はじめに
2020年12月2日、アメリカのトランプ大統領は自身のフェイスブック上に46分間におよぶ動画メッセージを投稿しました。
この動画では「大統領選の不正について」具体的にどのようなことが行われ、なぜ法廷闘争を続けているか、そしてアメリカの選挙制度がいかに不完全で不平等なものかを国民に説明する内容になっています。
トランプ大統領は動画の冒頭で「これまで実施してきた演説の中で最も重要な演説になる」と述べており、今回の46分間にも及ぶメッセージが大きな意味を持つことを強調しました。
一方で、アメリカの多くのメディアは今回の動画投稿を報じていません。日本のメディも同様で、NHKや日本経済新聞でさえも取り上げていません。トランプ大統領による渾身のメッセージを報道しないことは、大統領選の結果以上に大きな波紋を呼ぶかもしれないとされています。
そこで今回は、トランプ大統領が主張する最も重要な演説の内容、そしてメディアや国民の反応から透けて見えるアメリカの問題について解説します。
▼参考URL:トランプ大統領、選挙後初集会 改めて不正訴え(2020年12月6日)(youtube)
https://www.youtube.com/watch?v=WwWH4zWjZTI
▼参考URL:トランプ大統領の動画メッセージ(facebook)
https://www.facebook.com/DonaldTrump/videos/376615900112093
アメリカのトランプ大統領、動画投稿の背景と狙い
今回トランプ大統領が動画を投稿した背景には、不正選挙、アメリカ国民の不満払拭、法廷闘争に対する共和党内部からの批判回避、そしてトランプ支持者に対するアピールなどがあると見られます。
なかでも「不正選挙」に対するメッセージに重点が置かれており、動画の内容を総括すると「アメリカ国民は仕組まれた不正選挙をよく考えるべき」という内容になっています。つまり、トランプ大統領は動画を通じて「本当のところ」を知ってほしいと訴えたのです。
しかし、トランプ大統領や共和党に批判的なことで知られるCNNは、今回のメッセージを「嘘」や「(主張は)危険な領域」などと報じており、トランプ大統領が本当に訴えたいことを湾曲して報道している始末です。(一切報じないメディアがほとんど)
トランプ大統領は動画のなかで「大統領選の勝ち負けのためではない」や「負けるなら正々堂々と負けたい」と述べており、劣勢な状況から挽回しようとするためではなく、あくまでもアメリカの大統領選で不正や捏造が起き「仕組まれた政治」が存在することを国民は知るべきだと強調したのです。
アメリカのトランプ大統領、動画の概要とメッセージ
トランプ大統領は動画のなかで、具体的にどのような不正が行われたかについて、以下のような点を挙げています。
・ひとりに対して複数の投票用紙が配布され、その多くは民主党支持者だった
・故人や非市民権者に投票用紙が配布された
・開票時に有効票の是非を確認していない
・非有権者に偽名で投票するよう指示があった
・激戦州の郵便投票拒否率が異常に低い(2020年=0.2%/2016年=6.4%)
・集計システムの改ざん
・署名確認システムの整合性レベルが低く設定してあった
・第三者の立会いがない開票作業
動画のなかでは「集計システムの改ざん」について具体的に触れられています。例えば、激戦州のひとつであるジョージア州やミシガン州で採用されているドミニオン社(Dominion Voting Systems Corporation)の電子投票システムが、バイデン氏を25%多く、トランプ大統領を25%少なく集計する設定になっていたとしています。
トランプ大統領は同社の機械にあるダイヤルやチップを交換するだけでこれが実現できると指摘しており、当初圧倒的に優勢だったトランプ陣営が、最終的にはバイデン氏に僅差で負ける事態に繋がったと主張しました。
実際に、ミシガン州の集計において、ある時点で突如149,772票がバイデン氏に追加されたことをグラフで示しながら説明しています。また、システムエラーにより、トランプ大統領の60,000票がバイデン氏に移行したことも指摘しました。
今回の動画では触れられていませんが、ドミニオン社は過去に民主党のクリントン氏の財団に献金していることが判明しており、反トランプ派として知られる世界的な資産家ジョージ・ソロス氏と関連がある団体とカナダのオフィスを共有していたことも分かっています。(ソロス氏の側近が勤務している)
また、同社が使用するサーバーはスペイン企業のサイトル社(Scytl)が管理しており、一度アップロードされたデータの追跡や集計プロセスを確認することは不可能とされています。つまり、アメリカ大統領選の投票結果は反トランプ派の企業や関係者によって、アメリカ人の手が届かない海外で集計されていることを意味します。
しかし、今回の主張はいずれも立証されておらず、トランプ陣営がこれまでに起こした多くの裁判においても「証拠がない」ことを理由に退けられています。
この主張に対して、反トランプの人たちは「トランプ陣営による嘘」や「負けを認めないための陰謀説」などと一蹴しており、トランプ大統領の主張は虚しく響いている状態です。
また、追い打ちをかけるようにして、トランプ大統領の腹心と言われているバー司法長官でさえも「選挙結果を覆すような大規模詐欺は見たことがない」としたうえで「国土安全保障省と司法省を調査したものの(大統領の)主張を立証するものは見つかっていない」とコメントしています。
トランプ大統領のメッセージを「立証されていないから」を理由に無視するのか、もしくは「主張に可能性を感じて正当な選挙だったのかを明らかにする」か、アメリカ国民は問われている状態です。
トランプ大統領の動画の問題点
今回の動画に関連する主な問題点は3つあります。
問題点1:不正選挙の可能性
トランプ大統領が主張した内容は立証こそされていないものの、検証されるべきことが多いのも事実です。
