付けを行っています。

つまり、イスラム諸国の多くは中国に対して批判的な立場を取ると「経済的な関係を損なう」リスクがあるという訳です。

イスラム諸国は、個人の自由よりも社会の安定が優先

イスラム諸国の多くは、イスラム教の中で少数派を抱えており、これまで再三にわたって宗派を巡る対立や争いを経験してきました。

このこと(少数派に手を焼く)が今の中国政府の状況と重なることから、イスラム教は中国政府の方針に一定の理解を示しているとされているのです。

つまり「個人の人権や自由よりも社会的な安定を優先した方がうまくいく」と考えている人が多いということです。言い換えれば、ウイグル族の人権よりも中国の安定を優先することの方が重要となります。

イスラム諸国は、トルコの二の舞を避けたい

イスラム諸国は、ウイグル族弾圧を批判したために中国との関係が悪化したトルコの二の舞になることを恐れているとされています。

2009年、トルコのレジェプ・タイップ・エルドアン首相(当時)は、中国政府によるウイグル族弾圧を「ある種の大量虐殺行為」と批判しました。

その結果、中国政府は国営メディアであるチャイナデイリーの紙面を通じてエルドアン氏を批判し、発言の撤回を要求しました。

また、2015年には、トルコ政府が中国から逃げて来たウイグル族に対して避難所を提供した結果、再びチャイナデイリーの紙面で「両国の関係に悪影響で、協力解消に繋がる」と警告しています。

このような中国政府からの圧力があるために、イスラム諸国は中国に対して慎重な姿勢を貫いていると見られます。

まとめ

以上、「香港の次はウイグル族!アメリカが介入するウイグル族問題とは?」でした。

ウイグル族を巡る問題は、中国政府は内政問題であり他国の干渉は不要とする一方、アメリカは弾圧行為として介入する姿勢を見せています。

今回のアメリカ政府の対応は、大統領選を控えていることによるアピールの要素も大きいとされていることから、どこまで介入するかは不透明です。

また、暴露本出版を計画しているボルトン氏の指摘が事実であるとすれば、トランプ大統領の中国に対する言動は「裏表がある」となり、結局は中国に対して弱腰という印象を与えてしまいます。

大統領選に向けてアメリカと中国の関係性は目が離せません。ウイグル族問題も含めて注視しましょう。

本記事は、2020年6月26日時点調査または公開された情報です。
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