アメリカ大統領選「テレビ討論会」第1回目まとめ

2020年9月29日、アメリカのオハイオ州で大統領選に向けた「第1回テレビ討論会」が開催されました。

今回は、アメリカ大統領選「テレビ討論会」第1回目について、アメリカ在住の日本人にレポートいただきました。

はじめに - 真剣勝負!アメリカ大統領選「テレビ討論会」

2020年の大統領選は、現職のトランプ大統領と、民主党で元副大統領のバイデン氏によって争われているため「現職大統領vs大統領候補」という構図です。司会を含めた3人のみが出演し、各陣営の手助けやプロンプター(カンペ)などはなし、正に真剣勝負の場と言えます。

テレビ討論会は、1年以上かけて続く大統領選のクライマックスとも言え、大統領選で最も注目されるイベントです。

そんなテレビ討論会で、トランプ大統領とバイデン氏がどのようなことを語ったのか、アメリカ在住の筆者目線で、現地での反応なども含めてご紹介します。

なお、アメリカ大統領選「テレビ討論会」第2回目まとめについても併せてご参考ください。

》アメリカ大統領選「テレビ討論会」第2回目まとめ

2020年10月22日、アメリカのテネシー州ナッシュビルで大統領選に向けた「第2回テレビ討論会」が開催されました。今回は、アメリカ大統領選「テレビ討論会」第2回目について、アメリカ在住の日本人にレポートいただきました。

アメリカ大統領選テレビ討論会の概要

アメリカ大統領選のテレビ討論会は合計で3回実施されます。

それぞれ場所を変えて1時間半に及ぶ生中継ですが、無観客(関係者除く)で実施され、国内時差と視聴のしやすさを考慮し、東海岸時間の午後9時から始まります。(西海岸時間の午後6時)

その都度、著名なテレビキャスターやアンカーマンによる司会進行役がおり、話題になっているテーマや、それぞれの主張や反論について話しを振るようになっています。

司会者の役割は非常に大きく、時間配分だけでなく、興奮状態にある候補者らを制したり、瞬時に発言の内容を整理するといった対応力が求められます。また、国民が知りたいことを質問する「細やかさ」も必要で、テレビ討論会の印象を左右する存在でもあります。

第1回目のテレビ討論会では、直近で話題になった「トランプ大統領の所得税未払い疑惑」をはじめ、新型コロナウイルス対策、人種や暴力の問題に関して注目が集まりました。

注目されたトピックのいずれもトランプ大統領にとって有利とは言えないものばかりで、バイデン氏の方が攻撃しやすい状況だったことが分かります。一方、失言癖で知られているバイデン氏にとって90分の生中継は相当な重圧であることは明白で、プレッシャーに耐えられるかが注目されていました。

アメリカ大統領選テレビ討論会の内容

では、実際に第1回目のテレビ討論会でどのようなことが話されたのか、主な発言をトピック別にご紹介します。

テレビ討論会の内容その1:トランプ政権1期目に対する評価について

トランプ政権に対する評価については、トランプ大統領は様々な功績を自賛した一方、バイデン氏は分断が加速して暴力的になったと批判しています。また、中国やウクライナ企業との密接な関係持つバイデン氏の息子についても触れられました。

トランプ氏:私ほど3年半の間に多くのことをやってきた大統領はいない。パンデミック前までは史上最高の経済状況で、失業率は最も低かった。

宇宙軍の創設をはじめ、アメリカ軍の再建にも取り組んだ。オバマ・バイデン前政権では、まともな医療保険制度がなかったため、30万人が亡くなった。

バイデン氏:トランプ政権下のアメリカは、弱体化、貧困、分断、そして暴力的になった。私はオバマ政権で経済を再建したが、トランプ政権は再び不況をもたらした。

私はロシアのプーチン大統領と向き合ったが、トランプ大統領はロシアに何も言えず、プーチン大統領の犬になっている。

あなたは軍人を「負け犬」呼ばわりした。私の息子(長男のボー、2016年に病死)はイラクに駐留し、負け犬ではない。

トランプ氏:ボーのことはよく知らない。次男のハンターは薬物依存を理由に軍隊から放り出され、中国とウクライナの企業でかなり儲けたらしいね。

バイデン氏:それは事実ではない。

テレビ討論会の内容その2:新型コロナウイルスについて

バイデン氏はトランプ大統領の新型コロナウイルス対策を徹底的に批判しました。これに対し、トランプ大統領は中国に原因があることを主張しています。

バイデン氏:新型コロナウイルスによって20万人のアメリカ人が死んだ。大統領はパニックになっており、プランがない。むしろ、(当初は)中国政府の対応を素晴らしいと評価さえしていた。

トランプ氏:これは中国のせいだ。(プランとして)製薬会社とワクチン開発について話しをしており、予定よりも早くできる。(バイデン氏は)命を救う行為よりも、この問題を政治化することを優先している。

