【仙台の雪対策】実際に住んで分かった自治体と民間による雪対策まとめ

東北地方最大の都市であり、経済拠点でもある仙台市。実は東北地方の中では雪は少なく住みやすいのですが、転勤で訪れる人も多いため雪に慣れていない人も多くなっています。本日は、実際に住んで分かった仙台の雪対策についてご紹介します。


仙台は雪が少ないのに苦戦する人も多い! その理由とは

仙台自体は雪が少ない

宮城県の県庁所在地でもあり、政令指定都市でもある仙台市は、住みやすい街としても知られています。街全体がコンパクトにまとまっているので、駅前に出かければ全てが完結できる、「杜の都」の名の通りオフィス街から住宅街まで緑が多い、教育都市としても名高く公立でも高いレベルの教育が受けられる、都市部なのに物価が安い、新幹線に東北道、常磐道、仙台空港と陸も空もアクセス手段が豊富、三陸の魚介に名産の米や野菜など、おいしい食べ物が手軽に手に入る…など、理由は挙げればきりがありません。転勤で関東から仙台に来た人が、仙台の環境をすっかり気に入りそのまま仙台に家を建てて定住…という話も珍しくありません。

そして、仙台が住みやすい街の理由のひとつに「東北地方なのに雪が少ない」ということが挙げられます。気象庁の過去の積雪量データを比較してみると、2017年12月から2月の仙台の積雪量は5センチ。関東などに比べれば多いですが、いわゆるメートル級の積雪量を誇る雪国とは比べ物にならないほど、積雪量は少ないのです。

参考:
国土交通省気象庁 過去の気象データ検索
http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/select/prefecture.php?prec_no=31&block_no=&year=2017&month=2&day=&view=

日本で公に定められている「雪国」の定義はこちらから。
公務員総研 【雪国の冬備え】豪雪地帯への国と自治体の対策と事例について
https://koumu.in/articles/554

関東その他の雪慣れしていない地方からの転勤族も多いから

仙台は東北地方の中でも雪が少なく、「雪国」とは比較になりません。雪が少ないにも関わらず、仙台ならではの雪のトラブルが起きやすい要因とは転勤族、転居人などが多く「雪に慣れていない地方からの転居世帯が多いから」です。

日本国内では、各地方ごとに事実上の経済発展を担う拠点都市があります。関東地方ならいわずもがな東京ですが、北海道なら札幌、中京地方なら名古屋、関西地方なら大阪、九州地方なら博多です。これと同じく、仙台は東北地方における拠点都市であり、大企業が東北地方の拠点として仙台に支店や営業所を構えることが多くなっています。ですので、おのずと他の地域から転勤で仙台に居住する人も多いのです。

青森や秋田、北海道や北陸地方など、雪が多い地方から来た人ならともかく、関東地方など雪に慣れていない地域からの転勤族も多いのが仙台です。東北地方の中では雪が少ないと言えど、東京や神奈川、埼玉千葉など南関東に代表される雪が少ない地域から来た人にとっては多い積雪です。ですので、雪慣れをしていないことから起きるトラブルも多くなっているのです。

近年では、2018年1月の寒波到来によって関東地方に積雪が観測、これによって鉄道や高速道路などの交通網が一気に麻痺しました。少しの積雪でも、雪慣れせず雪に弱いことが分かります。

具体的に言えば、降雪時にスタッドレスタイヤやチェーンを用意せず立ち往生する自動車がいて渋滞が発生する、スノーブーツなど雪対策をしている靴を履いていないので横転して救急車を呼ぶ騒ぎになる、雪かきを全くしていないので往来時に不便になる、などです。雪が少ない、かつ雪慣れしていないからこそ、普段と同じ生活をしてしまい、その時に困るパターンが多くなっています。

