基本的人権とは?
基本的人権とは、個人が人間らしさを保ち、自立して生きていけるための権利のことです。これは、人間として当たり前に有し、たとえ国家であっても侵すことのできない権利になります。
日本国憲法では、第13条で「すべて国民は、個人として尊重される」と、国民一人ひとりに人権があることを規定しています。
基本的人権の種類
基本的人権は、具体的には自由権、社会権、平等権などいくつかの種類があります。これらは「自由権的基本権」「社会権的基本権」「人権確保のための権利」「新しい人権」の4つに分けられます。
自由権的基本権とは?
自由権的基本権とは、国家権力の違法、不当な介入や干渉を排除し、各人の自由を保障する権利のことです。日本国憲法の保障する自由権はさらに「精神の自由」「身体の自由」「経済の自由」の三つの分野にわけることができます。
また、自由権的基本権には「平等権」も含まれます。
自由権その1:精神の自由
精神の自由には、思想・良心あるいは信教などの人の内心に関する自由と、それが外部に表現される場合の集会・結社・表現の自由、そして経済の自由の三つの分野があります。
精神の自由における「思想良心の自由」とは?
思想良心の自由は、人間の精神面の働きのうち、もっとも内面的なものです。これが侵害されると人間らしさが失われてしまうため、憲法で保障されています。
三菱樹脂事件では、この思想良心の自由が、私人間においても適用されるかが問題となりました。
【判例】三菱樹脂事件
三菱樹脂事件とは、思想良心の自由について争われた民事訴訟事件です。
原告は、三菱樹脂に入社試験で、身上書に学生運動歴を秘匿していたことから、使用期間終了直前に本採用を拒否されたことで訴訟となりました。
原告は、本採用拒否が思想、信条を理由とする解雇であるとして、解雇の無効を求めました。第一審では解雇権の乱用にあたるとされましたが、最高裁では、憲法第19条は会社と従業員という私人間には適用されず、特定の思想、信条ゆえの採用拒否は違法にならないと下されました。
精神の自由における「信教の自由、政教分離の原則」とは?
信教の自由は、人がどのような宗教を信じてもよいとする自由です。また、宗教を信じないことも含めた自由でもあります。
大日本帝国憲法の時代では、天皇制と結びついた国家神道が国によって国民に強制されたり、治安維持法によって他宗教が弾圧されることがありました。こうした経験から、現行の憲法には国家の政治と宗教が結びつくことを禁じる「政教分離の原則」があります。
「津地鎮祭訴訟」や「愛媛玉ぐし料訴訟」は、政教分離の原則に違反するかどうか議論となった事件です。
【判例】津地鎮祭訴訟
津地鎮祭訴訟は、市立体育館建設の際に行われた地鎮祭が、政教分離に反するか争われた行政訴訟です。1965年、三重県津市が市立の体育館の起工式を神式の儀式(地鎮祭)で行い、その費用を公金で支出したため、住民がこの支出は違法として訴訟を起こしました。
第一審では、地鎮祭は習俗的行事であるとして、原告の請求を棄却しました。第二審では憲法第20条の規定する宗教活動にあたり、政教分離の原則に反するものとしましたが、最高裁では住民側が逆転敗訴しました。
【判例】愛媛玉ぐし料訴訟
愛媛玉ぐし料訴訟とは、愛媛県知事が、戦没者の遺族の援護行政のために靖国神社などに対して玉串料を公金から支出したことに対し、市民団体が違法として訴訟を起こしました。
最高裁は政教分離に反するとして違憲判決を出しています。
精神の自由における「集会・結社・表現の自由、通信の秘密、検閲の禁止」とは?
