アメリカ大統領選でよく聞く「スイングステート」とは?

アメリカ大統領選挙の報道などで「スイングステート」という言葉を聞いたことはあるでしょうか?

本記事では、アメリカ大統領選挙を左右する「スイングステート」について詳しく解説していきます。

はじめに

2020年のアメリカ大統領選が近づくに連れて日本でもアメリカの選挙情勢が頻繁に報道されていますが、アメリカ大統領選の際に必ずと言っていいほど耳にする言葉が「スイングステート」ではないでしょうか?

実はこの「スイングステート」は大統領選の結果を左右する非常に重要な要素とされています。

2020年の11月の本選挙に向けて「スイングステート」の意味、影響力、ポイントなどをしっかり理解しておくと大統領選の見え方が変わってきます。

今回はアメリカ大統領選のポイントとなる「スイングステート」について解説します。公務員を目指す人であれば、知っておきたいアメリカの常識ですのでぜひ参考にして下さい。

「スイングステート」とは?

スイングステート イメージ画像
公務員総研作成

「スイングステート」(Swing States)とは、アメリカ大統領選の際に共和党または民主党が拮抗し、選挙毎に結果が変わる州のことです。

アメリカの大統領選に関する報道で「○○州は伝統的に共和党が強い」とか「○○州は民主党の地盤だ」という言葉を聞いたことがあると思います。アメリカでは州ごとに共和党または民主党のどちらかが強い傾向があります。

例えば、テキサス州は伝統的に共和党が強くトランプやブッシュを支持してきました。対照的に、カリフォルニア州やミネソタ州などは民主党の強力な地盤として知られており、オバマやクリントンを支持してきた過去があります。

しかし、「スイングステート」に該当するオハイオ州やコロラド州などは明確な傾向がなく、選挙毎に共和党派または民主党派で「揺れる」ことから「スイングステート」と呼ばれるようになりました。

このことから大統領候補者たちは安定した支持率を得ている州よりも「スイングステート」で勝利することが重要になるのです。事実、「スイングステート」の代表格とされるオハイオ州を制した候補者は半世紀近くにわたって大統領に選ばれており「オハイオ州を制する者が大統領選を制する」という言葉が生まれました。

つまり、「スイングステート」は大統領選で最も重視しなければいけない州で、最終的な結果に直結するほどの影響力があると言えるでしょう。ちなみに、「スイングステート」は日本の報道では「注目州」「揺れる州」「パープル・ステート」などと表現されることもありますが、意味は同じです。

「スイングステート」が注目される理由

アメリカの大統領選挙の仕組み:勝者総取り方式

「スイングステート」が注目される理由は「勝者総取り方式」にあります。

アメリカの大統領選は各州に割り当てられた合計538名の「選挙人」の過半数270名を獲得することで当選が確定します。選挙人は各州の人口に比例分配されており、カリフォルニア州では55名、テキサス州38名、ニューヨーク州29名のようにあらかじめ決まっています。

大統領選では一般投票の得票数ではなく「選挙人の獲得数」が優先されるため、候補者は各州で選挙人の獲得を目標にします。つまり、どんなに一般投票で票を獲得しても、最終的な選挙人獲得数が270を超えなければ意味がないのです。(例:2016年のトランプ対クリントン)

この選挙人獲得に大きな影響を与える制度が「勝者総取り方式」です。ネブラスカ州とメーン州以外は一般投票で1票でも多く獲得した候補者(政党)がその州の選挙人をすべて獲得できる勝者総取り方式を採用しているため、候補者たちは選挙人の数が多くなおかつ特定の政党を支持していない「スイングステート」を重視する訳です。

勝者総取り方式を採用している「スイングステート」は、候補者たちが最優先し、結果に影響を与える可能性が大きいため必然的に注目されるのです。

赤い州と青い州の違いは?

アメリカ大統領選で「スイングステート」と同じように頻繁に耳にするのが「赤い州(Red State)」と「青い州(Blue State)」ではないでしょうか?

