バイデンが副大統領候補に選んだカマラ・ハリスとは?

2020年11月、アメリカでは大統領選挙が行われます。同年8月11日、ジョー・バイデン大統領候補は、副大統領候補としてカマラ・ハリス氏を選びました。

今回は、大統領候補であるバイデン氏が副大統領候補に選んだカマラ・ハリス氏について、アメリカ在住の日本人にレポートいただきました。

はじめに - バイデン氏、副大統領候補を発表

2020年8月11日、予定よりも遅れるかたちで、ジョー・バイデン大統領候補とタッグを組む副大統領候補が発表されました。

副大統領候補に選ばれたのは、現カリフォルニア州上院議員のカマラ・ハリス(55)です。ハリス氏が注目を集めているのは「黒人女性」であることや、バイデン氏が勝利すると「史上初の女性副大統領」になることで、早くもアメリカの歴史を変える存在として期待されています。

そこで今回は、いまアメリカで最も注目されている女性と言っても過言ではないカマラ・ハリスについて生い立ちや選出された理由、副大統領としての働きなどを含めてご紹介します。

カマラ・ハリス(Kamala Harris)の略歴

まず、ハリス氏の生い立ちや政治経歴を見てみましょう。

インド系の母、ジャマイカ系の父

ハリス氏は1964年10月20日、カリフォルニア州オークランドでインド系の母、ジャマイカ系の父の間に生まれました。

母親は1960年に移民としてインドからアメリカにやってきて、癌研究の専門家や大学教授として活躍しました。父親は1961年に移民としてアメリカに来て、西の名門カリフォルニア大学で経済学を学んだ後、スタンフォード大学で教授を勤めています。

3歳下には妹のマヤ・ハリス(Maya Harris)がおり、弁護士やテレビコメンテーターとして活躍しています。また、妹の夫は元司法次官で、現在はUberで最高法務責任者を勤めており、ハリスも含めて親族全員が「超一流」のキャリアを持っています。

ハリスの幼少期は、公民権運動の真っ只中であったことから、度々両親に連れられて公民権運動に参加していたとされています。また、幼いながらも黒人の自由を訴えるような意志を持っていたと言われています。

法曹の世界へ

ハリスが7歳の時に両親が離婚し、カナダのモントリオールに移住しました。モントリオールの高校を卒業してからは、伝統的に黒人が多く通うワシントンD.C.のハワード大学に進学し、経済学を学びます。

大学を卒業した後にカリフォルニア州に戻り、カリフォルニア大学ヘイスティングズ・ロースクールで法務博士号を取得し、一度は不合格になったものの、1990年に法曹資格を取得しました。

革新派の検察官として

ハリスは、1990年から1998年までカリフォルニア州アラメダで地方検事補として活躍します。1998年にはサンフランシスコ地方検察局に移動、そして2000年から同局の地域コミュニティ課チーフを務め、カリフォルニア州法曹トップ100に選ばれています。

2003年、公選で選ばれるサンフランシスコ地方検事に当選しました。2008年にはカリフォルニア州司法長官選挙に立候補して、わずか0.8%の僅差で勝利し、初の黒人女性司法長官になりました。(2014年には再選)

上院議員として

2015年1月、カリフォルニア州上院議員に空席が生じたため、ハリスは上院選に出馬を表明します。民主党候補同士による戦いとなった珍しい選挙でしたが、オバマ大統領とバイデン副大統領の支持を得て当選しました。

一方で、移民排除の立場を明確にしていたトランプ政権が誕生したことから、移民を守るために存在感を強めることになるのでした。

上院議員としては、カリフォルニア州での大麻合法化や、ロシアゲートの公聴会でジェフ・セッションズ元司法長官を質問攻めにして言い負かすなど強烈な存在感を示しました。

全米が注目したロシアゲートの公聴会で、冷淡に鋭い質問を繰り返す姿は、メディアをはじめ多くの人を惹き付け、ハリス氏の名が全国に広まった瞬間でした。

この頃から「鋭い弁舌」「物怖じしない度胸」「冷静で冷淡」そして「大統領候補にふさわしい」といった評判が出るようになりました。

2019年1月、大統領選に出馬することを表明しますが、資金不足や民主党内争いで4番手だったことから同年12月に辞退し、バイデン氏を支持する約束をしました。このことが、副大統領候補選出につながったとされています。

カマラ・ハリスが選ばれた理由

では、なぜバイデン氏はハリス氏を副大統領候補として指名したのでしょうか?