憲法第21条により、集会・結社・言論・出版の自由をはじめ、その他いっさいの表現の自由と通信の秘密が保障されています。
これにより、考えたことや知った事実を自由に発表することができますが、この自由権の行使は、思想・良心の自由と異なり、名誉やプライバシーを侵害した場合には、他人の権利と衝突することになります。そこで、表現の自由と他人の権利との調整をどうすべきかが問題となっています。
表現の自由を制限する場合は、十分な根拠に基づいて行う必要があり、公権力が外部に発表されるべき思想の内容をあらかじめ審査し、必要があるときにはその発表を禁止する「検閲」という手段で制限することは特に禁じられています。
表現の自由では「チャタレイ事件」「東京都公安条例事件」などの訴訟があります。
【判例】チャタレイ事件
作家であるローレンスの小説『チャタレイ夫人の恋人』の翻訳が刑法第175条のわいせつ物頒布罪として問われた事件です。
わいせつと「表現の自由」との関係が論議されましたが、最高裁において有罪となり、罰金刑が確定しました。
【判例】東京都公安条例事件
東京都の許可条件に違反する集会・デモ行進を指導したとして、主催者が東京都公安条例違反で起訴された事件です。デモの許可制が、憲法21条の集会、結社の自由に違反するとして争いになりました。
最高裁では、「許可」を義務づけられているものの、実質的には「届出」と同じと考えられるものとして合憲と判断されています。
精神の自由における「学問の自由」とは?
学問の自由は、大学や高等研究機関における研究や学説の自由、研究成果を発表する自由、研究成果を教授する自由を指します。
この自由には、大学の管理運営を自主的に行う「大学の自治」も含まれています。
「東大ポポロ劇団事件」では、この「学問の自由」「大学の自治」について議論されました。
【判例】東大ポポロ劇団事件
1952年、東京大学の学生団体ポポロ劇団が演劇発表会を行った際、学生が会場にいた私服警官を暴行した事件です。
学生がとった行動が、憲法第23条が保障する「学問の自由」と大学の自治を守るためのものであるかどうかが問題となりました。
第一審、第二審では無罪判決がでましたが、最高裁は差し戻し、学生の有罪が確定しました。
自由権その2:身体の自由
憲法では、身体の自由として正当な理由なしに、身体活動を拘束されないように規定しています。
具体的には、奴隷的拘束及び苦役からの自由(第18条)、法定手続きの保障(第31条)、住居の不可侵(第35条)、黙秘権(第38条1項)などを保障しています。
身体の自由における「奴隷的拘束及び苦役からの自由」とは?
憲法18条で、人格を無視するような身体の拘束、肉体的、精神的な苦痛を伴う労役からの自由が保障されています。
身体の自由における「決定手続きの保障」とは?
憲法第31条では、国家がどのような行為を犯罪とし、どのような刑罰を科すかは、法律の定めを必要とする罪刑法定主義と、法律の定める手続きによらなければ、その生命もしくは自由を奪われ、またはその他の刑罰を科せられないという「法の適正な手続きが」保障されています。
身体の自由における「刑事被告人の権利」とは?
刑事事件で犯罪を犯した疑いを受けている被疑者や、裁判の判決が下されていない被告人が人間らしく扱われるように、次のような権利が保障されています。
刑事被告人の権利その1:黙秘権・自白強要の禁止
憲法第38条で、取り調べや裁判において被疑者、被告人が供述を拒むことができる黙秘権が保障されています。自白のみを証拠として刑罰を科すことは禁止です。
刑事被告人の権利その2:不法に逮捕されない権利、住居不可侵
犯罪捜査のための強制処分である逮捕・捜索・押収・住居侵入には、現行犯以外は警察官や検察官の判断だけでなく、裁判官または裁判所の令状を必要とする「令状主義」の原則があります。
刑事被告人の権利その3:抑留・拘束の要件
逃亡や証拠隠滅を防止し、将来の公判に備えて被疑者、被告人を勾留・拘束する刑事上の手続きには、「正当な理由を直ちに告げられること」「直ちに弁護人に依頼する権利を与えられること」「本人及びその弁護人に公開の法廷で正当な理由を示さなけらばならないこと」の3つの要件があります。
刑事被告人の権利その4:拷問・残虐刑の禁止
憲法第36条で、被疑者または被告人に自白を強いる目的で肉体的苦痛を与えることは禁じられています。また、人格を無視した方法や不必要な精神的、肉体的苦痛を伴う刑罰も禁止です。
自由権その3:経済の自由
憲法では、経済の自由として居住・移転・職業選択の自由(第22条1項)と財産権(第29条)を保障しています。
【判例】薬事法違憲判決
薬事法違憲判決は広島県で薬局の新規開設が薬事法の委任を受けて制定された条例に違反するため、不許可になり裁判となった事件です。
薬局が偏在することで過当競争が生じ、良質な医薬品の供給を妨げる危険があるとして、薬局間の距離に制限規定を設けた条例が、憲法22条1項「居住・移転の自由」に違反するとして争われました。
裁判の結果、薬局開設の地域的制限を定めた規定は、憲法に違反するとして条例は無効、薬局新設が認められました。
経済の自由における「財産権の不可侵」とは?
