アメリカ大統領選・民主党バイデン陣営が勝利宣言で何を語ったのか?

2020年11月3日に行われたアメリカ大統領選挙から4日が経過した11月7日、バイデン陣営は「勝利宣言演説」を実施しました。

本記事では、民主党バイデン陣営の「勝利宣言」について、アメリカ在住の日本人にレポートいただきました。

はじめに - バイデン氏、勝利演説を行う

アメリカ時間2020年11月7日午前、ABC、CNN、NBCCなどのアメリカ主要メディアは一斉に「バイデン氏の勝利」を伝えました。

投票日から4日経過し、いくつかの州では最後まで開票が済んでいない中での報道でしたが、トランプ陣営が逆転の可能性が難しいことが確実になったタイミングでした。この報道は世界中に広まり、バイデン陣営は同日午後8時から「勝利宣言演説」を実施すること決めました。

一方で、トランプ陣営は「選挙はまだ終わっていない」としたうえで、週明けの月曜日から弁護団による再集計を巡る裁判を本格化させることを表明しており、敗北宣言はしていません。

「終わったけど終わっていない」状況下で開催されたバイデン陣営の勝利宣言ではどのようなことが語られたのでしょうか?勝利宣言演説の要旨や周囲の反応などをアメリカ在住の筆者目線でご紹介します。

民主党バイデン陣営の勝利宣言演説の概要

勝利宣言演説は11月7日夜、バイデン氏の地元であるデラウェア州ウィルミントンで開催されました。演説には副大統領候補のカマラ・ハリス氏もかけつけ、支持者にとっては歴史的な瞬間になったと言えます。

トランプ陣営主催の集会とは対照的に、新型コロナウイルス感染拡大を防止するために支持者らは車で直接乗り込む「ドライブイン方式」を採用していることが特徴的です。参加者の多くは、黒人、女性、少数派民族、そして子どもたちで、民主党支持者らしい顔ぶれでした。

演説は、カマラ・ハリス副大統領候補から始まり、バイデン氏へと続きました。ハリス氏の登場と同時に人々は歓喜し、車のクラクションを鳴らして喜びを分かち合いました。ハリス氏の演説中には涙を流しながら喜ぶ人もいるほどで、新しい時代を予感させる力強い演説が10分ほど続きました。

ハリス氏の演説後、ハリス氏に紹介されるようにしてバイデン氏が登場します。バイデン氏は小走りで舞台に現れ、駆けつけた支持者らに元気な姿を見せました。バイデン氏による演説はおおよそ15分間続き、取り組むべき政策や結束を呼びかけました。

演説は多くのメディアで中継され盛り上がりを見せましたが、トランプ支持者は「まだ終わっていない」と冷ややかな目を向けていたのも事実です。

実際に、親トランプ派とされる南米諸国の首脳陣からはバイデン氏へ祝福のメッセージが寄せられていないことが、まだ決着していない様相を物語っています。

カマラ・ハリス氏の演説要旨

はじめに、ハリス副大統領候補が語った内容を見てみましょう。ハリス氏の演説は、女性や黒人を強く意識した内容で、控えめながら力強さを感じさせる内容だったことが特徴です。

今回の選挙で記録的な投票数 を投票してくれたあなたに感謝します。あなたは希望、科学、良識、そして真実を選んだのです。ジョー(バイデン氏)を大統領に選んだのです。

何世代にもわたって活躍してきた黒人女性のことが思い浮かびます。この国の歴史では、アジア人、白人、ラテンアメリカン、ネイティヴアメリカンといった多くの女性たちが今日と言う日の道を切り開いてきました。

平等、自由、正義のために戦い、犠牲になってきた黒人女性はあまりにも過小評価されてきました。しかし、それが自分たちの根底には民主主義があることを証明してきました。

ジョーは、女性の私を副大統領候補に選びました。私たちは壁を打ち破ったのです。私は女性として初の副大統領になるかもしれません。しかし、決して最後にはなりません。今夜、これを見ているすべての子どもたちが、(アメリカは)可能性がある国だということを知ったからです。

かつて、ジョーが副大統領を務めた時のような副大統領になるよう努めます。忠実で誠実、毎朝起きた時にあなたとあなたの家族について考えるような副大統領を目指します。

パンデミックに勝ち、経済を立て直し、構造的な人種差別を根絶し、そして気候変動と戦う大きな仕事です。これからは平坦な道ではありません。しかし、ジョーと私は準備が出来ています。世界から尊敬され、子どもたちがお手本にするような指導者になります。

ジョー・バイデン氏の演説要旨

次に、ジョー・バイデン氏による演説内容をご紹介します。バイデン氏の演説は、謝辞、コロナ対策、結束、そして可能性という4つの要素で構成されていました。

謝辞

アメリカ国民は声をあげて明らかに納得いく勝利をもたらしました。人々の勝利です。史上最多となる7,400万票もの票によって私を勝利させてくれました。全米、世界中が大きな希望の喜びにあふれています。

私は約束します。分断ではなく、結束を目指す大統領になります。赤(共和党)か青(民主党)ではなく、ひとつの国として見ます。みなさんから信頼を得られるように心から全力を尽くします。私たちは国民のための政権です。アメリカの魂を立て直し、中間層を再構築して再び尊敬される国にします。