開票結果でアメリカの地図が州ごとに赤色や青色に色分けされているのを見たことがあると思います。

赤い州とは共和党が優勢の州です。共和党はこれまでにトランプ、ブッシュ、レーガン、ニクソンなどの大統領を輩出してきました。青い州とは民主党が優勢の州です。オバマ、ビル・クリントン、カーターなどを輩出しています。「スイングステート」は赤と青が混雑する紫色で表現されることもあります。

赤い州と青い州の表現は2000年の大統領選で使われ始め、現在では各州がどちらの政党を支持しているかを視覚化して認識しやすくするために一般化しています。色の分布は大統領選毎に変わりますが、アメリカ南部や中央部は赤い州が固まっており、西海岸や東海岸沿いの州では青い州が多くなる傾向があります。

共和党と民主党の勢力図がひと目で認識できるので、赤い州と青い州の意味を覚えておくと良いでしょう。

主な「スイングステート」とその特徴

ここではアメリカの大統領選における主な「スイングステート」と特徴について解説します。

「スイングステート」は必ずしも常に決まっているものではなく、時代やその時の政権などによって変化します。どの時代でも「スイングステート」として知られているのはフロリダ州、ペンシルベニア州、オハイオ州、そしてミシガン州の4つです。

フロリダ州

フロリダ州は選挙人の数が多く(29名)、選挙毎に結果が異なる州として知られており、「スイングステート」の中でも最も影響力が大きい州です。有権者登録数では民主党の方が多いものの、共和党候補を選んだ歴史もあり、1950年以降の大統領選では毎回のように激戦州として取り上げられています。

フロリダ州が「スイングステート」として最も注目されたのが2000年の大統領選です。共和党のブッシュと民主党のゴアが僅か5票差の結果に終わりました。票の再集計を巡って裁判になり、一般投票から1ヶ月経ってブッシュの勝利が確定しました。

これによりブッシュ陣営はフロリダ州の25名分の選挙人(当時)を獲得でき、大統領に選出されたのです。「スイングステート」での結果が最終的な結果に影響を及ぼした典型的な事例と言えます。

ペンシルベニア州

近年、「スイングステート」として注目が集まっているのがペンシルベニア州です。1992年以降は一貫して民主党を支持してきた同州ですが、2016年の大統領選では一転して共和党を支持しました。民主党の地盤とされていた同州が共和党に傾いたことで、トランプ候補に有利に働いたと言われています。

ペンシルベニア州は20名の選挙人を保有しており、「スイングステート」の中でも大きな影響を与えるひとつです。民主党優勢だった同州が共和党に揺れたことは、2020年の大統領選でも波乱を呼びそうです。

オハイオ州

1964年以降の大統領選では、オハイオ州で勝利した候補者が大統領になっていることから「オハイオ州を制するものが大統領選を制す」と言われるほど注目度が高い「スイングステート」がオハイオ州です。

オハイオ州は「大統領の母」とも呼ばれ、過去に7名の同州出身の大統領経験者を輩出しています。有権者登録数では圧倒的に民主党が多いものの、これまでの大統領経験者は全員が共和党出身で、近年の大統領選でも8年ごとに共和党と民主党が入れ替わっています。

オハイオ州はジンクスが理由で注目されがちですが、定期的に優勢な政党が変わるため大統領選では非常に重要な州とされています。オハイオ州の選挙人は18名のため、結果に影響を与えやすいことも注目される理由です。

ミシガン州

ミシガン州では1992年以降、民主党が共和党を圧倒していましたが、2016年の大統領選で0.23%差の僅差で1988年以来初めて共和党が勝利しました。票差がわずかであることや、選挙人が16名と多いため各陣営は重要視しています。

ミシガン州は地域によって支持政党が異なることが特徴で、郊外や田園部では共和党が強く、デトロイトなどの都市部や労働者階級が住むエリアでは民主党が強い傾向があります。エリアによって明確に支持政党が異なり混在していることから州全体でも共和党と民主党が拮抗しがちです。共和党と民主党の差が極めて僅差な最重要「スイングステート」と言えるでしょう。

2020年の大統領選で注目すべき「スイングステート」=ラストベルト

2020年のアメリカの大統領選で重要になる「スイングステート」はいったいどこなのでしょうか?

