バイデン大統領でアメリカの政策はどう変わる?

2020年11月3日に行われたアメリカ大統領選は、民主党のバイデン陣営の勝利宣言によってひとまず決着しました。

本記事では、バイデン氏が次のアメリカ大統領に就任した場合、アメリカの政策はどう変わるのかについて、アメリカ在住の日本人にレポートいただきました。

はじめに - ひとまず決着、バイデン氏勝利

2020年11月9日現在、アメリカ大統領選は民主党のバイデン陣営の勝利宣言によってひとまず決着しました。しかし、トランプ陣営による敗北宣言はなされておらず、再集計を巡る法廷闘争の手続きが進められています。

そんな中、バイデン氏は2021年1月20日の就任当日からすぐに動けるように、政権移行手続きに乗り出しています。11月7日に実施された勝利宣言演説では「新型コロナウイルスの抑制に取り組む」と明言しており、すでに専門家を招集したと見られます。

大統領選が正式に決着していない中で進められている次期政権ではいったいどのようなことが重視され、どのような方向性で進むのでしょうか?

今回はバイデン政権が誕生した場合、アメリカの政策はどう変わるのかについて解説します。

民主党バイデン政権の基本方針

11月4日、バイデン氏は政権移行に向けた新たなウェブサイト「BIDEN-HARRIS TRANSITION」を立ち上げました。このウェブサイトでは主に以下の4つの基本方針を打ち出しています。

BIDEN-HARRIS TRANSITION 4つの基本方針

1)COVID-19(新型コロナウイルス)
2)ECONOMIC RECOVERY(経済再生)
3)RACIAL EQUITY(人種問題)
4)CLIMATE CHANGE(気候変動)

それぞれ大きな枠ではありますが、大統領選時の選挙公約を要約したような構成です。バイデン政権ではこの4つを基本軸にして、様々な政策に取り組むと見られます。

これらの政策を実行するために不可欠なのが「国際協調路線への回帰」です。トランプ政権で破棄または脱退した国際的な枠組みや国際機関へ復帰する公算が大きいと見られています。

実際に、バイデン氏は大統領就任当日に、気候変動抑制に関する多国間の国際的な協定「パリ協定」への復帰を宣言すると明言しています。また、世界保健機関(WHO)やイラン核合意へも復帰すると見られており、トランプ政権で損なわれたアメリカの国際的な信頼回復に取り組みます。

このような傾向から、バイデン政権は概ね「トランプ政権と真逆路線」を進むことになると見られています。アメリカ第一主義だったトランプ政権とは対照的に、同盟国との協力を重視する政権になることは間違いないでしょう。

したがって、バイデン政権の基本方針は「国際協調の政権」で、トランプ政権では重視されなかった「人種問題」「気候変動」への取り組みも加速すると見られます。

民主党バイデン政権による主要政策

バイデン政権に移行した場合、具体的にはどのような政策が実行されるのか見てみましょう。

新型コロナウイルスについて

バイデン氏は勝利宣言演説の中で、唯一具体的な政策として触れたのが「新型コロナウイルス」についてです。

「ウイルス抑制なくして経済再生なし」とし、経済政策よりも優先して「コロナ抑制」に取り組むとしています。具体的には「アメリカ全市民に新型コロナウイルス検査、治療、ワクチン接種の無料提供支援」に着手するとしており、トランプ政権時よりも厳しい規制を設けると見られています。

アメリカで生活している筆者の周辺では、バイデン政権になると「マスク着用義務化」や「ワクチンの強制接種」、「ワクチン接種済み証明書携行義務」といったことになると噂されており、あながち冗談には聞こえません。

アメリカは医療費が高い分、健康に気を使う人が多く、科学的なワクチンや予防接種に抵抗を持つ人も少なくありません。また、アメリカの医療を信用していない人も多いため、バイデン政権による新型コロナウイルス対策を不安視する人もいます。

11月8日、アメリカの大手製薬会社ファイザーは、開発中のワクチンが治験において90%以上で効果が見られたと公表しており、緊急使用の承認手続きを経て2020年内には5,000万回分(2,500万人分に相当)を供給できる見込みで、ワクチン配布の準備が整いつつあります。

バイデン政権では、どこまで新型コロナウイルス対策を厳しくするのかが焦点です。トランプ政権では「過度に恐れるな」という風潮だったため、バイデン政権で強制化や義務化が進むと大きな反発を呼ぶ可能性があります。

