コロナ第2波なのか?再び感染者が増えているアメリカの様子

2020年6月現在、アメリカでは再び新型コロナウイルスの感染者が増加しています。

今回は、アメリカの、現在の新型コロナウイルスについてアメリカ在住の日本人にレポートいただきました。

公務員の方も、公務員志望の方も、是非ご参考ください。


はじめに – 感染者が再び増加しているアメリカ

2020年6月20日、アメリカのトランプ大統領はオクラホマ州タルサで選挙集会を開催しました。最大19,000人を収容できる会場でしたが、満員にはほど遠く(参加者は6,200人程度)、2階席は空席が目立ち、屋外の特設ステージは使われないまま終わる事態でした。

今回の選挙集会は、新型コロナウイルス感染拡大による自粛が緩和されて初めての集会となったため多くの注目を集めました。

同時に、来場者の大半がマスク非着用であったことや、会場で実施された感染防止対策など、本来とは違う形で注目を集めたことも事実です。

アメリカの多くの州で、5月中旬に経済が再開されましたが、皮肉にも経済再開を本格化させた州で感染者が増え続けており、一部の都市では病院がパンク状態に陥っています。

11月の大統領選に向けて「コロナ感染第2波到来」を認める訳にはいかないトランプ政権、経済最優先の共和党を批判する民主党、それぞれの立場を巡って国民の分断も鮮明になっています。

今回は、経済再開と共に感染者が増えているアメリカの様子を、アメリカ在住の筆者目線で解説します。感染の第2波到来は日本も例外ではありませんので、ぜひ参考にして下さい。

新型コロナウイルスの感染者が増えているアメリカの現状

はじめに、経済再開以降のアメリカで新型コロナウイルスの感染がどのような状況にあるか見てみましょう。

9州で過去最高の新型コロナウイルス感染者数を記録

5月の経済再開後に感染者数が増加傾向にある州は22州あり、フロリダ州、ノースカロライナ州、サウスカロライナ州、アリゾナ州、ネバダ州、オクラホマ州、アラバマ州、テキサス州、カリフォルニア州の9州は過去最高の感染者数を記録しています。

なかでも感染者数の増加が顕著なのがフロリダ州で、6月18日に3,207人の新規感染者が確認されました。この数値は、アメリカの感染拡大ピーク時(3月下旬から4月中旬)よりも多く、外出制限を緩和してから最高値を記録してしまった皮肉な結果です。

また、アメリカで最も人口が多い州の1位と2位であるカリフォルニア州やテキサス州などでも同様の事態が起きており、経済再開または規制緩和以降、感染者数が過去最高を記録しています。

筆者が暮らすアリゾナ州でも、厳しい外出制限が実施されていた3月から5月よりも、6月に入ってからの方が新規感染者数が多く、経済再開を急いだ州政府を批判する声が挙っています。


実は、このような動きは中国の北京市で既に起きています。北京市政府は感染者数が減少したことを受けて経済再開の号令を出し、4月11日時点で市内の主要工業企業の99%、主要商業施設の95%が再開したと発表しました。

しかし、6月に入ってから感染者数が増加傾向に転じたことから、12日には市内の食品卸売市場を閉鎖、16日にはすべての学校や娯楽施設を閉鎖し、市外へ出かける人はウイルス検査が義務付けられました。

北京市は「再規制」に踏み切りましたが、アメリカの多くの州は「様子を見る」状態を続けており、第2波に対する対応が手遅れになる可能性が指摘されています。

再び新型コロナウイルスの感染が拡大している理由

新規感染者数が増えているフロリダ州やテキサス州の知事らによると、感染者数が増えている理由は「検査数の拡大」とされています。

一方で、疫学者などの専門家の指摘では、検査が拡大すれば症例の追跡が可能になることから感染を鈍化させることが可能になるものの、それが実現していないという声もあります。