ラストベルトはトランプを支持するのか?

2016年の大統領選では「ラストベルト(Rust Belt)」と呼ばれるアメリカの旧工業地帯がトランプの勝利を決定付けたとされています。このラストベルトがトランプを支持し続けるかがポイントです。

ラストベルトとは「錆ついた地域」という意味があり、かつて使われていた製造業の機械が使われずに錆び付いている様子を現しています。主にペンシルベニア州、オハイオ州、ミシガン州、インディアナ州、ウィスコンシン州などアメリカ北東部の工業地帯を指しています。

2016年、トランプ候補はこの一帯の有権者に対して、雇用創出やアメリカに有利な国際貿易政策をアピールして票の取り込み実行しました。事実、オハイオ州、ウィスコンシン州、ペンシルバニア州、ミシガン州で民主党を上回って選挙人の大量獲得に成功しています。さらに、ここで獲得した選挙人が当選の決め手になりました。

しかし、2020年の大統領選を控えたいま、有権者の期待とは裏腹に雇用の問題は改善されておらず、ラストベルトは依然ラストベルトのままという状況が続いています。つまり、2020年の大統領選では前回のようにラストベルトから支持を得られない可能性があるという訳です。

2020年の大統領選ではラストベルトの中でとくに「スイングステート」とされているオハイオ州、ウィスコンシン州、ペンシルバニア州、ミシガン州の4つに注目しましょう。

共和党の地盤崩壊?テキサス州

テキサス州は選挙人の数が38名の大票田で、なおかつ伝統的に共和党が強いことで知られています。しかし、2020年の大統領選ではそんなテキサス州が「スイングステート」として仲間入りするかもしれないと言われ注目されています。

共和党の地盤であるテキサス州が「スイングステート」になる理由は、テキサス州への人口流入にあります。近年、テキサス州の大都市であるオースティンやダラス、ヒューストン、サンアントニオなどにIT企業の進出が相次いでおり、エネルギー産業やハイテク産業が急成長しています。これに付随して人口も増加傾向にあり、一昔前のカリフォルニア州のようになりつつあるのです。

極めつけは、テキサス州に流入している人の4割がカリフォルニア州、ニューヨーク州、イリノイ州の民主党寄り、またはリベラルな風潮を好む人たちだということです。これを裏付けるように、テキサス州では2012年頃から共和党と民主党の差が縮まっており、2018年の上院選ではその差がわずか2.6%になりました。

テキサス州はカリフォルニア州に次いで選挙人が多いため、もし共和党が敗れると民主党は一気に大量の選挙人を獲得可能になるのです。共和党にとっては負けた時の代償があまりにも大きいためテキサス州を落とす訳にはいきません。テキサス州は共和党の絶対的地盤として安心して見る時代は終わりかもしれないため、注目されています。

最重要はフロリダ州?

大統領選毎に揺れる州として知られているのがフロリダ州です。現職のトランプ大統領はフロリダ州を最重要視していると見られ、出馬表明をフロリダ州で行いました。選挙人が多いフロリダ州で取りこぼしがないようにしたい意気込みと言えるでしょう。

フロリダ州にはリタイアした人も含めた富裕層が多く生活しているため、経済最優先の政策をとるトランプが優勢という声がある一方で、ハリケーンなどで被害を受けた層も多く、温暖化問題を軽視するトランプには不利になると見る人もいます。

フロリダ州はヒスパニックや黒人が人口の40%近くを占めており、移民政策に敏感です。トランプが移民政策で過激なことを続けると大量の票を失う可能性もあります。このように、フロリダ州では幅広い年齢層、所得階層、人種が集まっているため、2020年の大統領選で最も注目すべき「スイングステート」とされています。

まとめ

「スイングステート」は大統領選の結果に大きな影響を与える非常に重要な存在だと分かったと思います。

2020年の大統領選ではテキサス州やフロリダ州が重要視されていますので、ぜひ注目してみて下さい。

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本記事は、2020年4月11日時点調査または公開された情報です。
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