【相模の国の救助隊】神奈川県の高度救助隊と特別高度救助隊

県庁所在地横浜以外にも2つの政令指定都市を持ち、各地域で多彩な特徴を持つ神奈川県。ここでは、神奈川県内各自治体の消防本部に配置されている、横浜市消防局の「スーパーレンジャー」以外の高度救助隊や特別高度救助隊について解説しています。


目次

神奈川県内の高度救助隊、特別高度救助隊について

5つの高度救助隊、3つの特別高度救助隊が配置

総務省消防庁の定める「救助隊の編成、装備及び配置の基準を定める省令」において、日本全国の消防局や消防本部には編成と配置する救助隊の人数や規模が決まっています。この省令にのっとり、中核市やそれに準ずる自治体の消防本部には「高度救助隊」、政令指定都市には「特別高度救助隊」が整備されます。

神奈川県内には、県庁所在地である横浜市のほか、川崎市と相模原市の合計3つの政令指定都市があるので、県内には合計3隊の特別高度救助隊が配備されています。また、川崎市と相模原市それぞれに特別高度救助隊以外に高度救助隊を持ち、他に横須賀市消防局、藤沢市消防局、小田原市消防局の合計5隊の高度救助隊が配備されています。

次に、それぞれの消防本部が持つ高度救助隊と特別高度救助隊について順に見ていきます。

横須賀市消防局 高度救助隊について

中央消防署に配置された高度救助隊

横須賀市消防局の中央消防署には、1隊6名の3部構成、合計18名の隊員からなる高度救助隊が配置されています。また、三浦半島にある横須賀市は水害事故も多く、水難救助に対応するために隊員全員が潜水士の資格を所得しています。隊員1名(横須賀市市消防局全体では合計6名)が国際消防援助隊の登録を行っています。

今までの出動実績について

国際緊急援助隊としてインドネシア西スマトラ州パダン沖地震災害に平成21年10月1日から8日まで、また東日本大震災発生時、緊急消防援助隊として平成23年3月1日から3月20日まで出動した実績があります。

運用する車両や装備について

横須賀市消防局の高度救助隊は、救助工作車Ⅲ型を一台運用しています。また、高度救助用資機材やツールとして、画像探査機、地中音響探査機、熱画像直視装置、夜間用暗視装置、地震警報器、救助用支柱器具を所有、使用しています。

藤沢市消防局 高度救助隊について

南消防署に配置

藤沢市消防局では、南消防署に1隊8名の2部制、計16名の隊員からなる高度救助隊を配備しています。内、隊員4名(藤沢市消防局全体では合計6名)が国際消防援助隊の登録を行っています。

今までの出動実績について

緊急消防援助隊として、東日本大震災時には宮城県仙台市へ3度にわたって出動しました。平成23年3月11日から20日に間に渡り、高度救助隊員5名を含んだ藤沢市消防局全体で各隊17人ずつ派遣しています。

運用する車両や装備について

藤沢市消防局の高度救助隊は、救助工作車Ⅲ型と支援車Ⅱ型を各一台ずつ運用しています。また、高度救助用資機材やツールとして、画像探査機、画像探査機Ⅱ型、地中音響探査機、熱画像直視装置、夜間用暗視装置、地震警報器、電磁波探査装置、二酸化炭素探査装置、水中探査装置を所有、使用しています。

小田原市消防本部 高度救助隊について

小田原消防本部直轄の高度救助隊

小田原市消防本部には、本部のある小田原消防署に1隊2部制、計18名の隊員からなる高度救助隊を配備しています。小田原市を中心に神奈川県西部の海に面した地域は西湘と呼ばれ、水難事故にも対応できるように14名の隊員が潜水士の有資格者です。

また、近年の都市型災害への対応力強化のため、USAR関連技術の習得を強化しています。都市型のロープレスキューの導入や、高度救助隊の広域化による丹沢山系への山岳エリアの山岳救助にも対応できるように、山岳救助技術訓練も実施しています。


運用する車両や装備について

小田原市消防本部の高度救助隊は、救助工作車Ⅲ型を一台ずつ運用しています。また、高度救助用資機材やツールとして、画像探査機2台、地中音響探査機、熱画像直視装置、夜間用暗視装置、地震警報器、救助用支柱器具を所有、使用しています。

川崎市消防局の高度救助隊及び特別高度救助隊について

宮前消防署に高度救助隊、臨港消防署に特別高度救助隊を配置

政令指定都市である川崎市は、省令にのっとり特別高度救助隊である「スーパーレスキュー太助」を配備、他に高度救助隊を1隊配備しています。

阪神大震災、新潟中越地震、JR福知山線脱線事故など大規模災害の教訓を経て、平成18年4月に総務省消防庁の「救助隊の編成、装備及び配置の基準を定める省令」が改正されました。これを受けて、川崎市消防局では既存の臨港消防署の特別救助隊を特別高度救助隊へ再編、宮前消防署の特別救助隊を高度救助隊へ再編し、現在まで運用しています。

