公務員試験に出てくる学者・思想家の徹底解説(1) 〜K.マルクス〜

現役大学講師として、公務員試験対策に現在も関わっている著者が、公務員試験に出題される学者や思想家について解説するシリーズです。

第1回は、K.マルクス(1818~1883)をとりあげます。彼は、教養試験の社会科学の経済や社会と人文科学の倫理・思想、そして専門試験の政治学・社会学などで出題が予想される重要人物です。

また、「マルクス主義」という言葉があるように、後世の研究者がこぞってマルクスの主著を読み解釈をするなど影響が多大だった人物といえます。他方、公務員試験で出題される主張点は限られていますので、本記事では、そこにフォーカスして点数が取れるようにお伝えしていきます。

はじめに - なぜ、マルクスを第1回に解説するのか

公務員試験に出てくる学者・思想家の徹底解説第一回目は、マルクスについて解説します。

ところで、なぜマルクスから解説するのでしょうか。

一番出るからだろうと期待しすぎたり、著者が好きなだけではと邪推させたりするのは本意ではありません。そこで、試験対策上有益な3つの理由を以下に挙げておきます。

1点目は、多くの科目で出題されるからです。特定科目だけでの出題ではなく、また教養試験でも問われるので、多くの受験生にとって自分事となり、活かせると考えました。

2点目は、基準となるからです。星空観察に慣れていない人がまず北極星を把握してから別の星を探すように、マルクスを知っておくと、そこから現代(19世紀後半以降)の学者・思想家たちを把握しやすくなり便利です。マルクス主義的なのか、反マルクス主義的なのかなどはその一例ですね。

特に、社会学という科目を受ける方にはこの点は重要です。社会学の方法論は、M.ウェーバー(1864~1920)、E.デュルケーム(1858~1917)、G.ジンメル(1858~1918)の三人が基礎を確立し、現代まで影響を及ぼしていますが、この三人が社会学に賭けたのはマルクスの「経済決定論」的な論じ方への対抗と捉えると分かりやすいからです。マルクスが、経済で物事を論じたときに、それ以外もあると主張したかった(そして、その主張の仕方が三者三様であり、現代でも影響力ある方法論である)と覚えると勉強がはかどるのです(注1)。

3点目は、「公務員試験あるある」の典型を、マルクス解説通じて理解してほしいからです。「公務員試験あるある」の学者・思想家出題バージョンの一つとして、世間に流布している安易なキーワードだけではその選択肢の合否が判断つかないように設問がつくられているというものがあります。

マルクスは、中高の公民系科目を通じ、平等な貧富のない社会主義を主張したというイメージがありますが、これだけを握りしめても問題が解けません。マルクスの主張の「総体」をおさえることで、必ず得点できるようにしましょう(といっても、あくまで試験に出る程度の「総体」です)。

なお、以下出る点4つの記載は、理解しやすい流れで書いています。一読後は、教養試験のみある方は、(1)と(3)に重点をおいてください。ただ、専門試験のある方はすべて必要です。

マルクスの試験に出る点(1) - 初期社会主義を空想的社会主義と揶揄

マルクス誕生以前の18世紀後半からイギリスなどでは産業革命が始まり、多くの労働者が生まれました。彼らは、過酷な労働を強いられ、人間性を奪われていましたので、この状況をなんとかしたいと考えた人々(サン=シモン、フーリエ、オーウェンら)は、生活環境の改善に努めました。

マルクスは、盟友のエンゲルスとともに、彼らの活動自体を高く評価しつつも、資本主義を分析する方法は欠いていたということで、「空想的社会主義」と揶揄しました。ここでいう、空想的とはユートピア的ということです。そして、自分たちは「科学的に構築された社会主義」(科学的社会主義)と主張したのです。

ちなみに、色字にしましたが、空想的社会主義者である3人も、教養試験の世界史や倫理思想、そして専門科目の政治学などで出題されたことがあります。ついでに、以下の特徴も押さえておいてください。

サン=シモン(仏)
社会学の創始者であるコントの師匠にあたる人。産業が中心の時代は、有閑者たる地主や貴族などに代わり、産業者(資産家・農民・職人)が社会を管理すべきと主張した。
フーリエ(仏)
ファランジュという生産協同組合を基礎的な単位とする共同社会の実現を目指した。これは、生産・分配・消費を数百家族で共同するという考えである。
オーウェン(英)
ニュー・ラナーク紡績工場を経営する際、労働者の雇用環境に配慮したため大きな成功を収めた。この時、性格形成学院という幼児学校をつくって労働者の子たちへの教育を展開したことも有名。のちに、アメリカで共同所有と経営を理念とするニュー・ハーモニー村の実現を目指したが、これは失敗に終わっている