素晴らしいハリス副大統領と働けることはとても光栄です。ハリス氏は女性で黒人、そして南アジアの祖先を持つ移民2世で、国政選挙によって選ばれた初の人物です。アメリカは再び道徳の方向性を正義へと向けたのです。

トランプ大統領に投票した人たちの失望も理解しています。しかし、お互いにチャンスを与え合いましょう。激しい言葉の応戦はやめて、お互いを見て、お互いの話を聞きましょう。相手を敵視することをやめましょう。私たちは敵ではなく、みんなアメリカ人なのです。いまこそアメリカの傷を癒すべき時なのです。

コロナ対策

大統領選は終わりました。国民の意思や私たちの使命は何でしょうか。私は国民が品位と公正の力を求めたと信じています。科学と希望の力を導くことを求めたのです。ウイルスを制御し、繁栄を築き、あなたたちの家族を守るために戦います。

私たちの仕事はコロナウイルスを制御することから始まります。ウイルスを制御できるまで、経済を修復し活気を取り戻すことはできません。

月曜日(11月9日)、一流の科学者と専門家によるグループを政権移行アドバイザーとして指名します。そして「バイデン・ハリス計画」を作り、2021年1月20日(就任式当日)から政策を始められるよう準備します。これは、思いやり、共感、懸念に配慮した計画になります。

私は誇り高い民主党員ですが、私に投票しなかった人のためにも、私に投票してくれた人たちに対するのと同じように働きます。

結束

この厳しい悪夢のような時代に終わりを告げましょう。民主党と共和党が互いの協力を拒否したのは不思議な力によるものではなく、決断であり、私たちによる選択です。私たちは協力することを選択できるのです。

これはアメリカ国民が私たちに与えた使命だと確信しています。私は議会、民主党員、共和党員に対し、私と同じ選択をとるように呼びかけます。私たちは人種や宗教、アイデンティティ、障害に関係なく、すべての人にとって現実にしなければいけません。

私たちはいま転換点にいます。絶望に打ち勝ち、繁栄と目的ある国を作るチャンスにあります。アメリカは天使と悪魔の絶え間ない戦いによって作られてきましたが、今夜私たち天使が勝つ時がきたのです。世界中が注目しており、私たちが模範にならなければいけません。

可能性

私はアメリカを表現する言葉を常に考えてきましたが、それは「可能性」です。自由で公正、尊敬と敬意、癌やアルツハイマーを治す国、誰も置き去りにしない国、決してあきらめない国に向かうのです。私たちが力を合わせれば不可能はありません。

投票日までの数日間、家族と亡くなった息子のボーにとって大きな意味を持つ賛美歌について考えていました。これは私にとって支えとなる信念で、アメリカも支えると信じています。私の心はあなた方一人ひとりに向いています。ウイルスによって家族を失った人たちの慰めになるよう願っています。

心を込めて着実な足取りで互いを信じ、国への愛情と正義を持って理想の国を作りましょう。国は結束し、強くなって癒されます。幼い頃、祖父から「ジョー、信念を貫け」、祖母からは「ジョー、信念を広めなさい」と言われました。アメリカに神のご加護を。ありがとうございました。

民主党バイデン陣営の勝利演説に対する周囲の反応

今回の演説は「正式なバイデン陣営の勝利宣言」であったことから非常に注目を集めました。

なかでも、アメリカの分断や二極化を意識した発言が続き「結束」や「団結」の呼びかけが目立ちました。「大きな政府」をうたう民主党らしく、女性や黒人、マイノリティに配慮した演説内容だったと言えます。

会場に集まった支持者の多くは、女性や子ども連れ、黒人であったことから、トランプ政権時代に冷遇された人たちからは概ね好評だったようです。とくに、ハリス氏による演説は力強さと思いやりが込められていたと高評価を集めています。バイデン氏は、前日に実施した落ち着いた会見とは対照的に力説だったことから、喜びを隠しきれていない印象でした。

一方で、郵便投票による不正があったことを追及するトランプ陣営や支持者らは法廷闘争で決着させるつもりでいます。実際に、勝敗を決定付けたとされる激戦州のペンシルベニア州やミシガン州などでは再集計を要求するための抗議活動が続いています。

一部のトランプ支持者は武装しており「It’s not over.(終わっていない)」をスローガンに、抗議活動を続けており、周辺は物々しい雰囲気に包まれています。

筆者が暮らすアリゾナ州は11月8日時点、まだ集計が終わっていませんが、街の雰囲気は落ち着いており、多くの人たちが「やっと終わった」と、ホッとしているような印象です。アリゾナ州では熱烈なトランプ支持者が多いので、迂闊に大統領選の話はできないのが本音です。

まとめ

以上、「アメリカ大統領選・民主党バイデン陣営が勝利宣言で何を語ったのか?」でした。

ひとまず、2020年の大統領選はバイデン陣営の勝利となりました。しかし、トランプ陣営による「敗北宣言」がなされていないことから予断を許さない状況が続いています。

トランプ陣営や支持者らが諦めていない様子を見ると、バイデン氏とハリス氏が演説で語ったような「結束」や「可能性」は、そう簡単には実現しそうにないと痛感します。勝利宣言演説で語られたことが、いまのアメリカからは懸け離れた内容だったと感じた人も多いでしょう。

本記事は、2020年11月13日時点調査または公開された情報です。
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