質問)公務員は人手不足と聞きますが、実際はどうですか?
「ニュースなどで、公務員の数は多い!と、批判するような内容を見かけることがあります。
しかし、実際に市役所で働いている知り合いに話を聞いてみると『現場は人手が足りておらず、回っていない仕事がいくつもある』と言っていました。
イメージとは違うのですが、本当のところはどうなんでしょうか?」
普通に暮らしていると、市役所に行くのは住民票の写しや戸籍謄本の交付を受けるときぐらいですよね。
具体的に市役所の職員がどんな仕事を行っているのかという部分は、知らないことの方が多いかと思います。
実際、今の市役所は人手が足りていないのでしょうか?
もしそうだとしたら、どんな影響があるのでしょうか?
市役所で働いた経験を持つ、元市役所職員の井上さんに答えてもらいましょう。
回答)実際に市役所の職員数は減ってきています。
冒頭でも書いていた「公務員をもっと減らせ!」というご意見は、私自身働いていたときにも、たびたび耳にしたことがあります。
ですが、市役所の職員数はかつてに比べると、大幅に減ってきているんですよ。
総務省が出している「地方公務員数の状況」を見てみると、平成6年度の約328万人をピークに令和2年度には約276万人まで減少し、この間に地方公務員の職員数が50万人以上減っていることがわかります。
▼参考URL:総務省|地方公務員数の状況(外部サイト)
実際に私の勤めていた市役所でも、最も職員数が多かった15年前と比べると6割程度の人数になってしまったようで、仕事が回っていない部署が多々ありました。
また、職員数が減っているだけでなく、「権限移譲」の観点から今まで国や都道府県が行っていた業務を、市で行うようになってきているため、職員の作業負担は確実に増えています。
他にも、市役所の職員数が減ってくると、さまざまな点で悪影響が出てしまうんです。
市役所の職員数が減るとどうなる?
職員数が減ることでどんな影響があるのかを具体的に見ていきましょう。
行政サービスの質が低下する(市民目線)
例えば、道路が陥没している、街路灯の電気が消えているなどの連絡があっても、職員数が少ないと、すぐに対応できません。
また、市役所に相談に行っても「今日は担当がおりません」と言われて対応してもらえない、ということも起こり得ます。
さらに、長年勤めている人が減ってくるので、ノウハウが引き継がれないというデメリットもあります。
このように職員が減ってくると行政サービスの質が低下するので、住んでいるまちが暮らしにくくなってしまうわけですね。
1人が担当する業務が増える(職員目線)
今まで2人で取り組んでいたような仕事を、1人で回す必要が出てきます。もちろん業務が効率化されたわけではないので、労働時間は倍増しますよね。
また、人員の削減に合わせて、市役所では定期的に部署の統廃合が行われます。
今まで全く違う業務内容だった部署が1つになることもよくあり、急に畑違いの業務を担当しなければならなくなった、ということが起こってしまうのです。
たくさんの分野にまたがる業務を1人で担当すると、大量の案件を“さばく”だけになってしまい、どうしても1つ1つの仕事のクオリティが下がります。
市役所内の雰囲気が悪くなる(市民・職員目線)
少ない人員で仕事を回していると、心に余裕がなくなってきます。そのため、どうしても市役所内の人間関係がギクシャクしてくるのです。
その雰囲気は職員間だけでなく、市民の方の対応をする際にも影響が出てしまいます。暗い雰囲気や、イライラしている職員さんに対応してもらうのは少し嫌ですよね。
まとめ
市役所職員の数は実際に減ってきています。そのため、一人一人の作業負担が増えているのも事実で、行政サービスの質の低下につながりかねません。
ただし、少子高齢化問題や災害対策など、今後の行政が抱える問題は多く、職員数が減っているのに仕事は増える、という矛盾と向き合っていく必要があります。
縦割りと言われた役所の仕事を改め、効率的なチーム作りを考えるなど、“組織”としての働き方を考え直すことが必要でしょう。
本記事は、2021年4月30日時点調査または公開された情報です。
記事内容の実施は、ご自身の責任のもと、安全性・有用性を考慮の上、ご利用ください。