政権移行後すぐの政策であること、人々の生活に直結すること、強制や義務を嫌う国民性、そして過度に恐れるべきではないと考えている人が多いなかで、ウイルス抑制対策が実現するかバイデン氏にとって最初の課題になるでしょう。

経済再生について

バイデン政権では経済再生も重視されています。特に注力すると見られるのが「中間層を中心にした500万人の雇用創出」です。

この政策は、4年間で7,000億ドル(75兆円)の公的資金を投入し、先端技術の研究開発や米国製品購入、インフラ整備を進めるものです。公共事業によって大量の雇用を生み出す計画とも言えます。

トランプ政権では、中国をはじめとする海外に工場を移転した企業をアメリカ国内に呼び戻すことで雇用を回復させる計画でしたが、バイデン政権では公的資金を使って雇用を確保する内容です。

また、既存の事業よりもクリーンエネルギー事業などの将来性がある事業へ積極的に投資して、雇用を生み出しつつ、再生エネルギー事業で世界をリードしたい狙いがあります。実際にバイデン氏は、選挙公約として「全米50万ヶ所に電気自動車公共充電スタンド」を建設するとしています。

バイデン政権の経済政策は将来的な希望に満ちた内容ですが、トランプ大統領からは石炭や火力発電事業など既存のアメリカ人労働者を軽視していると指摘されており、実現できるかは不透明です。

人種問題について

いまのアメリカにとって「人種問題」も大きな課題です。

とくに、根強い黒人差別や警察官による人種差別など「社会構造的な差別」をどこまで根絶できるかが問題でしょう。

バイデン政権では「全国的な基準を有する警察の実力行使規制の導入」が選挙公約にあることから警察改革が進むと見られます。

また、オバマ政権でもそうであったように「不法移民が市民権を獲得できるようにする」ことも選挙公約にしていることから、トランプ政権とは対照的に社会的弱者に手厚い政策へ移行するでしょう。

この政策について活躍が最も期待されるのが、副大統領候補のカマラ・ハリス氏です。自身も黒人で移民2世であることから、これまでの政権以上に弱者救済の政策が進む可能性があります。

同時に、妊娠中絶の容認や性的少数派の差別禁止法など、女性やマイノリティの権利を守る政策も加速するでしょう。この点で検事や州司法長官の経験があるハリス氏の影響力は大きなものになると見られます。

気候問題について

トランプ政権と対照的なのが「気候問題」です。

バイデン氏は大統領就任当日に「パリ協定」への復帰を宣言すると公言しました。また、2035年までに発電に占めるクリーンエネルギーの割合を100%とし、2050年までに温室効果ガス排出量実質ゼロを目指すとしていることから、気候問題を重視していることが分かります。

8月20日、バイデン氏は指名受諾演説の中で「税法の改革によって得られる資金で気候問題を解決できる」と述べました。具体的には、トランプ政権による「1%の最富裕層と儲けが大きい大企業への税優遇措置」を終わらせることで、約1兆3,000億ドル(130兆円)が浮くとしています。

気候問題を見据えた税制改革は「法人税を28%に引き上げ(現行21%)」や「富裕層への課税強化」、「投資家と労働者の同一税率化(現状は投資家が税率で優遇されている)」などが検討されています。

バイデン氏の計画では「税制改革ありきの気候問題」であることから、税制改革がうまくいかない場合は気候問題に取りかかれない懸念もあります。

また、富裕層や大企業からの増税に対する反発は避けられず、いかにまとめられるかが焦点です。トランプ政権では富裕層や大企業を優遇してきた分、反発が強くなると見られます。

まとめ

以上、「バイデン大統領でアメリカの政策はどう変わる?」でした。

バイデン氏は新型コロナウイルス、経済再生、人種問題、そして気候問題の4つを重視した政策に取り組むとしています。また、アメリカ第一主義から国際協調路線に回帰することは確実で、トランプ政権とは真逆の政策になるでしょう。

「大きな政府」をうたう民主党政権が、これらの政策をどこまで実現できるか、そして国民の半分相当のトランプ支持者(共和党支持者)をうまく取り込めるかに注目です。

参考資料サイト

バイデン氏は政権移行に向けたウェブサイト
https://buildbackbetter.com/

本記事は、2020年11月13日時点調査または公開された情報です。
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