はじめに - 企みがある?トランプ陣営の計画とは
2020年10月2日、アメリカのトランプ大統領とメラニア夫人が新型コロナウイルスに感染したことはご存知だと思います。
一時は酸素マスクを着用するほどに症状が悪化したと言われているトランプ大統領ですが、入院からわずか3日で退院し、その4日後には選挙集会に参加する活躍ぶりを見せています。
アメリカでは、大統領が無事に戻ってきたことを歓迎する一方で、大統領選を睨んだ「何かしらの企み」があるのではないかという声が上がっています。
今回は、トランプ大統領の新型コロナウイルス感染から現場復帰までの一連の流れ、そして再選を目指すトランプ陣営が計画していることとはいったい何なのか解説します。
アメリカ大統領トランプ氏の新型コロナウイルス感染について
トランプ大統領が新型コロナウイルスに感染した原因として考えられているのが、大統領側近のひとりで選挙対策本部長を務めるビル・ステピエンの感染です。
トランプ大統領再選の鍵を握るとされる42歳のステピエンは、トランプ大統領だけでなく、家族や別の側近とも親しい関係を持っており、側近中の側近とされる優秀な人物です。そんな彼の感染が公表されたのが10月1日でした。
また、大統領顧問を務めるホープ・ヒックス氏の感染も同時期に明かになっています。ヒックス氏の場合、専用機にトランプ大統領と一緒に乗っていたことから、ホワイトハウスは大統領の感染も疑わざるを得なくなりました。
一方で、9月26日にホワイトハウスで開かれた、連邦最高裁判事の指名記者会見の場において、すでに疑わしい症状を持っていた退役軍人がゲストとして招待されていたことが分かっており、この記者会見が集団感染を招いたと考えられています。
9月26日から10月1日までの間に、ホワイトハウス関係者や大統領側近の感染を公表せずに、トランプ大統領は執務にあたっていたという訳です。
結果的に、2名の主要な側近と別のメンバー7名がホワイトハウス内で感染したことが分かり、10月2日にトランプ大統領およびメラニア夫人の感染が公表されました。
アメリカ大統領トランプ氏の実際の容態は危険だったのか?
大統領の容態を巡っては、トランプ大統領がワシントンD.C.にあるウォルター・リード米軍医療センターに入院してから、医師団とホワイトハウスの両者間で、はっきりしない情報が錯綜しました。
入院直後から「大統領の容態は安定しており元気だ」と公表していた主治医のショーン・コンリー氏をはじめとする医師団は、10月4日の記者会見で「2日の時点で酸素吸入し、肺に注視していた」と、大統領の容態は深刻な状態だったことを明かにしています。
また、2日の時点で血中酸素濃度が一時的に低下し、高熱を出していたことも明かにしており「当初の説明よりも実際の容態は深刻だった」と苦しい説明に追われる始末でした。
この背景には、大統領の新型コロナウイルスの症状を軽く見せようとしたホワイトハウスの思惑があり、医師団との連携がうまくいかなかったことがあります。
事実、主治医のコンリー氏は、2日と4日の説明内容に違いがあることに触れ「医師団と大統領の前向きな姿勢を反映しようとした」と、隠蔽を否定しつつも真実に基づいていない説明を認めています。
抗ウイルス薬「レムデシビル」や、重症患者に用いられるステロイド薬「デキサメタゾン」の投薬もされていたことから、多くの医師は「トランプ大統領は肺炎を悪化させていた」と推測しています。
結果的に、大統領の容態に関する情報はプライバシー保護の観点で公開されず、実際の容態はどうだったのかは誰も知らないままの退院となりました。
入院から3日目の10月5日、同病院を退院したトランプ大統領は「20年前よりも体調がいい」とコメントしています。
アメリカ大統領トランプ氏の過剰なまでのパフォーマンス
トランプ大統領は、新型コロナウイルスの陽性反応が発覚した時点から強気の態度を崩していません。
感染を恐れていない様子を表す際立った行動が、病院前に集まった支持者らの前に姿を現したことでしょう。
これは、トランプ大統領の入院を心配した多くの支持者が病院の前に集結して、大声でトランプ大統領を讃える声援をあげたり、車でクラクションを鳴らすなどして、早期回復と早期退院を応援したことに始まります。
トランプ大統領は、病院前に詰めかけた支持者らの声援に応えるべく、突然、車に乗って病院の周辺を走行する行動をとったのです。マスクをした大統領は車内から支持者に向けて手を振り、健康振りをアピールしました。異常とも言える行動に支持者は大喜び、反対派は言葉を失くす事態になったのでした。