バイデン氏:仮に、1月からソーシャルディスタンスとマスク着用のプランを実行していれば、最大で10万人の命が救われたはずだ。大統領は、人々にマスクをしなくていいとすら言っている。

トランプ氏:私は必要な際にマスクを着用している。

バイデン氏:大統領が賢くならない限り、さらに多くの人が命を落とす。

トランプ氏:いま「賢い」と言ったのか?私に対して二度とそのような言葉は使わないでほしい。あなたはまったく賢くないし、47年の政治人生で何ひとつ達成していない。

テレビ討論会の内容その3:所得税未納疑惑について

テレビ討論会直前に浮上したトランプ大統領の所得税未納問題(2016、2017年の所得税納税額がいずれも750ドルだった問題)についても言及がありました。

トランプ氏:私は数百万ドル支払った、すぐに分かる。私は税金を払いたくない、これは他の民間人も同じ思いで(節税のために)法律をうまく利用するものだ。

バイデン氏:大統領が払った所得税は学校教員よりも少ない。納税申告書を見せてほしい。大統領は税制を利用できるから自分は頭が良いと思っている。史上最悪の大統領だ。

テレビ討論会の内容その4:経済政策について

トランプ大統領は偉大な経済構築の実績を強調した一方、バイデン氏は富裕層のみが儲かる経済であることや、不平等な税制について触れています。

トランプ氏:現政権で史上最高の経済を築いた。中国からの感染症によって経済を止めざるを得なかったが、すでに1,000万人超が再雇用されており、見たことがないほどの回復力を示している。バイデン氏が当選すれば、経済が止まり国が崩壊するだろう。

バイデン氏:大統領は金融市場しか見ていない。パンデミックによって死者が増え続けているのにもかかわらず、経済再開を急ぐ。

21%まで税率を下げた法人税は28%に戻すべきだ。アメリカの主要500社の中には莫大な利益をあげていながら、全く税金を納めていない企業がたくさんある。

トランプ氏:バイデン氏の経済政策が実行されたら、アメリカの企業の半分は海外へ出ていく。これまでにない不況を招くことになる。私は製造業で70万人の雇用を回復させた。

テレビ討論会の内容その5:人種問題や暴力について

人種問題について、バイデン氏はトランプ大統領がアメリカの分断をあおっていると主張した一方、トランプ大統領は国民は「法と秩序」を求めていると反論しました。
バイデン氏:ホワイトハウス前で起きた平和的デモ隊に対して、警官隊を導入し催涙ガスを使用した。こういった行為を通じて憎悪を生み出し、分断を引き起こそうとしている。黒人の1,000人にひとりがコロナで死んでいるのに、この男(トランプ大統領)は何もしていない。

トランプ氏:オバマ前政権時にも大きな分断はあった。いま見ているものよりもさらに暴力的だった。私は「法と秩序」に従った対応を取っている。

私は軍や警察関係者から多くの支持を得ているが、あなたは過激な左派の支持を失うことを恐れて「法と秩序」という言葉すら使わない。バイデン氏は警察の予算削減に言及しており、法の執行機関からはまったく支持されていない。

バイデン氏:(予算削減に対して)そんなことはない。多くの警察官は優秀だが、中には腐ったリンゴのような存在がいる。だからこそ、説明責任を求めて透明性を高めたい。我々は同じアメリカ人であり、団結することで人種差別を乗り超えられる。

テレビ討論会の内容その6:医療保険制度(オバマケア)について

バイデン氏はオバマケアを拡大すべきと主張する一方、トランプ大統領は社会主義者の保険制度とこき下ろしました。

バイデン氏:オバマケアが撤廃されたら1億人が保険を奪われる。私の案はオバマケアを拡大することだ。

トランプ氏:1億人もいない。民主党は社会主義の医療保険を求めている。私はオバマケアの最悪な部分である加入義務を撤廃し、友好国と協力して薬価を下げた。これはどの大統領も成し遂げていない。オバマケアは保険料が高すぎてダメだ。

バイデン氏:すべて嘘だ。多くの人からオバマケアの恩恵を奪おうとしている。大統領は医療保険制度に関する計画など持っていないし、薬価も下げていない。

テレビ討論会の内容その7:気候変動問題について

カリフォルニア州の山火事によって再び注目されるようになった気候変動問題については、パリ協定を巡って意見が対立しました。

トランプ氏:アメリカは二酸化炭素の排出量がいま最も少ないのに、経済は壊れていない。私は綺麗な水や空気を望んでいるが、パリ協定は酷すぎる。

カリフォルニア州の山火事は「森林管理」が問題だ。ヨーロッパでは森林を管理して維持している。それがないからカリフォルニア州は毎年のように広大な土地が燃えている。

バイデン氏:当選したらパリ協定から離脱することを取りやめる。私は再生可能エネルギーのコスト削減に尽力してきた。今後は火力発電所の建設を止めて再生可能エネルギーに移行する。そして、2035年までに発電部門からの温暖化ガス排出量をゼロにする。

