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消防職員・消防団員の殉職と東日本大震災から得た教訓とは

危険な場所での活動も多い消防職員・消防団員は、自分の命が危険に晒されることも少なくありません。ここでは消防活動に携わる人の公務中における不慮の死、殉職について、そして多くの殉職者や行方不明者を出した東日本大震災から学んだ教訓と今後の取り組みについて解説しています。

2017年12月29日更新

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目次
地方公務員 消防職員の殉職について
万一の消防職員・消防団員の殉職時への対応とは
東日本大震災の教訓を生かして
まとめ
消防職員・消防団員の殉職と東日本大震災から得た教訓とは

地方公務員 消防職員の殉職について

現場活動だけでなく訓練で犠牲になることも

今回触れる消防職員とは、各市町村の消防本部に所属する地方公務員です。消防士、消防官などの呼び方がありますが正式名称は「消防吏員」です。なお、本項では後述する消防団員と区別するため、「消防職員」の表記で統一しています。

消防職員は火災現場での消火活動や災害、事故現場での救助活動や救急活動を行っていますので、火災から逃げ遅れて中にいる、または足場の悪い場所や水中などの危険を伴う場所にいる要救助者を助け出すのも任務のひとつとなっています。

これらの過酷な状況下での消火活動や救助活動は自らの身に危険が迫ることもあり、また、火災や事故、災害への活動時には適切かつ迅速な活動ができるように日々訓練も行っていますが、高所や急流での訓練中に殉職することもあります。例えば、平成29年4月には千葉県君津市所属の消防職員が民家火災で、7月には、京都府城陽市所属の消防職員が、大津市瀬田川にて急流での水難救助訓練中に流され殉職しています。

参考:消防職員の殉職に関するニュースソース
千葉日報
https://www.chibanippo.co.jp/news/national/403856

京都新聞
http://www.kyoto-np.co.jp/shiga/article/20170703000164

万が一救急隊員が負傷者の搬送中に、負傷者からの血液などを媒体にして何らかの感染症にかかり、それが元で亡くなったとしても殉職の一種と考えてよいでしょう。つまり、消防職員とは他の公務員職と比較すると警察官と同様、殉職の危険性が高い職務とも言えるのです。

勇気は無謀、ではない

命の危険も多い職種ではありますが、殉職あっての活動はあってはなりません。全国の消防本部を統括する総務省消防庁でも、まずは消防職員を始めとした全消防職員の安全を確保した上での活動を行うように「消防活動における安全管理について」などの安全管理マニュアルを作成し、現場における安全管理体制の徹底や、ヒューマンエラーや心理的なミスの予防策への対処法についてまとめています。また、公務員採用試験合格後に各市町村管轄の消防学校で行われる初任教育でも、消防活動における安全対策について触れ、殉職の防止のために取り組んでいます。

参考:
消防管理における安全管理について
http://www.fdma.go.jp/ugoki/h1612/11.pdf

また、要救助者の命を救うために自分の命を犠牲にする、または勇気と無謀をはき違え、無茶をした上で命を落とすのも消防活動のプロとしてはあってはいけない事です。とある自治体の消防署の救助隊をまとめる隊長さんに話を伺った所、「自分の命、仲間の命、要救助者の命全てを助けてこそ、本当の救助活動の成功と言える」「無謀な行動よりも慎重な行動を。多少臆病で慎重な方が安全な救助が行える」という言葉をいただいたことがあります。

民間の特別公務員 消防団員の場合

消防団員とは、非常勤の特別公務員職です。普段はサラリーマンや自営業、主婦や学生などの本業を持つ地域に住む18歳以上の人で構成されており、災害発生時には地域の消防組織と連携して消火活動や住民の避難誘導、災害鎮静時の警戒活動などを行っています。また、災害が発生しない時には地域のお祭りなどのイベントでの警戒活動、地域での火災初期消火や応急救護指導、防災のための広報活動などを行っています。

消防団員は、消防職員と比較すると直接的な火元の消火活動や危険な箇所での要救助者の救出活動など、最前線での活動は少なくなっています。ですが、それに付随した逃げ遅れた人の検索や避難誘導を担う立場でもあり、こちらも大災害発生時には自分の身が危険に晒される可能性もあります。

減少傾向にありますが、消防職員と同じく消防団員も毎年数名が殉職しています。

現在の日本の消防現場での殉職者数は?

