【学校の現場】普通級へのねじ込み?我が子の発達障害を認められない親たち

通常の発達をする定型発達児の一方で、先天的な発達障害を持つ子供たちもいます。発達障害を持った子供たちだからこそ適切なケアをするべきですが、我が子の発達障害を認めず、普通学級へ入れるなど不適切な行動をする発達障害児を持つ親の行動が社会問題になっています。今回は、そのテーマについてまとめました。


今は早期発見も多い、発達障害とは

色々なパターンのある発達障害 大きく3パターン「ASD」「ADHD」「LD」

「発達障害児」とは、定型発達とは違う特徴を持つ発達をする子供の事です。

大きく分けてASD(自閉症スペクトラム・アスペルガー症候群)、ADHD(注意欠陥多動性障害)、LD(学習障害)の3パターンの発達障害があります。多動や衝動性の有無、知的障害の有無などで、色々な型も存在します。また、ADHDと自閉症スペクトラムの併発など、二つの発達障害の特徴を持っている場合もあります。

また、障害の程度も様々で、定型発達と発達障害の境界線である「グレーゾーン」と呼ばれる発達をする子供もいます。

先天性で原因は不明

以前は、自閉症は母親のかかわり方が悪い、本人が人見知りの為に自閉症になった、など発達障害は後天的な要因から発症する物とされていました。けれども、今では、発達障害は先天性の脳障害で、遺伝性はあるとされていますがはっきりした原因は不明となっています。つまり、発達障害は母親のしつけや本人の性格の問題で発症する訳ではなく、生まれ持った特性です。

始めは親の違和感などで分かる事も

外見的・内面的に確定している先天性の障害を持って生れて来た場合を除き、人は皆最初は同じ赤ちゃんです。ところが、育てている子供が発達障害児だった場合には、他の赤ちゃんとは違う違和感を持つ事があります。例えば、目が合いにくい、表情が乏しい、抱っこを嫌がる、夜泣きの頻度が高すぎるなどです。

成長するにつれて、発達障害の特徴は顕著になってきます。言葉の遅れや極度の偏食、砂や水に触れるのを嫌がる、特定の衣服しか着れないなどの感覚過敏、数字や文字に対する異常なこだわりなどです。

発達障害と診断が下りるのは、ある程度子供の年齢が高くなった時です。赤ちゃんや幼児の場合、親が違和感を感じていても、定型発達の子供の特徴や行動も多い為、発達障害と判断しにくい為です。けれども、子供が成長して発達障害の診断が下りた時には「やっぱり赤ちゃんの時から育てにくいと感じていた」と思う親は多いです。

自治体の検診で様子見→親子教室や療育などへの道も

子供の発達障害が疑われる時は、親が違和感を感じて小児神経科などを受診するパターンの他にも、自治体で行っている健診で判明する事もあります。

自治体によって異なりますが、乳児の場合には1か月、3か月、6か月、10か月検診、その後1歳半、2歳半、3歳半健診を実施しています。乳児の場合は産婦人科や小児科で、1歳半以降は自治体の保健センターなどで集団検診を行う場合が多いです。

乳児の検診では、健康面や股関節の開きなど身体機能面だけでなく、定型発達の時期に沿った発達をしているのかどうかをチェックします。例えば、首が座ったか、お座りはするか、つかまり立ちはするか、ハイハイはするか…などです。もしも、定型発達時期から大幅な発達の遅れがある時には、専門の機関を紹介され、検査などを受けます。例えば、生後半年を過ぎても首が座らない場合には、専門機関で検査を行います。その後、低緊張が発覚し、発達障害である事が分かるのです。

幼児期の検診では、離乳食の状況や、言葉の発達状況、動作の状況などもチェックします。1歳半の時には、保健師の指示通りに指先ができるか、言葉は少しでも出ているかどうかが見られます。また、保健師によるチェックだけでなく保護者が発達に関して不安がある時には、個別に相談もできます。


