防衛大学校の学生の仕事内容について - 防衛大学校での1日

将来の幹部自衛官を育成するための学校である「防衛大学校」通称「防衛大」。

ここに所属する学生の身分は、「国家公務員」であり、学費は無料、給料を支給されながら勉学に励むことになります。

今回は、「防衛大学校の学生の1日」についてまとめました。


はじめに

階級社会の自衛隊において、およそ2割を占める幹部自衛官。そんな幹部自衛官には防衛大学出身者も多く含まれています。

本ページでは、いわゆる「エリートの卵」を育てる防衛大学校では、どんなことを学び、どんな大学生活を送るのか、詳しく解説していきたいと思います。

「防衛大学校」とは?入学・入校する方法は?

「防衛大学校」が実施する学生採用試験(入試試験)に合格必要することで、「防衛大学校」の学生としてに入学(入校)することができます。

詳しくは、以下の記事をご参考ください。

》幹部自衛官の養成教育機関「防衛大学校」に入学・入校するには?

「防衛大学校」は、陸上自衛隊や海上自衛隊、航空自衛隊の幹部自衛官になるための教育訓練を行う学校です。本記事では、「防衛大学校」とはどのような学校なのか、また、「防衛大学校」へ入学(入校)する方法などについて解説します。

講義や訓練こそが「防衛大学校学生の仕事」である

「防衛大学校」の学生が受ける講義や訓練は「課業」と呼ばれ、国家公務員の業務(仕事)という位置付けです。

よって、学生の身分ではありますが同時に国家公務員であり、一般的な大学生とは違い、講義や訓練は「防衛大学校学生の仕事」だといえます。

「防衛大学校」の学生が受ける講義や訓練について

「防衛大学校」の講義や訓練は多岐に渡ります。その内容などについて簡単に説明します。

「防衛大学校」本科の教育課程について

「防衛大学校」の教育課程は、文部科学省の定める大学設置基準に準拠しており、教養教育・外国語・体育・専門基礎の科目と専門科目(人文・社会科学専攻及び理工学専攻)を一般大学と同じように教育します。また同時に、「防衛大学校」独自の防衛学(防衛に関する学術分野)の教育を行います。

その他にも、国内外の著名人による全校的な課外講演や、内外の教授による学科単位の特別講義、授業の一環としての施設見学などがあります。


「防衛大学校」本科の訓練課程について

「防衛大学校」の訓練課程は、「自衛隊の必要とする基礎的な訓練事項について錬成し、幹部自衛官としての職責を理解してこれに適応する資質及び技能を育成する。」という方針のもと、各学年全員が同じ訓練を行う「共通訓練」と、2学年次に陸上・海上・航空要員に指定された後行う専門(要員)訓練に区分されます。

「共通訓練」には、基本教練、各個戦闘訓練、小銃、野外勤務などがあります。

「専門(要員)訓練」は、陸上要員訓練、海上要員訓練、航空要員訓練に分かれており、それぞれに必要な訓練が実施されます。

▼参考URL:防衛大学校|教育・訓練
https://www.mod.go.jp/nda/education/

「防衛大学校」の学生の1日

「防衛大学校」とはいっても実質「大学」なので、「おそらく勉強をしたり訓練をしたりしているだろう」程度には想像がつくかもしれませんが、実際に「防衛大学校」の学生は1日をどのように過ごしているのでしょうか。

「防衛大学校」の学生の、1日のスケジュールについて簡単にご紹介していきたいと思います。

時間 内容
6:00~ 起床後点呼を済ませ、防衛大の伝統である「乾布摩擦」を行います。女子学生はTシャツを着用しますが、男子学生は上半身裸で行います。
8:00~ 清掃、朝食を終えると、国歌掲揚そして朝礼が行われます。朝礼が終わるとすぐに、授業が行われる教場へ隊を組んで移動。お昼まで授業を受けることとなります。
12:00~ お昼は一斉に学生食堂で取ります。学生全員が一堂に会す場面でもあり、その光景は非常にインパクトがあります。
13:00~ 17:15の課業終了後まで、授業を受けます。
17:15~ 防衛大には校友会と呼ばれる、運動部や同好会、委員会などで構成されるクラブ活動があります。運動部に至っては38もの種類があり、全員がいずれかの部に所属することになっているそうです。そして校友会の中でもひときわ注目を浴びているのが儀仗隊。防衛大の入校式や卒業式はもちろん、年1回開催される自衛隊音楽まつりでも演技が披露されています。
課業後 1日の課業が終了すると、基本的には自由時間となります。食事や入浴を済ませたり、次の日の準備を行ったり、さらには自習室で消灯まで勉強する学生もいるそうです。

「防衛大学校」を卒業後は、およそ1年で幹部に昇任する

「防衛大学校」卒業後の流れは、陸・海・空によって多少異なりますが、幹部候補生学校を経て部隊での勤務へと移行するのが基本的な流れとなります。

防衛大学を卒業すると、陸曹長・海曹長・空曹長の階級が付与され、幹部候補生学校に入校します。幹部候補生学校では、指揮官としての資質を学んだり、実際の訓練を通じて統率力を養うこととなります。その後は部隊に配属され、実際の業務をこなしながら、防衛大学卒業後およそ1年で幹部(3尉)に任命されます。

さいごに - 陸上自衛官経験者が語る「経験不足という葛藤を抱えながらも努力を重ねる姿勢が印象的だった」

筆者が陸上自衛官として毎日業務を行なっていた際も、防衛大学出身の幹部の方が上司として在籍しており、上官としてはもちろん、人間としてもとても尊敬できる人ばかりでした。

しかしその一方で、若くして幹部自衛官となったからこその「葛藤」を身近で感じることもありました。

高校卒業後18歳で防衛大学に入学すると、最短で23-24歳で幹部に昇任することができます。そうなると、実業務の経験値が、勤続年数の多い曹士に劣ってしまうという可能性も少なくありません。そのため私が現役の頃は、実業務における経験不足により、悩みを抱える幹部自衛官も多いというのを良く耳にしました。

しかしその一方で、知識を積極的に習得したり、経験値をどんどん重ねていこうと、毎日遅くまで業務を行う姿がとても印象的でした。防衛大学出身の幹部自衛官の方々は、たくさんの葛藤と努力を繰り返しながら、自衛官としてのキャリアを確実に積んでいるということを日頃から肌で感じていました。

まとめ

以上、「防衛大学校の学生の仕事内容について - 防衛大学校での1日」でした。

「日本の未来を担っている」と言っても過言ではない防衛大学校。

今こうしている間も、未来の指揮官として勉学に励んでいるであろう防衛大学生に対して、大きな期待をせずにはいられません。


今回のコラムで、あまり知られることのない防衛大学が、少しでも身近に感じていただければ幸いです。

また、「防衛大学校」の給料である「学生手当」については、以下の記事でも詳しく述べていますので、あわせご参考ください。

》【学費無料】防衛大学校の学生の学費・給料・ボーナス・寮生活まとめ

学生だけど公務員、という身分で給料が支払われる「防衛大学校」の学生の気になる初任給やボーナスなどの給料情報をはじめ、寮生活となる学生生活について、食堂の利用などの福利厚生も含めてご紹介します。朝6時にラッパの音で一斉起床するところから始まる、防衛大生特有の共同生活環境についても解説します。

 

*本文中の誤字について、お詫びして訂正いたします。(2020年12月28日)
誤)寒風摩擦
正)乾布摩擦

本記事は、2017年6月4日時点調査または公開された情報です。
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