徹底した安全管理を行い、かつ「自分の命は大切にする」という教えが徹底されている日本の消防現場では、殉職率は世界の消防士たちと比べると低いといわれています。なお、消防職に携わる消防職員及び消防団員の殉職者数は、毎年総務省消防庁が発表している「消防白書」で統計が取られています。

平成28年度の消防白書によると、平成27年中に火災などの対応や訓練など職務中に死亡した消防職員及び消防団員は合計で7名、負傷者は2,172名となっています。消防職員及び消防団員の殉職者数は平成23年では消防職員が25名前後、消防団員に至っては200名近くとなっていましたが、年度の推移とともに減少しています。

参考:平成28年度消防白書 第2章第3節「消防職団員の活動」
http://www.fdma.go.jp/html/hakusho/h28/h28/pdf/part2_section3.pdf

万一の消防職員・消防団員の殉職時への対応とは

消防職員の殉職には、遺族に「死亡退職金」と「賞恤金」、消防団員にも「賞恤金」が支払われる

殉職とは、単なる死亡とは異なりその人が命を対価に任務を遂行したことを指しますので、尊い命の対価として、消防職員の遺族には死亡退職金と賞恤金(しょうじゅつきん)が支払われます。なお、賞恤金は殉職の場合消防団員にも支払われます。

死亡退職金は、定年などで支払われる退職金と同じ取り扱いですが、賞恤金は消防組織の本部がある各市町村からの弔慰金という扱いです。支払われる金額は、殉職者の年齢や今までの消防活動においての功績などで上下し、およそ500万円から3,000万円前後です。

消防職員だけでなく、警察官や自衛官にもある「二階級特進」

消防職員は階級制となっていて階級を上げるには既定の勤務年数が経過後に年に1回行われる昇進試験に合格しなければいけませんが、殉職した場合は元の階級から2階級昇進となる「二階級特進」のルールがあります。二階級特進には、殉職した職員に対しての敬意と、死亡退職金や遺族年金の受取金額が二階級特進後の階級に沿った金額になるため、遺族の受取金額を増加させる2つの目的があります。

なお、死亡退職金と賞恤金、二階級特進は消防職員だけでなく、警察官や自衛官などの他の殉職の可能性のある公務員職にも適応されています。

災害弔慰金などは二重取りになるので受け取らない

大災害時に公務での活動中に命を落とした地方公務員には、地方公務員災害補償法に則って各自治体の公務員職員共済から災害弔慰金が支払われます。ですが、殉職によって賞恤金が支払われる警察官、消防職員、自衛官などは弔慰金の二重取りとなってしまうため、慣例により大災害による殉職の場合、弔慰金は受け取らないことになっています。

一方で、非常勤の公務員職にあたる消防団員の場合、大災害時の活動中での殉職では消防団員等公務災害補償等共済基金より遺族へ給付金が支払われます。

全国消防殉職者慰霊祭の執行

昭和57年より、その年の任務中に殉職した全国消防殉職者及び消防協力受難者の功績をたたえるために、全国消防殉職者慰霊祭が総務省消防庁の後援の元で執行されています。全国消防殉職者慰霊祭では、尊い犠牲となった消防殉職者へ感謝と敬意をささげ、故人を偲ぶのが目的となっています。

東日本大震災の教訓を生かして

東日本大震災では、消防職員・消防団員も犠牲に

東日本大震災では、活動中に殉職及び行方不明となった消防職員・消防団員も多くなっています。

消防職員は、岩手県で7人が死亡、1人が行方不明、宮城県で13人が死亡、7人が行方不明、二県合計で20人の方が死亡、8人の方が行方不明となっています。また、消防本部や消防署の建物被害が7棟、同じく消防分署や出張所の建物被害が82棟、消防車両は69台、消防艇1台、宮城県の防災ヘリ「みやぎ」1機も被害を受け、使用不可能となりました。

消防団員は岩手県で116人が死亡、1人が行方不明、宮城県で107人が死亡、1人が行方不明、福島県で27人が死亡、被災三県合計で254人の方が死亡、2人の方が行方不明となっています。また、消防団拠点施設の420か所及び車両261台も被害を受けました。