とくに、電子投票システムによって票が大きく動いたこと、電子投票システムを提供した企業と民主党の根強い関係、そして共和党に不利に働いた杜撰な開票作業は「不正選挙の温床」と指摘されても仕方がないでしょう。
トランプ大統領は動画のなかで「不正票が排除されれば激戦州で簡単に勝つ。投票当日の午後10時時点のように、勝利に必要な票の数倍も票を獲得したことを証明する」と述べています。
トランプ大統領は「アメリカ人の大半が疑いもしない不正選挙の可能性」を強く訴えましたが、メディアの意図的とも言える報道制限によって、黙殺されているのが現状です。
問題点2:トランプ大統領の主張に耳を貸さない国民の姿勢
トランプ大統領はかねてから、自身が当選した2016年の大統領選の前からメディアによる偏向報道や攻撃を受け続けてきたと主張しており、アメリカメディアによる過度な偏向報道によって、アメリカ人の中に「トランプ=悪」というイメージが定着したことを問題視していました。
この結果、若者やリベラル層を中心にして「トランプ大統領を拒絶する仕組み」が出来てしまい、トランプ大統領がどんなに不正選挙や仕組まれた政治を主張しても、誰も耳を貸さない事態になってしまったのです。
仮に、トランプ大統領の主張が正しかった場合、誰も耳を貸さなかったことは「不正を許す」ことに繋がります。特定の大統領を支持するかしないかよりも、話を聞かないアメリカ人の偏った思考が問題と言えるでしょう。
これを象徴することとして、トランプ大統領が動画を投稿したFacebookやTwitterは即座に、同投稿に対して警告ラベルとバイデン氏当確や不正はなかったことを示す記事へのリンクを貼ってユーザーに注意を促しています。
Twitterは、バイデン氏が勝利宣言して以降、トランプ大統領が不正選挙に関する投稿をする度に警告ラベルを貼っており、メディアだけでなくSNSでも「トランプ封じ」が行われています。
問題点3:報道しないメディア
今回の動画で最も問題なのが「メディアの対応」です。動画が公開された後、多くのメディアは大々的に報道しませんでした。
どのメディアも「大統領選はバイデン勝利」で、すでに決着していると断定しており、バイデン氏の勝利宣言以降はトランプ大統領の動向を報じない傾向が続いています。(トランプ大統領の任期は2021年1月20日正午まで)
トランプ大統領が今回の「最も重要な演説」をフェイスブック上に投稿した理由は、テレビの生放送や収録ではメディアが意図的に編集してしまうことを懸念したからと見られます。
事実、11月5日のホワイトハウスでの記者会見上で不正選挙の可能性を訴えた際にはNBC、ABC、CBS、CNNなどのアメリカ主要メディアはこぞって会見の中継を途中で打ち切っています。
NBCのレスター・ホルト氏は「大統領が虚偽の発言をしたため打ち切らざるを得ません」とし、視聴者に注意を呼びかけました。また、CNNのアンダーソン・クーパー氏は皮肉を込めて「これがアメリカ大統領です。もがいているカメのように見えました」とコメントし、トランプ大統領を公に批判しています。
このような偏向報道はアメリカに限ったことではありません。日本のメディアもアメリカ同様に今回の動画を大々的に報じることなく、何もなかったようにしています。
今回の動画についてNHKは「次期就任式への参加は不透明」という主旨がずれた内容で報じ、日本経済新聞の公式サイトでは取り上げることさえしていません。
知らないが故に、日本人も大半のアメリカ人と同じで「不正選挙なんてあり得ない」や「トランプ大統領=悪」という偏った見方をしているかもしれません。
トランプ大統領の今後の動き
トランプ大統領は動画のなかで「いまさら選挙結果を覆すことは遅すぎるという声もある。しかし、時間はたくさんあり、不正選挙だったことを証明する。最高裁も理解してくれると願っている」と述べ、引き続き争う姿勢を見せています。
また、影で不正選挙に関与している人たちを意識した発言として「メディアや判事らは誰が本当に勝利したかを知っている。しかし、それを受け入れていない」と釘を刺す場面もありました。
12月8日には各州の選挙人確定期限を迎え、12月14日には選挙人投票が予定されています。いまのままでは選挙人投票でもバイデン氏が勝利することは確実と見られており、トランプ陣営が結果を覆すことは難しいでしょう。
トランプ大統領は、ホワイトハウスで開催されたパーティーの場で「素晴らしい4年間だった。さらに4年続けるよう取り組んでいるが、そうでないならまた4年後に会おう」とし、2024年の大統領選出馬を意識した発言をしています。
また、不正選挙との戦いのためとして支持者らからすでに170億円の政治献金を集めており、法廷闘争にかかる資金、そして次期大統領選に向けた資金として使われる見込みです。
2021年1月20日の次期大統領就任式までの間は「法廷闘争の行方」と「2024年の大統領選に向けた動き」に注目です。
まとめ
以上、「これでいいの?誰も報じないトランプ大統領による最も重要な演説」でした。
トランプ大統領による「最も重要な演説」は、意図的な操作をしたメディアや、偏向思考のアメリカ国民によってなかったことにされそうです。トランプ大統領の主張に基づくと、アメリカは民主主義や正義をうたう国でありながら、一方では不正や仕組まれた政治を水面下で動かしている国ということになります。
また、このような事態を一切報道しない日米メディアの責任は重いと言えるでしょう。トランプ大統領が動画の冒頭に述べた「これまで実施してきた演説の中で最も重要な演説になる」という意味をどこまで真剣に捉えられるかが問われています。
参考URL
NHK|次期就任式への参加は不透明
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201203/k10012743371000.html
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