アメリカの社会状況2022

アメリカの核シェルター状況について(2022年11月情報)

ここ数年、北朝鮮による度重なるミサイル発射や、ロシアのウクライナ攻撃など、国際的な緊張が高まるなか、アメリカでも「核攻撃に備えたシェルター」を個人宅に備え付けたいと思っている人が増えてきているようです。

そこで今回は、アメリカの核シェルター状況をお届けします。


アメリカには有事の際に避難できる公共の核シェルターがない?

もし米中露が現在保有するような大陸間弾道ミサイルが都市に落とされたら、たとえシェルター内に避難していたとしても、その都市に住んでいる人が生き残るのはほぼ不可能です。しかし爆心地から遠く離れた場所なら、放射性物質を含んだ粉塵を避けられる放射性降下物シェルターの中に迅速に避難できれば、生存の可能性も上がり深刻な放射能障害から免れることもできるかもしれません。

米ソの冷戦状態が続いた1950年代から60年代にかけて、アメリカには国家的な放射性降下物シェルター・プログラムがありました。このプログラムによって、映画館や銀行、大学など、公共施設の地下には放射性降下物シェルター(核シェルター)がたくさん作られました。

公共施設以外にも、都市部に建てられたアパートには放射性降下物シェルターが多く設置されていて、ニューヨークやワシントンDCなどその時期攻撃の的となりそうな町の建物の壁に、今でも「Fallout Shelter」(核シェルター)の看板を町中いたる所で見つけられます。

しかし1970年代の初めにプログラムへの資金援助はカットされ、計画も中止になりました。その後シェルターはそのまま放置されるか、ランドリールームや物置など何か他の用途で使われているかで、冷戦時に作られたシェルターは現在、緊急時の避難場所には使えそうにありません。

ビルの壁に見られる古い核シェルターのサイン

》参考URL:https://www.primalsurvivor.net/wp-content/uploads/2022/06/fallout-shelter-in-public-building.jpg

オハイオ州の高校校内に作られ、放置されたシェルター

》参考URL:https://www.primalsurvivor.net/wp-content/uploads/2022/06/fallout-shelter-in-columbus-school.jpg

ドアの上に、核シェルターのサインがあります。

シェルターの種類とコスト

公共の施設に頼れないなら、自分でDIYしてしまうのがアメリカ人。アメリカ・テキサス州ダラス郊外に拠点を置く、アトラス・サバイバル・シェルターズ(https://atlassurvivalshelters.com/)では、家庭用から軍隊仕様のものまで多種多様なサバイバルシェルターを取り揃え、アメリカ国内以外にも世界30か国以上に出荷しているそうです。

一口にサバイバルシェルターといっても、様々な種類や用途があって、値段も大きさや機能によって大きく変わります。まず一番手軽に買えるのは、防空壕や地下室タイプのシェルターで、安いものだと約2万ドル(1ドル148円換算で約296万円)で購入可能です。しかしこのクラスのシェルターは本来竜巻などの自然災害から身を守るように作られているので、放射能被曝防止装置は搭載されていません。


いわゆる日本で核シェルターと言われているものは、アメリカではフォールアウトシェルターと呼ばれます。ファミリーサイズのものは、床面積が200平方フィート(18.6㎡で約11畳の広さに相当します)で、価格は6万ドル(約880万円)位で購入できます。

有害な化学物質や生物学的な攻撃から人体を守るため、外装に密度の高い素材が何層にも重ねられていて、放射線被曝を防ぐための水と空気のろ過装置など、色々な装備がついたフォールアウトシェルターですが、居住空間にトイレやお風呂など水回りの設備がついていません。滞在中には使い捨て簡易トイレを使わなくてはならないので、最長で2週間くらいしか滞在できません。

長期的な滞在が可能な核シェルターは「ドゥームズデイ・バンカー」と呼ばれ、自家発電式で、居住スペースの他に自給自足のための水耕栽培システムや温室、さらには映画館やプールといったものも設置できるタイプもあり、制作費が何億円もかかる場合があります。

ウェストバージニア州のホワイト・サルファー・スプリングスにある、歴代大統領が避暑地として利用したことで名高い高級ホテル「グリーンブライヤー」の地下にある核シェルターは、地下3階建てで、居住スペースのほか、会議室や食堂、研究室、診療所、放送スタジオまで完備され、1100人が2ヶ月以上暮らすことが可能だそうです。(https://wvtourism.com/today-show-greenbrier-resort-bunker/

アメリカ人はシェルターについてどう考えているのか

アメリカ人に核シェルターの必要性を質問すると、大体の場合、核爆弾の脅威は過去のもの、1960年代の冷戦時代に終わっているという答えが返ってきます。過去2回の大戦で自分の国が戦地になっていないアメリカ人にとって、本当にそう思っている人がたくさんいると思います。

》参考URL:https://www.primalsurvivor.net/wp-content/uploads/2016/03/bomb-shelter-cold-war-1.jpg

しかしその一方で、核戦争が身近で起こる可能性を考え将来に備えて計画を立てるべきだ、と思っている人も少なからずいます。そう言った人達の中には、万が一に備えて自宅に家庭用核シェルターを設置しようとしている人がいるはずです。

しかし自宅に核シェルターを作るような人は、必ずと言って良いほど自宅にシェルターがある事を隠します。その理由は、本当にシェルターが必要な事態が起こった時、近所の人が押し寄せてくるのを防ぐためです。

ジョージア州にある1750万ドル(約26億円)のシェルター

》参考URL:https://www.primalsurvivor.net/wp-content/uploads/2016/03/17500000-survival-shelter-in-georgia.jpghttps://www.primalsurvivor.net/wp-content/uploads/2016/03/17500000-survival-shelter-in-georgia.jpg

現在は、ひとり40ドル(約6000円)でツアー見学できる、グリーンブライヤーリゾートホテルの地下に作られた、地下3階建ての超巨大シェルターも、冷戦当時から1992年まで30年余りの間、ホテル従業員にすら存在を明かされず、秘密にされ続けてきました。(https://wvtourism.com/today-show-greenbrier-resort-bunker/

まとめ

ある日突然、核戦争が起こり、核爆弾が飛んできて、自分の家の近くに落ちる可能性は低いですがゼロではありません。世界中で緊張が高まる今、世界的億万長者や国の重要なポストについている政治家の中には、秘密裏に自宅敷地内に豪華な地下シェルターを備え付けている人もたくさんいるはずです。

幸いなことに、一般家庭用の小型シェルターを購入すれば、自分専用の地下シェルターを作るのも比較的簡単にできます。もし費用の問題を考えなくてもいいのなら、有事の際に短期間、安全に身を隠せるくらいのシェルターを自宅に作ってみたいです。

参考資料サイト

Fallout and Nuclear Bomb Shelters Near Me


Where are Arizona’s nuclear bomb shelter?

Renovating a fallout shelter

家庭用核シェルター

本記事は、2023年3月4日時点調査または公開された情報です。
記事内容の実施は、ご自身の責任のもと、安全性・有用性を考慮の上、ご利用ください。

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