三権分立制度によって保たれる均衡
アメリカは政治の重要なスポットを、3部門に分けた三権分立という制度を採用しています。
大統領を頂点とする行政府、連邦政府の上院と下院からなる立法府、そして連邦裁判所である司法府が、抑制と均衡(チェック アンド バランス)の制度を通じて、牽制しあいながら、たがいの権力バランスを保つようになっています。
この制度によって、いくら行政府の長である大統領が、国の政治に対して重要な権限を持っていたとしても、いきすぎた行動をとれば、他の2部門が抑制するため、無制限に権力を行使できないようになっています。しかし大統領も他の2部門の行動が、望ましくないと思えば、干渉することができます。
例えば大統領の行政権は、議会が作った法律に従って、行使するしかありません。しかしもし法案が議会を通過したとしても、大統領が望ましくないと思えば、大統領は拒否権を発動し、法案成立を拒否することができます。
また議会を通過し大統領が署名した法律でも、法律の規定に違反していると連邦裁判所で異議申し立てがされた場合、連邦裁判所はその法律を無効にできます。それ以外にも、大統領は他国と条約を結ぶ権限や連邦政府職員の任命権を持っていますが、条約も任命も上院の承認がなければ効力を持ちません。
大統領の戦争権限を拘束する「戦争権限法」
アメリカ大統領は軍の最高司令官で、軍隊の指揮権を持っています。しかし宣戦を布告する権限は、国民の代表である議会に付与されていて、大統領は軍事力を行使する前に、議会と協議することが義務付けられています。
これは戦争権限法(The War Powers Act of 1973)という法律で、合衆国憲法に定められています。この法律の目的は、大統領が暴走して戦争を個人的に開始し、議会を無視して軍事行動を継続するのを防ぐためです。
この法律によって、もし戦争宣言前に軍事行動が開始されていても、議会が承認しない場合、大統領は即座に軍事行動を中止し、軍を撤退させることが義務付けられています。
まとめ
アメリカ大統領には絶大な権力が付与されていますが、三権分立制度によって無制限に権力を行使できないようになっています。この制度は独裁を嫌うアメリカで、厳格に守られています。
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