財産権とは、財産を所有し、自由に利用することができる権利のことです。この財産権について、国家および他者が新河岸してはならないとして、憲法29条第1項では財産の保障を規定しています。
【判例】森林法共有森林分割規定違憲判決
森林法による森林の分割禁止が憲法29条の財産権の侵害にあたると訴えた裁判です。
森林法は、森林の細分化を防ぎ、生産力を増やすことで経済発展を測ることを目的としているが、持分2分の1以下の共有さの分割だけを許さないことに必要性は見出すことができず、目的に対し、手段の合理性も必要性も肯定できないとして違憲であると下されました。
平等権とは?
憲法14条第1項では、「すべて国民は、法のもとに平等であって、人種、信条、性別、社会的身分または門地により、政治的、経済的又は社会関係において差別されない」と「法の下の平等」を定めています。平等権には具体的に「両性の本質的平等」「教育の機会均等」「参政権の平等」などがあげられます。
【判例】尊属殺重罰規定違憲判決
刑法200条の尊属殺が、憲法14条の法の下の平等に反し無効となった判決です。被告人の女性は実父を殺害し、当時の刑法200条尊属殺規定(被害者が被疑者の父母、祖母祖父などの直系尊属である場合、重刑となる)により起訴されました。
ところが、被告人の女性は中学生のころから実父より姦淫、脅迫、虐待され続けていたことが明らかになり、刑法200条がなければ過剰防衛にもなりうるため、刑法200条の違憲かどうかが議論となりました。最高裁では刑法200条は、「法の下の平等」を定めた憲法14条に違憲するものであり、被告人は刑が免除されました。
平等権における「両性の本質的平等」とは?
「両性の本質的平等」とは、性別に関わらずすべての人間の尊厳が認められなければならないということです。憲法第24条で、家族における夫婦の平等とともに、「両性の本質的平等」が定められています。
平等権における「教育の機会均等」とは?
「教育の機会均等」とは、すべての国民が、その能力に応じて等しく教育の機会を与えられることを指します。教育の機会においては、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位または門地による差別が禁止されます。
平等権における「参政権の平等」とは?
憲法第44条で規定している国民が国政に参加する権限を平等に持つことです。
【判例】衆議院議員定数訴訟
都市部への休息な人口移動によって、各選挙区間に議員定数の不均衡が生じ、選挙人の一票の価値に不平等が生じる問題があります。
公職選挙法によれば、議員定数の不均衡は国勢調査の結果に基づいて見直しされることになっているが、適切に是正されていません。最高裁判所では、衆議院の訴訟に対してこれまで二度違憲と判断し、近年は2倍を超える格差を違憲状態とする判断を繰り返しています。
社会権的基本権とは?
社会権的基本権とは、すべての国民が人間らしい生活を営む権利をいい、「生存権的基本権」ともいわれます。
生存権とは?
