【アメリカ2020選挙人投票後】注目の選挙人投票を終えた大統領選の様子

2020年11月に行われたアメリカ大統領選挙、バイデン氏が勝利宣言をしたもののトランプ大統領は敗北を認めていません。そんななか、同年12月14日に「選挙人投票」が実施されました。

本記事では、選挙人投票を終えた大統領選の様子について、アメリカ在住の日本人にレポートいただきました。


はじめに

2020年の大統領選はバイデン氏の当選が確実と見られていますが、トランプ大統領は敗北を認めずに不正選挙を訴え続けています。

そんななか、12月14日に「選挙人投票」が実施されました。選挙人投票は各州の選挙人(合計538人)による投票で、従来であれば形式的なもので注目されることはありません。

しかし、今回の大統領選では、民主党のバイデン氏を支持すると見せかけて共和党のトランプ大統領に投票する「造反選挙人」が出てくるとして注目されていました。また、造反選挙人によって大統領選の結果が覆る可能性もあったことから、これまでにない雰囲気での開催になりました。

今回は、選挙人投票の概要をはじめ問題点、選挙人投票後の様子などについて解説します。

アメリカ大統領選挙における選挙人投票の概要

選挙人投票を理解するためには、大統領選の法的な仕組みを理解する必要があります。

アメリカ大統領選挙の仕組み

アメリカの大統領選は、一般投票で決着するかのように思われていますが、実際は選挙人による投票で決着する「間接投票」です。

2020年の大統領選で例えると、有権者は11月3日に州ごとに開催された一般投票で「州ごとの選挙人の枠」の獲得を目指して投票します。この際、投票用紙には「トランプ/ペンス」または「バイデン/ハリス」と書いてあるため、あたかも大統領と副大統領を直接選ぶかのように見えます。

しかし、実際には「トランプ/ペンス」または「バイデン/ハリス」のいずれかを支持することを表明している選挙人の枠を獲得するための投票にしか過ぎません。(一般投票は大統領選の結果に直接影響しない)

大半の州では「トランプ/ペンス(共和党)」または「バイデン/ハリス(民主党)」のいずれかで得票数が多かった方が、あらかじめ各州の人口に応じて割り当てられた「選挙人の枠」を総取りできる仕組みです。(実際の選挙人は12月8日までに各州議会が選ぶ)

一般投票の結果によって「各州の選挙人獲得数」が判明します。選挙人は合計538名と決められているため、全米で過半数の270名を獲得した候補者が「仮の勝利」となります。(通常ならこの時点で両陣営から勝利宣言または敗北宣言がなされて決着する)

そして、約1ヶ月後の12月14日に選挙人投票が実施され、翌年1月6日に連邦議会で開票されて「正式な勝利」が決まる仕組みです。正式決定した後、1月20日に就任式を迎えます。選挙人投票は一般投票の結果がそのまま反映されるため、結果が変わることはありません。


アメリカの大統領選は、各州の選挙人枠を争う一般投票ばかりが注目されがちですが、あくまでも選挙人投票によって決着することを覚えておきましょう。

アメリカ大統領選挙における選挙人投票制度の問題点

アメリカの大統領選制度は、有権者の認識と法的な制度の間に大きな隔たりがあることが特徴です。

有権者は一般投票によって正副大統領を直接選んだ気持ちになっていますが、法的には一般投票の結果は関係なく、あくまでも選挙人投票によって決着する仕組みになっています。

この複雑な仕組みは、候補者(とくに敗者)からすれば「挽回の余地を残している」ことを意味します。

事実、トランプ大統領は一般投票の結果、選挙人獲得数でバイデン氏に劣ったものの、大統領選の複雑な制度を巧みに利用して「一般投票での不正行為主張」、「激戦州の結果を無効化する訴訟」、「選挙人選出時の根回し」、「議会投票への持ち込み」などを実行しました。

