わかる政治経済シリーズ 第19回

法の下の平等における「憲法14条」について

法の下の平等シリーズ、今回は、「憲法14条とは一体どのようなものでしょうか。」について説明します。


憲法14条とは?

日本国憲法は第14条に次のように定めています。

第十四条

1)すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

2)華族その他の貴族の制度は、これを認めない。

3)栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。

憲法14条は平等権に関する規定です。

これは、日本国民であればどのような人であっても制度上差別されることなく、平等に扱われる権利があるという理念が示されています。

二項は「貴族制度の廃止」、三項は「栄典」についての規定をしています。

憲法14条を理解する上で、5つのポイントについて解説します。

ポイント1:人種・信条・性別・社会的身分・門地による差別の禁止とはどういうことか?

「人種・信条・性別・社会的身分・門地による差別の禁止」とは、人種が何であっても、どのような宗教上・政治上の思想を持っていても、どの性別であっても、社会的地位がどのようなものであっても、家柄がどのようなものであっても差別されることなく、等しい扱いを受けるということです。

人種差別や性差別、宗教の違いによる差別は世界中で根深い問題ですが、憲法14条はそのような差別を禁止し、誰しも平等であるという原則を掲げています。

ポイント2: 合理的な区別とはどういうことか?

しかし、「平等の原則」とは、どのような状況でもどのような人であっても形式的に一切の区別なく扱うというものではありません。現実的には、個人にはそれぞれの環境や能力など様々な違いが存在し、全員を一律に等しく扱うことが必ずしも公平なこととは言えない場合もあるからです。

たとえば、仮に「全国民に対し月5万課税する」という制度があった場合、月収が100万円の人も20万円の人も収入がない人も5万円支払うことになります。たとえ徴収される金額は同じでも、それぞれに対する負担はまったく異なってくるため、これでは実質的には不平等であると言えます。

また、まだ判断力が十分ではないと考えられる年少者を保護するため一部の権利に制限を加えたり、現状の社会制度上不利益を被っていると考えらえる社会的弱者には一定の優遇枠を設けたりする場合があります。

特定の条件の人を特別扱いするのでは平等の原則に反するのではないか?と思われるかもしれませんが、これは結果の平等を実現するための措置であり、このように正当な理由のもと取扱いに差を付けることを「合理的な区別」と呼びます。


「合理的な区別」にはどのようなものがあるか、以下で具体的に紹介していきます。

ポイント3: 年少者の場合

「合理的な区別」が行われる例の一つに年少者があります。独立した個人である以上、年少者も当然平等に尊重されるべき存在ではありますが、年少者はまだ知識や判断力が十分ではなく、心身ともに未熟な存在と考えられます。そのため、社会的に保護される必要があり、成年とは異なった扱いを受けます。

具体的には、年少者は飲酒や喫煙が禁じられていること、選挙権がないこと(参政権の制限)、一部の財産行為が制限されることなどが挙げられます。未成年者が犯罪を犯した場合、特別に少年法が適用されることも「合理的な区別」にあたります。

ポイント4:女性の場合

女性に対する「合理的な区別」としては、「母性保護規定」というものがあります。これは、女性の妊娠・出産機能を考慮し女性を保護するための措置で、産前産後の休業、生理休暇など女性特有の身体的特徴に配慮したものとなっています。

そのほか、様々な問題から男性と比較して社会進出しづらく、能力があるにもかかわらず社会での活躍の場が十分に得られないなどの不公平を解消するために、公共機関や企業における雇用について一定の採用枠を設けて、実質的な平等の実現を図る場合もあります。

ポイント5:累進課税制度とは?

「累進課税制度」とは、課税対象額に応じて税率を変化させる制度のことです。日本の国税では所得税、相続税、贈与税の三つに採用されています。

課税額に比例して税率が上がるため、所得の少ない人は低い税率で済み、所得の多い人の負担は大きくなります。これは貧富の格差を縮小させ、公平な社会を実現することが狙いです。

まとめ

「憲法14条」は差別を禁じ、あらゆる個人を平等に尊重するための理念です。ただ、どのような人も形式的に均一に取り扱うのではなく、様々な個人差に配慮した合理的な区別を行うことは「平等の理念」に反するものではないと考えられています。

以上、憲法14条の概要を解説しました。

本記事は、2023年2月7日時点調査または公開された情報です。
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