消防団員が殉職、もしくは行方不明になったのは地域の水門を閉めている、もしくは閉めた後の水門に関する活動に関して、もしくは高齢者や避難で介助の必要な人の誘導、津波に流されそうになっている人を救出している最中に一緒に津波に飲まれる、または避難指示に従わない人や日本語が通じない外国人に対して説得や説明を行っている最中などにいずれも津波に一緒にのまれて犠牲となっています。中には、消防車で住民を避難場所である小学校へすべて運んだ後に、団員自身が津波に飲まれて犠牲になったケースもありました。

参考:消防庁の「東日本大震災記録集」の公表
http://www.fdma.go.jp/neuter/topics/houdou/h25/2503/250326_1houdou/03_houdoushiryou.pdf

東日本大震災消防殉職者等全国慰霊祭が執行

前述通り、毎年その年に殉職した消防職員や消防団員を追悼するために全国消防殉職者慰霊祭が開かれていますが、東日本大震災では特に多くの方が犠牲となったため「東日本大震災消防殉職者等全国慰霊祭」が平成23年11月29日に執り行われました。天皇皇后両陛下もご臨席され、ご遺族の方々に対しても暖かいお言葉をかけていらっしゃいました。

また、当時の野田内閣総理大臣、横路衆議院議長、平田参議院議長など政界からも多くの来賓が訪れ追悼の辞が述べられ、消防任務中に尊い命が失われた東日本大震災での殉職者の御霊に哀悼の誠が捧げられました。

また、東日本大震災時に大津波が迫る中でも懸命な活動を行い、殉職した消防職員と消防団員の存在を忘れないために、日本消防会館の1階ピロティーに「東日本大震災鎮魂レリーフ」を設置、全国慰霊祭に先駆けて除幕式も行われました。

参考:日本消防 東日本大震災消防殉職者等全国慰霊祭
http://www.nissho-jyouhou.jp/nisshohp_img/kikanshi/h23/h23_kikanshi12.pdf

殉職者を災害で出さないための取り組みと、消防活動のあり方を考え直すきっかけに

東日本大震災を踏まえて、総務庁消防庁では東日本大震災を踏まえた各課題への取り組みを提言していますが、提言された課題の一つに、消防職員と消防団員の活動のあり方を挙げています。特に、東日本大震災は今までの震災被害である建物の倒壊や崩落が主ではなく、津波による被害が甚大だったため、消防組織のあり方全体を再考するきっかけともなりました。

消防職員には初動活動や消防本部の大規模災害時にて効率よく機能する方法、緊急消防援助隊も含めて長期化する災害活動への対応、そして消防職員の安全管理など具体的に取るべき方針をまとめ、各消防本部へまとめて配布しました。

東日本大震災で消防団員は、津波の迫りくる中でも逃げ遅れた人や高齢者などの避難誘導や、水門の閉鎖、被災地の夜間の見回りなど、地域住民への献身的な活動があった上で多くの殉職者を出しています。これを受けて、総務庁消防庁では大規模災害時における消防団活動の再考と同時に、津波災害時の消防団の任務と団員の安全を両立する取組を推進し、消防団員にも、消防職員と同じく自分の身の安全を確保した上での行動ができるように、各種取り組みが導入されました。

消防団員は消防職員と比較すると装備や使用できる資機材の種類、そして救助活動に関する技術力が限定されていますので、これを踏まえて、大規模災害時に消防団員が自分自身の安全確保をしつつ活動のための装備の整備を支援する補助制度を設けました。消防団には新しくライフジャケット、投光器等を配備し、装備や資機材と同時に消防団員への教育や訓練もより充実させるようにしました。

また、消防団のある地域によっては高齢化が進み、消防団員自体の高年齢化も進んでいます。もちろん、迅速な行動を行うという上では消防団員の年齢もより若い方が有利ですので、同時に若い世代も消防団に興味をもってもらえるように、入団を促すような取り組みも同時に行われるようになりました。

まとめ

危険な活動も多い消防職員や消防団員だからこそ、自分の身の安全を確保した上での消防活動の重要性が分かりました。また、東日本大震災からは大津波という今までとはタイプの違う震災時での消防職員・消防団員の活動のあり方を考え直す機会にもなりました。殉職者をひとりでも出さないように、総務庁消防庁を始めとする消防組織の今後の取り組みにも期待します。

(文:千谷 麻理子)

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