マルクスの試験に出る点(2) - 資本主義の問題点は労働者への搾取と労働疎外

さて、マルクスは空想的社会主義というのは資本主義の分析ができていないと批判しているわけですから、自身は分析したということですよね。実際、マルクスは主著『資本論』や、それ以外の『経済学・哲学草稿』『ドイツ・イデオロギー』『経済学批判』など著作を通じ、資本主義のメカニズムを明らかにしています(色字の本のタイトルは覚えましょう。あと、エンゲルスとの共著『共産党宣言』も、後に触れる社会主義を目指す行動を呼びかける本として有名です)。

特に、このメカニズムに孕んでいる問題点が挙げられており、やがて資本主義は終焉をむかえ社会主義になると科学的立場で論じています。公務員試験では、資本主義の問題点として2つ覚えてもらわなくてはなりません。

1つ目が、資本家が労働者を搾取するという資本主義にとっての矛盾です。

資本主義においては、市場で売り手と買い手が、提供されるモノやサービスと支払いを対等と認めて取引を成立させています。皆さんが150円払ってペットボトルのお茶を買うのは、そのお茶の価値と150円が釣り合っていると判断したからですよね。

しかし、労働市場は対等でないことをマルクスは見抜きました。労働市場では、労働者の賃金価格は、労働者が生み出す富より低く設定して資本家が買っており、その差額分儲けることができる仕組みになっているのです。この差額分を剰余価値といいます。

例を出します。時給1200円の家庭教師アルバイトがあったとします。経済学的に言えば、労働市場において、家庭教師の会社は、1時間あたりの労働を1200円で買ったということになります。他方、利用生徒は月8時間で 24,000円支払っているとしましょう。これは、塾と生徒の教育サービス提供をめぐる市場において、1時間あたり3000円で取引されていたことになります。差額である1800円(今回の例では人件費以外の経費は考えていません)が、資本家の取り分となっていますよね。

このように対等な取引を標榜している資本主義メカニズムのはずが、労働市場では機能しないという矛盾が生じているのです。そして、資本家は搾取(剰余価値を得ていること)でますます富を得るので、貧富の差は解消されません。こうした問題が資本主義にはあるのだとマルクスは主張しました。

2つ目が、労働疎外という概念です。

マルクスによれば、人間の本質は労働にあるといいます。自然に働きかけ生産物を作り出し、その際には能力発揮をし、生産物の中に自己を確認することもできます。つまり、労働とは本来は、人間に喜びをもたらしてくれるとマルクスは考えていたのです。また、労働は一人ではできませんから、他者と協力する意味で人と人を結びつけますしね。これを、マルクスは類的存在と表現しています。

しかし、資本主義下では、生産物は自分のものにならず資本家のものになってしまいますし、分業で生産過程全体に働きかけられませんし、そもそも人が資本家と労働者など仕切られていて連帯もしづらくなっていますから大変苦痛なわけです。労働することで、むしろ人間性を失っている状況にあるといえます。これを労働疎外というわけです

マルクスの試験に出る点(3) - 社会主義の意味

マルクスは、労働者への搾取という資本主義メカニズムへの矛盾点や労働疎外という人間の本質から離れた状態を明らかにすることで、資本主義の問題点を示しました。では、それを克服する社会主義とはどういうものでしょうか。

社会主義とは、生産手段(土地、原料、機械など)を資本家などの私有から公有にするというものです。要は、労働者みんなのものにしてしまおうという考えです。みんなのものになれば疎外状況はなくなりますよね。みんなが労働者になりますから階級もなくなり、搾取構造ともおさらばできるというアイデアです(この意味で社会主義は平等なのです)。

とはいえ、これは、生産手段を所有し搾取している側である資本家にとっては嫌な制度のはずです。だから抵抗が予想できますよね。したがって、いったんは、労働者階級が資本家階級を打倒する「社会主義革命(プロレタリア革命)」が多くの国で必要だ(すべての国で暴力的にこうした革命が必要とは考えていない)とし、一時のプロレタリアート独裁による社会主義化を認めるわけです。

まぁ、そのステップを踏んだ後について、マルクスとエンゲルスは、地球上のどの地でも労働者のみの共同的な生活になる(共産主義ということですね)ので、「階級も国も博物館に」入れられると著書で述べていますが、実際に社会主義革命をなした国々は独裁が続いてしまいました。マルクスの考えた通りに歴史は歩まなかったわけですね。