また、転勤族だけでなく住みやすさから雪の少ない地方から仙台へ転居をして、雪のトラブルに巻き込まれるケースもあります。

地方自治体仙台市としての雪対策について

冬道情報の公開

各地方自治体には、補修や工事のお知らせ、渋滞などの状況情報提供など、生活の要となる道路に関する管轄があります。仙台市の場合は「建設局道路保全課」が担っています。


建設局道路保全課では、毎年冬の時期になると冬道情報の公開を行います。除雪や凍結防止の対策を行う市内の道路の公開情報を公開しています。

リアルタイム情報カメラによる「みち情報」

仙台市内に設置したカメラによるリアルタイムでの道路積雪や河川の情報提供を「みち情報」として行っています。積雪情報だけでなく、雨量や水位、気象情報も公開しており、携帯電話からもアクセスできるのでリアルタイムで確認ができます。

雪に慣れていない移住者を含めた市民への注意喚起

仙台市民に対して「冬用タイヤの着用の呼びかけ」「朝は早い時間の通勤を」「雪かきの推奨」「滑りやすい靴はやめて」など、積雪時における対策などを公開しています。地元仙台や雪国出身者にとっては当たり前の対策に見えても、仙台市は前述の通り転勤族や移住者など、雪に慣れていない地方から来た市民も多くなっています。雪に慣れていない市民にも考慮し、仙台市として呼びかけを行っています。

これらの情報は、仙台市のホームページにて随時更新されています。

参考:
仙台市 冬道情報のページ
http://www.city.sendai.jp/iji/kurashi/machi/kotsu/ijikanri/fuyumichi/toketsuboshi/index.html

道路除雪に対する補助金の支給

小型除雪機械など、除雪に必要な機器を購入の上で仙台市が管轄する道路を除雪する場合、その機器の購入金額の9割を仙台市が負担する小型除雪機械の購入補助を行っています。

仙台雪道おたすけ隊への補助

仙台市では、仙台市内の道路の積雪による事故防止や、凍結防止のための協力をする「仙台雪道おたすけ隊」を募集しています。自治体やPTA、商工会など、地域単位で任意の活動を行う団体なら、どんな団体でも参加・加入が可能です。

仙台雪道おたすけ隊へは、除雪作業のためのスコップの貸し出しや凍結防止剤の配布を行うほか、仙台市市民活動補償制度の対象にもなります。PTAや子供会などの団体における、普段の活動範囲内で除雪作業ができるように補助を行うことにより、市内の除雪の予算削減や団体活動の有効利用にも繋がります。

公共に準する施設や団体からの雪対策

朝の路面状況や除雪・凍結防止の作業状況をラジオで公開

毎年12月から3月の間、東北放送ラジオAM1260kHz、FM93.5MHzにて早朝6時台に「仙台市冬道情報」の放送を行っています。リアルタイムでの路面凍結状況や、除雪車運行状況、凍結防止道路の状況などを放送し、出勤前にチェックして市民が積雪に対する自発的な対策ができるように体制を整えています。

仙台市の南北東西の主要鉄道は地下鉄

仙台の都市構造を見てみると、新幹線の停車駅でもあり市内の主要オフィスや商業施設の集まっている青葉区を中心に、仙台駅から見て南に若林区と太白区、北に泉区が広がっています。

仙台駅を中止に、南北にまたがる南北線は仙台の主要交通網でもあり、通勤の足としても活用されています。青葉区は商業施設であるのと同時に、南の太白区にある長町、北の泉区にある泉中央の両都市を仙台の副都心として位置付け、この周辺にも商業施設や住宅が集まっています。

また、仙台を中心に東西に延びる東西線は、青葉城や八木山動物園など、仙台市の主要な観光名所へのアクセスができる路線である他、仙台港や卸町など観光と商業の両立したエリアや、住宅街へのアクセスが便利な路線になっています。

南北線や東西線は、車社会である仙台市の交通渋滞の緩和など、交通状況改善のために生まれた路線です。それを考慮し、南北線、東西線共に地下鉄構造になっていますので、積雪があっても通常通りの運行が可能です。

仙台の民間での雪対策について

人の集まるところには除雪車がある

雪が降ると、鉄道や高速道路などの主要な交通網ではただちに対策を行います。新幹線なら、雪によるダイヤの乱れが予想される場合には早々と運休を発表する、運行本数を減少させるなどです。高速道路の場合は、通行止めを行う他、あらかじめ積雪が予想される時には、高速道路における数々の雪による事故対策を行います。