黒人女性であること

かねてからバイデン氏は「副大統領は女性を選ぶ」と公言していましたが、6月に全国で巻き起こった人種差別に対する抗議活動(BLM運動)によって、黒人に対する姿勢が政治に大きな影響を与える社会状況になりました。

そのため、バイデン氏は「女性」という括りだけでなく「黒人」の選択肢を視野に入れるようになったとされています。最終候補には白人やヒスパニック系もいましたが、抗議活動以降は黒人を前提に検討したと思われます。

雄弁な人材であること

ハリス氏は検察官を長く務めてきたことから非常に雄弁な人材として知られています。一方で、バイデン氏は失言癖があり、支離滅裂な発言も多いことから、新型コロナウイルス感染防止を理由に大々的な選挙演説を避けてきました。

発言に不安が残るバイデン氏の代わりに、雄弁なハリス氏を置くことで「演説力」や「説得力」を補強したい狙いがあると見られます。高齢で失言リスクが高いバイデン氏が喋るよりも、若くて活発な女性が話す方が民主党にとっては好都合なのです。

穏健・中道派であること

ハリス氏はバイデン氏と同様に、民主党の中でも「穏健・中道派」として知られており、政策や考え方が似ています。

大統領と副大統領の思想が似ていることは一体感を生むため、支持を得やすい利点があります。一方で、ハリス氏は国民皆保険や警察改革問題において、極左と中道の立場を変えてきた背景もあるため、民主党内の結束に脆さを与えることが指摘されています。

バイデン氏の息子とハリス氏の関係

バイデン氏はハリス氏を選んだ理由のひとつに、ハリス氏と息子との関係を挙げています。

2015年、脳腫瘍で46歳の若さで亡くなったバイデン氏の息子ボー・バイデンは、お互いが司法長官時代にハリス氏と一緒に仕事をした仲でした。その際に、ボー・バイデンは父親に対してハリス氏の働きぶりを賞賛していました。

常々、息子からハリス氏の良さを知らされていたことから、バイデン氏にとってハリス氏は特別な存在だったのです。

副大統領候補としてのカマラ・ハリス氏

次に、副大統領候補としてのハリス氏はどのような期待がされているのかや、アメリカ人からの評判についてご紹介します。

カマラ・ハリス氏起用の狙い

バイデン氏や民主党としては「将来の大統領」としてハリス氏を添えている可能性が高いとされています。

この背景には、バイデン氏が当選した場合、史上最高齢の大統領(78歳)になることや、バイデン自身が「自分は(次世代への)かけ橋だ」と、あくまでも「つなぎ役」を認めていることがあります。

白人の数が減少している一方で、黒人やヒスパニック、アジアンなどの移民が増え続けているアメリカで、移民や黒人の象徴的な存在であり、頼れる女性のハリスは適役なのです。

仮に、バイデン氏が任期途中で大統領が務まらなくなったら、大統領継承第1位のハリス氏が大統領に繰り上がります。

アメリカ国内では「繰り上げ」によるハリス大統領の誕生は、非常に現実的なシナリオとして報道されており、民主党による「隠れた狙い」が露骨過ぎると批判されているほどです。

カマラ・ハリス氏に期待されること

ハリス氏に最も期待されているのは「女性やマイノリティ人種からの支持」でしょう。

5月に起きた白人警察官による黒人男性殺害事件や人種差別問題などで、トランプ政権を批判した人たちによる支持を得るのにハリス氏の存在は大きく影響すると考えられています。

