はじめに – マカオ在住日本人レポート
国によって、子育て事情はもちろん、幼稚園などの幼児教育施設の在り方も異なります。その違いに対して良し悪しを簡単に決めることはできませんが、日本で育児や幼児教育をする上で、外国のやり方が参考になる点は多くあります。
今回は、マカオに住む日本人が、マカオの幼稚園や育児について、日本との違いも交えながら解説していきます。幼稚園教諭を目指す方も、現在日本で子育てしている方も、外国の子育て事情についてぜひご覧ください。
マカオの幼稚園入園手続き
児童は満3歳になると、幼稚園の入試資格を得ます。マカオで子供を幼稚園に入れる場合には、受験が必須です。
日本のように願書が先着順であったり、そのために並ぶという習慣はありません。毎年1月にウェブを通じて願書登録を行い、4月に各幼稚園で面接を行います。最大で5校まで受験できますが、全て落ちてしまった場合は翌年に再挑戦が可能です。
受験は親が1人まで付き添える場合もありますが、たいていは子供だけで試験を受けます。試験内容は、指示された色や動物、好きな食べ物、自分の名前、親の名前と職業を言えるかなどです。学校によっては、おむつが外れているか、1人でも泣かないかなどを見るところもあります。
マカオの幼稚園入所率
マカオでは幼稚園から高校までを正規教育としています。したがって、マカオ在住児童の幼稚園入所率は基本的に100%です。3歳のとき受験に合格しなかった場合や、体格が小さすぎたり親が集団生活はまだ早いと判断した場合には、1~2年遅れで幼稚園に入園する場合があります。
マカオでは夫婦共働きが一般的なため、子供が0歳~2歳の間は託児所に預ける家庭が多いです。託児所ではお遊戯や食事、お昼寝に加え、幼稚園の入試対策やトイレトレーニングを行います。
マカオの幼稚園学費
マカオの幼稚園の学費は、どの幼稚園に通うかによってかなり違います。マカオ生まれや親のどちらかがマカオ居民など、マカオIDを持つ児童の場合は、学費無料の幼稚園を選択することが可能です。
学費有料の幼稚園に入園する場合は、年に35,000~63,000MOP(約47万~85万円)がかかります。マカオIDのない外国人児童の場合は、学費無料の制度が利用できません。学校によって年間4,500~70,000MOP(約6.1万~94.5万円)の学費が必要です。
学費のほかに、教科書代などの教材費は、無料~年間3,100MOP(約4,000~10,500MOP(約5.4万~14万円)、延長保育が1,000~33,000MOP(約1.3万~44.5万円)、スクールバスが1,200~10,500MOP(約1.6万~14万円)と、こちらも学校により金額が異なります。
マカオと日本の幼稚園の違い
マカオと日本の幼稚園では、1日の過ごし方や環境に違いがあります。
マカオの幼稚園は、小さな学び舎
日本の幼稚園は、お遊戯や集団生活を学ぶ場所という意味合いが強いですが、マカオの幼稚園は小学校の予備クラスという意味合いが強く、勉強を始める場所です。前期と後期の年2回、中国語(広東語)と英語、数字のテストが行われ、A~Cの評価が下されます。その他、中国語(北京語)やポルトガル語、宗教(キリスト教や仏教)の時間割を設けており、これらの教養科目についてのテストはありません。
マカオの公用語は広東語ですが、中国本土資本の学校や中国本土出身の家庭が増えているため、広東語でなく北京語で授業や学校生活を行う幼稚園があります。同じように、ポルトガル語学校ではポルトガル語、インターナショナルスクールでは英語を使って授業などを行っています。
マカオの幼稚園は、子供たちが、掃除はしない
マカオでは、子供たちが掃除をすることはありません。クラスごとに子供のケアをしてくれるおばさんがいて、教室や園内の掃除、食事の用意、トイレなどをお手伝いしてくれます。子供たちは掃除はしませんが、絵本やおもちゃの片づけ、食事のあとお弁当箱を洗うこと、手指の消毒、手洗いの習慣は園でしっかり学びます。
マカオの幼稚園は、敷地が狭い
マカオは東京都世田谷区の半分ほどの面積しかありません。狭い地域なので、園庭のある幼稚園は貴重です。園庭のない幼稚園に通う場合、子供たちは屋内で体操などを行って体を動かします。マカオには田園地帯がなく、自然もそれほど多くないので、日本の子供と比べると動物や虫と触れ合う機会が少ないです。
マカオの幼稚園は、とても国際的
私の子供が通っている幼稚園は、マカオIDを持つマカオ居民の児童がほとんどですが、その中にはマカニーズ(広東語を話すマカオ生まれのポルトガルミックス)、両親がマカオ生まれの中国系、片親が中国本土出身や台湾人、日本人の子などがいます。マカオは親日なので、日本人とわかると親切にしてくれるお母さんも多いです。
幼稚園によっては、ポルトガル人やフィリピン人、西洋人が多い学校がそれぞれあります。日本と比べると多国籍で、色々な文化を共有できるのも、海外生活の楽しいところです。
マカオの幼稚園のいいところ
マカオの幼稚園のいいところは、まだ幼く頭が柔らかい内に英語が身に付くところです。3歳からテストがあることに驚きましたが、子供はすぐに吸収するので、英語を学ぶのにいい環境だと感じます。
2020年からは日本でも小学校3年生から英語学習を始めますが、マカオの学生と比べると、すでに7年の遅れです。日本の中学校から英語の学習を始めた世代は、英語に苦手意識がある人が多かったり、英語が話せる人があまり多くないのは、幼児期に10年間学習をしたかどうかの差だと思います。
実際にマカオの幼稚園に通園してみて
実際にマカオの幼稚園に子供を通わせている親の視点から、感想を紹介します。
勉強は大変だが悩むほどではない
私が幼稚園のときは、お遊戯やお絵かきをしていた記憶しかなかったので、マカオの幼稚園ではテストがあると聞いて驚きました。勉強が嫌いな子もいるので楽しく勉強を続けていくのは大変ですが、マカオには小学校から留年制度があるので、小さい内から勉強の習慣をつけるのは大切だと感じています。受験やテストは親も子供も大変ですが、後々子供のためになると思うと、不満はありません。
幼稚園児なので、テストの点数があまり良くなくても、真剣に気にする親は多くないようです。校風もあると思いますが、優しい先生のもとでのびのびと楽しく学べるので、子供も嬉しそうに通園しています。
幼稚園は託児所よりも手がかかる
幼稚園は2歳まで通っていた託児所と違い、下校時間が午後4時半と早く、悪天候ですぐ休校になるので少し大変です。お手伝いさんがいない家庭で、祖父母も親の兄弟も頼れない場合には、親の仕事をかなりセーブすることになります。子育てに理解のある職場でないと、仕事を続けることは難しいです。
マカオの幼稚園は勉強を始める場所
マカオの幼稚園では集団生活を学ぶことはもちろん、アルファベットや漢字を書く練習を始めたりと、小学校に向けて本格的に勉強を始める点が日本と大きく違います。
学費や校風は幼稚園次第で異なりますから、学校選びの際には口コミを集めたり政府の資料を確認して、よく調べておくことが大切です。
まとめ
いかがでしたか?
今回は、日本とマカオの、幼児教育の違いについて現地からレポートしていただきました。マカオで実際に子育てをしてみないと、なかなか知ることのできない情報ばかりです。
国によって、育児のやり方・考え方、そして幼稚園に求められる役割は違います。幼稚園教諭を目指す方は「日本のやり方」だけではなく、海外の幼稚園の役割なども知っておくといいかもしれません。
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