トランプ氏:「グリーン・ニューディール政策」には100兆ドルも必要だ。

バイデン氏:それは私の政策ではありませんよ。

テレビ討論会の内容その8:郵便投票について

郵便投票を「不正選挙の温床」と主張するトランプ大統領に対して、バイデン氏はトランプ大統領が不安を煽っていると非難し、投票を呼びかけました。

バイデン氏:郵便投票が不正につながる証拠などありません。あなた(有権者)の1票で結果が決まるので、ぜひ投票してほしい。

トランプ氏:私の名前に印が入っている投票用紙が川やゴミ箱に捨てられている。票を売る配達員もいるらしいから、かつてない不正選挙になる。(投票日の)11月3日以降、何か月も結果が出ないかもしれない。

結果を巡る法廷闘争になった場合、最高裁判所の判断に期待する。公正な選挙の結果なら受け入れるが、不正な票ならば受け入れることはできない。

バイデン氏:私は選挙結果がどうであれ受け入れる。私が勝てば素晴らしい、彼が勝っても受け入れる。私は民主党と共和党の大統領になる。

アメリカ大統領選テレビ討論会に対する世論の反応

1回目のテレビ討論会を巡る反応は「ひどい」という声が目立ちます。

終始お互いの非難合戦であったことや、トランプ大統領がバイデン氏の発言中に度々ヤジを入れ、司会者のクリス・ウォレス氏が厳しい口調で制止する場面が見られました。

耐えかねたバイデン氏がトランプ大統領に対して「ちょっと黙っていてください」と怒りを露わにする場面もあり、両者の大人げない対応に幻滅する人は多かったようです。

また、中立性を保つべき司会者ですら「大統領は2分間の発言機会に同意したのですよ?なぜ口を挟むのですか?」と叱責するような場面も見られました。(ウォレス氏は共和党寄りメディアFOXニュースのキャスター)

バイデン氏の発言中に口を挟むトランプ大統領、そしてそれを制するウォレス氏の関係性は「トランプ大統領vsバイデン&ウォレス」といった構図を生み出す結果になってしまいました。

事実、トランプ大統領は討論会後に自身のツイッター上に3者の関係を皮肉った写真を掲載しています。

メディアの反応

民主党寄りのCNNキャスターは「ありのまま言って、最低のショーでした」と感想を述べ、NBCのキャスターは「討論会がここまでと聞いてホッとした人も多いでしょう。これまでのアメリカの討論会で最低かもしれないですね」などとコメントしています。
CBSニュースは「いまアメリカ人は揉め事を必要としていないのに、揉め事が絶えませんね」と皮肉を込めて感想をまとめています。また、「今夜は普通の夜ではありませんが、大統領にとっては普通なのでしょう」とも述べています。

一方、共和党寄りのFOXニュースは「激しい討論会だった」としたうえで「バイデン氏は低いハードルを乗り越えられた」や「息子を擁護した」と、バイデン氏に厳しめの意見です。

ちなみに、筆者が暮らすアリゾナ州のローカルニュースでは「見たくもない」とバーでお酒を飲む若者たちを取材していました。インタビューには多くの人が「無意味」や「何も変わらないから」と批判的な意見でした。

また、SNS上では「どのテレビ局も討論会ばかりでウンザリ」や「テレビを捨てようと思う」など、あながち冗談ではなさそうな意見が散見されました。メディアも国民も「残念でならない」という印象を持っているように感じました。

まとめ

以上、アメリカ大統領選「テレビ討論会」第1回目まとめでした。

1回目の討論会は両者が自滅するのを見ていたような印象です。当初、討論会に不安が残ると言われていたバイデン氏は「思ったよりはうまく立ち振る舞った」という見方が多く、トランプ大統領に対しては「相変わらず勢いはあるが、乱暴過ぎた」といった印象でしょう。

2回目のテレビ討論会は、選ばれた有権者から質問を受け付けるタウンホール・ミーティング形式で実施されます。ふたりが一般人に対してどのように振る舞うかも注目です。

2020年10月28日追記;第2回目テレビ討論会について

2020年10月22日、アメリカで2回目のテレビ討論会が行われました。アメリカ大統領選「テレビ討論会」第2回目まとめについても併せてご参考ください。

》アメリカ大統領選「テレビ討論会」第2回目まとめ

2020年10月22日、アメリカのテネシー州ナッシュビルで大統領選に向けた「第2回テレビ討論会」が開催されました。今回は、アメリカ大統領選「テレビ討論会」第2回目について、アメリカ在住の日本人にレポートいただきました。

本記事は、2020年10月16日時点調査または公開された情報です。
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