幼児期の検診の結果、言葉の遅れなど発達障害の可能性がある時には、まず言葉を伸ばすための親子教室などの療育が紹介されます。

発達障害は、適切なケアが必要

発達障害は、先天性の脳障害の為、病気ではありません。その為、治療などを施し、完治する事はありません。けれども、早期に療育を行うなど、適切なケアを行う事によって、発達障害児が持つ生きづらさを軽減してあげる事ができます。

また、発達障害の特徴のひとつに、発達の凹凸があります。定型発達よりも苦手としている事項は多くても、定型発達よりも秀でている箇所もあります。凹凸をできるだけなくすことに加えて、得意としている所をうまく伸ばせば、将来はそれを仕事として生かして生きてく事も十分可能です。その為にも、適切なケアが必要です。

発達障害がクローズアップされたのは、まだ近年です。今子育てをしている親の世代では、発達障害を持ちながらも今の様に早期発見される事は少なく、「ちょっと変わっている子」のまま育てられる事も多くありました。発達障害が判明せず適切なケアを受けずに大人になった場合、どんな仕事をしても続かず、結局ニートや引きこもりになるパターンも多いです。

発達障害が健診などによって早期に判明すれば、早期からの療育を受ける事も十分に可能です。また、なるべく早いうちからの療育がより高い効果を出します。

もしも、自分の子が発達障害かもしれない、と思ったら

育てにくさや、他の子どものとの違いを感じ、もしかしたら発達障害かもしれない、と思う保護者の方もいます。とはいえ、乳児の場合には発達障害の診断もおりにくく様子見になる場合が多いです。

まずは、一歳半健診などの検診を待たずに、育児相談を受けてみましょう。自治体で定期的に行っている育児相談を活用するだけでなく、保健センターでは随時育児相談を受けている場合があります。保育士や言語療法士などの面談を経て、療育施設の紹介などを受けられる場合があります。

育児相談などで、様子見や異常はないと言われても、どうしても発達障害だと思う時には、自分で受診する事もできます。小児科ではなく小児神経科を受診し、発達障害かどうかの診断をプロから受ける事ができます。有名な病院の場合には、なかなか予約が取れませんが、受けてみる事で発達障害がそうでないかの診断が下りて、安心できる場合もありますので、ぜひ活用してみましょう。

我が子はちょっと変わっているだけ!発達障害を認めない親

健診で療育を進められても拒否

発達障害、もしくは発達障害の疑いがある時には早期療育が効果的な事が分かりました。その為、できるだけ早い時期で発達障害を含めて、発達で気になる点がある子供の保護者に対しては、親子教室の紹介などを行っています。また、自分の子供に育てにくさを感じて、自ら診断や療育を求め、発達障害でも定型発達でも、子供にとってベストなケアができるようにする保護者がほとんどです。

ところが、健診で言葉の遅れを指摘され、親子教室の紹介を受けても頑なに参加しない保護者がいます。「男の子だから言葉が遅いだけ」など、我が子の発達障害を認めないのです。ひどい場合だと、「保健師が健診でうちの子を障害児扱いした」などのクレームを自治体の窓口に入れる保護者もいます。

親子教室に参加する事によって、言葉が伸びる子供もいます。その後の療育の為の機関の紹介を受ける事もできます。けれども、親子教室などの参加は強制できない為、保護者が受けないと決めたら、発達障害の疑いがある子は療育を受ける機会を失ってしまいます。

集団生活でトラブルを起こしても変わらない

健診などで指摘されても、親子教室や療育、発達障害の診断が受けられる医療機関などを受診せずに過ごしてきた発達障害の子供は、その後生活の中でも色々なトラブルを起こしがちになります。

幼稚園に入園する前にも、言葉が出ていないのでコミュニケーションが取れない、癇癪がひどい、偏食で食べられるものが少ない、トイレトレーニングが完了しない等の弊害が出てきます。希望の幼稚園があっても、子供の様子を見て入園を断われる場合もあります。

幼稚園に入園しても、集団生活で指示が通らない、周りの子供とのトラブルを起こすなどの問題行動が出てきます。担任や園長から、発達障害の疑いがあるので、専門機関への受診を勧められても「男の子だからちょっとやんちゃなだけです」などで済ませます。

問題は小学校就学時

小学校に入る時にも、発達障害を持っている児童なら、特別支援学級に通うなど進路を決めます。本人の程度によっては、普通学級と特別支援学級を通級で併用する、普段は普通学級で過ごし、特定の教科の時だけ保健室学習をするなどの道も選べます。


この時も、発達障害を認めずに普通学級にねじ込む保護者がいます。小学校の就学時の進路も、発達障害の疑いがある時にも強制はできません。

必要なケアが受けられなかった場合…どうなる?