その他の理由としては、カリフォルニア州やテキサス州などには移民世帯が多く生活しており「過密な家庭環境」によって感染が広がっていると考えられています。

フロリダ州のデサンティス州知事(共和党)は、老人ホームなどの長期介護施設で「局地的な集団感染」が起きたことが反映されているだけとした上で、同州の急激な感染拡大は問題視しない構えです。

WHOも「アメリカの新型コロナウイルス感染症第2波」に懸念

6月19日、WHO(世界保健機関)のテドロス事務局長は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて「世界中で危険な新局面に入った」とコメントし、南米諸国を含むアメリカ大陸で感染が増え続けている状況に警鐘を鳴らしました。

また、ペンシルベニア大学の研究者チームは「フロリダ州はコロナ感染の次の中心地になる」と指摘したうえで、感染の規模は過去最大になると予想しています。

WHOや専門家の意見とは対照的に、トランプ大統領はこの状況(第2波到来)に対して「大げさだ」と一蹴し、あくまでも経済再開の手順を遂行すると強調しました。

アメリカ政府の新型コロナウイルス対策チーム主要メンバーである、アメリカ国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長は、アメリカ国内で感染拡大が続いている現状に対して「どう扱い、どう対処するかが重要」とし、第2波到来を軽視して何も対策を取らないトランプ政権に疑問を突きつけています。

新型コロナウイルス感染第2波到来で分断するアメリカ

アメリカでは感染者数が増えている一方で、国民感情の分断も明らかになりつつあります。

共和党州ほど新型コロナウイルスの感染者数が多い

5月の経済再開以降、感染者数が増えているのは「共和党州」と呼ばれる州が大半です。

つまり、共和党のトランプ大統領を支持している人が多い州で、感染者数が増えているということになります。

トランプ大統領を支持する州は経済再開に積極的で、いち早く外出規制やビジネスに対する規制を緩和してきた背景があります。皮肉にも、経済再開を急いだ州ほど、新規感染者数が増えている事態になっているのです。


この動きに対して11月の大統領選で政権奪取を狙うジョー・バイデン氏が率いる民主党陣営は、トランプ大統領の対応に批判的です。経済再開よりも感染防止を優先するアメリカ人たちは民主党の姿勢に対して好意的な印象を持っています。

再び感染が広まっているアメリカでは、経済優先の共和党と感染防止優先の民主党でくっきりと分断されていることがよく分かります。

マスク着用を巡る対立

アメリカではマスク着用に関しても国民の分断が起きています。

例えば、共和党のトランプ大統領はメディアの前でマスクを着用したことはありません。感染リスクが高いと指摘されていた選挙集会でも終始マスクを着用しませんでした。

対照的に、民主党候補のバイデン氏はメディアの前ではマスク着用姿を貫いています。白人警察官に殺害されたジョージ・フロイド氏の葬儀に出席した際もマスクを着用していました。

マスク着用を巡っては大統領候補両者の対照的な姿勢は鮮明です。また、両者の支持者たちにもその影響が及んでおり、オクラホマ州タルサの選挙集会に集まったトランプ支持者の大半はマスクを着用しないままでした。(全来場者に入り口でマスクが配布されていた)

この「マスク着用論争」は州単位でも対立を生んでいます。

例えば、民主党州のカリフォルニア州では「マスク着用義務化」に踏み切りました。18日、ニューサム同州知事は、多くの人がマスクをせずに外出しており、感染者数が1日あたり4,000人を超えたことから罰則付きの命令を下しました。また、同じく民主党州のニューヨーク州でも同様の動きが見られます。

これとは対照的に、共和党州のテキサス州では自治体による要請が続いているにもかかわらずマスク着用義務化は実施されていません。共和党のアボット同州知事は、同州で増え続けている感染者数を問題視しておらず、感染拡大を助長していると非難されています。