バイデン氏や民主党としては「黒人」「女性」「穏健・中道派」「クリーン(政治スキャンダルなし)」といった条件が揃っているハリス氏は、支持集めのアイコンとして適役なのです。

11月の大統領選に向けて、女性やマイノリティ人種に対してどれだけ民主党をアピール出来るかがハリス氏に問われています。

カマラ・ハリス氏の不安要素や懸念点

注目されているハリス氏ですが、不安要素や懸念点もあります。

不安要素は「人気があって選ばれた訳ではない」ということです。ハリス氏は大統領選の民主党候補者選びで、同じく女性上院議員であるエリザベス・ウォーレンに大差を付けられています。また、全国的な知名度や実績の乏しさも否めません。

今回はあくまでもバイデン氏によって「抜擢」されたに過ぎず「人気と実力」はこれからが勝負といったところです。11月の本選までに、トランプ陣営によるネガティブキャンペーンや政治スキャンダルの精査が予想されるため、足元の脆さは不安材料と言えるでしょう。

懸念点は「バイデン氏との仲」です。実は、ハリス氏は民主党候補討論会でバイデン氏を黙らせる出来事を起こしています。

ハリス氏は、1970年代に異なる人種の子どもが同じ学校に通えるように、学区外の学校を選択できる制度の導入を巡って、バイデン氏が反対していたことを指摘しました。このことでハリス氏は傷ついたと訴え、バイデン氏は反論できずに黙るしかありませんでした。

バイデン氏には人種差別主義者の傾向があり、これまでに度々人種差別を思わせる発言を繰り返しています。そんな人物と黒人であるハリス氏がタッグを組んでうまくいくかは懸念点と言えるでしょう。

バイデン氏がハリス氏を選んだことに対する周囲の反応

バイデン氏がハリス氏を選んだことは「予想通り」でしたが、ライバルであるトランプ大統領などはどのような反応を示しているのでしょうか?

トランプ大統領の反応

トランプ大統領は、ハリス氏が副大統領候補に選ばれたことが発表された直後に、自身のTwitter上に30秒ほどの動画を投稿しました。

その動画では「Phony Kamala.(いかさまハリス)」や「Slow Joe.(のろまジョー)」といった辛辣な言葉を並べて「アメリカにとって完全な間違い」と紹介しています。

11日の記者会見では、ハリス氏が選ばれたことを受けて「少し驚いた」と述べたうえで、討論会でハリス氏がバイデン氏を非難したことにも触れ「彼女はとても嫌な人だ」とコメントしました。トランプ大統領によるハリス氏批判はすでに始まっています。

オバマ元大統領の反応

オバマ元大統領は自身のTwitter上で、これまでの関係を強調したうえで働きぶりも賞賛し「アメリカにとって素晴らしい日であり、勝利しよう」とまとめています。

自身が大統領だった時代に副大統領として活躍したバイデン氏と、同じ黒人であるハリス氏が選ばれたことはオバマ氏にとっては感慨深いものと思われます。ハリス氏は「女性版オバマ」とも呼ばれており、オバマ氏も期待を寄せています。

まとめ

以上、「バイデンが副大統領候補に選んだカマラ・ハリスとは?」でした。

カマラ・ハリスは初の黒人女性による副大統領として期待がかかっています。高齢でなおかつ失言が多いバイデン氏をサポートするには適任と言えます。

11月の本選挙に向けて、副大統領役としての技量を見せつつ、トランプ陣営によるハリス氏への攻撃にも対処する必要があります。

2020年8月17日の民主党大会で正式な承認を受けた後、10月7日には現職副大統領のマイク・ペンス氏とテレビ討論会を控えています。すでにバイデン氏よりも注目を集めていることから、ハリス氏の動きから目が離せません。

本記事は、2020年8月20日時点調査または公開された情報です。
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