色々な二次障害を引き起こす

発達障害児が必要なケアを受けていない場合、生き辛い中生活をしなければいけません。自分で学校の支度をするようになり、持ち物も多くなる小学校時代には、物事を整頓して考える事が苦手なADHDの発達障害児は、忘れ物やうっかりミスが多くなります。

また、LDの発達障害児は文字や数字を文字や数字として認識できない障害ですので、そもそも小学校の勉強についていけなくなります。

保護者が発達障害を認めずに普通学級に入れた場合には、定型発達児と同じように行動しなければいけません。ですので、忘れ物やうっかりミスの多さから担任に注意を受けたり、勉強が理解できなかったりすると、本人も「周りの子はできるのに、なぜ自分はできないんだろう」と、自信を失ってしまう事になります。

発達障害に対して、必要なケアを受けられずに発生する弊害の事を二次障害と言います。自信の喪失は、本人の自己肯定感が低くなってしまう二次障害を引き起こします。

周囲とのトラブル

発達障害の中には、他人との共感性が薄いアスペルガー症候群などがあります。その為、適切なケアを受けていない発達障害児は、他人とのかかわり方で周りの友達とのトラブルも起きやすいです。

本人が他人を傷つけてしまう事もあれば、いじめの標的になる事もあります。その結果、不登校などを引き起こし、二次障害の原因にもなります。

本人が辛い思いをする

発達障害でありながらも適切なケアを受けられない事は、発達障害児本人が一番つらい思いをします。上記に上げた二次障害を引き起こす事により、本人の今後の可能性や、人生をつぶすことにもなりかねません。

「うちの子は障害児なんかじゃない!」と認めない保護者もいますが、発達障害を認め、適切なケアを受ける事こそが一番子供のためにもなるのです。

発達障害で、適切なケアが必要な子供がいるのにも関わらず、自分自身の保身のためにそれを認めずに療育などを受けさせない場合は、立派な虐待と言っても過言ではありません。

もしかしたらあの子、発達障害かも…そんな時には?

身内なら進言する、他人なら他の方法を考える

発達障害が疑われる子供がいて、適切な療育などを受けず、かつ保護者もその可能性に気付いていない、もしくは気付いていても適切なケアをしていない場合には、もしその対象が身内の場合には、思い切って進言してみるのも良いでしょう。

友人や幼稚園の他の保護者など、他人の場合には進言する事で保護者同士の溝ができたり、いわゆる逆切れをされてしまう事がありますので、なかなか進言はできません。

幼稚園や小学校に通っている同級生の場合には、担任や園長、教育主任に相談します。とはいえ、敢然と「発達障害が疑われる子供がいる」と言っても動く可能性は少ないです。自分の子供とトラブルに合っている、その子供がクラスでいじめに合っている事を自分の子供から聞いた、など、あくまで保護者として自分の子供にかかわりがある時に相談をしましょう。

近隣住民などで、直接かかわりがない場合には行政の力を頼りましょう。住んでいる地域の児童相談所や民生委員に「発達障害と思われる子供がいるが、保護者は適切なケアをさせておらず、周りに迷惑がかかっている」などです。もちろん、匿名での相談も可能です。

それ以外の保護者の場合には、残念ながらこちらは打つ手はありません。まさに「よそはよそ、うちはうち」です。見て見ぬふりをせざるを得ません。こういった事が無いように、発達障害の子供がもっと適切なケアが受けられる体制づくりを急ぐ必要があるのではないでしょうか。

本記事は、2017年8月30日時点調査または公開された情報です。
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