なお、『共産党宣言』の有名な「万国の労働者よ、団結せよ」は、こうした労働者の連帯による社会変革を求める呼びかけです。

マルクスの試験に出る点(4) - 唯物史観と社会変動論

ところで、マルクスはこの資本主義から社会主義への変化はどのくらい起こると述べていたと思いますか。驚かれる方も多いと思いますが、マルクスにとってこの変化は(科学的な)法則と捉えていましたので、必ず起こると捉えていました。だから、自身の社会主義を科学的社会主義と主張しているわけです。

マルクスに言わせれば、社会主義はイデオロギーではないのです。

なぜ、こう主張できるのでしょうか。それは、生産力と生産関係という生産様式の矛盾が臨界点までくると革命が起こって社会が変動するという唯物史観をマルクスが展開しているからです。

では、唯物史観とは何なのかを次に説明していきましょう。そのための前提知識として、知ってほしいことがあります。それは、マルクスが、社会の形成と存続の規定は下部構造である生産様式によると考えていたことです。言い換えますと、政治・法律・学問・芸術などの精神的な活動(上部構造)は、ある時代の生産様式(下部構造)が基盤となっており、これに規定されるというわけです。

例えば、封建制であれば、領主が安堵し領民が年貢を納める生産様式(下部構造)なわけですが、これに合った政治体制、法律の整備、学問や芸術の振興などがされるということです。確かに、封建制下である江戸時代には、慶安の御触書という年貢を納めるために守るべき細目を定めた法律や身分制度を尊重する儒教振興がなされていましたが、これらは生産様式(下部構造)と親和的な上部構造ですものね。

そして、マルクスは、科学や技術の発展により生産力というものは常に発展する意味で変化があるものの、生産関係は維持を望むと主張しました。まぁ、領主はずっと領主をやりたいわけですね。しかし、生産力と生産関係のつり合いがとれなくなる臨界点がやがてきてしまいます。このとき革命が起き社会が変動するのです。この考えが唯物史観です。

ちなみに、生産関係って階級ですから、唯物史観を端的に表現すると、『共産党宣言』の中にある「すべての歴史は階級闘争の歴史である」になります。

原始共産制から古代奴隷制、次いで中世封建制、そして近代資本主義制へと社会変動していったとマルクスは言いますが、この変動が唯物史観で説明された結果なのです。

具体的には、奴隷主と奴隷の関係で衣食住全般支配して働かす時代から、領主と領民の関係で土地移動制限しながら納税を中心に支配しつつ生産させる時代へ移り、そして資本家と労働者の関係で契約により労働条件の履行という形で生産させる時代になったということです。生産力を伸ばす意味で、そのほうが合理的だったわけです。そして、社会変動の要因は、その合理性より生産力と生産関係の矛盾が上回ったからということになります。

ところで、上記で述べたように資本主義には矛盾がありましたよね。だから、歴史の法則からして、資本主義の矛盾点(搾取と労働疎外)が臨界点に達せば社会主義になるのだと考えています

ちなみに、こうした生産様式の矛盾が社会を変化させるというのが「経済決定論」的な見方であるので、M.ウェーバー、E.デュルケーム、G.ジンメルらは違う要因も示そうとして社会学を科学的に確立していくことになるのです。

まとめ

以上、「公務員試験に出てくる学者・思想家の徹底解説(1) 〜K.マルクス〜」でした。

第1回はマルクスを解説しました。以下にまとめておきます。

・自身の社会主義は、唯物史観に基づいた社会変動を見据えた結果起こる法則なので、科学的社会主義といい、それ以前の社会主義(空想的社会主義)とは区別した

・唯物史観は、生産様式という下部構造における生産力と生産関係の矛盾が臨界点に達すると革命が起こるという意味であり、現在の下部構造たる資本家と労働者の関係にも、剰余価値という搾取労働疎外の矛盾があるので、やがては生産手段の共有を旨とする社会主義に至ると考えた

・唯物史観に基づけば、原始共産制⇒古代奴隷制⇒中世封建制⇒近代資本主義制へと社会変動していった

・社会主義に至る際は、社会主義革命が起こり、一時は労働者階級(プロレタリアート)独裁が生じることを認めた

・著書は、『共産党宣言』(エンゲルスとの共著)、『資本論』、『ドイツ・イデオロギー』の3冊を少なくとも覚えておこう

是非、まとめを適宜読み返し、キーワードの意味することが分からない場合は、出る点に立ち返って読むことで理解を深めてください。そうして、得点奪取に役立てていただければ幸いです。

*注1)『ブリッジブック社会学』(玉野和志編)のp3~9参照。ただし、2008年版である。

本記事は、2020年9月2日時点調査または公開された情報です。
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