この他に民間企業でも「マスク着用論争」が起きています。

搭乗時にはマスク着用を義務化しているアメリカン航空の乗客ひとりが、マスク着用を固辞したため、搭乗拒否になったうえ、今後の利用を拒否される事件が起きています。

その乗客は熱心なトランプ支持者だったことが判明しており、頑なにマスクをしないトランプ大統領の影響を受けているものと見られます。

他にも、アメリカの映画館最大手のAMCシアターズは、当初政治論争に直結しやすいことから、映画館利用者のマスク着用は「推奨」という立場でした。

しかし、公衆衛生よりも政治的な立場を重視している(共和党寄りに映った)との批判を受けたことから、急遽「マスク着用義務化」に踏み切りました。

このように、アメリカでは感染防止策のための「マスク着用」を巡っても、共和党と民主党の対立が見え隠れしており、アメリカ国民の間には見えない分断があることを感じさせます。

新型コロナウイルスの感染者数増加でも経済は順調

アメリカでは新規感染者数の増加、政策を巡る対立などが浮き彫りになっているものの、経済は急回復しています。

好調な製造業

フィラデルフィア連邦準備銀行が18日に発表した6月の製造業景況感指数を見ると、6月はプラス27.5ポイントを付けており、先月(マイナス43.1)から70.6ポイントも上昇しています。

1968年以降で最大の上昇幅を記録しており、今後の経済活動は一層活発化すると見るエコノミストが増えています。

ニューヨーク連邦準備銀行が発表した内容でも同様の動きを見せていることから、アメリカの経済回復を印象づけています。


GDPもプラス修正

好調な経済の流れを受けて多くの金融機関や証券会社で予想GDPの見直しが始まっています。

アメリカの大手金融機関であるJPモルガン・チェースは、4-6月期の実質GDP予測を前期比年率40%減としていたところを32%減、野村証券は49.3%減から39.6%減、イギリスのキャピタル・エコノミクスは40%減から30%減と、いずれもプラスに修正されました。

このような各社の経済指標見直しはアメリカ経済の回復を裏付けていると言えます。

7月以降が正念場

感染拡大が終息していない中でも経済が好調な背景には「政府による手厚い社会保障」があります。

毎週600ドル上乗せされた失業保険や、実質的に返済不要の中小企業支援策である給与保障プログラム(PPP)などが、消費や生活を支えているとされています。

一方で、特例措置の失業保険は7月末で期限を迎えるため、個人消費に大きな影響を及ぼすことが懸念されています。

また、いまだに全米で150万人程度のペースで失業保険申請数が増えていることも好調な経済に影を落としており、不安材料は多いのが実情です。

仮に、失業保険の特例措置が7月末で打ち切られ、感染者数が増加し続けて再び経済活動の規制が出された場合、国民への打撃は大きくなります。

つまり、アメリカ経済は好調に見えるものの、大半の国民にとっては決して楽観視できない状況にあることを理解しておく必要があります。この傾向はアメリカに限らず、日本にも当てはまると言えるでしょう。

まとめ

以上、「コロナ第2波なのか?再び感染者が増えているアメリカの様子」でした。

ご紹介したようにアメリカでは5月の経済再開以降、9州で過去最大の新規感染者数を記録しており、新型コロナウイルス感染第2波到来は予断を許さない状態です。

一方で、アメリカ経済は好調な様相を見せていることから、トランプ大統領としてはこの流れを止めるわけにはいきません。11月の大統領選に向けて少しずつ民主党に流れが傾きつつあるため、感染拡大防止よりもさらなる経済優先政策に舵を切る可能性があります。

経済か感染防止か、アメリカはここでもまた分断した状態に置かれています。

新型コロナウイルスの第2波は、アメリカだけの問題ではなく、日本でも同じようなことが起きる可能性は大いにあります。引き続き、日本、そして世界の新型コロナウイルス感染症の状況に注目してください。

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本記事は、2020年6月26日時点調査または公開された情報です。
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