参考:公務員総研 【道路パトロールから除雪作業まで】国交省の地方整備局内出張所のお仕事
https://koumu.in/articles/474


これと同様、仙台市内で人の集まる場所の駐車場には除雪車が待機しています。ショッピングモールや大型スーパーには、冬の時期になると駐車場の規模に応じて除雪車の駐車スペースが設けられます。積雪があっても、すぐに自前の除雪車で駐車場や歩道の雪かきをし、いつもと同じようにお客様が利用できるように、店側が工夫を行っています。

住民はスノーブーツやスキーウェアを着用

積雪によって靴が濡れてしまうほか、雪が残れば次の日凍結してしまい、転倒の危険性もあります。ですので、仙台市民の冬の靴はスノーブーツがスタンダード。気温も低いため、雨が降らず雪になってしまうのでスキーウェアを着用します。なぜなら、傘をささなくても雪は払うことができるからです。スキーウェアを着用すれば、ぬれずに雪もすぐに払えます。

私立幼稚園など、送迎で車を利用する必要のある施設には雪の運転に強いプロがいる
私立幼稚園の交通手段として知られているのが園バスです。仙台では、積雪があっても基本的には幼稚園や保育園、小学校などの各教育機関も休みになりません。特に私立幼稚園は通常登園にするか否かの判断が園側に委ねられますが、保護者からの需要を考慮し、ほとんどの私立幼稚園が通常登園になります。

通常通り園バスを出すには、積雪時でも安全に運転できるテクニックを持つ園バスの運転手が必要です。仙台の私立幼稚園では、スタッドレスだけでなくチェーンも着用した園バスを運行、かつ運転は積雪時でも安心して任せられるキャリアを持つ運転手や地元、雪国出身の運転手を採用している事が多いです。これは、私立幼稚園ではなく送迎にバスを使用する特別支援学校やデイサービスなどの高齢者福祉施設、医療機関などにも該当します。

また、積雪時でも通常登園か否か、通園バスの運行状況はどうか、などの保護者からの問い合わせの殺到を回避するために、あらかじめ幼稚園を始めとした施設ごとにお知らせメール登録と配信を行っていることが多いです。

合理的な雪かきを行う

積雪時に、通行や車を出す際の妨げにならないように行うのが雪かきです。仙台市民は積雪時には合理的な雪かきを行っています。

例えば、夜間の積雪によって翌朝凍結が心配される場合には、玄関や車のガレージ付近だけ雪かきを行っておく、などです。積雪があっても、それほど雪かきをしなくても生活に支障がないため、そのままにしておくことも多いのですが、生活上で必要な通行動線をスムーズに使用できるように、必要最低限の雪かきを行っておくのです。

また、地域によっては隣に高齢者世帯が住んでいる場合には、隣の家回りも最低限の雪かきをついでにしておく、小さい子供のいる世帯には声掛けを行っておくなど地域ぐるみでの雪かきも行われています。

仙台市民は転勤族も多く、待機児童数が全国のワースト順位に入るほど共働き世帯も多い自治体です。だからこそ普段忙しい人も多く、雪かきも必要最低限で効率よく行う世帯が多くなっています。

まとめ

転勤族や転居者が多いからこその工夫の多い仙台市の雪対策についてご紹介しました。雪を始めとした自然災害と上手に共存するためには、今回紹介した仙台市だけでなく、それぞれの自治体で色々な取り組みが行われています。

(文:千谷 麻理子)

本記事は、2018年2月19日時点調査または公開された情報です。
記事内容の実施は、ご自身の責任のもと、安全性・有用性を考慮の上、ご利用ください。

気に入ったら是非フォローお願いします!
NO IMAGE

第一回 公務員川柳 2019

公務員総研が主催の、日本で働く「公務員」をテーマにした「川柳」を募集し、世に発信する企画です。

CTR IMG