生存権とは、人間の尊厳にふさわしい生活を営む権利のことです。
憲法第25条で「健康で文化的な最低限度の生活」と、生存権の内容と程度が定められています。この権利を保障するために、国は社会福祉や社会保障、公衆衛生の向上・増進に努めています。
生存権の保障は、国の財政出動をともなうため、国に対して政策の方針や目標を示したものにすぎず、法的な拘束力を持たないとの考え方(プログラム規定説)と、憲法に人権として定められた以上、法的拘束力をもつ権利であると解するべきであるとする法的権利説が対峙しています。
【判例】朝日訴訟
「朝日訴訟」は1957年に生存権をめぐって争われた訴訟です。国立岡山療養所に入院中の朝日茂さんが、国の生活保護の給付内容が不十分であり、憲法第25条に違反するとして訴訟となりました。
最高裁では、何が健康で文化的な最低限度の生活かの認定判断は厚生大臣の合目的な裁量にゆだねられており、裁量権の逸脱または濫用があったとしても、ただちに違法の問題は生じないと判断されました。
【判例】堀木訴訟
全盲と母子世帯という二重の負担を負った堀木フミ子さんが、障害福祉年金と児童扶養手当の併給を禁止した児童扶養手当法(改正前)の規定は、憲法第25条にある生存権の保障などに違反するとして、国を相手取り起こした訴訟です。
最高裁では、併給調整は立法府の裁量の問題であり、それにより給付が低額になったからといって、憲法25条違反にはならないと下されました。
社会権における「教育を受ける権利」とは?
教育を受けることは、「健康で文化的な最低限度の生活を営む」ためには不可欠な条件であることから、憲法26条で教育を受ける権利が保障されています。そのため、義務教育期間である小学校、中学校の9年間の普通教育に要する費用については無償です。
社会権における「勤労の権利」とは?
憲法第27条で、労働する意思と能力を持つ者が、国に労働の機会を要求することができる権利が保障されています。
憲法第38条では、労働者の「団結権」「団体交渉権」「団体行動権」が保障されています。これらを合わせて「労働三権」と呼びます。
【判例】全逓東京中郵事件
全逓東京中郵事件とは、郵便職員の組合である「全逓労働組合」が、郵便局内で職場集会を行ったことが郵便法に違反するとして起訴された事件です。
最高裁では、公務員の労働基本権の制限は最小限でなければならないとして、集会は違法ではないと下されました。
【判例】全農林警職法事件
1958年の警職法改正に対して、全国各地で反対運動が起こりました。全農林の労働組合も反対運動を起こし、組合の幹部が農林省の職員たちに対してデモへの参加を強く勧めました。この行為が、国家公務員法に違反するとして、起訴された事件です。
最高裁では、労働基本権の保障は公務員にも及ぶものではありますが、公務員の争議行為は国民の利益に大きな影響を及ぼすため、規制されてもやむを得ず、国家公務員法の規定は違憲しないと下されました。
人権確保のための権利とは?
人権確保のための権利として、政治に参加する権利である参政権と国民の基本的人権を確保するための権利である請求権があります。
人権確保のための権利その1:参政権
参政権とは、国民が政治に参加する権利のことです。国民主権の原則が参政権によって保障されています。
日本国憲法では、参政権として普通選挙、秘密選挙国、国会議員、地方議員、知事・市町村長などの公務員の選定・罷免権が保障されています。
また、最高裁判所裁判官の国民審査や、憲法改正に関する国民投票、特定の地方公共団体にのみ適用される特別法に関する住民投票などの直接民主制的な権利も定められています。
人権確保のための権利その2:請求権
請求権とは、国や地方公共団体に、特定の施策の実施を求めたり、国民の自由や権利が侵害された時に積極的にその救済を求めたりする権利のことです。
具体的には、請願権、国家賠償請求権、裁判を受ける権利、刑事補償請求権などがあります。
【判例】刑事補償請求権
刑事補償請求権とは、憲法第40条で定められた、刑事事件の裁判で無罪が確定した場合に、国に金銭の形で保障を求めることができる権利のことです。
具体的には、1948年の免田事件・1955年の松山事件・1950年の財田川事件・1954年の島田事件・1990年の足利事件が最新で無罪となり、冤罪だったとして刑事補償が請求されています。
新しい人権とは?