東京都や各政令指定都市の特別高度救助隊には、愛称がつけられていますが川崎市は特別高度救助隊及び高度救助隊ともに「スーパーレスキュー太助」の愛称がついています。また、特別高度救助隊及び高度救助隊の隊員になるには、川崎市内の各消防署から選抜された特別救助隊員が特別高度救助隊養成研修を受講、合格した隊員のみが川崎市消防局長から特別高度救助隊員及び高度救助隊員として任命されます。

次に、宮前消防署の高度救助隊、臨港消防署の特別高度救助隊の順に解説していきます。

川崎市消防局 宮前高度救助隊について

宮前消防署に配置、NBC災害への強化対策も行う

宮前消防署に配置されている高度救助隊は、1隊13名の二部制、計26名から構成されています。内、隊員2名が国際消防援助隊の登録を行っています。

通常の訓練だけでなくNBC災害での初動体制の強化など特殊災害対応訓練も実施しています。また、宮前消防署は川崎市内でも主に都市部の高速道路などを管轄しているので、倒壊建物の安定化や鉄筋コンクリート構造物の穿孔技術の研究も行っています。

今までの出動実績について

東日本大震災発生時、緊急消防援助隊として宮城県仙台市へ10日間、福島第一原子力発電所へ3日間出動した実績があります。

運用する車両や装備について

川崎市市消防局の宮前高度救助隊は、救助工作車Ⅲ型を一台運用しています。また、NBC災害対応部隊として、特殊災害対応自動車と大型除染システム搭載車を各一台運用しています。高度救助用資機材やツールとして、画像探査機2台、簡易画像探査機、地中音響探査機、熱画像直視装置、夜間用暗視装置、地震警報器、二酸化炭素探査装置、電磁波探査装置を所有、使用しています。

川崎市消防局特別高度救助隊「スーパーレスキュー太助」について

臨港消防署に配置、コンビナート火災に対応

川崎消防局の臨港消防署に配置されている特別高度救助隊「スーパーレスキュー太助」は、1隊15名の二部制、合計30名の隊員から編成されています。内17名の隊員が潜水士の資格を取得しています。本項では、宮前高度救助隊との区別のため、以下「スーパーレスキュー太助」と記します。

通常は管轄内の火災や救助事案への出場のほか、特殊災害発生時には川崎市内全域へ特名出場を行います。また、石油コンビナート地帯も管轄しているので、コンビナート火災や毒劇物に関する漏洩事故にも対応しています。

また、臨港消防署にははしご車の運用を行う専任の「臨港はしご隊」が配備されていますが、コンビナート火災の際には臨港はしご隊が大型高所放水車に乗り換え運用を行うので、その際にはスーパーレスキュー太助がはしご車の運用を行います。

今までの出動実績について

国際緊急援助隊として、中国四川大震災に出動した実績があります。また、東日本大震災発生時、緊急消防援助隊として宮城県仙台市へ10日間、福島第一原子力発電所へ3日間出動した実績があります。

運用する車両や装備について

川崎市消防局のスーパーレスキュー太助は、救助工作車Ⅲ型を一台のほかNBC災害対応部隊として特殊災害対応自動車一台、特別高度救助隊だけが運用している特別高度工作車を一台所有しています。高度救助用資機材やツールとして、画像探査機2台、簡易画像探査機2台、地中音響探査機、熱画像直視装置、夜間用暗視装置、地震警報器、二酸化炭素探査装置、水中探査装置を所有、使用しています。

相模原市消防局の高度救助隊及び特別高度救助隊について

南消防署に高度救助隊を配置、特別高度救助隊は消防本部直轄

神奈川県には横浜市、川崎市の他に政令指定都市である相模原市があります。相模原消防局では、総務省消防庁の省令に準ずる特別高度救助隊にさらに高度救助隊を配置する川崎市と同じ編成にし、特殊災害にも対応できる体制を整えています。


相模原市消防局の特別高度救助隊は、「スーパーレスキューはやぶさ」の愛称がついています。編成までの歴史をたどると、既に配置していた相模原消防署の特別救助隊を平成20年4月に高度救助隊へ昇格、さらにその後相模原市の政令指定都市化に伴い平成23年3月に特別高度救助隊に昇格し、現在に至ります。

