大統領が使い分ける「6つの帽子」について解説します。
1)行政部の最高責任者で、連邦政府の行政府を統括する
2)国家元首
3)アメリカ合衆国軍の最高司令官
4)議会を通った法案に署名して、立法府に法律を発効させる
5)政権党の実質的な党首
6)国会を代表する模範的な存在(であることが人物像として求められる)
合衆国憲法で定められた大統領の4つの帽子について
「6つの帽子」を使い分けるとは、アメリカ大統領の権限と地位が、巨大で多目的だということを意味しています。
アメリカ大統領の権限がどのように多目的かというと、大統領は(1)行政部の最高責任者で、連邦政府の行政府を統括する(2)国家元首であり、(3)アメリカ合衆国軍の最高司令官でもあります。また行政権だけでなく④議会を通った法案に署名して、立法府に法律を発効させるなど、立法上の指導権限も認められています。これら4つの権限は、合衆国憲法によって定められています。
日本の行政権は内閣に帰属しているので、行政の最高責任者の総理大臣であっても、国の行政に関わることを一人で決めることはできません。しかしアメリカの場合、国の行政権は大統領に帰属しているので、行政に関わるほぼ全てのことが、大統領一人で決定できます。
大統領ができることの例としてはまず、大統領は国家政策の立案者で、法案を議会に提出します。また議会が可決した法案を拒否することができます。連邦裁判所の判事の空席が出た場合には判事を任命し、日本の大臣にあたる各省の長官や高官を個人の裁量で任命することもできます。そして有事の際は、米軍の最高司令官として、州兵を任務に召集でき、核兵器の使用の決定権も大統領ひとりに、ゆだねられています。
それ以外にも、大統領命令と呼ばれる指令を発令することによって、議会を通さずに法案を執行できます。新型コロナウイルスの蔓延で、被害を受けた国民救済のための現金給付金やワクチンの補給、無料接種開始など、アメリカ政府のコロナ対策が日本政府より格段に速かったのは、バイデン大統領がこの大統領命令を発令したためです。
合衆国憲法で定められた大統領の残り2つの帽子
憲法で規定された権限以外にも、大統領には⑤政権党の実質的な党首である事と、⑥国会を代表する模範的な存在である、という役割が求められます。
ご存じのように、アメリカは民主党と共和党の2大政党制をとっています。大統領選挙の際は各党から一人ずつ大統領候補が選出されるため、当選者はほぼ自動的に、自分が選出された党の党首となります。
大統領職に就く人には、個人的な理由で権力を行使する事のない、真の民主主義国にふさわしい、責任ある行動ができる人物像が求められます。そこで就任式に厳しい抑制と均衡の下で職務を忠実に遂行することを、聖書と国民の前で約束するのが、アメリカ大統領の初めての仕事になります。
まとめ
国の行政権のほぼ全てが集中するアメリカの大統領職は、6つの帽子を使い分けなければならないほど、世界で最も強力で多目的な権限を持つ職務の一つであると言っても過言ではないでしょう。
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