現代社会は、情報社会の形成や公害・環境問題の深刻化など、日本国憲法制定時よりも複雑で多様化しているため、予想できなかった問題が生じています。
このような問題に対応するものが「新しい人権」です。知る権利、プライバシーの権利、環境権など、これらの新しい権利を保障するため、憲法への根拠づけや法制度の整備が行われています。
新しい人権その1:知る権利
知る権利とは、国民が必要な情報を自由に知ることができるという権利です。特に、政府がどのような活動をしているのかを国民は知る権利があり、政府に対して積極的に情報の提供を求める権利があります。
1999年には、中央官庁などに行政文書の原則公開を義務付ける「情報公開法」が成立しました。
新しい人権その2:プライバシーの権利
プライバシーの権利とは、個人の私的な生活を、みだりに公開されない権利です。マス=メディアやSNSの発達などにより、個人の生活が個人の意に反して人前にさらされるようになったため、プライバシーの権利が主張されるようになりました。
2003年には「個人情報保護法」が制定され、2005年4月からは個人情報保護制度が発足しました。これは、個人の権利利益を保護するために、国や地方公共団体だけでなく、民間の事業者に対しても個人情報の取扱いに関する責務などを明らかにするものです。
【判例】「宴のあと」事件
元外務大臣の有田八郎がモデルとなった、三島由紀夫の小説『宴のあと』が、私生活を連想させる書き方をしているとして、有田八郎がプライバシーの侵害を訴えた事件です。
最高裁では、プライバシーを保護するためには「表現の自由」も制限されるという判決が出されました。
【判例】「石に泳ぐ魚」事件
小説家の柳井美里が発表した自伝的小説『石に泳ぐ魚』の内容が名誉棄損、プライバシーや名誉感情を侵害しているとして、モデルの女性から訴えられた事件です。
文学における「表現の自由」とプライバシーの保護をめぐって争われましたが、最高裁では、プライバシーの侵害が認められました。
新しい人権その3:環境権
環境権とは、水、空気、日照、静けさなど、人間の生存にとって必要な生活環境を教授する権利です。
公害や環境問題の深刻化などから、多数の人々の健康や生活環境の保護と侵害に対する救済を目的として、憲法第13条の幸福追求権や第25条の生存権に基づき主張されました。
【判例】大阪空港騒音公害訴訟
飛行機による騒音、振動、排気ガスなどに対して、住民が夜9時から朝7時までの夜間飛行の差し止めや損害賠償などを求めて争った裁判です。
裁判では、環境権の主張は認められず、空港をどう使用させるかは運輸大臣の権限であるとして、夜間飛行の差し止め請求を却下し、過去の損害賠償のみが認められました。
住民側の敗訴でしたが、その後国側との和解が成立し、夜9時以降の飛行禁止が約束されました。
新しい人権その4:平和的生存権
国民が平和のうちに生存することのできる権利を、人権としてとらえようとする考え方です。日本国憲法の前文「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有する」から導き出された考えになります。
基本的人権の享受主体
基本的人権は、「人間であるがゆえに当然認められる権利」であり、日本国民は生まれながらに基本的人権がある享有主体になります。
ただし、一部の国民において制約を受ける例があるので注意が必要です。
制約を受ける例1:天皇(皇族)
天皇や皇族も日本の国籍を有する日本国民であり、享有主体になります。
ただし、皇室の世襲と職務の特殊性により制約があります。国政に関与することができない天皇には、参政権、社会権、政治的発言は認められていません。また、婚姻の自由、財産権、言論の自由などにおいても一定の制約があります。
制約を受ける例2:外国人
外国人であっても、基本的人権は人間として当然認められるものなので、享受主体になります。
ただし、参政権や社会権において制約があります。
地方自治体においては、憲法上禁止とされていないため選挙権が自治体の裁量で決められていますが、国政に関する選挙権は認められていません。
労働に関しては、国に労働の機会を要求することができる勤労権は認められていませんが、労働基本権は認められています。
制約を受ける例3:国内法人
国民ではありませんが、国内法人も人権の享有主体です。
法人は、会社や宗教法人など、人ではないものの権利や義務の対象となることができる「権利義務の帰属主体」を意味します。そして権利の性質上、可能な限り人権が保障されています。
会社名で特定の政党に献金をしたことが問題となった八幡製鉄所事件政治献金事件において、法人にも政治行為をなす自由があると判決が下され、法人も人権の享有主体であることが認められました。
ただし、法人に認められているのは経済的自由権、国務請求権、一部の精神的自由権などであり、自然人固有の権利や参政権は認められていません。
まとめ
以上「基本的人権の尊重」について解説させていただきました。
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