一方で、現在配備されている南消防署の高度救助隊は、元々特別救助隊だったのを平成24年7月に今の部隊へ昇格させて誕生しました。

次に、相模原市消防局の高度救助隊、特別高度救助隊「スーパーレスキューはやぶさ」の順に解説していきます。

相模原市消防局 南消防署高度救助隊について

南消防署に配置されている

相模原市消防局では、南消防署に1隊6名の3部制、計18名の隊員からなる高度救助隊を配備しています。内、17名の隊員が潜水士の資格を取得しています。

今までの出動実績について

国際緊急援助隊として、スマトラ沖大地震及びインド洋津波へ11日間派遣されました。緊急消防援助隊として、阪神淡路大震災に6日間、新潟県中越地震に5日間、東日本大震災に66日間出動した実績があります。

運用する車両や装備について

相模原市消防局の南消防署高度救助隊は、救助工作車Ⅲ型のほか、総務省消防庁から貸与を受けた特別高度工作車を一台運用しています。また、高度救助用資機材やツールとして、画像探査機2台、地中音響探査機、熱画像直視装置、夜間用暗視装置、地震警報器、救助用支柱器具を所有、使用しています。NBC災害対応のために、陽圧式化学防護服も所有しています。

相模原市消防局 特別高度救助隊「スーパーレスキューはやぶさ」

相模原市消防局直轄の特別高度救助隊

相模原市消防局の特別高度救助隊「スーパーレスキューはやぶさ」は、相模原市消防局の直轄として、相模原市消防署警備課本署に配備されています。1隊6名の3部制、合計18名の隊員から構成されています。

人命救助の関する、専門的な教育を受けた高度な技術を持つ部隊として、救急救命士1名が配置、隊員全員が潜水士資格を取得しています。また、国際緊急援助隊に6名登録しています。

相模原市内で発生する様々な災害への対応はもちろん、他の都市で発生した大規模もしくは特殊災害に対して出動要請があった時にも、すぐに出動できる体制を整えています。

必ず戻る願いを込めた愛称

相模原市消防局の特別高度救助隊には、他の特別高度隊と同じく「スーパーレスキューはやぶさ」の愛称が付けられています。この愛称は一般公募によって決まり、多くの困難を乗り越えて地球に帰還した小惑星探査機「はやぶさ」のように、隊員が一人でも多くの人を救助し危険な任務を全うしながらも、必ず戻るという願いが込められています。また、鳥のはやぶさのようにスピーディな活動が求められることも合致して、採用されました。

はやぶさのモチーフは愛称だけでなくシンボルマークにも採用されています。小惑星探査機はやぶさと鳥のはやぶさを融合させたデザインが、隊員のワッペンや車両側面のデザインとして描かれています。本項では、以下「スーパーレスキューはやぶさ」と記します。

今までの出動実績について

スーパーレスキューはやぶさは、国際緊急援助隊としてスマトラ沖大震災及びインド洋津波災害に11日間、ニュージーランド南島地震に9日間派遣されました。また、緊急消防援助隊として、阪神・淡路大震災に6日間、新潟県中越地震に5日間、東日本大震災に66日間出動しました。

運用する車両や装備について

相模原市消防局のスーパーレスキューはやぶさは、救助工作車Ⅲ型を一台のほかNBC災害対応部隊として特殊災害対応自動車一台運用しています。高度救助用資機材やツールとして、画像探査機、地中音響探査機、熱画像直視装置、夜間用暗視装置、地震警報器、電磁波探査装置、二酸化炭素探査装置、水中探査装置を所有、使用しています。

また、NBC対策のために陽圧式化学防護服、除染シャワー、除染剤散布機、生物剤検知器、化学剤検知器、救助用支柱機材を所有しています。

神奈川県内の各高度救助隊、特別高度救助隊になるには?

自治体の消防職員採用試験を受けるのが第一歩

高度救助隊及び特別高度救助隊になるには、神奈川県内の希望する自治体の消防職員採用試験に合格しなければいけません。その後、消防職員として消防署に配置され、救助隊としての道を歩むことになります。

詳しくは、神奈川県内の同じ救助隊及び特別高度救助隊である横浜市消防局の「スーパーレンジャー」「横浜レンジャー」の以下の記事を参考ください。

参考:公務員総研 【港町の救助隊】横浜の救助隊「横浜レンジャー」と「スーパーレンジャー」

【港町の救助隊】横浜の救助隊「横浜レンジャー」と「スーパーレンジャー」

まとめ

神奈川県は横浜を中心に、それぞれの自治体ごとに多彩な特徴を持っています。東京都に次ぐ第二の規模を誇る神奈川県は、海に面している、人口が多い、観光名所でもある…と色々な要因から災害や事故も多発する可能性が高いため、高度な技術力と知識を持つ救助隊が必要とされていることが分かりました。


(文:千谷 麻理子)

> 横浜の救助隊「横浜レンジャー」と「スーパーレンジャー」

本記事は、2018年9月11日時点調査または公開された情報です。
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