また、入院中には度々ツイッターで自身の様子を公表し、病院内で執務にあたっている様子や、ビデオメッセージを投稿するなど、コロナ感染者とは思えない様子をアピールしました。ビデオメッセージでは、医療従事者を讃えると同時に、コロナを恐れる必要はないことを主張し、感染防止対策に積極的な民主党を批判しました。
退院してヘリコプターでホワイトハウスに戻ってきた際には、映画さながらの大袈裟な演出で、ホワイトハウスのバルコニーに立ち、着けていたマスクをゆっくりと外して飛び立つヘリコプターに向かってしばらく敬礼しました。(普段はこんなことはしない)
この様子はツイッターでも拡散され、支持者からは「ヒーローの帰還」、反対派からは「滑稽な演出」と両極端な反応がありました。大統領やホワイトハウスとしては「コロナに打ち勝った英雄的な大統領」として演出したかった狙いがあるようです。
このような過剰な演出をもってして「強い大統領」をアピール、そして大統領選での再選を果たしたい思惑が透けて見えます。つまり、トランプ陣営は新型コロナウイルスさえも大統領再選のためにうまく生かそうとしていると言えるでしょう。
アメリカ国内で高まる感染演出疑惑
そもそもトランプ大統領の新型コロナウイルス感染は嘘だったのではないかという声も聞こえてきます。
これらの噂の背景には、大統領の感染発覚が遅かったことや、9月30日に開催されたテレビ討論会での印象が最悪だったこと、異常なまでに早い回復、そして所得税疑惑への追求を避けることなどが挙げられています。
また、トランプ陣営は選挙で負けた場合でも「郵便投票による不正選挙」を理由に敗北を認めず、最高裁の判決まで持ち込もうとしているとされています。
最高裁にまでもつれ込んだ場合に有利な判決を得られるよう、最高裁判事に保守派(共和党寄り)のエイミー・バレット氏を指名しており、議会での承認を急いでいることも事実です。
事前予想で民主党のバイデン氏に10%近くの差を開けられていたところに、テレビ討論会での失態や所得税疑惑などが重なったことから、新型コロナウイルス感染そして復活劇を演じてみせたと見る人がいるのです。
ドキュメンタリー映画監督のマイケル・ムーア氏は自身のフェイスブックで、トランプ大統領のコロナ感染をフェイクニュースと皮肉ったうえで「絶対的な真実として、彼(トランプ大統領)はプロの嘘つきだ」とコメントしています。
また、劣勢な状況にあるトランプ陣営がコロナ感染を演出し、メディアからの攻撃を避けようと考えていると述べています。大統領はアメリカという国で、病人を攻撃するような報道は絶対に好かれないという、メディアの弱みを理解していると言うのです。
トランプ陣営は、大統領が新型コロナウイルスに感染し、短期間で驚異的な回復を果たして公務に戻ったという事実を作り上げて、世間の同情や支持者拡大を図ったと見られています。
誰も真実を知らない大統領の病状、アメリカ人が好みそうな演出、劣勢な状況下でのメディアのコントロール、これらを踏まえると陰謀論を否定できなくなってきます。
アメリカ大統領トランプ氏の新型コロナウイルス感染が与えた影響
トランプ大統領の新型コロナウイルス感染は、大統領選に向けて各所に影響を及ぼしています。
そのなかでも最も大きな影響とされているのが「テレビ討論会のキャンセル」です。大統領候補者同士による1対1の討論会は、全部で3回実施されることが通例です。
しかし、トランプ大統領の感染を受けて、10月15日に予定されていた2回目の討論会はキャンセルされました。
主催者はオンラインによる実施を提案しましたが、トランプ陣営がこれを拒否。民主党のバイデン陣営は討論会の日程を変えることは出来ないとしたため、打つ手なしとなり、キャンセルされました。
1回目のテレビ討論会が「史上最悪」と評されただけあって、2回目の討論会は注目されていましたが、結局は開催しないことで決着しました。
しかし、トランプ陣営にとっては好都合です。トランプ大統領が批判の対象になる場面を回避し、さらには別の選挙活動に集中できるようになったためです。とくに、共和党と民主党が僅差の接戦州を訪問しやすくなることは劣勢のトランプ陣営としてはチャンスと言えるでしょう。
まとめ
以上、「噂は本当か?トランプ陣営が再選を目指すための計画」でした。
アメリカでは大統領選が近づいてくるほどにトランプ陣営の焦りを感じさせる事態なっています。トランプ大統領の感染が真実かどうかは誰も判断できませんが、今回の一件を受けてトランプ大統領を応援する声が多かったことも事実です。
10月10日、トランプ大統領はホワイトハウスでマスクを外した状態で演説を実施し、コロナに完全に打ち勝った姿勢を見せました。12日にはフロリダ州への訪問を予定しており、大統領選に向けて活動を活発化させています。
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