いずれも不発に終わっているものの、法的には問題がない行為のため、いかに追及点が多く、抜け穴だらけの制度になっているかがよく分かります。

トランプ陣営がここまで抵抗を続ける理由のひとつは、アメリカの大統領選制度に挽回を可能にするたくさんの盲点があることが挙げられます。言い換えれば、負けを覆す余地が残された不完全な制度と言えます。

今回の大統領選のおかげで、不完全な大統領選制度が問題視されたことは「怪我の功名」だったかもしれません。(制度改正は憲法改正を伴うため実質的に困難とされている)

2020年の選挙人投票の結果

2020年の大統領選における選挙人投票は12月14日に実施されました。正式な結果は2021年1月6日の連邦議会による開票まで待つ必要がありますが、事前の予想通りバイデン氏が306人、トランプ大統領が232人という獲得数になったと見られています。

トランプ陣営は、激戦州のジョージア州などを中心に、共和党寄りの選挙人を選ぶように州議会に圧力をかけ「造反選挙人」を確保しようと試みましたが、期待したような造反はなかったようです。

最高裁による訴訟で逆転を狙ったものの実現しなかったトランプ陣営は、選挙人投票による結果の覆しを図りましたが、いずれも実現しませんでした。

11月下旬、トランプ大統領は(選挙人投票で負ければ)ホワイトハウスを立ち去るかという記者の質問に対して「そうするだろう」と述べています。一方、12月13日のテレビインタビューでは「まだ戦いは終わっていない」とコメントしており、最後まで争う姿勢を見せています。

アメリカ大統領選挙における選挙人投票後の周囲の反応

選挙人投票後、アメリカの政界ではトランプ大統領周辺を中心にして様々な動きを見せています。これらの動きからトランプ陣営の敗北は濃厚という姿が透けて見えます。

バー司法長官の辞任

選挙人投票当日、トランプ大統領は自身の腹心としてきたバー司法長官が辞任することをツイッター上で発表しました。バー司法長官は「選挙結果を覆すような証拠は見つかっていない」と、不正選挙を否定するような発言をしたことでトランプ大統領との間に溝が生じていました。

ロシアゲート事件の際には、トランプ大統領のことを「推定無罪」とした経緯もあり、両氏の関係は強固なものとされてきましたが、大統領選を機に決裂したかたちです。トランプ寄りだったバー司法長官が辞任したということは、トランプ陣営の法的な後ろ盾を失ったことを意味します。


共和党トップのマコネル議員が祝辞

12月15日、共和党トップで政界の重鎮であるマコネル議員がバイデン氏に祝辞を伝える電話をしたことが明らかになりました。これまでマコネル氏は、トランプ大統領による不正選挙の主張を援護する立場をとってきましたが、選挙人投票をきっかけに立場を変えています。

共和党トップがバイデン氏の勝利を認めたことで、共和党議員らの間でも敗北を認める意見が広がっており、トランプ大統領が共和党内で孤立する状況になりつつあります。

マコネル氏とバイデン氏は政党こそ違えど長年の交流がある重鎮同士で、ふたりの関係性はバイデン政権が円滑に進むための不可欠な要因とされてきました。今回のマコネル氏の祝辞は「共和党の敗北」を象徴するかのように見られています。

まとめ

以上、「注目の選挙人投票を終えた大統領選の様子」でした。

今回の大統領選は異例中の異例とされており、形式的な選挙人投票までも注目される事態になりました。選挙人投票において番狂わせこそ起きませんでしたが、大統領選制度の不完全さを露呈したことも事実です。

バー司法長官の辞任、マコネル氏による祝辞など、トランプ大統領に近い人物の間で敗北モードが色濃くなってきました。孤立状態にまで追い詰められたトランプ大統領が2021年1月6日の選挙人投票開票日までに秘策を打ち出せるかに注目です。

同時に、2024年の大統領選出馬に向けた準備も進められており、共和党支持者らからすでに220億円の献金を集めたことが分かっています。選挙人投票の結果だけでなく、2024年に向けた動きにも注目しましょう。

本記事は、2020年12月22日時点調査または公開された情報です。
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